星乙女達の夢の跡   作:護人ベリアス

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逃避行は終わらぬ惨劇の承前で

「後ろは任せて!とにかく前へ!振り返ったらそれだけあの怪物に追い付かせる猶予を生む!逃げて逃げて逃げまくるの!GOGOGO!」

 

「まさに尻尾を巻いて…だな。得るものなく失ってばかり…あぁ…忌々しい…」

 

「…それは言わないでください。輝夜。例え敗勢であろうと…希望は…あります」

 

「お前ら平然と状況に合わせた会話してるけど、このアタシが置かれてる状況が如何にヤベーか分かってんのかよ!?おい!」

 

 アリーゼは殿として後方から檄を飛ばしながら前方を進む仲間達の背を押す。

 

 輝夜は彼女達の惨めに敗走している現実に忌々しさを感じ、後ろ髪を引かれているかのよう。

 

 リューはその輝夜の悲観的な思考を戒める。

 

 …そしてライラは本当にリューにお姫様抱っこで運ばれているという状況に半狂乱状態で喚き散らす。

 

 これが【アストレア・ファミリア】の日常的風景…では全くないのだが、それでも絶望的状況でもそれでも彼女達らしい騒がしさはまだまだ残していた。

 

 なぜなら希望があるという主観的事実が彼女達の走る脚を止めさせることはなかったから。

 

 彼女達は大切な仲間達を七人も失ってしまった。

 

 それでも…いや、それだからこそ彼女達は止まれなかった。

 

 彼女達は取り戻した希望を見失う訳にはいかなかった。

 

 彼女達は走り続ける。

 

 前へ前へと。

 

 惨劇から脱出するために走り続ける。

 

 彼女達は取り戻した希望を守り抜くために走り続けた。

 

 追い縋る惨劇を気にかけ、後ろばかりを振り返る少女一人を除いて。

 

 

 

 ⭐︎

 

 

 

 アリーゼが作戦を決定してからの彼女達の動きは【アストレア・ファミリア】らしい迅速なものとなった。

 

 アリーゼはそばに転がっていた自らの剣を手に取りつつ立ち上がり、惨劇を今尚繰り広げる『ジャガーノート』への警戒を怠らなかった。

 

 輝夜は脂汗を滴らせるほどの激痛をもたらす右腕の傷口を左手で押さえながらよろめきながらも立ち上がった。

 

 そして光を失ってしまったライラをリューが抱えて連れて行く…というのが逃避行の第一の関門になるはずだった。

 

 反対の意を示し続けたライラは当然リューに何をされるかと戦々恐々とし。

 

 多くを語らなかったものの特に輝夜は実現できるかは心底不安を抱いていた。

 

 …輝夜の雑な発想ではリューがライラを蹴りで雪玉の如く転がして行ってでも助けることができれば及第点ぐらいに考えていたというのもまた恐ろしいが。

 

 アリーゼは…リューを全面的に信じていた…というのは実際は建前で特に何も考えていなかったというのが実情だったりなかったり。

 

 そんな三人の様々な思いを一身に受けるリューはどうしたか。

 

 

 なんと何の躊躇もなくライラをお姫様抱っこで抱えたのである。

 

 

 何の躊躇もなく。一瞬の動揺もなく。戸惑う様子さえ見せず。

 

 真剣な表情で。戦いに赴く前の凛々しい表情で。

 

 リューはお姫様抱っこをアリーゼの言葉通り忠実に実行した。

 

 …別にライラの身体が全く動かない訳でもないのだから、背に背負うこともできたはずなのに…である。

 

 それはもう絶望に打ち拉がれるお姫様を助けに来た騎士がお姫様を抱き抱えるようで…

 

『居心地は問題ないですか?』などと気遣いまでするイケメン騎士じみたリューに。

 

『おっ…お前!マジで!?何やってんだ!おっ…降ろせ!?』などと自らの置かれた状況を視界が塞がれた中で想起しツンデレお姫様じみた反応を返すライラに。

 

 アリーゼと輝夜は思わず吹いた。

 

 絶望的状況を完全に忘れて吹いた。

 

 それもある意味緊張を解きほぐすのには役立ったかもしれない。

 

 …ライラとリューを除いて。

 

 ツンデレお姫様のライラはそれ以降お姫様抱っこされ続ける小恥ずかしい状況に定期的に愚痴を零していた。…それも頬を赤らめながら。

 

 そして鈍感騎士のリューはと言うと、ライラを救うことで頭がいっぱいで彼女の状況などそういう意味ではお構いなし。

 

