いつかは終わるヒーローたちのアカデミア   作:Agateram

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いつも閲覧ありがとうございます。
また感想をくださった皆さま、評価をくださった皆さま、誠にありがとうございます。

先に書きましたがこれは私の処女作となります。そのため私個人の見解が反映され、他者に対しての理解が難しい、あるいはみにくい文章となっているかと思います。

感想、評価、閲覧数、全てが私にとっての勉強になります。

今回はまたややこしいことになっていますが、駄文に付き合ってやるという心の広い方は時間つぶしでもお読みください。

ということで、予防線は張りました。今回は視点がころころ変わり、自己解釈などあふれる文章となってますので、あとは自己責任でどうぞご覧ください。


第13話 ひび割れた鏡に映ったのは誰だったのか

別にトップをとっても構わないでしょう?

 

それは実質上のこのクラスの皆への宣戦布告であり、勝利宣言だった。

如何に入学主席とはいえ、これは単純な戦闘能力だけでなく、幅広い個性の使い方が必要なテストであり、各々がこの種目なら負けないというものもあるだろう。そしてなによりも僕らはほとんどが今日あったばかりのクラスメイトだ。

 

その中で自分が一番上に立つということは、クラスの皆へ好印象を与えるわけがない。むしろこう思う人が多いだろう。見くびられている。あるいは、ケンカを売られた。

 

そこで、僕は、彼と3年以上毎日付き合いのある緑谷出久は明らかな違和感を持った。

だって彼は売られたケンカを買うことはあっても、基本は自分から誰かにケンカを売ったりしない。身内の誰かが危険にでも陥らないかぎり、彼は平和主義なのだ。

 

ならこの宣言の意味は?皆に発破をかけるため?いやそれは既に相澤先生がかけている。最下位は除籍という勧告は皆のやる気を出させるのに十分だ。ならばこれは、誰に対してどんな意味をもった発言なのか。

 

その答えは、先生の次に向けた視線でわかった。

 

こちらを、自分を見ていた。

彼岸四季が、緑谷出久を見ていた。

ただそれだけだ。それだけで、わかった。先ほどの宣言が誰に対したものなのか。

 

そんなことを考えている間に既に最初の競技が始まっていた。

第一種目は50m走。

 

今のところトップは飯田君の3秒04という個性発現前では考えられない数値。

けれど、きっと四季ならそれを超えてくる。

 

事実、爆豪の隣でスタートラインでクラウチングスタートのポーズをとる彼からは先ほどのように赤い炎のような、血に染まった水のような普段とは強化率が桁違いの個性の使い方。隣で四季を睨む爆豪など眼中にすらない、といった様子は野生の豹のような鋭さがあった。

 

そしてスタートの掛け声と同時に、姿が消えた。否、消えたのではなく、多くの者の動体視力が追えなかったのだ。

 

機械による計測でなかったなら、おそらく計測自体やり直す必要があるであろう速力。

彼岸四季 50m走記録 1秒25。

 

その爆発的な速力をもって、彼は己の宣誓が単なるおふざけでも、誇張でもなく、本気でトップを取るという意思であることを示した。

 

「クソが!!」

 

それを最も身近で見ていた爆豪は4秒46。好成績なのは間違いないが、隣の四季の速度に気を取られたのか両手の個性『爆破』を使った速度上昇がわずかに遅れたようであり、イラつきを抑えられないといった様子だ。

けれど、それはどうでもいい。今は四季だ。

個性、技術、集中力を全力全開にしてトップを取らんと本気になった四季が、そこにいる。それだけが大事だ。

 

今まで僕はいつだって全力で四季と組手や訓練をしてきた。彼自身も自分の師匠であるミルコやオールマイトとの模擬戦では全力を出していただろう。けれど、それはあくまで相手が格上であった時だけで、僕とも模擬戦では本気ではあっても、全力は出さなかった。

