読まなくなった本、魔導書、不要なスクロール、買い取ります!   作:竜田竜朗

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そういえば新しく評価を頂いてました。ありがとうございます!目指せオリジナル日間ランキングー!ということで頑張っていきます〜!
今回ちょっと短めです。


オリエンテーション!③

「いってきまーす!」

 

元気良く言って、アルカは家を出た。二階で一度そう言っているので、これは二度目になる。それも何だか変だなと思いつつも、この家そのものに言っているんだと思えばこの家そのものが自分の帰る場所なんだと思えて、少しだけ心が暖かくなる。

自分ももうすっかりこの家の住人なんだと自分で思えることが何だか嬉しかった。

 

「(今日の学園もいい事あるといいなぁ)」

 

そして次に思い馳せるのは学園での事だ。昨日は昼食時に些細なトラブルがあったから、今日は一日いい事だらけになればいい。きっとなる。なんて都合の良く思い込んで通学路を歩いていると、ちょうどローゼが住んでいると思われる屋敷の前に通りがかり──

 

「……いってきます」

 

タイミング良く、ローゼが屋敷から出てきていた。

 

「あ、ローゼちゃん!」

「……?あ、アルカ……おはようございます」

「うん!おはようー!」

 

何やら落ち込んでいる様子だったが、挨拶を返してくれる時にはいつもの凛とした表情に戻っていた。

 

「ローゼちゃん今日は遅いんだね」

「えぇ。少々家の事で……そんな事よりアルカ、その……もしよろしければ一緒に登校致しませんこと?」

「もちろん!いこっ!」

 

と、笑顔で告げる。きっと家の中で良くない事があったのだろう。それがどういう内容で、それによってローゼが何を考えているのかは分からない。だけど、こうやって笑い合うことで少しでも忘れられるのならいいなぁと思った。

 

「まったく、本当に朝から元気ですわね」

「あはは、それだけが取り柄みたいな物だから。ただでも今日は……くあぁ……ちょっと眠い〜」

「可愛らしい欠伸ですこと。授業中に居眠りしないよう、気を付けるのですよ」

「は〜い」

 

昨日の授業で使った愛鎌のむーちゃんを清掃していたら、ベッドに入るのがかなり遅い時間になってしまったのだ。しかし大切な武器に土が付いたままというのが、アルカとしては看過できない事だった。

 

「でもそういうローゼちゃんも、目、ちょっと赤いよ?」

「……それは本当ですの?……わたくしとしたことが……知らぬ間に目を擦ってしまったのかもしれませんわね」

「あー、寝起きとかによくやっちゃうよね」

「えぇ」

 

なんて、他愛もない会話を交えながら学園に向かっていく。

願って間もなく、楽しい登校時間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アルカ、今日の昼食は教室で食べませんこと?」

「……あ、やっぱり昨日のこと?」

 

教室に到着し、ふと思い出した様にローゼが切り出したのは昼食の話題だった。

 

「えぇ。あまり気にするのは良くないと思いますが、やはり……」

「……うーん、あの、いなづまさんだっけ?あの人はどういう人なの?」

 

食堂においての皆の反応からするに、かなり有名な人である事は間違いないのだろう。だが、アルカとしては何をそんなに怯えているのかがよく分かっていなかった。

 

「闘争祭──学園行事の一つで、学年、クラスを問わない闘いの祭典。彼は前年度の優勝者。平たく言えば去年度で最も強い方が彼ですわ」

「それは分かったんだけど……」

 

それだけで人から恐れられる物なのかという疑問が残るのだ。

 

「これ程までに彼が恐れられる理由は、彼の戦い方ですわ。稲妻の称号を与えられた事から察する事ができますように、彼は雷の魔法を扱い、帯電した魔法剣を用いて闘います。素早く戦場を駆け、いかなる間合いであろうと、稲妻を放ち、稲妻の如く駆け回る」

「ほへぇ……」

 

それを聞いても何となくの想像しかできないが、要は「電気の力で速くて強い」という事なのだろう。そう聞くと確かに強そうだなぁとは思う。

 

「各試合の所要時間も、歴代で最も速いと言われております。けれどまぁ、かの黒翼様には遠く及びませんが!!」

「……そ、そうなんだ……」

 

何故だか知らないが、胸を張って自慢げに語り始めたローゼに、アルカは体を引いた。

 

「そうですとも!彼女の気品と他者を寄せ付けない圧倒的な威圧感!その上、あの圧倒的な魔力!まさしく無双!全ての人類は彼女から学ぶべきですわ!!」

「(……あれ?ユノさん話をしてるんだよね?)」

 

