いつかは終わるヒーローたちのアカデミア   作:Agateram

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先手をとるのは大事です。
相手に次の行動を制限させることができます。

でもそれって、相手がこちらよりも大きな手を持って余裕こいていた場合に限っては、かえって自分たちの首を絞めることにもなりますよね?




第21話 ヴィラン強襲②

雄英高校が誇る災害救助の訓練施設、通称USJの中央広場。

本来ならそこで行われるのは最初の人命救助という、今までの訓練からすれば地味な、しかし重要な訓練が行われるはずであった。

だがそれが今日行われることはもうないだろう。

何故なら、ここに現れたのはこちらを殺そうとする、明確な敵。

それを目にした生徒はほとんどが動揺した。

それはそうだ。ただの授業のはずが、いつの間にか目に映るだけでもこちらの人数を上回るほどのヴィランが出てきて、命を奪われるかもしれない戦場になり果てた。

その上雄英の誇るバリアを乗り越えてきた希少個性、雄英のセンサーなどが反応してない、そして教師の無線や上鳴のコスチュームなどの連絡手段が通じないことから、外部との連絡は絶たれた状況。正に陸の孤島といったところか。

 

そしてそんな即座の救援が望めない状況では、実践を初めて経験する新兵のように、初めて命の危険にさらされた一般人のように、普通は覚悟を決めるのに時間がかかり、その前に殺される。

 

だから、覚悟を決めるためにも、そして逃走するためにも、とにかく時間が必要だ。

 

 

そのために有効な手段は、既に覚悟が決まっている者が相手の出鼻を挫くこと。

 

 

「相澤先生、相手は大抵屑ですが数が多い。一番奥にいる三人…特にあの黒い脳丸出しのヴィランはオールマイトクラスじゃないとどうにもできない化け物です。初手で焦凍の広域殲滅、その後に俺が脳ヴィランを相手に時間を稼ぎます。先生が相手の首領らしい手だらけヴィランと転移できるモヤヴィランを殲滅、なおかつその間に他の皆の逃走を13号先生に誘導してもらうことを提案します」

 

「ダメだ。情報はありがたいが、ここは逃走を優先する。」

 

合理主義者、かと思ったが、やはりヒーロー。そう簡単に生徒の命はさらさない、か。

見事な覚悟だが、それでも無謀だ。少なくともあの脳ミソ野郎だけはなんとかしないと。

「と、言いたいところだが、お前の情報の確度は無視できん。

だが轟の氷結を使うと足場が安定しない。だから他の広範囲攻撃で一気に雑魚を殲滅する。できるな轟、緑谷、彼岸」

 

前言撤回、流石は経験豊富なヒーローだ。

 

「「「もちろんいけます」」」

「よし!ヒーローイレイザーヘッドの名において、対人の個性使用を許可する!行け!」

 

担任の気合の入った声に、体が滾る。

まだあちらは違法行為はしていても、こちらに明確な敵対行為、あるいは殺傷を行っていない。それに個性を使うということは、たとえ個性の使用が許される施設内であっても簡単に許されはしない。だがヒーロー名に置いての許可があれば、それはイレイザーヘッドがそうなるという危険を認め、そしてその責任を自身が負うと宣言したということだ。

それはつまり、それだけの信用を出会って一週間と少しの俺たち若輩者に預けてくれたということ。ならばそれに応えなければヒーローの卵ですらない。

 

「初手、出久!まずは相手の足を一瞬でいいから止めてくれ!」

「了解!」

 

発言と同時、出久が装備しているベルトホルダーの内の一つから20cmほどの筒を空に投げ、同時に本人も飛ぶ。

ならば次に来る技は理解している。だから出久への指示は必要ない。

 

「轟、俺たちは下に飛び降りるぞ。俺が先に降りるから着地と相手の迎撃は任せろ。お前は着地と同時にぶっ放せ!殺さない程度にな」

「難しいこと言いやがって!やってやるよ!」

 

俺に続いて広場に飛び降りる轟。迷いがない。そして、今は以前にあった拘りもないのが、その左で調整しているであろう炎でわかる。

 