それは僕がOFAを手にしてからも変わりない。いつだって彼は僕よりも一歩上にいた。そこから常に僕を指導してくれていた。

 

けれど、今彼は本気で全力を出している。トップを取るという宣言、そしてその後こちらを見据えた意味。それはつまり『お前の全力を、自分の全力をもって超える』という僕への宣戦布告。

 

あの四季が、僕の憧れた彼が僕へ宣戦布告してくれたのだ。

ならば、応えねば無粋。

 

体を滾らせ、個性の発動を行う。緑色をベースとした紫電の光の筋が全身に行きわたる。

 

これが、僕のOFAの常時発動状態、『フルカウル』と名称をつけた僕の個性として登録された力。鍛え上げてきた心技体に個性を上乗せして彼に挑む。

 

そうして全力を出した50m走 緑谷出久 2秒01。まだ、彼に届いていない。

 

けれど、僕はこの個性把握テストで決めた。いや違う。このテストだけじゃない。この高校にいる間に、何度でも挑み何度でも勝ちを拾いにいく。

彼岸四季に、そしてその上にいるオールマイトに追いつくために。彼らのピンチすら救えるヒーローになるために。緑谷出久はこの高校生活を駆け抜けると決めたのだ。ここからが、僕のスタートラインだ。

 

 

こちらの意図を組んだのか50m走を走り終えた出久が歯を見せて笑いながらこちらを見た。それでいい緑谷出久。苦しい時こそ笑え。高い壁に当たった時に、それを打破せんとするものは逆境を、苦難を乗り越えていくものは、笑っていけ。自分は行けると、だから大丈夫だと自分と周りにそう思わせ、自身を信じることから始めるのだ。

 

さて、相手は最強の個性を受け継いだ好敵手。

そして周りは全国から選りすぐられた精鋭。

容易くはないが、それでも出久に、友に発破をかけた以上、自分も全力でやり切るしかない。

 

そうして、俺たちはさっきまでのようにお互い隣りあわせで歩きながら、それでも無言で次の競技へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ふざけるな……ふざけんな!

 

 

「握力測定…爆豪勝己 235キロ」

 

手のひらから爆風を利用して一瞬の爆破で握力計を吹き飛ばし、好成績を出す。

だが、それを、

 

「握力測定…、彼岸四季 握力計の変形により測定不能。記録トップ」

「同じく緑谷出久も握力計の変形により測定不能。同率トップだ」

 

「どうなってやがる!!ふざけんなよクソナード!!」

 

こいつらは軽く超えていきやがる。それもこちらなど眼中にないかのように。

一度目は驚きのあまり、動けなかった。

だが二度目はもはや驚きよりも怒りが上回った!

 

 

「テメェは無個性だっただろうが!!それが、何でそんな記録出してんだ!?

どんなズルしやがった!?今まで俺を、この俺を見下してやがったのか!!」

 

叫びながらデクに掴みかかろうとして、その前に一瞬で体を白い布で動きを止められた。しかも今まであったはずの力が、個性である『爆破』が出せねぇ!?

 

「やめとけ。炭素繊維に特殊合金を織り込んだ捕縛武器だ。抜け出すことなど不可能だ」

 

「あの目……抹消ヒーロー、イレイザーヘッド!」

 

なんだ、そんなヒーロー聞いたこともねぇ。だが、この感じ…俺の個性は出ねぇんじゃない。あの教師、相澤とか言ってたか、あの個性で消されてんだ。

 

「とはいえ、お前の言いたいことも最もではある。緑谷出久、お前は入試の際の書類には無個性と書かれていた。そして確かに今見せたような個性を使うことなく、槍一本で入試を次席合格した。だが、入学前に出された書類には『フルカウル』という個性が3月に発現したとあった。間違いないか」

 

「はい。間違いありません。僕はずっと無個性でした。この個性は入試の後、四季と…とあるプロヒーローと訓練をしていた際に発現したものです。」

 

「とあるプロヒーロー?」

 

「個人情報につき、それ以上は答えられません。ですが、その人がこの個性の使い方を教えてくれたから、僕は今個性を使えています。けれど、個性を発現する前も発現した後も僕の目標は変わっていません。」

 

デクはこちらを、俺をしっかりと視て———また、あの時のような眼だ———声を張り上げた。

 

「僕は誰かに憧れてヒーローを目指すんじゃない。人を救うためにヒーローになります。目の前で理不尽に奪われる幸せを、日常を守るヒーローになります。個性があろうが、なかろうがそれが緑谷出久が決めた信念です。」

 

 

俺を見ている。だが、映されているのは俺じゃねぇ。

不気味な眼だ。気味がわりぃ。こいつはいつから、俺を見なくなった?

 

「なるほど。つまり入試の書類に不備、詐称はなく、間違いなくその個性は3月に発現したばかりだということだな?」

「もちろんです」

「その件に関しては、俺も保障します。何なら昔からコイツを知っていて個性がなかったこと、個性が出た後も知っているプロヒーローを連れてきても構いません。」

 

 

「うそだろ」「一ヶ月で、あんなに個性使えてんのか」「いや、その前に、入試個性なしでってマジで?」「……プロから指導を受けてたということでしょうか。だからあんなに…」

 

ああ、モブ共の声がうるせぇ。頭が割れるみてぇだ。

もうデクはこっちを見てもいねぇ。そしてその眼に映るのは……。

 

ああ、クソッタレ。不気味なのも、気味が悪いのもようやくわかった。

あのクソ留年野郎と似てるからだ。

 

死んだ眼をしているくせに、誰かがイジメられたりしていると真っ先に飛び込んで一瞬でひねり倒していく、………俺を何度も倒した、あの俺を視ていないクソッタレな眼に似ている。

 

だが似ているだけで、同じじゃねぇ。何なんだあれは。

まるで鏡合わせみてぇだ。同じようで、でも真逆な歪さ。

 

だが、同じことが一つある。それは、その眼に俺は、この俺が、自分たちの壁とすら映ってねぇところだ。端から相手にされてねぇ。俺が、ずっとデクをデクと呼び続け、無個性のアイツを道端の石っころみてぇに視界にすら入れてなかったように、今のアイツ等に俺は視界に映ってすらいねぇ。

 

それが、クソ気に入らねぇんだ。

 

 

 

 

 

立ち幅跳び、反復横跳びでも僕はトップを取れていない。いや正確にいえば四季よりも全て下の順位になっている。理由はわかっている。この個性の出力上限は今50%くらいが限界。それ以上は体を壊す。何度も骨を折って何度も四季に治してもらったから自分の上限値は理解している。

 

ただ足りてないのは、その出力の維持と微細なコントロール。大きすぎる力を扱えていない。

 

この個性には、間違いなく彼に劣らない力があるのに。

こんなことでは、オールマイトにも修行に付き合ってくれた四季やミルコにも申し訳が立たない。

 

だから、この5種目 ボール投げで、挽回する。

 

この個性と僕が培ってきた槍術の一つ、槍投げの技術をフルに生かせるとしたら、ここしかない。

 

 

 

 

 

 

「あーホント、今日は何から驚いていいのかわかんないや」

「どうかしたか響香?」

「どうしたもこうしたもないっての。ウチ、今日は入学式でどんな人たちがいるかなとか、同じクラスかなとかいろいろ考えてきたってのに、いきなり入学式なしで個性把握テストはあるし、アンタと緑谷は主席と次席で幼馴染でテストでも目だちっぱなし。凄い個性かと思ったら緑谷は無個性で入試次席って言うし、プロヒーローに指導つけられてたとか、もう情報量多すぎてパンクしそう」

「響香はパンクよりロック派かと思ったが」

「……ギャグのつもり?」

「すまない。場の空気をやわげようとしたんだが、センスはないんだ」

「キャラでもないでしょ。その無表情でギャグ言っても誰も笑わないっての」

 

