いつかは終わるヒーローたちのアカデミア   作:Agateram

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さて、脳無戦、にはまだいきませんが、これから数話かけて1-A VS ヴィラン連合戦になります。

ところで、初期の黒脳無って弱点知ってないとホントクソゲーですよね。




第20話 ヴィラン強襲

雄英に来てから最初の休日を挟んだ次の日、ヒーロー基礎学の時間を受け持つ相澤先生は俺たちに告げる。

 

「今日のヒーロー基礎学だが、俺とオールマイトにもう1人加えての3人体制で行うことになった」

 

「はーい、今回は何をするんですか?」

 

「災害水難なんでもござれ人命救助訓練だ」

 

人命救助、それはヒーローの本懐だ。敵を倒すのは手段の一つ。

ヒーローとは人災だけでなく事故を防ぎ、時に天災すら相手どって人の命を助ける。

それがヒーローだ。故に皆のテンションが上がるのも無理はない。

 

「今回コスチュームの着用は自由。コスチュームによっては救助に不向きな物をつけている者もいるだろうからな。それと訓練場所はここから少し離れた場所だ、よって移動はバスでする。集合は今から15分後に本校舎の裏口に来い。連絡は以上だ。遅れるなよ」

 

 

 

 

 

「くっ、こういうタイプだったか!!」

 

訓練場行きのバス。その車の内装で頭を抱える飯田。

バスに乗り込む際、委員長としてスムースに乗れるように誘導したのは良いが、バスの座席が2人がけの前向きシートだけではなく、横向きのロングシートもある仕様だったからだ。別に無駄ではないが、まぁあえてそのまま乗る必要もないため、俺達はそれぞれ適当に座席に座った。まぁドンマイ飯田。お前の判断は正しいからそのまま頑張ってほしい。

 

 

 

訓練場までの移動時間は特に禁止されなかったので、俺たちは席が近くの者同士で会話を楽しんでいた。俺の隣は二人掛けの椅子の窓側に轟、椅子を通路を挟んで響香、爆豪と続いている。会話に参加しているのは爆豪以外の三人だが。

爆豪は先週の訓練以降、ずいぶんと大人しくなった。というよりは何かを考えているようにこちらや出久を凝視、あるいは睨んでいるのだが何も言ってこないのだ。いつもなら口を開いて罵詈雑言を言ってくるだろうが、さて、あの訓練が吉とでたか凶と出たか、あるいは狂と出てないか、アイツのこれからはその心一つで変わるだろう。良くも悪くもアレは天才の部類。うまくいけばそれこそトップヒーローになれる素質だけはあるのだから。

とはいえ出久と違って友でも何でもない、助けを求めるわけでもない奴にこれ以上何もいうことも俺からはない。あとはアイツ次第だろうから。

 

そんなことを考えながらふと俺たちの会話が途切れた時に、蛙吹と出久の会話が耳に入ってきた。

 

「私思った事を何でも言っちゃうの。緑谷ちゃん」

「え!? あ、うん。どうかしたの蛙吹さん」

「梅雨ちゃんと呼んで。あなたの“個性”オールマイトに似てる」

「たしかに同じ増強系だからね。オールマイトに似てるのは嬉しいけど、僕はオールマイトの足元にも及ばないよ。今はまだね」

「今は、まだと来たか。それはいずれは超えるでいいんだろうな出久?」

 

たまたま耳に入った面白い話題にバスの後方から俺が少し声をあげて出久に問う。すると出久は薄く笑って、たぶん知っているくせになんて考えながら声を上げた。

 

「もちろん、そのつもり。無個性で過ごした14年で培った全てをまだ使えきれてないけど、いずれは個性も技術も全て練り上げて超えてみせるよ」

「おお!すげぇな緑谷。なかなか口にできねぇぞそんなこと」

 