同時に出久の声が上空から響く。

それは俺たちへの合図にして、本人がコスチュームに依頼した装備を使う際の声紋認証。その名を

 

「蹴り穿つ微睡の槍!!」

 

天上から降り注ぐの釘サイズの極小の槍の雨。

1つ1つに即効性の催眠作用がある薬を塗ってあり、底を蹴る威力によって飛び出る勢いが変わる、多数の敵を一気に戦闘不能、あるいはその出足を挫くための出久のヒーローアイテムの一つ。

 

実践は初使用だが、その威力と範囲は知っている。訓練では何度も使ってきたからだ。

オールマイトの管理と投資の元、既にコスチュームでの戦闘も経験済みだからだ。

 

故に既に眼下のヴィランたちの多くが降り注ぐ小さな凶弾を前に立ち尽くすしかないのを確認している。

 

大抵の相手は上空からの明らかな脅威に動きを止めて腕で頭を覆うようなあまり意味のない防御姿勢をとり、動きを止める。慣れた敵はかわそうとするか、迎撃を試みる。どちらにせよ、俺たちへの遠距離攻撃をするような敵は皆無。

 

敵の練度はこの初撃で知れた。奥の三人以外は大した脅威ではない。

殺した経験はあるかもしれんが、戦闘の経験は薄い。

 

それを確認すると同時に俺の真上に落ちてきた焦凍を左手でキャッチ、&再度斜め上にリリース。

 

「ぶっ放せ焦凍!」

「わかっている!加減しづらいから死なないようにしろよお前等!!」

 

台詞と同時に放たれるのは広範囲の炎撃! その温度は焦凍の中では低温だろうが常人には十分な脅威。炎にまみれた相手は火を消すように転げまわり、その間に出久が放った槍からの催眠作用の薬が効いてくるか、表面の火傷の痛みで戦意を挫かれ、そのほとんどが戦闘行為不能に追い込まれている。

 

そして、ダメ押しの一手。

 

「『大いなる星の息吹。秋の恵みをここに譲り受ける。眠りにいざないし汝の名は竪琴也』」

 

秋の休眠の力を集め、形を成すのは弓に近い形状をしたハープ、あるいはライアーなどと呼ばれる原初に近い竪琴。そこから奏で、流れるのはただの音だけではない。周囲に響く優しい音にのせた『色』は薄い赤褐色。聞こえる者を眠りへと誘う生命力の波動。音色ならぬ寝色、といったところか。

 

「えぐいなそれ。強制的な催眠作用か?」

「何言っている。これはあくまで、恵み。安らぎを与えただけだ。起きたころには今よりは多少痛みがなくなったりしているだろうからむしろ感謝してほしいくらいだ。」

 

無論、その変わりに手には手錠なり個性使用を不能にするメイデンなりで体がまともに動かせないだろうけど。

もっともこの技の威力は弱々しいため俺以外にはただの音にしか感じられない。眠りへと誘うという伝承をもつセイレーンの歌のように、ただ聞くだけで心身に作用し、心が動転している者や休みが必要と体と脳が判断した者をより強く眠りへと誘う。

つまりは正常な状態な者には大した効果はない。

だが催眠効果のある毒をくらっている者、火傷を負うなどのケガで休養が必要だと本能が判断した者にはよく効く。

 

つまるところ、目の前のヴィラン、というのもおこがましいようなヴィランもどきが眠るのは出久と焦凍のせいであって、俺はただの最後に指でちょっと押しただけに過ぎない。

まあ大事なのは、今目の前のヴィランの大半はこれで戦闘不能という事実だ。

 

初手はこれでいい。あとは、奥の三人に集中できる。

出久の小槍の雨も、焦凍の炎も簡単に防いだ脳ミソむき出しの敵。そしてその後ろで何のダメージもない黒い霧と手だらけの男。

 

やはり、あいつらだけが、確実に別格だ。

さて、どうするか。まともには当たりたくはないが。

 

「よくやった、お前等。後は避難に専念しろ。」

 

状況を分析している間に相澤先生が俺たち二人の前に躍り出た。

 

「先生!いやイレイザーヘッド!こんな雑魚はどうでもいいんです。重要なのは奥の三人。特にあの真っ黒な脳ミソ野郎です。まともにやりあえる相手じゃありません。」

 