 リューはライラを抱き抱えると一瞬の時も惜しいとばかりに即座に駆け出した。

 

 その真っ先に逃避行を開始すべく駆け出したリューに笑い転げそうになったアリーゼと輝夜が続くことになった。

 

 そうしてドタバタ気味に惨劇から免れるべく逃避行は始まったのであった。

 

 

 

 ⭐︎

 

 

 

「リオン!どこまで進んだ!お前に揺られながらじゃ分からねぇ!」

 

「今二つ目の階段を登り終えました!25階層です!」

 

「よし!!何とかなるぞ!」

 

「大分…引き離したな。団長…追手は?」

 

「…分からない。今の所は見えない。大丈夫だと思うけど…まぁ油断禁物ね」

 

「団長の言う通りだ。…リオン。ライラ。気を抜くな」

 

「ということで全力疾走継続!!このまま18階層まで駆け抜けるわよ!GO!!」

 

「「「はい!!」」」

 

 アリーゼの指示に三人の威勢の良い返事が返される。

 

 リューの発言通り場所は25階層で彼女達は言葉通り全力疾走してきた。

 

 モンスターは原則無視、襲いかかってきた場合は輝夜が前衛に出て薙ぎ払うか殿のアリーゼが斬る。

 

 ライラの身体で両手が塞がれたリューが事実上の戦力外である今片腕を失った輝夜であろうと甘えは許されなかった。

 

 そしてその苦難に耐え抜けるのがゴジョウノ・輝夜の真髄であり、往時よりは大幅に劣るとは言え【中層】のモンスター如きに遅れを取ることなどあり得なかった。

 

 お陰でほとんど速度を落とさず進められた敗走。

 

 予想外に順調に進んだ敗走にリューとライラは少々安堵まで見せ始めていた。

 

 だが逆にアリーゼと輝夜は警戒を解かず全力疾走を続けさせる。

 

 そして…

 

 よりにもよってアリーゼと輝夜の警戒の方が身を結ぶという最悪の事態に繋がった。

 

「…団長。妙な音が聞こえる」

 

「…奇遇ね。私もよ。今一番聴きたくない音」

 

「おいおいおいおい…あの怪物階層無視で追ってくるのか?どこの階層主だよ。冗談じゃねぇぞ!?」

 

「くっ…」

 

 アリーゼと輝夜の冷たさと静けさを帯びた呟き。二人は音を聴き取っていた。

 

 惨劇が彼女達の元に迫ってくる音を。

 

 そしてそれはライラとリューにも届き、ライラは悪態を吐きリューは歯軋りする。

 

「まだ大丈夫!大丈夫だから!前へ!前へ!脚を止めないで!出来るだけ距離を作るの!!」

 

 アリーゼが声を張り上げる。

 

 恐怖で止まってしまいそうな脚を止めさせないために。

 

 何が何でも希望を守るために。

 

 アリーゼは彼女達に檄を飛ばした。

 

 そして…

 

 

 アリーゼは元より果たすつもりでいた責務を果たす時が来たと確信した。

 

 

「リオン!あんたはこのまま18階層に直行!悪いけど、可能な限り冒険者を掻き集めてUターンして来て!遠征中のファミリアはなかったはずだけど…とにかく熟練冒険者を集めて!力が必要なの!あの怪物を倒すにはあまりに力が足りない!」

 

「アッ…アリーゼ?一体何を…」

 

「輝夜とライラをリヴィラで応急処置をしてもらって、治療院への移送を依頼!確実に治療院でできうる限り最善の治療を施してもらうこと!ファミリアの財産全部食い潰しても良い!アストレア様も絶対に許してくれる!だから妙な気を絶対起こさないで!!」

 

「団長っ…!お前は何を言って…」

 

「アリーゼ…お前まさか…」

 

 アリーゼが指示を飛ばす。

 

 18階層まで駆け抜けた先の指示を出す。

 

 早過ぎる。おかしい。

 

 それにリューも輝夜もライラも気付いた。

 

 そしてその気付きは全面的に正しかった。

 

 

「私は殿の役目を果たす。あんた達を絶対逃してみせる」

 

 

「アリーゼッ!?」

 

「団長!?」

 

「アリーゼ!?」

 

「今は黙って私の話を聞きなさい!!振り向かないで!止まらないで!走り続けて!今もまだ私もあんた達も止まれない!!だから私の話を聞いて!!」」

 

