いつかは終わるヒーローたちのアカデミア   作:Agateram

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サブタイトルのネタが尽きたわけではありません。
無尽蔵です。嘘です。有限です。

そんな感じで前置きは置いといて本編をどうぞ。


第22話 ヴィラン強襲③

正直に言おう。

まだウチはこの状況についていけていない。

 

だって今日はただの登校日で、ただ救助訓練という名のヒーローになるための基礎学があるはずだけ、だったのだ。

それが蓋をあけてみればどうだ。クラシックコンサートにとびっきりの仮装とノリのデスメタルを投げ込まれたような怒涛の展開。正直わけがわからない。

 

いや、理由はわかっている。

あの黒霧とか名乗った転移の個性を持つヴィランが丁寧に教えてくれた。

 

オールマイトを殺す、そのために来たと。

 

そのために邪魔な生徒たちは適当に散らして嬲り殺す、本命が来るまでは時間をつぶすと相手の主犯格の手だらけのヴィランが言った、らしい。

 

正直、混乱の極みでそこまで詳細に思い出せない。

何故なら、先ほどの戦闘の結果が頭にこびりついて離れないからだ。

 

四季は、控えめに言ってこの1-A、いやヒーロー科の中でもおそらくトップクラスの能力を持つ生徒だ。それに加えて近接戦闘能力に至ってはその辺りのプロヒーローにだって負けないと思っている。ウチだけじゃなくて、おそらく皆がそうだ。

 

それが、ただの一撃でこの演習場の屋根まで吹き飛ばされた。

何が起こったのか、階下にいた彼らの行動を完全に把握してはいない。

ただ緑谷が遠距離攻撃をして、下に降りた彼岸と轟が大半のヴィランを戦闘不能にした。それまではわかっている。それから相澤先生が、避難指示と委員長へ外部との連絡を取るように言って下に降りた。

 

その後すぐに入試首席、クラスでもおそらく最強の部類にいれていいであろう四季が天井まで飛ばされた。いや、殴り飛ばされたのだ。

 

純粋な増強系の個性ではないとは本人は言っていたが、増強系、たとえば砂藤よりも瞬間的には明らかに強い出力を出し、委員長よりも速く動けるほどに近接に優れた四季が、一瞬で階下から20mは軽く超えるであろう天井まで吹き飛ばされた。

 

それは、私たち1-Aの皆の動きを止めるには十分すぎた。

一瞬で現れた黒霧と名乗ったヴィラン。オールマイトを殺すと言い放った自分たちの目的。

そして、私たちは邪魔だから、散らして嬲り殺すという冷酷な知らせ。

 

13号を含めて幾人かが抵抗していたが、正直ウチは落ちてきた四季をどうにか救助したヤオモモや梅雨ちゃん、緑谷たちと彼の息があることを確認するので精一杯だった。

 

そんな油断の間に氷の棟を作って黒霧と名乗った敵を後ろから奇襲した轟やヴィランに向かっていった爆豪が霧の中に吸い込まれ、気づけば1-Aのほとんど……相澤先生の指示を受けて救援を呼びに行く途中であった飯田も含めて黒い霧に飲まれてしまっていた。

 

 

気づいた場所は、山岳ゾーン。迎えたのは多数のヴィラン。

ああ、なるほど。ヴィランと言われて一般人と区別されるわけが漸くわかった気がする。

この人たちは、ウチ等をただの金づるか何かとしか思ってない。

人を自分と同じ人として見られなくなった人でなしの瞳。たしかにこんな眼では一般人とは呼ばないだろう。敵という身分がちょうどいい奴らばかりだ。

 

『散らして嬲り殺す』

 

ふとあの黒い霧のヴィランの言葉が蘇った。そして、先ほど見てしまった、友人の、四季の血だらけになった姿が脳裏から離れない。あの言葉に偽りはない。こいつらはただただ私たちを嬲り殺して楽しむためだけにいる。

 

背筋に冷たいものが通った気がした。

 

しくじれば、死ぬ。相手は敵。こちらよりも年上で人数も多い大人たち。

負ければ文字通り嬲り殺される。

 

殺意なんて、感じたことはない。けれど、その実体がここにいる。

 

———怖い。

 

初めての恐怖にひゅっと息を飲んだ。体縮こまったことがわかる。動けなくて、動こうとして、無意識に後ずさった。そして気づいた。

 

足元にいる存在に。

血だらけで転がっている、彼岸 四季に。

 

四季がここにいる。治療は途中までだったはずだ。

詳しい状態は素人目ではわからないけれど、天井まで吹き飛ばされたのだ。

浅い傷のはずはない。一刻も早い治療が必要だ。

 

そうだ。

ならば、縮こまっている場合じゃない!