だろうな。けれどそうしないならば出久はオールマイトの個性を継いだ価値がない。

少なくとも出久はそう考えている。何故ならオールマイトの個性を継ぐなら誰か別の個性持ちの方が理屈では単純に強力になったはずだからだ。

それでも、オールマイトは個性の譲渡先を緑谷出久に選んだ。そして緑谷出久はそれにさらに試験を設けて、それを乗り越え、勝ち取った。

ならば、出久は行かなくてはならない。オールマイトでも届かなかったその先に。

それがどんなものかはわからない。けれど必ずそんなヒーローになると既に出久の覚悟は決まっている。

 

だから、俺も覚悟を決めている。

そんなことを考えている間にも会話は進む。

 

「そういえば個性把握テストの時に個性が発現してまだ一ヶ月って言ってたけど、本当なの?」

「うん。この個性は他の増強型よりもちょっと特殊で自分の体の耐久値以上の力が出てしまうみたいなんだ。だから体がある程度出来上がるまで発現しないように、脳がリミッターをかけていたみたいなんだ。実際発現してすぐはコントロールが効かなくて随分骨を折ったし、もしも体が出来上がっていない子どもの時に発現していたら……最悪今頃は両手足が動かなくなるくらいのひどい状態になってたかもしれないね」

 

うわぁなんてちょっと引いた声がバスから上がった。まぁ確かに個性の暴走で自分や誰かを害する所謂『個性事故』ってのは実は毎日のようにどこかで起きている。その上個性とは十人十色。基本個性は遺伝によって似たものが発現するが、複合したり、特殊変化したり、あるいは無個性から新たに発現したりと、その全貌は全ては解明されていない。

 

「でも、発現して一ヶ月であれだけ使いこなすなんて凄い才能ですわね」

「確かになぁ。才能マンが多いぜここは」

「出久に関しては、個性を制御できるようになったのも発動できるようになったのも一重に努力の成果だ。出久は俺とあってから片時も休むことなく鍛錬を続けてきた。

その努力を人生を、才能の一言で片づけてくれるなよ上鳴?」

 

そう、その発言だけはいただけない。

 

「お前にできるか?無個性と言われて、それでも諦めずに人生懸けられたか?

無個性だから無理と誰から言われても、皆から馬鹿にされても、それこそミルコやオールマイトのようなトップクラスのヒーロー達から言われても、その大馬鹿野郎はそれでも諦めなかったぞ。俺が出久を信頼しているのは、その意志だ。もはや何者でも揺るがせない頑固さ、折れようが何度でも立ち上がる不屈さ、その馬鹿さ加減が、コイツの全ての原点だ。たとえ無個性のままでも緑谷出久は、ヒーローになれるだけの人間だった。個性はそれに応えただけだ。」

 

一息に言いきって、皆ゴクリとつばを飲み込んだのがわかった。

ここにいるのは個性に恵まれた。全員とは言わないが少なくとも大半はそうだ。

だから、わからないだろう。自身にある当たり前の個性がない人間の狂気など。

そしてだからこそ伝わったのだろう。それを為した出久の在り方が。

とはいえ、他の皆がヒーローにふさわしくないわけではない。

 

「まぁ。こいつの話はこのくらいでいいだろう。それに、お前たちだってヒーローを目指したんだ。それこそ血のにじむような努力くらいは大なり小なり詰んできただろ? 俺は生命力に干渉する個性の関係上、お前たちが放つ『色彩』がいろんな形で見えるがほとんど皆良い光が見えるぞ?もちろんお前もな上鳴」

「おお……それはそれでちょいはずいな。でもサンキュ」

 

そう、このクラスはほとんど皆がヒーローになれるような光を持っている。

良いクラスに当たったものだ。雄英の300倍の倍率の試験を突破しようと心根が腐っていたら何の意味もないのだから。

 