 アリーゼの判断を何としてでも止めようと考えが瞬時に一致したリューと輝夜とライラはアリーゼの名を呼ぶと共に振り向こうとする。

 

 だがアリーゼは拒絶した。走り続けるよう求めた。

 

 …だから三人とも振り向くことも立ち止まることもできなかった。走り続けるしかなかった。

 

「あんた達の言いたいことは言われずとも分かってる。だけど私の考えを聞いて。今はどうしても戦力が欲しいの。輝夜とライラの治療が最優先なの。その両方を追うならば、あの怪物の追撃は早く抑える必要があるの。階層無視が可能なことが確定な時点で18階層にあの怪物を近づけさせられない。熟練冒険者以外が滞在するリヴィラまで私達が連れて行ってしまったら…さらに犠牲を生む。それどころか地上に連れ出してしまう危険まである。それを私は認められない」

 

 アリーゼの言い分は道理だった。

 

 確かに『ジャガーノート』が階層無視が可能だと発覚した時点で彼女達が逃げる先をどこまでも追い続ける可能性は考えられる。

 

【アストレア・ファミリア】と【ルドラ・ファミリア】の壊滅を『惨劇の序章』などと呼ばれかねない事態を引き起こしかねない。

 

 リヴィラの壊滅。

 

 上層進出による下級冒険者の殺戮。

 

 地上進出によるオラリオの崩壊。

 

 考えられない…などと楽観視はできない。

 

 相手はモンスター。

 

 相手はダンジョン。

 

 彼女達自身が『ジャガーノート』によって大切な仲間達を奪われる惨劇に直面された最悪の経験を持つ以上その惨劇をこれ以上拡大するのは言語道断だった。

 

 それはアリーゼだけでなくリューにも輝夜にもライラにも説明された今なら分かった。

 

 だがアリーゼの大切な仲間達は…そんな決断を容認できなかった。

 

「ふざけるなっ!!一人であの化け物に挑むだと?そんな狂気の沙汰を私達が許すと思っているのかっっ!!」

 

「最低限の対処法はあっても時間稼ぎには限界がある!!アリーゼの危惧は分かるが、お前一人残していくことはアタシらは絶対できない!!」

 

 輝夜とライラはアリーゼの意図は分かっても納得は絶対にできなかった。

 

 アリーゼの考えを認めればどうなるか…それが輝夜とライラには明白であったから。

 

 輝夜とライラは怒りと恐怖の混じった声で猛反発する。

 

 それにアリーゼは静かに応じた。

 

「一人じゃないわ。輝夜。リオンが応援を集められれば十分あの怪物に立ち向かえる。私が時間稼ぎの間にあの化け物の弱点を洗い出すから。だから大丈夫よ」

 

「団長!!冗談も休み休みに言え!?」

 

「あとライラ。時間稼ぎだけならライラが導いてくれた対処法だけで十分。私一人だからこそ回避に専念できる。一人だからこそ役割を確実に果たせるのよ」

 

「滅茶苦茶なこと言いやがって!?アタシらが足手纏いって言うのかよ!?ふざけんな!!」

 

 アリーゼの冷静に語られた返答に輝夜とライラは怒号で言い返す。

 

 そんな中ただ一人無言を貫いた少女がいた。

 

 その少女とは言うまでもなくリューのこと。

 

 リューはそれこそ輝夜とライラ以上にアリーゼを大切に思っているはずだった。

 

 リューはそれこそ輝夜とライラ以上に反発して然るべきなはずだった。

 

 にも関わらず輝夜とライラの反発には加わらなかった。

 

 それはなぜか?

 

 

 それはリューが輝夜とライラ以上にアリーゼのことを信じていたからであった。

 

 

「…アリーゼ?私が応援を連れてくることができれば…何も問題ないのですね?」

 

「…そうよ。リオン。何も問題ない。万事解決よ。惨劇は確実にそこで終わる」

 

「…っ!?待て…リオン?どうして団長にそんなことを聞く…どうして団長の考えを認めようとする…?」

 

「待てよ…待てよ…待てよ!!リオン?お前本当にどアホなのか?アリーゼが何を言っているのか分かってんのか!?」

 

「分かってるに…決まってます」

 

 リューの確認は半分アリーゼの考えを認めたようなものだった。アリーゼを見捨てているようにも聞こえた。

 

 そんなリューの反応に輝夜もライラも逆上しかける。

 

 

 自分達がアリーゼを止めようとしているのに他でもないリオンが裏切るのか、と。

 

 