そんな風に響香と雑談しているとこちらに二人、人が寄ってきた。

 

「よっ!俺は切島 鋭児郎」「あたしは芦戸 三奈。そっちも今準備している緑谷?って人と同じ中学なんだって?あたしたちもなんだ」

 

赤毛で170cmほどの体躯、確か先ほどの50m走では素足になって足の指先をスパイクのようにして走っていたのが切島。そして特徴的なピンク色の肌と角のようなものが生えているのが芦戸、か。

 

「同じ中学から2人か。珍しいな」

「いやいやそっちなんか三人なんでしょ。すごいね」

 

まぁ確かに俺たちの平凡な公立中学から、300倍越えの超難関校のヒーロー科に入学するとか普通はないな。

 

「確かに珍しいがな。だが俺は多分特例、ってのもあるんだろう」

「「「特例?」」」

「ヒーロー科は毎年推薦枠4名、一般枠36名の40人を2クラスに分ける。つまり一クラスは20人が定員だ。だがこの1-Aは21人。多分俺が皆よりも年上ってことで特例で一枠通したというところかな」

 

そう、この1-Aには俺以外に20名の生徒がいる。計21名。これは例年にはないことだ。

 

「そうそう、それ聞きたかったんだ。彼岸ってあたしたちより年上なの?さっきあの爆発する人が留年野郎って言ってたけど」

「馬鹿芦戸。そこはいきなり聞くとこじゃねぇだろ。なんか繊細なとこかもしれねぇし」

「いや構わない」

 

特に嫌味や悪意があるわけではないのだろう。こちらに問いかける芦戸の目は単純に疑問に思ったことを問いかけただけだ。それを防ごうとした切島もこちらを気遣おうとした様子が見て取れる。先ほどの挨拶からしてどちらも裏表ない性格で、親しみやすい。

 

そして、この眼で無意識に見た『色彩』も綺麗なもの。切島は赤い鉱石のような輝き、例えるならスピネルのような固い意志と輝きが混同したモノに見える。対して芦戸はマゼンダピンクのような『色彩』にも、オレンジの太陽のような『色彩』も交じっているような、切島とは真逆な自由奔放な『色彩』が見える。切島のように宝石で例えるなら様々な色を持つというガーネットか。

 

なんにせよ、どちらも疑いようがないくらいに、純真で輝いている。

これは、クラスメイトにも恵まれたようだ。幸先がいい。

 

とはいえ、俺の個性はいわば相手の性格や資質を自身の個性で勝手に盗み見るようなモノ。ほぼ常時発動しているとはいえ、せめてあちらの問いには誠実に答えなければ不実だ。

 

「今言われたように俺はみんなより2つ年上だ。幼いころに個性のコントロールが上手くいかなくてな。それのコントロールとちょっと精神を病んだこともあって学校に通うどころじゃなかったんだ。それでちょっと皆より年上になってしまったが、できれば同年代として扱ってくれると有難い。流石に同じクラスメイトから先輩呼ばわりされるとへこむからな」

 

努めて明るくいったつもりだが、通じただろうか。

 

「オッケー。じゃあよろしく彼岸」「俺もよろしくな彼岸」

 

………本当に、俺はクラスメイトに恵まれている。

 

「ああ、よろしく切島、芦戸」

 

二人と握手を交わすと二人が何かに驚いたようにこちらを見た。なんだ?