「でもさ、増強型のシンプルだけど派手で出来る事が多いのがいいよな。俺の『硬化』は対人じゃ強ぇけど、いかんせん地味なんだよなー」

「僕は凄くカッコいいと思うよ。プロにも十分通用すると思う。」

「おう、ありがとな緑谷。でもよぉやっぱヒーローも人気商売みてぇなとこあるだろ?」

「そういうなら人気でそうな個性、目立つ個性といえば、緑谷や彼岸、轟、爆豪あたりが派手かな?」

「残念だが、俺の個性はカメラには映らない。ただの増強率だけなら出久が上だし、あまり目立つとは言い難いかな。それに目立つ気もない。それよりは他の三人の方が対外的には目立ちやすいだろう」

「でも爆豪ちゃんはキレてばっかだから、人気はあまり出なさそうね」

「んだとコラ! 出すわ!!」

「ホラ」

 

蛙吹梅雨、なかなかに鋭い指摘してくるな。というかなんだ。どうにもこの少女、妙に達観しているというか冷静で肝がすわっている。正直他の連中より年上じゃないかと思うくらいだ。

 

「この付き合いの浅さで既に、クソを下水で煮込んだような性格と認識されるって、すげぇよ」

「テメェのそのボキャブラリーは何だコラ!ぶっ殺すぞ!」

 

……やっぱり、一夕一朝では人は変わらないか。何かこいつに直接変化をもたらす存在があれば違うだろうが。

 

「そろそろ着くぞ。はしゃぐのはいいが、その調子で訓練も受けるようなら覚悟しとけよ」

 

流石は相澤先生。初日に除籍とか言ってくるだけはある。その威圧を含めた一言は喧騒を止めるには十分だった。

 

そして、訓練が始まる。

 

生涯俺たちが忘れることがない、初めての人命救助訓練にして、初の実践が。

 

 

 

 

 

「ようこそ1-Aの皆さん、待ってましたよ」

 

訓練場らしきドーム型の建物の前でバスから降りた俺たちを迎えてくれたのは、宇宙服のようなコスチュームを着込んだスペースヒーロー、13号。

ブラックホールという何でも吸い込み壊すという強力な個性を持ちながら、戦闘行為ではなく、災害救助などで人のみを吸い上げるという器用な使い方を用いている有名なヒーローだ。優しい個性の使い方だと思う。そこは本当に尊敬できるヒーローだ。

そんなヒーロー13号の案内で建物の中へと入ると、炎が燃え盛っているビル群、崖、でかい池や、小さなドームがいくつかあったりと、エリアごとに分割されたテーマパークのような作りの様々な状況を人工的に作り出した場所だった。

 

ここまでの規模の施設がポンと用意されているとは、ホントここはスケールが違う。

 

「水難事故、土砂災害、火災、暴風、そのほかにもありとあらゆる事故や災害を想定し、僕が作ってもらった演習場です。その名もウソの災害や事故ルーム!略してUSJ!!」

 

大丈夫だろうかその名称。何がとは言わないが、その、世界規模で有名なテーマパークと略称が同じなのだが。いや、ここは国立。ならば合法、なのだろう。まぁ気にしないほうがいい。大事なのは中身だ。

 

…おや、オールマイトがいないが、もしかしてあの人活動時間使い切ったりしてないだろうな。言ってくれれば回復したのだが。

 

何か、あの人が自動的に回復するような手段でも模索すべきか。前の『夏』と『秋』の個性の複合した大剣のように、『春』の癒しを『秋』の個性で形づくるとかできれば、最前線のヒーローの傷をすぐに治せるような携帯治療薬のようなものができる……かもしれん。かなり難易度は高そうだが。

 

「さて、私語は慎め、オールマイトは遅れてくるそうだから進めるぞ、13号からの説明を聞け」 

『はい』

 

USJの規模に騒いでいた生徒たちが注意を受け、視線を13号へと戻す。

 

「えーそれでは訓練を始める前にお小言を一つ、二つ……三つ……四つ…くらいかな。

ご存知でしょうが僕の個性は『ブラックホール』。全てを塵にする事ができ、災害現場ではそれで瓦礫を砕き救助活動をしています。……ですがそれと同時に『簡単に人を殺せる』個性です。」

 