 輝夜とライラは今度はリューに詰め寄るように叫ぶ。

 

「…このっ…この糞雑魚妖精が応援…はは…馬鹿げてる…貴様が応援など呼んでこれるはずもなかろう!?ライラを抱えられた程度で図に乗るなよ大馬鹿者めが!!貴様はっ…貴様は…そんなことできるはずもない!!アリーゼ一人残すなどっっ…考えるな!!」

 

「…できる…私にだって…できる…」

 

「仮に万が一連れてこられたとしてもアリーゼの時間稼ぎが絶対それまで耐えられねぇ…アホな考えは捨てろ。リオン。絶対成功しねぇ…そんなことすればアリーゼが…死んじまう…」

 

「違うっ!!違うっ!!そんなことにはならない!!私は絶対応援を連れてこられる!アリーゼは絶対死なない!!だって…だって私は…アリーゼを信じているから!!そしてアリーゼは私を信じているから!!だからっ…希望は決して潰えない!!」

 

 リューがアリーゼの考えを支持する根拠…それは実際は根拠などありもしないただの理想であった。

 

 アリーゼとリューは互いに信じ合っている。

 

 だからアリーゼとリューは互いを裏切らない。

 

 リューは絶対に応援を連れてくる。

 

 アリーゼは絶対に死なない。

 

 そんな根拠がない無茶苦茶な理想。

 

 そんな理想にリューは縋っていた。

 

 だからリューはアリーゼに確認する。

 

 その信頼関係が偽りでないかを。

 

 お互いが裏切らないという保証をアリーゼに求めていた。

 

「ねぇ?アリーゼ…?アリーゼ?私なら…できますよね?私なら応援を連れてこれ…ますよね?私を…信じて…くれますよね?」

 

「…ええ。できるわ。ライラをこうしてお姫様抱っこできてる今のあんたなら…何だってできる。私はそう信じてる。だからリオン…私のことも信じて?」

 

「…っ!当然ですっ!アリーゼは絶対に生き残ります!私はっ…アリーゼを信じます!」

 

 確認された信頼関係。

 

 根拠も何もない砂上の楼閣のような信頼関係。

 

 それがアリーゼとリューの間で確認されてしまった。

 

 そうなればもうこの応酬は終わりであった。

 

「輝夜。ライラ。アリーゼの決定に従い、私達は全力で18階層まで駆け抜けます。アリーゼを信じるならば…アリーゼの決定に従ってください」

 

「リオンの言う通りにしなさい!大丈夫!私には生きて帰ってリオンを好きなようにしないといけないって言う崇高でとっても大切な使命があるんだから!私は全部終わったらリオンと結婚する!こんなとこで死ねる訳ないじゃない!」

 

「…」

 

「…」

 

 輝夜とライラは何も言わなかった。

 

 アリーゼを盲信するリューに対してその考えの青臭さを責めることはなかった。

 

 いつもだったら罵倒してリューの考えの甘さを指摘する輝夜は口を閉ざした。

 

 いつも通りの冗談を宣うアリーゼに対して突っ込みを入れることはなかった。

 

 いつもだったら『それは死亡フラグだ!?』とか言って突っ込みを入れるライラは口を閉ざした。

 

 それはなぜか?

 

 …この決定が何を招くか薄々二人は察してしまったから。

 

 そしてそれに気付いていないのがリューただ一人であると気付いてしまったから。

 

 だから輝夜もライラも何も言わなかった。

 

 輝夜とライラは気付いてしまっていたから。

 

 

 今から私達三人がアリーゼを殺すのだ、と。それにリューは気付くことさえないということを。

 

 

「…ここまでね。行きなさい!リオン!輝夜!ライラ!頼んだわよ!!絶対私の言いつけを守ること!いいわね!?」

 

「はい!!分かっています!だからアリーゼもどうかご無事で!」

 

「ええ!リオン達も道中気をつけなさい!」

 

 アリーゼとリューの威勢の良い声が輝夜とライラの耳には虚しくしか聞こえない。

 

 輝夜とライラの耳に届く足音が一人分減った。

 

 輝夜とライラのそばにいつもいてくれたむさ苦しいけど温かい…そんな熱気が遠ざかっていく。

 

 それでも…輝夜とライラは逃げ出すしかなかった。

 

 それがアリーゼの最期の願いだということは分かりきっていたから。

 

 ただただアリーゼとリューに失望と諦観を抱いて。

 

 それと同時に輝夜とライラ自身は再びゆっくりと絶望の沼へと沈み始めた。

 