昨日の少年とのやり取りからして、「他者を寄せ付けない圧倒的な威圧感」なる物は該当しないんじゃないかと思うのだがと首を捻る。何ならその後では、何があったのか分からないがオーナーに突っかかり、二人で外に出た後で五分後にユノだけ「えぅ……えぐっ……反則だよぉー!!」と涙を流しながら帰って来た事も思い返される。

 

「彼女に纏わる多くのエピソードがありますのよ」

「それは気になる!」

 

そういうのを聞いていれば、世間と実際のユノとの乖離がどういう物なのかよく分かるだろう。まぁそんな事よりユノについてもっと知りたいというのが本音だ。

 

「アサイラムとオールヴェールを隔てるタートル湖にて、とあるハンター達が意図せずタートル湖の主と遭遇し、襲われてしまった時、たまたま通りがかった彼女はたった一発の魔法で主を撃退。何かお礼をとハンター達に言われた際に「私はハンターとして当然の事をしたまでだよ」と去って行ったそうですわ!見返りを求めず、ハンターとして淡々と自らの役目を全うする様は「優しき修羅」ととでもいいましょうか」

「(本当にこれ誰の話!?)」

 

アルカの知るユノであれば「あーいいよいいよそのくらい。気にしないで」と言いそうだ。そもそも一人称だって違う。これはかなり曲解されて伝わっているんだと結論付けて。

 

「他にも!ギルド内で周りに迷惑を掛けるような騒ぎを起こす気性の荒い殿方達を、睨みを利かせただけで鎮めたという逸話もありますわ!」

「へ、へぇ……」

 

訂正がきかないレベルで曲解されていた。睨むとかそういうのとは縁遠そうな人に向けられる言葉じゃない。確かに怖じ気付いている様も想像はできないが、だからと言って睨んで黙らせられる様な人にも見えない。

 

「まだまだありますわよ!!」

「え、や、あの別にもう」

 

アルカの制止も虚しく、ローゼの黒翼語りは続いた。話が進むに連れ語り口も早くなっていき、「あ、私ユノさんと一緒に暮らしてるんだー」なんて割り込める空気じゃ無くなった。というか、なんかそんなこと言ったらとっても面倒臭い事になりそうだった。

 

「(あっ、そうだノヴァは!?……ってまだ来てない……)」

 

もう一人の友人に助け舟を出してもらおうかと思ったのだが、教室にその姿は見当たらない。

 

「アルカ!聞いておりますの?」

「あ、うんっ!」

 

結局、チャイムが鳴り響くまでローゼの話は終わらないのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一限目の算術は、初回の時と変わらず退屈な物だったので、アルカは特に思い悩む様な事もなく淡々と授業をこなした。出題された問題にも間違いはなく、解答を言ってくれと先生に当てられた際も間違えずに解答できた。

 

現在は二限。初めての歴史の授業が始まった。

 

「歴史の授業を担当するレン・クレトリーだよ。みんな改めてよろしくね」

 

担任の先生であるレン先生がこの授業を務めるらしい。この前に見た柔和な笑顔で告げる。対して生徒達も「よろしくお願いします」と返して、挨拶もそれまでに、レン先生は本の束を持って、それをみんなに配り始めた。

 

「これはこの歴史科目で使う教本だよ。これに沿って授業を行うから、みんな大切に保管して欲しい」

 

何だかんだで教本を配られたのは初めてである。他の授業では教本を扱うことはない。どれもこれも、先生の解説で事足りてしまうし、結局の所、要点をきちんとノートに取っていればいいというスタンスだからだ。

 

全員に配り終えた後、レン先生は最初のページを開くよう指示し、当然みんながそれに従う。

 

「まずは、言い伝えられているこの世の成り立ちからだ」

 

何ともぶっ飛んだ導入だ。世界の構築から歴史を始めるらしい。

 

「この世界は二つの「層」で形成されていると言われているんだ」

 

そう言って、レン先生は黒板の中心より下の部分に一本の線を横に引いた。それから線より下に「第一層」と記す。

 

「気が遠くなる様な、はるか昔。世界には何も無かった。ただ真っ黒な無の世界が広がっていた。そこに神様が現れ、「光あれ」と言ったんだ。そうして物が生まれ、今のこの世界がある」

 

それから引いた線の上に「第二層」と記す。黒板は上下に分割され、線より下を第一層、線より上を第二層と、分かりやすくもかなり抽象的に表現された。

 

