いつかは終わるヒーローたちのアカデミア   作:Agateram

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さて、ざっというなら、タイトルは人から何度も聞くよりも一度自分で見たほうが理解が速い。ならば一戦したほうがなお理解が速いのは言うまでもないだろう。というわけのわからないタイトルで始まるのが、今回のお話です。

主人公とその力が及ばないヒーロー、そして出久君とかっちゃんの戦闘訓練のお話になります。

では、心の広い方のみご覧ください。なおタグに原作改変タグつけました。ご了承ください。


第16話 百聞は一見に如かず、況や一戦をや。

負けた。

 

完敗と言っていいだろう。

 

敵のことは知っていた。百戦錬磨、どの分野においても隙はなく、たとえこちらがどれほど予期せぬ一手を打とうとも盤石の構えで相対し、そしてこちらを上回る。

 

わかっていた。敵わないということを知っていた。

 

しかし、挑んだ。挑まずして勝利は得られないと知っていたから。

たとえ勝利が、那由他の彼方であっても、勝負を自ら降りるような臆病者には成り下がりたくなかったのだ。

だから全身全霊を賭して、自分の持ちうる全てを一つに集め、言い訳のしようもないほど出し尽くした一手で、負けた。故にこれを正しく完敗というのだろう。

 

 

彼岸 四季は雄英高校入学2日目にして、死力を尽くし挑み、そして敗れたのだ。

 

 

「俺は……未熟だ。あまりに無知で無力だった」

 

膝をおり、その結果に歯噛みすることさえできず、ただ敗者としての惨めさだけが俺を埋め尽くしていた。

 

 

 

 

 

 

「いや、十分すぎるほど美味しいけど、アンタのお弁当」

「それでも、ランチラッシュの料理には及ばなかった。それが全てだ!」

「………今年の主席は馬鹿なの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、俺は今日自身が弁当という箱に自身の持つ最大限の料理を作ってきた。

ランチジャーという保温器具を用い、出来立ての料理とほぼ変わらない美味しさを持つ最高の弁当を作ってきたつもりだ。

しかし、クックヒーローと呼ばれ、被災地域の炊き出しで疲れた人の腹を満たし、荒んだ心を持つ人たちの心を癒してきた偉大なヒーローが多くを作る中のたった一品に、会心の一品が及ばなかったいう現実。これは受け入れなければならないだろう。

 

「いや、ホント美味しいから。このだし巻き卵や炊き込みご飯なんて料亭とかと大してかわらないくらいだよ。ねぇ?轟」

「……ああ。確かに美味い。」

 

「でも、ランチラッシュには負けているだろ?」

「「そりゃ、まぁ」」

「ガッデム!!」

 

磨き上げてきた腕が及ばない境地。これがアマチュアとプロの差ということか。

 

 

 

「で、何あれ」

 

膝をついて敗北を噛みしめている四季を指さして僕に耳郎さんが聞いてくる。轟くんも言葉にはしないが事態の説明を求めてこちらに視線をよこしてきていた。

うん。まぁそうだよね。いきなり平等な立場から審査員をしてくれ、なんて連れてこられた二人からしたら意味わからないよね。

 

「四季は昔から趣味は料理、音楽くらいでね。特に料理は昔からいろんな努力をしてて、時にはお店に臨時手伝いとして入ってでも味の研究するくらいには料理好きなんだ。だから料理に関してはミルコも太鼓判押すくらいには美味しいんだけど、まぁ、今回は流石に相手が悪かったというか……彼我の腕の違いにプライドがズタズタにされたってところだと思うよ」

「アホなの?」

「頭はいいんだよ?一つに突き詰めようとしたらそれにのめりこんじゃうだけで」

「頭のいいアホなんだね」

「………否定はできない」

 

そんな会話が繰り広げられている中で、轟君はゆっくりとお茶を飲み、そして漸く立ち上がった四季に声をかけた。

 

「昼に用事があるっていうから、てっきり昨日の件かと思ったんだがな」

「ああ……そういえば冬美さんとは話できたか?」

「……秘密だそうだ。」

「は?」

 

