いつかは終わるヒーローたちのアカデミア   作:Agateram

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さあ、雄英体育祭だ!!としょっぱなから、大ウソつきました。すみません。

まだヴィランサイドのその後書いてないよねと言われ、そうだねと答え、そしてこの有様です。

次回から、ちょっとだけ体育祭に入るので、ご勘弁ください。




第28話 悪魔より恐ろしい者たち。それよりも悍ましいナニカ

薄暗いあかり、レンガがむきだしの外壁、飾り気のないバーテーブルに壁いっぱいの種類の酒瓶とほのかに香るアルコールとたばこの香り。

ひと昔前の飾り気のないことが飾りと言いたげの酒場。

 

そこに、悪はいた。

黒霧の個性であるワープゲートから出てきてしりもちを付くのは頭、両手足に手をつけた、明らかに常人とは言い難い外見をした死柄木 弔。己の個性を閉じて一息つく体以外が黒い霧状の異形、黒霧。

そして、彼らを引き連れるように出てきたのは顔をフルフェイスマスクで多い、そこから多くのパイプがつながった顔が見えないスーツ姿の男……その本名を知るものは既にこの世にいまい。ただあるのは彼の個性であり、通り名であり、恐怖の象徴たる『オールフォーワン』。一合のみとはいえ、ナンバーワンヒーロー、オールマイトの一撃をいともたやすく相殺し、部下の二人をその場から逃がすことに成功した、悪。

 

「ああ、ちくしょう。けっきょく脳無はガキどもに倒されて、オールマイトには一言文句つけるだけ。クソッタレが……今回は完敗だ。そうだろ、先生」

「そうだね弔。 今回は、結果だけ言えばこちらの負けだ。

雄英のカリキュラムをついた進行、生徒の分散まではまだ良かった。けれど、肝心の脳無が倒された。それもオールマイトならまだしも生徒たちの手で、だ。ねぇドクター」

 

失敗を責めるではなく、笑うように、歌うように軽い口調で認めながら、悪はバーカウンターの先にあるモニターに顔を向けた。

 

『うむ。ワシと先生の共同作品があんなガキどもに殺されるとはのぉ、正直予想しておらんかったわ。最低でもオールマイトを苦しめることくらいはできる算段じゃったのだが。黒霧、脳無は回収できておらんのじゃろう?』

「申し訳ありません。あの爆炎では死骸となったのか、頭が無事で再生できたのかもわからず、避難を優先させてしまいました。」

「もったいない…が、まぁあの状況では仕方ない。むしろ最適解だったよ。弔も黒霧もケガはないし、それに、あのオールマイト血相変えて、笑う余裕もなくして、私にとびかかってくる姿が見れたのだからね」

 

よほどその様子がおかしかったのか、部屋に不気味な嘲笑が響く。オールマイトに殴り掛かられた、そのことに恐怖の一つも感じずに、ただその慌てた余裕の欠片もなかった様が、ただただ可笑しかったとでもいうように、悪は笑う。

 

「笑っている場合かよ先生。結局オールマイトが弱体化しているかもわからなかった。その上あそこのガキどもはまとまれば脳無も殺せる、その上一人は単独で脳無を抑えることができるようなバケモンがいたんだぞ。あのクソチートが!あいつさえいなければ!!」

 

悔しやと憎悪をにじませて、死柄木 弔は言い放つ。だだを捏ねる子どもそのもののように。今だ立つこともないままに、首、頭をかきむしっていく。奴らさえいなければ、いやせめてあの脳無を抑えた奴さえいなければ、あの三人も、もしかしたらオールマイトも今頃殺せていたかもしれないのに、と。その憎悪を募らせる。

 

それを、悪は一笑した。

 

「気にする必要はないよ弔。アレは特殊なバケモノ、いやギミックみたいなものさ。相手にするだけ無駄だ。今回は運が悪かった、それだけのこと。あれの相手は考える必要もない。いずれ自滅するまで関わらないか、雑魚でもあてがっておけばいいさ」

 

「ギミック、ですか?正直私はあの少年が最も危険なヒーローに思えましたが…」

 

黒霧は冷静で客観的な見解から話題の少年、彼岸 四季をそう評した。

彼岸 四季が一分強抑え込んだ脳無は、対オールマイト用の特別使用。その力はその辺りのヒーローはおろか、相性次第ではこの世に溢れるヒーローのほとんどを殺しつくせると言っていいほどのモノだった。

緒戦こそ一撃で気絶、重傷を負わせたはずが、次に来た時には逆に脳無の方が何もさせてもらえなかった。対オールマイト用の特別使用が、である。

 

あれこそ、まさに化け物を超えた化け物と言っていいのではないかと、黒霧は判断したが、それを悪は再度一笑した。

 

「アレはヒーローなどではないよ。行っただろう?ただのギミック。近寄れば殺すだけのからくりだ。近寄らなければ何もない。何もしない。あれはヒーローではなくただそれだけの存在なのだから」

 

 

 

 

 

5人が見舞ってくれた後、夜の帳が降りてくる頃に相澤先生が見舞いに来てくれた。といっても単純な見舞いではなく、13号も伴って神妙な様子で花を持っての登場だった。

 

「すまなかった。お前に庇われ、そして傷まで治してもらったおかげで俺は生きている。プロとしては失格だが、ただの相澤消汰として、命を助けてもらったことに感謝する。」

「同じく、ヒーローとしては情けないですが、あなたのおかげで命を散らさず、生徒たちも命を落とさずに済んだ。本当にありがとうございます」

 

二人して、大仰に俺に頭を下げるヒーローが二人。

そんなにかしこまらないでほしい。俺の命で二人が、多くの命が救われるのなら、これに勝る死に方はない。まして俺が死なずに救われてくれたのなら、僥倖というほかない。だから、礼を言うならこちらのほうなのだ。

 

「こちらこそ、助かってくれてありがとうございます。そして、一人の生徒として、無茶をしてしまい申し訳ありません。」

「……教師として注意をする前に生徒として謝罪されたか。ますますこちらの立場がないな」

そう言って相澤先生は俺の肩をつかみ、無事に癒えたその両目で俺を映す。

その眼に、俺という人間はどう映っているのだろう、とそんな関係のないことを考える。

「俺が言えた立場じゃないのは承知で、しかし教師として言わせてもらう。無茶だけはするな。お前はどこか、自分の命を軽視しているように見える。」

 

流石、幾多のヴィラン、幾多のヒーローをその眼に映してきた歴戦のヒーロー。

俺の本質、俺の目的に既に目星をつけられている、というのも妄想ではないだろう。

 

「大丈夫です。俺はヒーローになる。だから全力でヴィランに抗ったし、先生たちを治した。それだけです。流石にこれ以上の無茶はしませんよ。まだ卵ですから、殻の中で精一杯に暴れて、このざまになっただけの未熟者です。」

 

だから、嘘をつく。

正直なところ、この二人の命が危ないと知ったときに、自分の命は考えなかった。何故ならこの二人はプロヒーロー、俺よりも確実に教えることに適している。つまり、二人が生きている方が、出久は死ににくくなる。その経験に基づいた教えを受けたほうがヒーローとして大成できる。だから、助けた。

 

それだけなのだ。

この二人は、少なくとも今はただの教師という名の他人だ。

命をかけてまで救う存在ではない。だが、その教えの優秀さが出久のためになると思ったから助けただけにすぎない。

 

彼岸 四季は赤の他人のために、命をかけられるようなヒーローではない。

命をかけられる出久のために助けただけなのだ。

だから、そんなにかしこまられても困るのだ。

 

「………これ以上は水掛け論か。教室に戻ってきたらまた俺にできるだけの教えと苦難を与える。お前もそれを糧に乗り越えてこい」

「それが、雄英高校の校訓、ですからね。またご指導ご鞭撻のほど、お願いいたします。」

 

そして、その夜の会合はその礼をもって終わった。

互いの深層を知らぬままで。

 

 

 

「先輩、アレで良かったんですか?確かに僕たちは彼のおかげで助かった。けれど、リカバリーガールから聞いた彼の状態は決して認めていい範疇じゃない」

 

病院への出口に向かう中、背後から13号の声を聴く。確かにその通りだ。

リカバリーガールは言った。俺達よりもはるかに彼岸の方が重傷だと。もはや治療に使えるほどの体力は皆無。傷の具合から見ても、本来ならそのまま死ぬはずだった。数多の負傷者を治療してきた、癒しと死のはざまの戦場で歴戦の猛者たるヒーローがそう言ったのだ。

その死は確実に訪れると言ってよかっただろう。それでも彼の個性『春夏秋冬』の特性、緑谷から聞いたところの『秋』の休眠にてその死は免れた。

それは、彼岸がそこまで計算していたのようにも見えるだろう。しかし、それは違う。そんなレベルを超越したところまで彼岸の状態は深刻だった。つまり、自分の命など考えて行動していなかった、ということになる。

 

それはまるで自身の身を顧みないヒーローの鏡、のように見えなくもない。

 

だが、アレは、違う。そのような綺麗なものでも、自己犠牲などでもない。

 

違うナニカだ。違うナニカが、彼岸に俺達を救わせた。俺達が五体無事に生き残ってこうして何もなく動けているのはそのナニカのおかげで、そのナニカのせいだ。

 

「彼岸 四季……か。その言動、注意しておいた方がいいな」

 

彼岸は、あの場で誰よりもヒーロー的な行動をとった。だが、その根幹にあったのは、本当にヒーローとしての心故なのか? わからない。まだ一月にもならない付き合いの俺では、何もわからない。

 

だからこそ、知らねばならない。彼岸 四季という少年を。導かねばならない。教師として。

———ただでさえ問題児ばかりのクラス、俺の手だけでは余る、かもしれないな。

俺は13号の問いに返さぬままに、電話に手をかけた。

 

 

 

 

 

 

『しかし、先生よ。アレが脳無を互角以上に相手したのは事実じゃろ。あの個性、奪おうとは思わんのか?ただの増強系ではないようじゃし、研究しがいがありそうなのじゃがの。なんせ画面越しではろくに状態がわからん。できれば生け捕りか個性だけでもほしいものなんじゃが』

 

ドクターと呼ばれる画面先からの声で、初めて悪の雰囲気が変わった。楽しみにしていた料理の皿が配膳前に割れてしまった時のように笑顔が止まり、期待していた映画が途中で終わってしまった時のように笑い声が瞬時に消えた。その空気の変わり具合がその機嫌の悪さをそのまま伝える。

「バカを言ってはいけないよドクター。あれはね、ただのギミックだ。装置だ。世界が作ったバグだ。この世にあってはいけないナニカだ。『決して関わりあわない。』それが私の昔から変わらない結論だ。それでももし、あちらから関わってこようとするならば…」

 

———〇〇される前に、○〇しか、ない。

 

嫌悪と殺意以外の感情を吐き出した言葉が、その場の響き、そこで彼岸 四季の話題は終わった。

悪の首領、世紀をまたぐ超大物のヴィラン。世界の悪という悪の頂点の一つ。

それが、関わりあいたくもないという少年の形をしたモノ。

 

悪魔よりもなお悪なヴィランとその悪からも嫌悪されるナニカ。

 

果たして、世界にとって危険なものは、どちらだったのか。

 

 

 

全ての思惑を無視して、舞台は次へと進む。

 

雄英高校の一大行事。オリンピックと変わらぬ熱狂を与える祭典。

雄英体育祭へと。

 




さて、いきなり少しだけネタバレしますが、雄英体育祭を皮切りに原作乖離が多くなってきます。それでもいいよという心の広い方は引き続き、どうか駄作を時間つぶしに使ってください。

どうか今後もよろしくお願いいたします。

緑谷出久にヒロインは必要でしょうか?あるいは必要なら誰がいいと思いますか?

  • 必要なし。あるいは主人公がