読まなくなった本、魔導書、不要なスクロール、買い取ります!   作:竜田竜朗

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コロナだろうと年末近いと忙しい……(言い訳タイム)


オリエンテーション!①

「ただいま帰りました!」

 

と、元気いっぱいな挨拶でアルカはMOの扉を開いた。相変わらずお店の中にお客は居ない。経営は大丈夫なのかと本気で心配になるレベルの客足。日に15人来るかどうかなのは短い間でも働いて分かった事だ。

 

「おかえりなさい、アルカちゃん」

 

カウンターの奥の方で作業をしているユノから返事が来た。

そちらに視線を送れば、なにやら見慣れない機械で作業をしている。ユノは作業を続けながらアルカの方を向いて口を開いた。

 

「オーナーが上でお昼ご飯作ってるよ。もうできるんじゃないかな?」

「それでしたら、私着替えてお店に出るのでユノさんが先に」

「ううん、先にアルカちゃんとオーナーで食べててよ。ボクの作業はまだ掛かりそうだから」

 

それが優しさによるものではない事を、中断せず作業を続ける事が物語っていた。本当に忙しいらしい。

 

「……そういう事なら、分かりました」

 

少し申し訳なさを抱きつつも、アルカは一礼してから店内の奥へと進み、階段を登っていく。

 

「ただいま帰りました〜」

「ン、おかえり」

 

一度リビングに顔を出せば、オーナーが料理をしている最中だった。

 

「もうできるから、着替えて降りてこい」

「はいっ!」

 

言葉を受けて階段を登り、自室へと向かう。入るなりカバンを机の脇にフックに掛けて、急いで私服へと着替えてハンガーに掛かったエプロンを持って再び二階へと向かう。

 

「食器並べるの手伝いますね!」

 

空いている席にエプロンをかけて、キッチンへと向かいオーナーにそう声をかけて料理を見る。茹で終えた山盛りのパスタと、挽肉とケチャップソースを和えたものがフライパンに収まっていた。

昼食はミートソースパスタの様だ。確認してからのアルカの行動は早い。戸棚からパスタ用の大皿を三つ取り出す。

 

「ありがとう」

 

オーナーはお礼を言ってからパスタを大皿にあけ、フライパンからスプーンを使ってパスタの上に盛り付ける。その間にのアルカは食器棚の引き出しからフォークを二本取り出し、盛り付け終えたパスタとフォークを持ってテーブルへと向かった。

 

「紅茶でいいか?」

「あ、はい、お願いします」

 

コップを二つを取り出した後に、冷蔵庫で冷やしていた紅茶を注ぎ、それらをテーブルへと持っていく。

それで準備は整い、二人はそれぞれ自分の席に腰を下ろして「いただきます」の声で昼食を開始した。

 

味はいつも通り美味しかった。肉の旨みが十分に引き出されていて、パスタによく味が絡む。アルカもパスタくらいから作れるし、作っていて難しいと感じる料理ではないのだが、ここまで美味しく作るとすると話は別だ。アルカにはまだ作れない。

 

「……ンで、学園はどうだった?」

「ん……んぐ……なんてゆうか……色々凄かったです」

 

飲み込んでから答えた。

 

「設備とかも私の常識からかけ離れていると言いますか」

「……まぁ、それもそうか。少しずつ慣れていければいいな」

「はいっ!」

 

彼の言う通り、何も急ぐ必要はないのだ。学園に在籍する時間は短く見積っても三年はある。一つずつ慣れていければそれでいい。

 

「ちなみに明日の予定はどうなってる?」

「明日からは授業が始まるみたいです。……それと、お昼ご飯が必要になりまして……」

「そうか。なら取り敢えず明日はこれで学食でも行ってこい」

 

オーナーはジャケットの内側に手を突っ込んで、そこから何かを取り出し、アルカへ差し出した。それを思わず目を見開いて見る。差し出されたのは最も高価な硬貨。10000Zだったからだ。

 

「う、受け取れませんよ!?」

 

両手を上げてフルフルと振り、拒否をアピールした。

 

「学食で食うなり購買で買うなりすればお金は掛かるだろ。それにだ、なにもタダで渡すわけじゃない」

 

机の上に二枚の硬貨を置いてから続ける。

 

「前払いだ。五日間、お前が働いた分の給料の半分がこれだ。だから次の給料からこの金額は引かせてもらう」

「……でも……」

 

理に叶ったオーナーの説明を受けても、アルカはまだ渋る。

 

「学生ってのは何かと金が掛かるもんだ。予期しない何かがあった時のためにも、金ってのはあるに越したことはないからな」

 

保険にしたってその金額は多すぎると思わなくもないアルカだったが、確かにオーナーの言う事に間違いはない。学食もそうだが、文房具など突然の出費がある事は目に見えている事だ。物を大切に使うにしたって限度はあるのだから。

 

「……分かり……ました……ありがとうございます、オーナーさん」

 

合理的な理由を持って考えて、アルカはそのお金を受け取る。

 

「ン」

 

と、オーナーは小さく、それだけ返事をして再び食事に戻った。

 

彼にも、もちろんユノにも、色々と与えてもらってばかりで何も返せない弱い自分が嫌になる。いつか、本当に、きちんと恩返しできるのか。そんな事を心配するアルカだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、昼食をとり終えた二人はユノと交代し、二人でお店を回す。アルカももうだいぶ慣れ来たので、カウンターにはアルカ一人。オーナーは本棚の本を整理したりとフロアを歩き回っている。

ちなみに、オーナーがフロアに出ていると本がひとりでに突然浮き上がって別の場所に仕舞われるという怪奇現象が起きるのだが、ユノが「本だって自分の居場所を探してるんだよ」という哲学的な台詞を死んだような目で語り始めたので触れないようにしている。

 

今日もまたそんな怪奇現象を一度だけ目撃したのだが、何も言わず心を無にして時間の経過を待っていると、ユノが昼食をとり終えてフロアへ降りてきた。

 

「戻ったよ、オーナー。確か今日は行くところがあるって言ってたよね?」

「ン。あと任せるぞ」

「うん。任せて」

 

短くも互いの信頼関係が現れているような、そんなやり取りを交わして、オーナーは一度上のフロアへ上がり、制服から私服に着替えてから「いってくる」と残してお店を後にした。

 

「オーナーさん、どこ行ったんですか?」

「うーん、分からないけど、今日はうちのお店の関係じゃないかな?」

「……分かるんですか?」

「オーナーがお店を出る時は、悪いなって言う時と、何も言わない時の二種類あるんだよ」

「……えと、何か違いが……?」

 

一言謝って行くのか行かないのか。どちらにせよ行き先を告げないのは失礼な事では?とアルカは思ってしまう。

 

「多分、謝ってる時は仕事と関係ないことで、謝らない時は関係あるところじゃないかな?」

「そ、そんな解釈でいいんですか?」

 

そうだったとしても……と、やはりアルカは思う。

 

「まぁボクは気にしないからいいんだよ。あぁでも、アルカちゃんはやっぱり気になっちゃうよね。気が回らなくてごめんよ」

「い、いえいえそんな!!私なんて随分気にかけてもらってますし……」

 

ブンブンと頭を振って否定する。気にならない事はないが、だからと言ってどうこうして欲しいとは思っていない。

 

「……ありがとう。オーナーは、後少しだって言ってたから、多分、そのうち何とかなると思うんだ」

「後、少し?」

 

なんの事だかさっぱり分からなかったが、それを追求する前にユノがパン!と両手を叩いて切り替える。

 

「さてとアルカちゃん、そろそろボクは君を次のステージに連れて行ってもいいと思うんだ」

「つ、次のステージですか……?」

 

腰に手を当て胸を張りながら言ったらユノの雰囲気に、アルカはゴクリと唾を飲み込み。

 

「うん、次のステージ……それはね……品出しだよ!」

「おおっ!!」

 

歓喜した。今までずっとカウンターでの作業が主だったため、カウンターの外に出ての作業に胸が踊る。

 

「いい反応だねアルカちゃん。教え甲斐があるってもんさ。さてそれじゃこれを持って」

 

言って、ユノはカウンターの中にあったキャスター付きの緑色のラックを押し始める。その緑のラックにはいくつかの本とスクロールが積まれていた。

良くユノがカウンターで何か作業をした後に、このラックに商品を乗せて出していたのを何度か目撃しているため、このラックに積まれている商品を出すのだと言うのは分かった。

 

「ご〜!」

「ごー!です!」

 

なんて掛け声と共に、ゆっくりラックを押し、カウンターを抜けてフロアへ。

直ぐに立ち止まった。

 

「おっと、忘れていたよ。アルカちゃんも大分このお店の構造は分かってきたかと思うけど、詳しい本の配列とかはまだ分かってないと思うから、説明するよ」

「お願いしますっ!」

 

入口を背にして、一番右側奧の本棚から魔導書があって、その向かいには戦術指南書があり──と言った具合に配列を教えて貰う。アルカはそれらをメモしていき、一通り教わった後にいざ品出しだ。

 

と言ってもそれだって対して難しいわけじゃない。ジャンル毎とタイトルの先頭の文字の音の順に本を詰めていくだけだ。本棚に入らなくなったら、他の重複して出されている本を一冊だけ下げればいいとの事だし、スクロールの方でもやることは変わらない。難しさで言うならカウンター業務の方が難しいだろう。

 

「うん、まぁこんなものかな。そしたらボクはカウンターに居るから、後をお願いできるかな?」

「わっかりました!任せてください!」

 

と、元気良く返事をすると、「分からない事があったら聞いてね」と残してユノはカウンターの方へと向かう。

 

「ええっと、このスクロールは……」

 

十数枚で束ねられたスクロールの束の表紙には「身体能力強化 1st」と記されている。無属性魔法の常時発動型の棚に同じ物を見つけたので、それに並べる。

 

「よっし……それで次はファイアボール3rd…………3rdもスクロールにできちゃうんだ……ていうか一枚しかないのに高っ」

 

強力ではあるが一回限りの魔法攻撃に14000Zという価格に驚きつつも、火属性魔法、任意発動型の棚に並べる。こちらもファイアボール1st、2ndと並べられていたため分かりやすい。

 

スクロールのみならず、本や魔導書の棚でも同じ要領でアルカは次々と品出しをこなしていき、その後はカウンター業務に戻ってその日の仕事は終わった。

 

 

 

 

 

 

「……お客さん、結局七人しかいらっしゃらなかったんですね」

「あ、あはは…………いやぁほんと……オーナーはどうやってうちの店経営してるんだろうね……」

 

閉店作業中の、二人の切実な疑問だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。昨日と同じ時間帯にアルカは登校した。ローゼやノヴァと会えたら一緒に登校したいとは思っていたのだが、そう上手く鉢合わせることは出来なかった。そもそも彼女達が何時に登校するつもりなのか知らないのだから仕方の無いことだ。一抹の寂しさを抱えつつも、気が付けば学園に到着した。昨日今日で迷うことなく自分の教室へと向かう。登園ラッシュとでも言うべきか、かなり多くの人が校門をぬけていて、自分もこの一員なんだという実感が湧いてきた。

 

「おはようございま〜す」

 

元気良く──とまではいかない、少し控え目なボリュームで教室に入るなり挨拶をする。それでも何人かが気がついてくれて、挨拶を返してくれたり、手を挙げてくれたりした。その事を嬉しく感じつつも席に着席し、既にローゼが居ることに気が付いた。

 

「おはようローゼちゃん」

「あらアルカ、おはよう」

 

着席しつつ挨拶をすると、ローゼも小さく微笑んでそう返してくれた。

 

「ローゼちゃん早いんだね」

「時間にゆとりをもって行動する。貴族の嗜みの様なものですわ」

「へぇ……貴族の人ってやっぱり色々厳しいんだ」

「貴族たるもの、朝早く起きて情報紙に目を通し、いち早くこの世の出来事を把握し自らの糧とする事が大切ですのよ。それが終われば街を歩き、些細な変化も見逃さず、領家の使命を──」

「(…………わぁ、志しが高い人だ)」

 

恐らくとっても良い事を言っていて、少しは自分もそれに習うべきなのかもしれないが、ここまで向上心を持つことは難しそうだった。

 

「──必然、学園にいち早く到着する事も当然の嗜み。別に家の居心地が悪いとかそういうわけではありませんわ。そう何事も素早く行動する事で──」

「(……家の事情かな)」

 

アルカは多少の早口に紛れたローゼの心の内も見逃さなかった。誰がどう見てもあの屋敷の住み心地が悪い事は無いのだろうから、一緒に住んでいる人達との仲が良くないのだろうと思考する。

 

「(話を聞いている限り、ローゼちゃんってすっごい真面目でいい人なんだけど……貴族ってなんか、怖いんだなぁ……)」

 

アルカは高貴な出という訳では無いので、ローゼの周りに起こっている事は想像すらできないが、友として何か手助けできればと思う。ただまぁ、流石に会って二日目でそれを聞き出すこともできず。

 

「アルカ?聞いていますの?」

「ううん全然」

「んなっ!?」

 

ただ、傍から見ていれば、二人はもうとっても打ち解けている様にも見えるものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルカはもう一人の友達、ノヴァ・ブランクとも挨拶がしたかったが、ノヴァは遅刻ギリギリで到着し、結局挨拶する暇もなく授業が始まってしまった。狙ってやったのかと疑いたくなるくらいチャイムと同時に入室してきたためである。

 

ともあれそうして一限目の算術が始まり──なんてことも無く終わった。簡単な算術のテストをして、それから前期の間にやるべき範囲を教えて貰ってそれで終わってしまったのだ。

テストの内容は中等部の総まとめどころか、初等部の総まとめの様な問題ばかり。本当にこれでいいのかと首を傾げたくなる内容だった。

 

それも二限から変わる。読解という授業の内容は一つの物語をみんなで読み進め、解釈を深めていくというもの。何も物語に限らず、誰かの遺した書記だったりもするらしい。手始めに今日は有名な絵本「兆太郎(きざたろう)」を題材にした。アルカも知っている有名な話だ。

 

話の内容は、名家に産まれた兆太郎が札束と一族に代々伝わる宝刀を持って街の離れに集まった魔物の群れを退治しに行くお話。道中、猿みたいな人間と雉みたいな人間と犬みたいな人間の三人をお金で雇ったりして、魔物の群れを壊滅させる。作中の名言は「お金は使ってこそだ!財を叩いてみんなの安心と安全が手に入るならいくらでも払おう!」だったりする。

ちなみにコレを読んだアルカの母親は「なんじゃこのマネーアンドパワーな桃太郎。きびだんごが札束になっとるじゃん」と感想を漏らした。アルカにはよく分からなかった。

 

それはさておき、実際に授業では様々な意見が出た。

「子供に勧善懲悪を教える良い絵本」や「正しい貴族の在り方」など肯定する内容が多い。否定的な意見では「魔物による被害が少数でも怒り狂って出陣した兆太郎は短気すぎる」等や、「今これやるならギルドに依頼した方がいいよね。予め情報収集もできるし」等。

結局、この意見の交し合いに正解はなく、言ったところで別に物語の内容が変わるはずもないのだが、様々な方面から物語に切り込んでいき、様々な視点から物語を見れるためアルカはかなり面白く感じた。

 

今回の授業ではオリエンテーションを含めるため短く終わってしまったが、次回からは本格的に時間を使ってやっていくらしいのでとても楽しみだった。

 

 

そして、アルカが最も楽しみにしていた「魔法・戦闘」の一コマ目が始まった。

 

「はい、皆さんこんにちは。一年間この授業を担当する「クラリス・ラフマウス」と申します。……くれぐれも、「クラリス先生」と呼んでくださいね?」

 

第一印象としては、茶髪の長い髪が綺麗な先生だったが、笑顔が怖い女の先生にスリ変わった。

 

「この授業では、一コマ目に魔法や戦闘に関する理論の説明、解説。二コマ目では外に出て実際に体験する。という流れになっています。もちろん例外もあります。学園対抗戦の前には二コマ目続けて外に出ることもありますから」

 

そんな行事もあるのかとアルカは少し楽しみになりながらも、ワクワクする気持ちを抑えて先生の話に耳を傾ける。

 

「早速始めましょう。それではまず、皆さんには魔力測定テストをしてもらいます」

 

言いながら、クラリス先生は本の栞くらいのサイズの小さな白紙の束を掲げ、それを一人一枚ずつ生徒に配っていく。

アルカの手元にも渡り、見てみれば本当にただの白紙だった。

 

「ご存知の方がほとんどだと思いますし、中等部に居た人は定期的に触ったでしょうが説明しますね。こちらの白紙は魔力を流すと色が現れる仕組みになっています。この紙にどれだけ色が付くかでその人の魔力量が測れるわけです。更に、流れる魔力の性質に応じて色が変化します。赤なら火属性の適正、青なら水属性の適正と言った具合ですね。後で回収しますので、測定が終わりましたら紙の隅っこにペンで名前を書いておいてください。……それでは始めてください。時間は五分ほど取ります」

 

単純でわかり易いなと思いつつ、アルカはスクロールに魔力を流すのと同じ要領で測定紙に魔力を流す。

 

「(……私、どうなるんだろ?)」

 

戦闘スタイルの関係上、無属性魔法を利用する事は多々あれど属性魔法を使ったことはない。使おうと思ったことすらない。自分の適性は何なんだろうなと考えていると──紙は赤く染まり始めた。

 

「(赤って……?火だったよね……うん……へぇ……?)」

 

火属性の魔法には全くもって縁がなさそうなのだが、こういう結果になっているのだから自分は火属性に縁があるのだろう。アルカ自身、全くそうは思えないが。ちなみに紙を半分と少し赤く染めた所で変色は止まった。