轟は苦虫を嚙み潰したような顔でもう一度言い直した。

 

「今まで何度もあったんだ。姉さんが一緒にお見舞いに行かないかって言ってきたことが。

兄さんも見舞いに行っているらしい…………ムカつくし、ふざけんなって思うけど親父も、2年前から必ず月に何回かは見舞いに行っているし、半年前から面会もしていたって聞いた」

 

その顔からは怒りとも、諦観とも言い難い感情が見て取れた。

初見ではクールな印象だったけど、意外に感情が表に出やすいらしい。

 

「何が、あった。どうしてだ、とはもう聞かねぇ。

お前は俺の家族を変えた。そして俺だけがそのままでいる。

お前のおかげで、お前のせいでだ。それだけ分かればいい。」

 

「お、おい焦凍?」

 

あ、ヤバいなぁコレ。

四季じゃなくてもわかる。

 

「今日、お前と話し合いをしたい。いや、戦って、出し切って、その上で何をしたか洗いざらい話してもらう。………ただのガキみてぇな八つ当たりだとわかっている。それでもお前と全力で話し合いたい」

 

話し合いたい、がえらく物騒に聞こえたのは僕の幻聴だろうか。

 

そんな声に僕の友人で先ほどまで敗北に打ちひしがれていたはずの親友はえらくあっさりとした口調で応えた。

 

「構わないぞ。休み時間にヒーロー科のB組の奴に聞いたが、個性把握テストの後のヒーロー基礎学は戦闘訓練らしい。事前申請に基づいて作られた戦闘服ありきのな。」

「B組ってそんなことまで教えてもらってんの!?なんかズルくない?」

「同じヒーロー科でも先生によって特色が違うのは雄英の面白いところだろう。相澤先生は俺たちにその場での即座の対応力を求める傾向があり、B組は限られた情報から次にどうするべきかという適応力を最初に見たいという、互いの担任の考えが反映されている。自由さが売りという校風に違いなしだ。」

 

同じヒーロー科でありながら、初日、二日目からそのクラスによって内容が違う。これが多くの有名ヒーローを育てた雄英の特色。

 

「……それで、俺がお前と当たる確率なんてたかが知れてんだろ。それなら放課後にでもどっかで」

「まぁ話は最後まで聞けよ。さらっとオールマイトに聞いたみたら、21人いる俺たちのクラスは一人余った奴は自分で相手を指名できるってことにするらしいぜ?今からクラスメイトにこっそり声掛けすればお前と当たるのは難しくはないだろ?」

 

いつの間にB組の人と仲良くなったの?と聞くと情報収取は全ての基本だからな。B組や2年生にも朝や休み時間にちょっと声をかけてみたと軽く返事をしてくる。

 

これが四季の頼もしい、あるいは怖いところである。年の違いか、育った環境の違いか、あるいは天性のものかわからないが、こちらが考えた一手の常に先を読んでくる。

 

昨日だって初日の予想外でくたくたになって一緒に帰ったはずだ。

それなのに、2日目には既に情報収集を行っているばかりか、この展開すら予測していた節がある。

 

そしてその行動に面くらったのは轟君も同じようだった。

それはそうかもしれない。さっきまでランチラッシュに挑むために公平なジャッジとして新しくできた友人、と四季が思っている二人を連れてきて敗北に打ちひしがれていた姿とはまさに別人。先ほどまでのことがまるで演技にすら思える。

 

はたしてどこからが彼の考え通りなのか、それともただの行き当たりばったりなのか、わからない。

 

底が見えない。

 

おそらくそんな印象を二人に、特に轟君に与えつつ話を自分の思い描いた通りに進める。

まさしく自分を捉えさせない、四つの季節で全く違う顔を見せる自然を体現しているかのように、千変万化を自然としてくるのが、四季なのだ。自分を臆病と評する彼は僕に言わせれば、考えうる多くの事態に対して対策を練って相手を手のひらの上から逃さない策略家にしか映らない。

 

「そういうわけだ。2人とも、ちょいとばかり協力してくれないか?俺と焦凍が互いに本音で話せるように、さ」

 

そうして、雄英高校1-Aの最初のヒーロー基礎学は、たった一人の思い描いた通りにことが進むのだ。

 

 

 

とはいえそれは、あくまで他の対戦が終わってからの話。

 

シルバーエイジと呼ばれる神々しささえまとったオールマイトが教室に入ってきて提示したのは、四季が言っていたように戦闘訓練。

そして順当に誰とも組むことができないかわりに、ここにいる誰か一人を指名して対戦できる権利をこっそりと得た四季の前に、当然他の組が戦闘を行う。

 

それは僕も同じことで、

 

ヒーローチーム緑谷出久&耳郎響香 VS ヴィランチーム 飯田天哉&爆豪勝己

 

さて、相手は破壊力と速力に優れた二人。

このクラスでも即座の対応力や最高速度の制圧力はトップクラスだろう。

 

さて、どう対処するかなこれは。まぁ、それはあくまで爆豪勝己という自尊心の塊がどれだけパートナーと連携をとれているかによって難易度が段違いなのだけれど。

 

 

そう、段違いなのだ。

 

爆豪勝己という人物を一言で表すなら傑物、あるいは天才だ。

それは勉強がとか運動神経がとか絵や音楽などの芸術面がとか、そういう一面だけのものではない。彼は、かっちゃんと僕が幼い頃に呼んでいた幼馴染は、全てにおいて正に天賦の才を持っていた。

勉強ならば、1を聞いて10を知り、運動ならば優れた反射神経と生まれながらのタフネスを兼ね備えた短・長期戦双方に隙もなく、センスが大事とされる芸術面ですら見ればなんとなくできてしまうという才能の塊。

 

もちろん、人が見てないところで努力もしていただろう。親の適切な教育や塾などの利用、そして恵まれた個性という類まれな環境と肉体を保有した彼は正に天才の一言を表すに足る能力を持つ人物である。

 

それが、緑谷出久が幼い頃から感じ、少年期で超えられなかったことから知りえた世界の理不尽。人が平等なのだという綺麗事などありえないという理不尽で、しかし当たり前の現実。

 

 

だから言おう。緑谷出久は才能において決して爆豪勝己に勝てない。

 

そして、だからこそ言おう。だからどうしたと。

 

戦況は単純だった。というのも戦闘開始直後に、相手チームのウチの一人がおそらく核があるであろう二人いた部屋から飛び出していったからである。それを知ることができたのは索敵能力に非常に長けたパートナー、耳郎さんのおかげだ。彼女は開始してすぐに両耳のプラグを壁に突き刺し、相手の位置状況を僕に伝えてくれた。つまりは情報戦という舞台に関しては完全にこちらが優位に立ったといっていい。

そして戦闘訓練の舞台となった廃墟の階段の始まり、そこの2メートル上空に彼は来た。爆破の威力で確保した高さという純粋な手が届かない位置からの奇襲を行う。それを聴いていて把握していた彼女の進言通りに。

 

来るタイミングも場所もわかっているなら対処など簡単だった。閉所で使いづらい槍という長物も、相手が来る場所がわかっているなら関係ない。得物である槍を右手に握りしめ、踏みしめた足は当然その勢いを体全体の駆動へと変え、それに更に強い踏み込みから得た力が臍を支点に回転させることでさらに勢いを増し、片手の直突きとなった、避けられればこれ以上ないほど隙をさらすが、単純な点の動きとしては3指に入る威力を誇る一撃が、耳郎さんが教えてくれたタイミングに合わせて炸裂した。

 

本物であれば、たとえ異形型であろうとも胴体を貫いたであろう会心の刺突は、しかし石突を前にしたことにより、ただの打突へと変わる。だがそれでも十分。狙いは鳩尾。

我慢しようがタフネスだろうが関係なく、胃の中身をぶちまけてもだえ動きを制限するに足る手ごたえを感じ、同時に槍を肘の動きで引き寄せ、手首の動きで90度ひねりながら、左手を右手の前へ持ち替え、左手を上から体躯に引き寄せ、右手の平を空へ持ち上げるような動きを持って、刃(もちろん刃引きしてある)の横っ腹を用いて、腹を撃たれくの字に折れた相手のガラ空きの顎を跳ね上げる。