そんなのはウチらしくない。ロックにいこう。クールに笑え。

 

ウチが目指したのはヒーローだ。たかがヴィランにビビッて友人を見殺しにする真似なんてしてたまるか。

 

拳を握ることで、覚悟を固める。個性『イヤホンジャック』をコスチュームに接続。臨戦態勢。ううん違う。もう戦闘は開始しているんだ。

プレゼントマイクも言っていた。実践で開始の合図なんてない。

なら、先手必勝!

 

「音量MAX! 爆音サウンドウェーブ!!」

 

自身の最大出力の大音波攻撃を相手に放つ!

 

「「「「「ぎゃあああああ」」」」」

 

倒せたのは、4,5人ってところだ。音は波形だから開けている場所だと周囲に拡散してしまう。それに指向性をあたえるのと音波をあげるためのスピーカー使用のコスチュームを使った一撃だったけど、まだ音波をうまく調整できてない。

 

当然だ。イヤホンを直接相手にあてて自分の心音を何倍にも上げて体内に響かせることは何度も練習してきた。けれど戦闘服、コスチュームを使った広域攻撃で人を昏倒させるには最低でも120デジベル以上の大音量が必要なはずだ。いくらコスチュームを使って底上げしてもさっき以上の音を心音のみで出すのは今のウチではそう簡単にできない。

 

でも4,5人倒せた。今のウチでも。

つまりこいつらは、全員がそうとはかぎらないけれど、そんなに強い敵ではない。

なら、やれる。違う。やれなくたって、やるんだ。

そうしないと、後ろのコイツを守れないから。

 

「来るなら来てみなよ!全員にハードなロックを体に教えてやる!」

 

精一杯の啖呵を切る。自分を奮い立たせるために。

 

そうして相手が動き出そうとする瞬間、投網がヴィランが固まっていた箇所に投げられた。

 

「今です!上鳴さん」

「了解!ちっとばかり痺れてろ!!」

 

投網、おそらくは金属製なのだろうそれに、黄色に光る雷が走り、捕らえられたヴィランの数名に降り注いだ。

 

そっか、二人ってわけじゃなかったんだ。

 

「ヤオモモ!ついでに上鳴も」

 

「すみません、網の作成に少し時間がかかりました。武器も用意しますね耳郎さん」

「ちょ、おい、俺はついでかよ」

 

初めての実戦。初めての命の危機。それで気が動転して周りが視えてなかったのだろう。

敵から倒れている四季を守ることばかり考えて、自分以外の味方を考えてなかった。

 

けれど、これはいい兆候だ。一人より三人の方が戦いやすいし、守りやすい。

 

「敵は、あと20人といったところですね。早く彼岸さんの治療をしたいですけれど」

「ああ。まずはこいつらをどうにかしねぇとな」

 

二人も傷ついて倒れている四季を守るように自然とヴィランとの間に自分の身を置く。普段天然なお嬢様も、おちゃらけているような奴でも、やっぱりヒーロー志望なんだなって安心する。

 

「ありがと二人とも。」

「は?どうかしたか耳郎?」「何かありまして?耳郎さん」

 

二人が近くにいることにも気づけないほど気が動転していて、二人の登場と四季という怪我人を最優先で守ってくれる姿に安心した、なんて恥ずかしくて言えるわけないじゃん。

 

「なんでもない。さあ、いくよ二人とも」

「勇ましいなオイ」「ええ。まずは目の前の相手に集中ですわね」

 

そうして、ウチ等が三人戦闘態勢をとったところで、相手も散開しながら、こちらの出方をうかがい始めた。ううん、違うか。逃がさないように、四季を囲むようにして包囲攻撃する気だ。