 

「アルカは火属性ですのね」

 

と、隣のローゼに話し掛けられた。

 

「うん、そうみたい。使ったことないから意外だなぁって自分でも思うんだけど……ていうかローゼちゃんのその色は……」

 

ふとローゼの机の上に置かれた測定紙に目をやると、真っ白だった紙が、端から端まで綺麗に、且つ美しい七色の紙へと変わっていた。

 

「……まぁ、血筋ですわ。オールヴェールの者は大体みんなこうなりますの」

「ほへぇ……かっこいいね」

「そ、そうです……?」

 

アルカの放った感想が予想していた物と違ったのか、何だか微妙な顔付きになるローゼ。

 

「(……ノヴァちゃんは……見えないなぁ……)」

 

ノヴァの席は窓側から二列目の先頭。アルカの席からは彼女が紙を何色に染めたのかは見えない。気になる所ではあるが、後で教えてもらえばいいかと一旦忘れ、ローゼに話し掛けようとして──

 

「……かっこいい…………」

 

ローゼはローゼで七色の紙を見つめながら、何やら考え事をしている様子。「まっ、いいか」とアルカは前へと向き直り、時間の経過を待った。

 

「大体みなさんできましたか?後ろから前へと測定紙を回してください」

 

という先生の合図で、アルカは自分の測定紙を前の人に手渡す。次は何をするんだろうと胸が踊る。

 

「それでは今後の授業スケジュールについてお話していきます」

 

が、胸の踊りは終わってしまった。別段今から何かするわけではないらしい。しかし大事な話であることには違いないのでしっかりと耳は傾ける。

 

話をまとめるとこうだ。

 

座学に置いての最初の二コマは魔法の歴史と原理についての授業。そして次に四コマ使ってスクロールについての授業。その後はいくつかの魔導書について語ったりと機を見て授業内容を変えていくらしい。

MOに勤めている身としては、スクロールと魔導書の話については是非とも学んでおきたいものだと思った。

 

「……さて、残りの時間、皆さんに大切なお話があります」

 

残り時間は三十分。かなり時間はあるのだが、一体何を話すのか。先生の顔付きが鋭くなったのを見る限り、本当に大切な事だろうというのはヒシヒシと伝わって来た。教室内の空気もどこか張り詰める。

 

「…………九年前、オールヴェール郊外で起こったブラッドウェポンによる事件を覚えていますか?」

 

知らない話だっだが、知りませんと割り込む空気ではなかった。

 

「軽傷者26人、重傷者85人、死者12人。多くの犠牲者を出し、森の中に大穴を空けた、この大きな事件の加害者はブラッドウェポンに取り憑かれた結果、たった一人でこの様な被害を起こしました」

 

沈痛な面持ちで語るクラリス先生に釣られてか、教室内の空気は更に重くなっている。

 

「ブラッドウェポン──ブラッドソード、ブラッドケーン、ブラッドブレードの三つ。それがどうして突然現れて消えるのか。それは誰にも分かりません。しかし、言い伝えられているのは、力を渇望し、全てを捨てでも望む者の元に現れるという事です」

 

何だか知ってる事前提で話が進んでいるのだが、アルカにはイマイチ内容が理解できていない。「どうして突然現れて消えるのか」なんて言われても、「哲学かなにか?」と頭の中を混乱させるだけだった。

 

「九年前は、幸運な事に黒翼様が居てくださったお陰で、街の中への被害はありませんでした。しかし、もしブラッドウェポンが街中に発生し、それを所有した人が居た場合、どうなるかわかりません……私は、皆さんに戦う力を授ける授業をします。けれど、何のために力を使うのか。それをどうか、どうか間違えないでください」

 

願うように。或いは祈るように。見方によっては縋るように。クラリス先生は頭を垂れた。真摯な気持ちが伝わって来る。彼女が心の底からそう望んでいる事が、アルカにも伝わって来る。

 

「(……ブラッドウェポンかぁ……よく分かんないけど、帰ったらユノさんに聞いてみよう)」

 

ただまぁ、そんな事よりも好奇心旺盛なアルカは、みんなが恐れるその武器が気になるのだった。




多少字数少なくしても投稿ペース早い方がいいのだろうか。

まだまだ序盤ですが何か気に入ったとか、気になるとか、印象に残ったキャラクターが居れば投票おなしゃす!

  • アルカ・コノエ
  • ユノ・グレイスロータ
  • ローゼ・オールヴェール
  • ノヴァ・ブランク
  • オーナー
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