「けれどそれでも無は存在する。神様の光は無の上に光を載せただけだった。無の世界を第一層。そして有の世界を第二層と表現している」

 

第二層の隣に「この世」と記し補足。だが第一層の方には何の記述もない。

 

「第一層については何も伝えられていない。ただ無は在るという事だけだね」

 

哲学的に考えれば矛盾を孕むのだろうが、言葉の通りの意味だ。

 

「だから第一層のお話はこれだけ。この授業では僕達の生きる第二層の話を扱うよ。テストでも、第一層には「無」がある。という事くらいしか出題しないから」

 

レン先生は黒板消しで記述を消していく。形式的に、取り敢えずやらなきゃいけないからやった様な感じだった。

 

「さて、700年前にフォス・D・ラスティア様がラスティア王国を建国した。当たり前の事だけど、その前にも人類が存在した証拠はある。けれど授業で扱うのはここからの歴史なんだ」

 

そしてまた歴史は飛ぶ。どうやら歴史の授業と言っても、人類史を一からやっていくわけではなく、王国の建設からの歴史のみを取り扱うらしい。

 

「だから導入がすごいややこしいんだけど……まずこの時点で既に人類は魔王軍と戦っていたんだ。ラスティア様は魔王軍に大きな損傷を与えた事で担ぎ上げられた。一年間は魔王軍の侵攻が衰えるものだと考えて、王国は発展していくんだ。この一年は天啓の一年と呼ばれ様々な政策を打ち出していく。代表的な物を幾つか挙げるね。ここはテストに出すからよく覚えておいて欲しい。まず一つは──」

 

そうやって授業が進む中、アルカはと言うと。

 

「(…………ね、ねむい……)」

 

睡魔との闘いが最終決戦へと突入し、敗北寸前だった。一限目の算術では何ともなかったのだが、この歴史においては考える事があまりなく、加えてレン先生の優しい音声が安らぎを与えてくれて心地よい感じになってしまったのだ。

 

「…………ふぁ…………すぅ……」

 

そして敗北。机に突っ伏して健康的な寝息を立て始めた。とっても幸せそうな表情で眠っている。

 

「(……あ、アルカ……授業の初回で眠るなんて、どれだけ肝が座ってますの……?)」

 

これに気付いたローゼはびっくり仰天である。確かに歴史の授業という物は教本を目でなぞり、必要な単語をノートにまとめる等の退屈な作業になってしまうが、それにしたってあまりにも早すぎる。まだ授業開始から十分ほどしか経過していないのだ。

 

「(……仕方ありませんわね)」

 

起こそうと決めたローゼは左手でペンを持ち、クルリと回して軸の方の先端をアルカに向けて、腕を伸ばす。目指すはアルカの脇腹だ。確か起こすのにはそこが一番良いと聞いた事があった。

 

ので、脇腹をツンと突いて──

 

 

「ふぁひゃっ!!」

 

と、気持ちいいくらい通り抜けるアルカの間抜けな声が響き渡った。教室中の視線がアルカに集まる。

 

「(……い、些か強すぎたでしょうか……?)」

 

これに驚いたのはローゼも一緒だ。急いでペンを引いたは良いが、何か罪悪感が凄かった。

 

「(…………けれど、可愛らしい声でしたわね……い、いやいけませんわわたくしには心に決めた殿方が……!)」

 

そしてローゼの方も壊れ始めるのだが、そんな事は関係なく時間は進む。

 

「おはよー、コノエさん」

「……あっ……あ、あはは、おはようございます先生……」

「退屈にさせちゃってごめんよ。僕ももう少し上手くできたら良かったんだけど」

「い、いえいえいえ!私が眠ってしまったのがいけないんですから!本当にごめんなさい」

 

怒りはせず、そう言ってくれたレン先生に謝罪をした。脇腹を突れた衝撃で、少なくとももうこの授業中は睡魔に敗北する心配はない。ペンを持って、もう大丈夫だとアピールする。

 

「僕も頑張るから、コノエさんも一緒にがんばろう」

「はいっ!」

 

そう言葉を掛けてもらい、俄然やる気も湧いてきた。

 

「みんな中断してごめんね。じゃあ続きを──」

 

そんなこんなで、アルカは二限目も乗り切るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間進み昼休み。アルカとノヴァとローゼの三人は購買で昼食を購入し、教室で食べた。他愛もない会話や、先程のアルカの居眠りの話題で盛り上がり、楽しく過ごしていく。それから明日からは教室でお弁当にしようという流れになった。