もう一度爆音を流すか。それともヤオモモに武器とか作ってもらって守りを少しでも固めるか。相手も無手じゃない。鈍器や刃物で武装している。素手では接近されたときに不利だ。

 

そう考えてウチがヤオモモに声をかけようとしたとき、聞きなれた声が聞こえた。

 

「響香?」

 

まだ、会って1ヶ月、同じ学校に通い始めて1週間でウチのことを名前を呼ぶ者など一人しかいない。そしてウチの個性がコイツの声を逃すはずがない。

 

「四季!気がついた!?」

 

 

 

 

 

状況の理解は済んだ。

最悪の一歩手前。だが、まだ誰も死んでいない。

誰も失っていない。ならばまだだ。まだここで倒れている場合ではない。

 

「ああ、すまない。少し寝ていたようだ。」

 

「彼岸さん!?まだ動いてはいけません。傷もろくに確かめていませんし、できたのは外傷の血止めくらいです」

 

「十分だ。ただでさえ寝坊して遅刻しているんだ。これ以上待たせるわけにはいかない。特に女性は待たせてしまうと後が怖いからな」

 

軽口を言って何でもないように立ち上がる。

苦しむ仕草はするな。痛みなど考えるな。弱っている姿などこれ以上見せるな。

 

そんな状態で誰が安心するものか。偽物だろうが小物だろうが、ヒーローを目指しているというなら逆境でこそ笑ってみせろ。

 

脚は動く。腕は…左手がまともには動かない。肩あたりをやられている。だが動かないわけではない。

あの脳ミソヴィランの一撃を迎え撃った時に放った全力の蹴りは俺の真芯を捉えることを少しばかりそらせるくらいはできたらしい。

なら、いくらでも、ともいわずともいくつか殺りようはある。最も危険なのは中央広場。今回は個性である生命力を視る『色彩』に死は映らなかった。けれどあの脳ミソヴィランを放っておけば、こちらの全滅すらあり得る。すぐにあそこに戻らないといけない。

 

だが、その前に、此処の掃除が必要だ。

 

「八百万、悪いがナイフを…二本くらい用意してもらえるか。刃渡りは20cmくらいでいい。材質は任せるが考えうる限り強靭なものを。切れ味は求めない。固く、砕けないことが第一だ。頼めるか?」

「は、はい。できますが…しかし今は創造している余裕が…」

 

「大丈夫だ。何故なら、もう俺が起きた」

 

両足と利き腕の右は無事。ならば問題ない。

元より俺の体術は蹴りが主体。腕は防御か獲物を持つためのものだ。

脚が無事ならば、どれほど体に痛みがあろうが、無視して踏み込めばいい!

 

「四季!まっ」

 

止める声、聴き間違えるはずもない響香の声を置いて跳ぶ。

すまない、と謝罪をすることさえない。心配する友の声を置き去りにして前に出る。

それでいい。友にウソはつけないが、相手を誤魔化すことくらいなら許されるだろう。すなわち、この身は大したダメージなどなく、目の前のヴィランなど脅威でないと、現実を為して誤魔化す。

 

一歩目から全力。二歩目は名も知らないヴィランの頭を正面から蹴りぬいた。三歩目でそのヴィランを他のヴィランのもとに蹴り飛ばす横薙ぎの一閃。

 

それだけで、混乱が生じる。指揮をするような者はなし。

つまり指揮系統もない、互いの連携もない、見た目や持っている武器や、これまで積み重ねてきた罪だけ凶悪なヴィラン。光の欠片もないくすんだ灰色。黒々しくもなれず、かといって燃えるような激しさも、確固たる意志もない、歪んだ『色彩』。

 

すこしだけ生き方を変えようとすれば、違う道もあっただろうに。

 

そんな感傷がわずかに沸いたが、蹴って捨てた。自ら救いを求めない者に手を貸すほどの余裕もやさしさも俺にはない。

 

だから、容赦なく、加減して、しかし戦闘不能になる程度に視界の全てを蹂躙した。

 