 

それだけで、タフネスを賞賛された少年の意識は沈んだ。

 

腹部及び胸部の打撃による呼吸の乱れ、痛み、それに加えて顎を打ち抜かれたことによる上下の激しい脳震盪。

 

タフネスがどうのという以前の問題として、まともな人体であるならば意識を刈り取るには十分すぎる連撃。

 

もちろん自分一人で為したわけではない。これはチーム戦。ただ単に僕の相方である耳郎さんの索敵能力が優秀で、そして目の前に意識を失って崩れ落ち、今捕獲テープを巻かれ爆豪が今まで純粋な個性ありきでの戦闘での敗北を知らな過ぎたから起きた瞬殺。

 

かつて憧れすら抱いた少年は、ただ自分の才能のままに成長して、3秒待たずして終わる阿呆になってしまったと、これはそれだけの話である。

 

それに一瞬寂しさを覚えた。きっと僕が四季とあったような出会いがあれば、彼の傲慢な性格を打ち崩すような何かがあれば、こんな簡単に負けるような醜態を犯すような人ではないのだ彼は。

 

けれど、今はこれが現実。過去に憧れさえ覚えた彼は今は既に確保された敵でしかない。

 

だから進まないと。僕は耳郎さんに上にいこうと言ってその場を後にした。

 

戦闘訓練の結果など聞くまでもないだろう。

相手が優秀でも2対1で、確保さえすればこちらの勝ちになるという簡単な条件で、単純なリーチにおいては僕ら4人の中で最長である耳郎さんがいて、その上自分が動きやすいように障害物をどけてくれたヴィランが相手。自分が動きやすいということは相手である僕も動きやすいということで、ならば長槍さえなければ、近距離での戦闘において個性を発動させれば速度と小回りで勝る僕が飯田君を抑えることが難しいはずもない。

結果としてだが、僕と耳郎さんは負ける要素などありえない状況を相手が作ってくれたという、あまりに間抜けな隙をつくことで、初めての戦闘試験は既に終わっていた。あまりにあっさりとこちらの思惑通りに。

 

昔から、彼は粗暴で、いじめっ子で、無個性を馬鹿にするような奴だったけれど、それでも僕の憧れるものを全て持っていた君は、僕の人生で一番身近なヒーローの卵だったんだよ…かっちゃん…。

 

 

気持ちを切り替えてくれるかのように、僕らの勝ちをオールマイトが宣言してくれた。

そう、昔の憧れや感傷に浸っている余裕なんて僕にはないんだ。

なんせ僕はまだヒーロー目指して走っている卵に過ぎない。だから、先に行く。もっと先にいる彼を追い越すために。

 

だから、さようなら、かっちゃん。また競い合える、僕の憧れになるようなヒーローになるように願っているよ爆豪勝己。

 

僕の心に一抹の寂しさを残しながら、僕は最初のヒーロー基礎学のバトルを勝利という形で閉じた。さあ、次は四季の番だ。相手はできない分、しっかりと研究させてもらうよ二人とも。

 




拙い小説を読んでくださる皆さま、誠にありがとうございます。


おい主人公戦ってないじゃねぇかという読者の皆様、確かにその通り戦闘は行っておりません。ただ物理的な争いのみが闘争ではありません。

料理という、人類が為しえた立派な文化の極みの一つの良し悪しを決めるのも立派な戦いでございます。

決して轟と主人公の対決どうしよ、まとまんねぇよ。という作者の逃げでないことはここに明記しておきます。

次はガチ戦闘回でですよ?あと出久君のパートナーはお茶子ちゃんじゃないのかよというツッコミは受け付けます。実は出久君のパートナーは決まっておりません。
故に今までも一緒の描写は少ないです。その辺りは、まぁおいおい考えたり、優柔不断な私が判断できなければ再度アンケートをとって皆さまの意見を聴ければと思います。

それでは、今後こそ11月に更新しますので。また次回。





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