あまりお金を使いたくないアルカの発案だったが、ノヴァもローゼも快諾してくれた。

 

「あ〜、わたし、トイレに行ってきますね〜」

 

と、昼休みももう少しで終わりという時に、ノヴァがそう言って席を立つ。

 

「お花を摘むと言いなさいな……わたくしも、参りますわ」

「分かった。私は大丈夫だから待ってるね」

 

そう言って二人で談笑しながらトイレに行くノヴァとローゼを見送った。少々手持ち無沙汰になってしまい、どうしようかと頭を悩ませたその時だ。

 

「こんにちは、アルカちゃん」

 

なんてクラスメイトに声を掛けられた。

 

「あ、うん、こんにちは」

 

ハッとしてそちらに視線を向ければ、三人組の女生徒が居た。自己紹介の時に緊張していたがために名前は思い出せないのだが、クラスメイトである事には違いない。

 

「いきなりごめんね。あのさ、アルカちゃんいい人っぽいから教えるんだけど……」

「は、はぁ……」

 

何だか雲行きが怪しくなってきて。

 

「あんまり、オールヴェールさんに関わらない方がいいよ」

 

それは的中した。

 

「……どうしてですか?」

 

少しだけ敵意を滲ませて答える。友人に対してその物言いをするのだから当然だ。

 

「あの人、なんかおかしいんだよ」

「は?」

 

余りにも抽象的な、よく分からない言葉。

 

「中等部の時とかさ、病で学校休んじゃった人が登校してきた時に、「体調管理がなっていませんわ」とか言ってさ」

「酷いよね。体調なんてひょんな事ですぐ崩れるもんなのにさ」

「どうしても点数取れなくて補習になった時とかも「補習を受けるなんて日頃から勉強しないせいですわ」とか言われたことあるし」

「ちょっと髪の毛が乱れて気が付かなかった時とかも、「身嗜みもきちんとできないなんて不潔ですわ!」って言われたよ」

 

これまた反応に困る様な内容だった。確かにローゼの言っていることは正しいが、何もそこまで言う必要は無いんじゃないかと反論できる様な。

 

「その癖してやたら人に関わって来るし。癪に障る様な話し方だし」

「なのに、大勢の人の前に立つとテンパるしね……あがり症なんかね?」

「自己紹介の時もそうだったじゃん。何言ってるか全然意味わかんなかったよ」

 

なんて三人は盛り上がっていた。流石に、それに対して愛想笑いを浮かべられはしないが、そういう経緯でローゼは避けられているのかと納得できた。

 

「まぁそうやって初等部の頃から全然冗談通じない人でさ。細かい事までグチグチ言ってくるし。正しさに狂ってるっていうかさ。だからアルカちゃんも気を付けて。あんまり一緒に居ると、学園生活つまんなくなっちゃうよ」

「……適当に覚えときます」

 

と、適当に返す。

 

「……そっか……それでいいよ。何か困ったことあったら、ちゃんといいなよ。あたし達のこと信じらんなかったら先生にとかでもいいからさ。んじゃーね」

 

一瞬、残念そうにしていたが、直ぐに表情を柔らかくしてから去って行った。

 

「(……多分、悪い人じゃないんだろうな)」

 

居ない人の陰口を叩くのは、まぁ褒められる行為ではないのだろうが、善意で忠告してくれた事は理解した。

深く追求して来なかったし、別れる時もちょっと残念そうだった。わかってくれなかったかーなんていう雰囲気が伝わってきた。

 

「(……よしっ!)」

 

だからこそ、アルカはローゼの友達である事を続けようと気合いを入れる。さっきの人達とローゼは、分かり合えるはずだ。

彼女達は過去の経験談を話してくれたが、今のローゼはそんなことはない。現に今日の歴史の授業だって、起こしてくれただけで、後で文句を言われるような事はなかった。

彼女は変わったのだ。それをさっきの人達にも知ってもらえれば、きっとローゼと仲良くなれる。

 

「……でもどうしよう?」

 

ただ、その方法だけはどうにも思い浮かばず、ローゼとノヴァが戻ってくるまで悩むのだった。




前作から来て頂いている方に「おっ?」を提供できたなら幸いな回です。

まだまだ序盤ですが何か気に入ったとか、気になるとか、印象に残ったキャラクターが居れば投票おなしゃす!

  • アルカ・コノエ
  • ユノ・グレイスロータ
  • ローゼ・オールヴェール
  • ノヴァ・ブランク
  • オーナー
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