【アストレア・ファミリア】の少女達にとって常にアリーゼと共にあった希望。

 

 それはやはりアリーゼと共に儚く消えるしかない希望であった。

 

 

 

 ⭐︎

 

 

 

「さて…行ったわね。三人とも」

 

 アリーゼは小さく息を吐きながらそう呟く。

 

 そしてアリーゼ達に惨劇をもたらした怪物を待ち受けるべく後ろを振り返る。

 

 剣先をその怪物が襲い来るであろう暗闇へと向け、アリーゼは最期の瞑想に耽り始めた。

 

「…やるわよ。アリーゼ・ローヴェル。私の責務…果たすわよ」

 

 瞑想に耽りながらアリーゼは自らに言い聞かせるように言う。

 

「…みんなの生命を守れなかった団長としての責務…果たすわよ。…裏切りを重ねる友人として…せめてもの責務…果たすわよ」

 

 アリーゼの頭の中で思い浮かべるのは十人の大切な仲間達。

 

 アリーゼは心の中で彼女達一人一人に謝罪の言葉を贈る。それが彼女の中だけでは何の意味もないということが分かっていたとしても。

 

 アリーゼはもう責務を果たすことしか頭になかった。

 

 生命を落としてしまった友人達への償いを果たし。

 

 今尚生き残ろうとする友人達を守り抜く。

 

 その責務には…本当は希望はなかった。

 

 希望を届けることはできても…アリーゼ本人がきちんと希望を取り戻せていなかった。

 

 取り戻した希望は…リューの望む理想のある希望ではなかった。

 

 

 結局の所…『アリーゼ・ローヴェル』は息を吹き返すことができていなかった。

 

 

「さぁ…怪物ちゃん。今からは私が相手よ。きっちり責務…果たさせてもらうから」

 

 アリーゼの前に『ジャガーノート』が姿を現す。

 

 アリーゼに向かって悍しいまでの殺気を向ける。

 

 だがアリーゼは揺るがない。

 

 アリーゼには責務が、理想なき希望があるから。

 

 アリーゼはそんな殺気に動じることはなかった。

 

 だからアリーゼは目の前の怪物に向かって唱える。

 

 これまで希望を紡ぎ、悪を焼き払ってきた誇り高き魔法の名を。

 

 これから希望を焼き尽くし、彼女と最期の運命を共にする誉れ高き魔法の名を。

 

 その名にアリーゼは今持てる全ての力を賭けた。

 

「【アガリス・アルヴェンシス】」




まずは関係ないお話を一つ。
作者は少し前までダンメモ2周年の後日談としてアルゴノゥトの死後を描いていました。そこではアリアドネやフィーナ、リュールゥ等々の女傑達に注目しようとしていました。
ですが作者にとってはあの物語は『英雄遺文』、英雄の遺した物語。
真の主役は英雄アルゴノゥト…と考えて描いていたんです。
…はい。関係ない訳ではないですね?つまりはそういうことです。この作者やりますよ?マジで。

脅し文句がハッタリか大真面目かは後々分かるとして。
今話の展開について触れます。

リューさんがライラさんを触れられるという奇跡。
…逆に気になりました。どうしてアリーゼさんしか触れられないんですか?他の仲間はリューさんの中でアリーゼさんより一等級価値が低いとでも?
…もしそうなら非常に残念ですよね…まぁ台詞的にいつもアリーゼアリーゼ言ってる百合思考疑惑が固いリューさんですので、アリーゼさんはきっとリューさんの想い人だったんでしょうね。ええ。(リュー×アリーゼ論者の思考)
ただそれもなんか微妙なのでこの生と死の狭間で修正されました。今のリューさんは輝夜さんとライラさんに触れられます。お姫様抱っこぐらい余裕です。
今のリューさんは仲間を失った現実と今尚襲ってくる仲間を失う恐怖に立ち向かうために少しずつ変わっているんです。
その変化は別の形で原作でも起こった訳で。この点は原作とは違い、いい変化ですね。

ただアリーゼさんへの盲信だけは変わらず。
リューさんとアリーゼさんはその盲信と背信によって最善で最悪な決断を下しました。
その決断が何をもたらすのか…輝夜さんとライラさんは気付いています。

リューさんの一言が運命を変えた。
けれど誰も好転させたとは言ってない。そんな状況。
…正直言って絶望はまだ始まったばかり…どころか時間的長さではまだほぼ0に近いと言えるかもしれません。
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