胃液が、いや、熱を持つ感触からしておそらく血が喉元まで来たが無視して飲み込んだ。

内臓も無事というわけではないらしい。当たり前だ。いくら身体を強化しようがあの脳ミソは単純な腕力はオールマイト級だった。それに被弾したのだ。いくらこの身が生物として強化されていようとも、全力の蹴りで減衰させようとも、一撃もらって生きているのが奇跡に等しい。

 

あれを倒すには、一撃ももらわずに、アレに通じる攻撃を通し続けなければならない。

 

目の前の敵を排除し終えたあと、再び響香たちの前に降り立つ。

さあ彼岸四季、不敵に笑え。皆を安心させるヒーローは笑うものだろう。

その鉄面皮に少しは仕事をさせて、痛みも不安も焦りも気づかせるな。

 

「これで、ここはいいだろう。悪いな寝坊して。とりあえず、こんなところで勘弁願いたい。それで、すまないがナイフはできるか?」

「えっ、あ、はい。その程度でしたらあと10秒ほどでできますわ」

「ありがとう。じゃあその間に」「ありがとうじゃなくて、その前にやることあるでしょ!!」

 

再度跳ぼうとしたところを、響香に抑えられた。有無を言わさない強い瞳でこちらの全体、頭からつま先までがっつり見られている。

 

「ホントに、大丈夫なの?アンタ血だらけで天井から落ちてきたんだよ?」

 

これはまいったな。不安はヴィランを蹴散らしてぬぐえても心配は拭えなかったみたいだ。

 

響香の言葉に八百万も上鳴も俺の姿を見る。顔だけ笑顔を作ってみたが、血だらけでは説得力にかけるのかなんてことを思っていたから

 

「そんなバレバレの作り笑顔でウチを騙せると思ってんの!?

ケガ、ひどいんでしょ!!早く横になって、痛いとこみせろこの大馬鹿!」

 

さっきの行動も笑顔でも全く誤魔化せていなかったことに気づけなかった。

そういえば、響香と最初にあった時も巨大な0ポイントヴィランに向かおうとした俺を心配してきていたな。ホント、クールそうに見えて情に厚い。その上俺の誤魔化しも通じないときたか。

 

なら、押しとおるしかない。友達にウソはつけない。だから事実で押しのける。

 

「現状、一番ヤバいのは中央広場のあの馬鹿力の脳ミソヴィランだ。

誰かがアイツの相手をする必要がある。そして、あの化け物相手に時間を稼げるのは俺か出久、あとは相性的に轟か、経験豊富な先生方くらいだろう。だが、俺が吹き飛ばされたとき、個性のわからないヴィランを前にして相澤先生が個性を発動させてなかったとは思えない。つまり相手は俺の瞬間最高出力の一撃を受けてダメージがなく、かつ一撃で強化された俺を倒すことを発動する個性なくできる化け物だ。」

 

「超やべぇじゃねぇか!」

 

今ようやく実感が湧いてきたのか、上鳴がそう叫ぶ。だがそれを笑うことはない。こんな異常事態にまともに分析できるほうがどうかしている。

 

「なら、なおのこと今の傷だらけのアンタが行ってもどうにもできないでしょ。いいから治療を」「できるよ」

 

こちらを心配してくれる響香には悪いが、行かなくてはならない。

アレは確かに、俺の最高出力の威力の蹴りを受けて無傷だった。

 

だが、それはあくまで瞬間的に出せる最高出力の場合の話だ。

 

『春』の個性を最大限に出すのに自己暗示と言の葉が必要なように、扱いが難しい『秋』の個性を使う時のように、『夏』の個性にも自己暗示と言の葉を使って出す全力を超えた極限の状態がある。

 

その状態なら、相手をするくらいならばできる。

勝てるとは言わない。そんな断言ができるほどに俺は強くない。

 

だがあの一撃、あの一瞬の攻防がアイツの全てなら、負けることはない。

 

「信じてくれ、とは言わない。だが任せてほしい。それとも」

 

言いながら、大地を蹴り、空中に躍り出る。狙うは一点、大地の中。

そこから滲んでいる殺意と悪意の混ざった血の塊のようなマゼンダの『色彩』。

 