「それはさっき聞いた。だからお前たちが注意をひいてくれている間に今飯田を校舎に助けを求めるように指示を出した。あいつの速度なら10分もせずにオールマイトが救援に来る。それから他の雄英教師陣もな。それくらいの時間なら」

続く台詞は、紡がれなかった。

 

気づいた時には、既に脳ミソヴィランが俺たちの前方に出現していたからだ。転移じゃない。ただの一蹴り。ただの一歩で100m以上の距離を無にした。次の一歩で間違いなく、俺たちの誰かが死ぬ。

 

それほどの圧を感じ、同時にありったけの生命力を脚に乗せて瞬間の最大出力で遮二無二に相澤先生の目の前に蹴りを放つ。

一瞬、を超えるような感覚で感じたことのない手ごたえ、否足ごたえを得た。全力で蹴りこんだのは得意技の一つであるかかと落とし。義姉のルミさん仕込みの踵半月輪(ルナアーク)。それは間違いなく、幸運にもヴィランの右鎖骨、もっとも脆い骨の一つにヒットしていた。しかし、そこに感じるのはマシュマロを手で押したような柔らかい感触しかない。

 

そして、最悪なことに相手はこちらのカウンター気味で入った蹴りなどなかったかのように腕を大きく後方へと振りかぶった態勢を崩していない。

右拳をそのまま後ろに引いただけの態勢、次に来るのはただのアッパー、否、ただ下から上へと薙ぎ払うだけの一振りだ。アッパーなどとも言えないただの腕だけの一振り。

そのただのテレフォンパンチ一つでこちらが死ぬとわかった。

 

『色彩』を見る暇もない、瞬間的とはいえ最高状態の身体強化でさえ目に負えない速度で次の一打が来る。

 

まともに受ければ死あるのみ。かといってこちらは相手に脚を乗せている状態、避ける余裕はない。それに避ければ後ろの二人に危害が及ぶのはこいつの踏み込みの速度を考えれば当然思い至る。

それ故に踵落としを放った脚を体ごと前に倒すことにより、鎖骨より外れ、再び勢いをつけ、体重とありったけの生命力を瞬間的に開放した一撃で相手のパンチを迎え撃った。

 

刹那で、一度俺の意識は途切れた。

 

次に気づいたのは、噴水のある広場ではなく、崖が特徴の山岳エリア。

そして倒れこんでいる俺を守るようにしている三つの人影。

 

「四季!気がついた!?大丈夫!?」

「大丈夫ですか彼岸さん。すみませんが、ヴィランに囲まれているので応急処置しかできていませんの。動けますか?」

「彼岸!?よかった。今すっげぇヤバいんだ。クラスの皆がどっかに飛ばされた。ここは俺達だけだ。起きられるか?」

 

こちらを心配する三人、響香、八百万、上鳴の三人。

周囲を囲んでいるのは見覚えのない大人たちだが、一様にこちらに獲物を見るような、いやただの餌を見るような瞳で見ている。

 

それで現状を把握した。俺はあの一撃に押し負け、意識を失ったばかりか、他のクラスメイトもおそらくあの黒いモヤのヴィランによって散り散りにされているという、最悪の一歩手前の状況だということを。

 

 




NEW

緑谷 出久
技「蹴り穿つ微睡の槍(けりうがつ、まどろみのやり)」
戦闘服に備え付けの対多数用のアイテムを蹴った衝撃で無数の小型の槍を散弾銃のように放つ技。小型の槍は貫通性はほとんどない。その代わりに中央に仕込まれた薬剤がヒットと共に相手に瞬時に流し込まれ、意識を奪う。どちらかというと注射器に近いが見た目は出久の使っている槍とほぼ同じ形状。
つまり、ただFGOの水着スカサハ師匠の技をリスペクトしただけの一品です!

知らない人は申し訳ないですが想像力がYO〇 TU〇Eで補ってほしいです。
描写不足で申し訳ございません。

後、現在原作より雑魚キャラを一気にやってしまったから難易度がハード(主に相澤先生)になった状態です。うん。まぁ脳無のハイスペックが悪い。




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