いつかは終わるヒーローたちのアカデミア 作:Agateram
戦闘の考察と傍から見た二人の戦闘の感想
それとその結果が少し書かれただけの短い話となります。
次回は日常回。少し休んでUSJ編にいきます。
「終わった、のか?」
戦況を画面越しに見ていた生徒たちの誰かがそう言った。
桁違いの規模の戦闘。純度が違う技術の攻防。そして彼らの関係を知らなければわからない叫びという本音の言い合い。最後は
総じていえば、コレは見本になるような戦いではない。
とても入試一位と推薦入学者の戦闘訓練ではないだろう。
だが、意味はあった。
轟少年は確かに前に進めたのだと、これから前に進んでいくのだと確信を持てた。
何故なら彼は笑っていた。忌み嫌った炎を出す時も、最後の一撃を繰り出す時も、そして今も、安心したように眠っている。
切り裂かれたのは彼が起こした爆風と彼の衣類のみ。何かに斬られた衣類の中から見える轟少年の肌には傷一つない。ただ眠っているだけに見える。
間違いなく致命に届く傷はないだろう。
(「大丈夫ですオールマイト。誰も死なないし、傷つきませんよ。なんせ、ここには、俺がいます。」、か。確かにその通りになったな彼岸少年。君がいるならば周りは傷つかない。ただ、傷つくのが君自身というのはいただけないが)
「ヒーロー側轟焦凍、意識消失。よってヴィラン側、彼岸四季の勝利とする。あと大きなケガはないようだから皆は安心していいよ」
私がそういうと皆緊張した面持ちからホッと息をついた。
「私は二人を迎えに行ってこよう。その間に……そうだね。緑谷少年、先ほどの試合の解説を頼めるかな?」
「わかりました。四季をお願いします。たぶん、使い切ってますから」
「なるほど。では二人とも保健室行きだな。10分で戻るよ」
さて、問題児二人を回収して、授業に戻ってくるとしよう。
体の調子は過去5年間で最高に良い。これならば授業内にこの姿の継続時間の心配もないななどと、その問題児の片方のおかげで保たれている体の健康にわずかに苦笑しながら二人の元へ向かった。
「それで、どういうことなの緑谷」
口火を切ったのは耳郎さんだ。模擬戦の様子から四季を心配していたから早くとこちらをせかすように説明を催促してくる。
とはいってもどこまで言ったものかなぁ。
「とりあえずさっきオールマイトが言ったみたいに轟くんに大きな外傷はないよ。」
「ですが、最後彼岸さんがした何かは、轟さんの爆風を切り裂いて、轟さんも服が切れたように視えましたが」
「僕も全部はわからないけど…。四季は『春夏秋冬』の言葉の通り、生命力という力をおよそ四つに分類して使うことができる。『春』は自分の力を与える施しによる癒し、『夏』は生命力を活性化させて消費量を増やすことによる一時的な増強。そして今回使ったのは多分、『秋』の特性……だと思うけど。」
「思うけど?なんかあるの?」
「うん……。これって四季のまだ明かしていない個性を勝手に言っちゃうからなぁ……、まぁ見せたからにはいいってことかな。」
僕は少し悩んだ後、四季の個性と特性の一つについて説明をする。
「『秋』は基本的に休眠。自分の傷を癒したり、命を保護するために本能的に発動する強制休眠モードのことなんだ。」
「傷を癒すって、あいつは『春』っての特性で傷を癒せるんだろ?」
先ほどの模擬戦で外傷を治してもらった尾白君から意見があったように、彼は傷は癒せる。けれど、違うんだよ。
「四季が癒せるのは、自分以外の人の傷だけだよ。自分の生命力を分け与えることで相手の生命力を活性させて癒すんだ。だから、自分で自分の傷は治せない。そして戦闘にせよ治療にせよ、四季は生命力っていうなくなれば命がなくなることに直結した個性だから、そこでなくなる前に自動的に働くのが強制睡眠状態。周囲の自然から少しずつ力を分けてもらうみたいな感覚で、治癒力や体力を回復させるのが本来の使い方だって。」
そうでもしない干乾びるって四季は言っていた。
多分、文字通りの意味だろう。
「あとは応用でその分けてもらった自然の恵みを形にすることができるって言っていたから、たぶんあの場所で、カメラには映らない何かを出してたんじゃないかな。」
そう、四季の個性である『春夏秋冬』はその生命力を高めれば視認できる。
ただし、それは生物のみの話だ。
科学が進歩し、多くのことがボタン一つでできるようになった時代。それこそこのクラスでも携帯電話などの電子機器を使ったことがない人はいないだろう。
そうしたものには大抵、録画あるいはカメラ機能がついている。しかし、四季の個性の源である生命力が映ったことはない。
命あるものの目にしか映らない謎の光、あるいは水や炎といった命をとりまく何か。
それに干渉することが四季の個性なのだ。
ゆえに生命力と言っている四季の個性は人の目には見えるが機械の目には映らないし、感じ取れない。けれど確かにそこに力がある。
だからこそ、画面越しでは四季の戦いは肉弾戦以外は何をしたのかわからないのだ。
「その何かが……多分四季の構え的には剣かな。それで爆風を切ったんだと思う。」
「けどそれでは何故轟さんは服だけ斬られたのですか?爆風や服だけ斬れたのに、その体には傷一つありませんでした。それなのにそのまま眠って……眠り……『秋』の特性は休眠、爆風や服、つまりは無機物には干渉しても、人の体には傷をつけない…能力の複合ですか?」
流石は推薦入学者の八百万さん、頭の回転は速い。
「多分そうだと思う。爆風を切り裂いたのは『秋』でかたどったモノに乗せた『夏』のエネルギー、けれどそれは誰かを癒したり眠らせたりする『生命力』と根源は同じ。
つまり、あの時四季が使ったのは無機物は破壊し、生命ある者だけを眠らせる。そんな無茶をしたんじゃないかな」
使った技巧こそ凄いが、見本になるようなものではないだろう。なんせ四季にしか使えないしカメラで認識できない、機械で確認できない力の使い方だ。
「滅茶苦茶ばかりだね今年の主席は」
どこか呆れたように、それでもケガをさせずに相手を倒したことに安堵した様子の耳郎さんが言って、皆もそれにうなづいた。確かにその一言に尽きると思う。
そういう意味でもこの試合は皆の手本になるようなものではなかったかもしれない。
そもそもが、互いに私情まみれだし。
「そうだね。まぁそもそも四季は勝とうが負けようがどっちでもよかったみたいだし、目的だけは達成したみたいだからいいんじゃないかな」
「目的? それは一体なんなのですか?」
八百万さんの問いに破顔する。彼の目的なんて徹頭徹尾決まっていた。
「もちろん、轟君が前に進もうっていう答えをだしたことだよ。
左を使わなかった轟君が左を使った。嫌っていた左を、自分の個性を認めた。
それをさせるために四季はわざと挑発して、怒らせて、試合も引き伸ばしてた。わざと相手が何も考えずに個性を使えるように屋内での戦いっていう前提を最初に破ってまで。
四季がしたのは余計なお世話だよ。でも四季っていつもそうなんだ。そうやって、誰も救えないなんて言いながら、誰かが救われるように走る。殴りながら、蹴りながら、それ以上に殴られながら、蹴られながら、自分がズタボロになりながら走っていく。余計なお世話をまき散らして疾走する大馬鹿。」
自分でも、ちょっとキモイくらい饒舌になってるなぁなんて、今更なことを考える。そりゃまぁ、僕ってヒーローオタクだし、押しの説明の時くらいは饒舌にもなる。
「それが彼岸四季。弱かった僕を殴ってくれた、僕に走らせる意思を教えてくれたヒーローだ。」
その日の夜、とある家族の母親が入院していた病室から3時間だけ外出許可をもらって、7年ぶりに家に帰った。
そこには母親と姉が作った料理を、旨いと言って豪快に食べる父親と、食いすぎだとおかずを取り合う兄を見ながら、嬉しそうに料理を口に運び、時折照れ臭そうに家族に話しかける、どこにでもいるような高校生が、家族と一緒に笑っていた。
どこにでもある、けれどどこにもなかった幸せな時間を確かに過ごす姿があった。
これはそんな光景のためだけに無茶をした、救えない男が望んだ救われた人たちの話だ。
いつも読んでくださる皆さま、誠にありがとうございます。
今作は原作改変で少しだけ轟家に優しい世界になっております。
もちろん私は初期のエンデヴァーが嫌いですし、父親としての彼も好きとは言いづらいす。でもこんな可能性ももしかしたら、あってもいいのではないかとも思うのです。
これからもこんなんヒロアカじゃなくない?という改変もあるかもしれませんが、お付き合い頂ければ幸いです。
では今後もよろしくお願いします。