その色彩を蹴りぬくと同時、大地を穿つ音に交じって小汚い悲鳴が聞こえた。地中に潜んでいたヴィランの取りこぼしだ。

先ほど周囲のヴィランを全滅させた辺りからこちらへの警戒と敵意が強くなったのでわかった。こちらの隙を伺っていたのだろうが、それはつまり、こちらへ自身の意識を集中させていたということ。だからこそ、見えていた。

 

意識を誰かに集中させているということは、そこに自分という生命の向きを合わせるという行為だ。ならばこちらに向けられた意識に、生命の動きに俺の個性が気づけない道理はない。

 

とはいえ、このヴィランは重要ではない。いや響香たちへの攻撃を未然に防いだという点では重要だが、そこは今の論点ではない。

ここで笑え、彼岸四季。余裕ぶれ。行けば死ぬかもしれないではなく、死ぬけど行くという気概を見せろ。

 

「俺があの力だけの敵に負けるほど、弱いと思っているのか?」

 

痛みは傷と思え。今だけは表情筋を動かせ。余裕だと、相手に伝わるように。笑え。

友の手を振り切っていくなら、せめて強がってみせろ。死ぬ気で自身の健在を見せつけろ。

 

「……わかりました。ご注文のナイフの二振りもできましたわ。」

「ヤオモモ!」

「ごめんなさい耳郎さん。でも確かに、私では、いえ私たちでは直接的な戦闘力で彼岸さんに及びません。今の私にできるのは………このくらいしか、ないのです」

 

悔しそうに、口惜しそうに唇を噛んでこちらに創造したナイフを渡してくれる。それは俺への悔しさや卑屈ではない、自身の力の無さへの悔しさ。そしてクラスメイトが危険な場所へ行くのを見送るしかないことの歯がゆさだ。

 

全く、本当にこのクラスはほとんど良い奴しかいない。人に恵まれるとはこういうことだろう。

 

「このくらいじゃない。これがあるから、俺は負けない。あなたのおかげだ八百万 百」

 

頭を下げてナイフを頂く。敬意を彼女へ。おかげでアレに対抗する手段ができた。それはここに彼女がいたからで、このナイフができたのは彼女が今まで努力して知識をため込んだからだ。だからもう少し、肩の力をぬいてほしいが、俺の言葉ではそれは無理らしい。

まだ悔しそうに、無念そうにこちらを見ている。フォローは響香に頼むしかないか。

 

「これで俺は大丈夫だ。皆は他の場所を回ってクラスの皆を助けてほしい。三人ならどこに行っても戦力になる。広場は任せてくれ」

「待って、し」

そうして広場に行こうとする俺に声をかける瞬間に、この広い施設に轟音が木霊した。

音の中心は、間違いなく中央広場。

轟音の主はおそらくはあの脳ミソヴィラン。だが、これほどの音は今まで、響かなかった。

 

誰かが、アレと戦っている。戦えている。

それが誰かなんて、考えずともわかった。こんなときに、あの状態の先生や皆がいた場所にいる凶暴な敵を放っておくなんて、ヒーローがするはずがない。

 

だから、行かなくてはならない。アイツは既にそこにいるのだから。

 

「また、後でな響香」

 

 

それだけ言って、後は最高速で広場に向かう。後ろから聞こえる声は聞こえないように疾走した。死地かもしれない場所に向かうには、覚悟がいるのだ。彼女の声はそれを揺るがすような力がある。

だから、置き去りにする。

そうしないと走れないのが、強くみせているだけの、弱い俺なのだから。

 

 

 




原作よりも耳郎響香の余裕がないのは、四季というクラスの最強クラスが一撃で血だらけで敗退したのを見てしまっているからです。

目に見える傷、血は言葉よりも深い恐怖を与えます。それが友だちという身近な存在にされたのなら猶更です。

というわけで、決して当作品の響香さんは覚悟が足りないわけではありません。むしろその状態で啖呵きるくらいには原作よりも成長しているかもしれません。

いつも誤字だらけの駄文を見ていただいている方、初めてみてくださった方、誠にありがとうございます。
続きは日曜までには投稿できる気がしますので、また見ていただければ幸いです。
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