 

「へぇ。アンタもその無表情崩すことがあるんだ」

 

少しばかりにやけながら、響香が俺の頬をプラグでツンツンと突いてくる。

笑っていた、のか。なるほど。確かにこのあまり感情に追いついてこない表情筋もたまには仕事をするらしい。それで驚かせたのは、何というか、普段自分がどれだけ表情に乏しいかいわれているようで恥ずかしいのだが。

 

「おっ照れてる?」

 

照れてる。だからそのツンツンをやめてほしい。確かに俺は年上だが、だからと言ってお前達と変わらない十代だぞ。

 

そんな風に、他のことに気をとられていたから見逃していた。

出久の鬼気迫る表情に、そこに、いつもの笑顔がないことに。

 

 

 

 

 

研ぎ澄ませる。

精神を、力を、個性を研ぎ澄ませて一つにまとめる。

 

重要なのは集中力、そして個性の制御力とその最高値をこの一投でたたき出す。

 

紫電が体躯に走る。制御は好調。50%。最高の状態だ。

後は技術。腕だけの投擲などたかが知れている。

モノを投げるときに大切なのは、足、腰、肩、腕の連携。足の踏み込みと少ない距離からの俊足、そしてその力を腰から肩へ、そして腕から得物へ伝える簡単なようで極めるのは途方もない訓練がいる技術。

それを、全身全霊で繰り出す。

 

四季のさっきの記録は2980m。ならばさらにその先に、投げはなって見せる。

 

そう意気込んでボールを握りしめ、初速から全力。腰の回転違いなく、肩から腕へ間違いない、手ごたえを感じ、これまでの経験から確実に3㎞、いやそれ以上を投げる確信を得た。

 

その瞬間、違和感を得た。いや違和感なんてものじゃない。誰もいなかったはずの僕の前に人が立っていた。同時放たれようとしていたボールに途轍もない負荷。

事態についていけず、しかし全力を放つと決めた勢いはとめられず、しかして対抗してきた負荷と僕の全力の投擲のはざまで、測定用のボールは破砕された。衝撃が、腕に走る。

それは僕の投擲を止めた人の腕とボールを挟んだ衝撃であり、僕は一歩後ずさった。

 

そして僕の投擲を防いだ、否、邪魔をした相手は数メートル先、砂煙がはれた先に姿を現せた。それに、僕は驚きを隠せなかった。なぜならそれは僕が最も信頼する人だったから。

 

「どうして……どうして邪魔をしたの四季!?」

 

 

 

こちらを信じられないものを見たような瞳で見る友、緑谷出久。

当然かもしれない。体力測定の間に邪魔に入るなど無粋どころか教育的指導確実案件だ。それが悪意によるものなら、だが。

 

「出久。俺が最初に相澤先生にした質問を聞いていたか?」

「質問?」

 

やはり、覚えていなかった、あるいは聞いていなかったか。

ならばこそ、伝えなければいけないことがある。

 

「相澤先生、もう一度確認します。ここから、雄英高校の敷地はおよそ何キロですか」

「3キロと少し、ってところだ」

 

先ほどの問いと同じ答えが違うことなく返ってくる。

それでもわからないという出久に、俺は目を見開いて声を上げる。

 

「今の出力、投擲の角度、自分がどれだけの飛距離を出すかわからなかったか?」

「……3㎞は確実に超える手ごたえはあったよ。今自分にできる最高の投擲だと思った。それをなんで止めたの」

 

ああ、やはりこれは俺の失敗だ。

個性取得後、俺は出久が個性という可能性を手にしたことが嬉しくて、だからその上限ばかりを上げることを目標に訓練を行ってきた。

だから、見失っている。見失わせてしまった。

 

「このたわけ!!敷地が3㎞ということはそれを超えたら敷地外に出るということだ!それも3㎞を超える速度と力で投げ出されたボールが、誰かいるかもしれない地に落ちるということだ。その危険性を考えなかったのか緑谷出久!!」

「っ!!」

 

このボールは機械が入っているためか、重さはおよそ500グラム程度だろう。子どもでも軽々持てる重さだ。

だが、それが3㎞を超える力で飛ばした先で生じる衝撃はどれほどか。

もしそれが人にでも被弾したならば、骨折、あるいは当たり所によっては即死すらあり得る。

 