いきなり踏み込んできたな13号先生。いや遅かれ早かれその事実には皆気づく。というよりも本当は既に気づいているはずだ。自分たちの個性が簡単に人を殺せることを。だから法で許可された人しか個性の使用は許されていない。当然すぎて忘れがちだが、俺たちはみんな目に見えない凶器をもって向き合っているのだ。

 

「皆さんの中にもそんな力を持つ人もいることでしょう。今の世の中は個性の使用を法律で規制し、しっかりと成り立っているように見えてはいますが、皆さんが将来個性を使う際、あるいはこれからの訓練の際にも一歩間違えれば、その力が簡単に命を奪えることを忘れないで下さい。」

 

流石は雄英高校の教師。押さえるべきところはしっかりしている。

 

「この授業では、そんな個性を、人の命を救うためにどのように活用するかを学んでいきましょう。君達の力は人を傷つける為ではなく救う為にあるのだと、心得てください。以上です! ご清聴ありがとうございました」

 

話し終えて一礼する13号先生に拍手する俺達。最初の手ごたえとしては十分だろう。

皆、話を聞く前とは顔つきが違う。話に感動するもの、気を引き締めるものなど様々だが、これならいい訓練ができるだろう。

 

とはいえ、救う為にあるか。

13号先生、尊敬すべきヒーローである貴方の言葉ですが、それは、俺にも当てはまるのでしょうか?

 

そんな感傷を抱いていたときに、吐き気がするような感覚に襲われた。

何かが、いる。

 

視線を先生たちのはるか先、噴水がある広場へと向ける。そこに、黒いモヤがあった。いや霧、のようなものだろうか。そこから、目にしたくもない『色彩』が既に見えている。

 

なんだ、アレは。なんだアレは!『ごちゃまぜ』じゃないか。

 

 

「焦凍!あの黒いモヤに氷結をぶっ放せ!」

「は?いきなり何を」

「ヴィランだ!!それも、人を笑いながら殺せるようなとびっきりの屑だ」

 

個性が認識し、直感が叫ぶ。

アレは、そしてあの先にいるのは間違いなく、今のこいつ等に見せてはダメなモノだ。

 

だが、その判断も既に遅かった。

黒い靄は大きさを増し、靄の中からぞろぞろと様々な異形、凶器をもった連中が現れたのだ。あの数を、こんな簡単に雄英敷地内に転送できる『個性』なんて希少も希少。それこそ国家が指定管理するほどのものだろう。

 

そんな凄い個性を使って出てくる連中がただの人命救助のためのエキストラなはずがない。当然、それを見た瞬間相澤先生の表情と雰囲気が一瞬で変わった。間違いなく臨戦態勢。

 

「1-A総員、一塊になってうごくな!!13号、生徒を守れ!」

 

「せ、先生、一体何が!?」

 

飯田が混乱する皆の意見を代表するように問うが、既に戦闘態勢に入った相澤先生はそちらを見ることなく言い切った。

 

「今、彼岸が言っただろう。ヴィランだ。それも雄英に潜入できる程度の力と、馬鹿な考えをもった、明確な敵だ」

 

 

 

 

慌てるこちらをゆっくり見やるように、ヴィランたちの中心にいる全身に手首から先の『手』をつけた姿かたちからイカれているとわかる奴と目があった、気がした。

 

ああ、嫌な眼をしている。まるで ———— のような、そんな眼だ。

 

これが、最初の戦い。

 

これから幾度となく戦うことになる、ヴィラン連合、その中心『死柄木 弔』との最初の邂逅だった。

 

 




というわけで、漸くヴィラン戦までこぎつけました。
まさか20話書いてまだこことは。

この調子だと終わらせるのに150話くらいはかかりますね。
…ペースはこれ以上あげられないので、テンポあげていきますね。多分!!

またありがたいことにお気に入りにしてくれた方がいつの間にか145件となっていました。
いつも読んでくださる方、初めて読まれた方、誠にありがとうございます。

今後もよろしくお願いします。
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