普段の冷静で分析に長けた出久なら決して犯さない過ち。

それをさせたのは、上限ばかりを鍛えることに注視した俺の過ちだ。

だが、それでもこれだけは言っておかなければならない。

 

「大きな力を持つということは、それだけで大きな責任を負う。

お前が本気を出せば一挙手一投足で人なんて軽く殺せる。殺せてしまう。

それを、ヒーローを目指すお前が、誰かのためのヒーローになるお前が忘れてどうする!!」

 

ああ、すまない緑谷出久。そんな表情をさせたいわけではないんだ。けれど、コレは必要なこと。お前は既に、その力も持つのだ。だから知らなければならない。

 

人を助けるための力を得るとは同時に、容易く人を殺傷できる力を持つという現実を。

 

「………ごめん。頭に記録しかなかった。僕の前提を忘れるところだった。」

「いや、俺こそすまない。先に言っておかねばならないところだった。相澤先生もすみません。手間を取らせた上に道具まで破損させてしまいました」

 

「かまわん。緑谷の上限に気づけなかった俺の落ち度でもある。それよりも、危険性がわかったなら次に生かせ。それが合理的だ」

 

そうして、2投目。出久は2900mという記録を立てた。

1投目はミスとして処理された。ならば邪魔をした俺の記録も同様の処置をと抗議したが、それは心理的な判断で合理的ではないと却下された。

 

他に特筆すべきことはない。

俺はその個性と技術を全力で用いて、総合成績で宣言通りトップをとった。

出久は2位。ワンツーフィニッシュを飾ったが、互いに今後の課題が浮き彫りになった初授業だった。

 

出久は言わずもがな、個性の細やかな制御とその力の大きさがもたらす危険性の認識を。

そして俺は、一つの確認を。

 

 

ボール投げを防いだあの瞬間、俺は出久よりもスピードに乗った踏み込みと共に彼よりも高い位置からの振り下ろしによって彼の投擲を防いだ。

しかし、防いだ後に後ずさったのは、力負けしたのは俺の方だ。

咄嗟のことであったため俺も全力、赤い光が他人に可視化されるまで生命力の活性化はできていなかった。しかし、それは出久も同じこと。体が壊れる100%ではなく今自分が出せる全力の50%の個性の出力は、俺が瞬時に出せる最大出力を体重と高さと速度を足しても上回ったという事実。

 

彼の壁であり続けるのは、そう長い間ではないのかもしれない。

そして、それは俺の力が及ばなくなった強くなった彼を殺す脅威から、俺が助けられる未来は来ないかもしれないという、俺がみた死の未来を肯定するかのような現実だった。

 

だが、まだだ。

諦めるくらいなら、最初からここに、ヒーロー科になんて来ていない。

赤の他人ならいざ知らず、俺は自分の身内を見殺しにするほどには薄情ではないつもりだ。だから抗ってみせる。超えて見せる。

 

 

そうして、俺と出久はそれぞれが反省と後悔を踏まえて更に前に歩きだす決意を得た。

 

 

だからだろう。俺たちは互いに鏡合わせのように互いばかりを見すぎていたから、見逃していたのだ。

1つの綻びが、この時に既に始まっていたことを。

 

 

 




というわけで、友人にも「わかりにくい、みにくい、」と評された今話でした。

まぁ作者の技量と書きたいことが一致してないとこうなるということらしいです。


さて、既に感覚的にわかっている方もいると思いますが、本作のオリ主と出久君は基本鏡合わせです。

無個性だろうと、他人だろうと、より多くを救うと出久君。
強個性でありながら、目に映る人、身内しか救えないオリ主。

その他似ているようで正反対なのが鏡合わせの二人です。
だから相性がいいのかもしれませんが。

さて、ひび割れた鏡とはだれで、そこに映ったのは誰だったのでしょうか。
答えはいずれ、たぶん、はっきりするはずです。作者の腕次第ですが。

あと、タグにご注意ください。この作品は、特定のキャラのアンチが含まれます。
ここ、テストにでます。

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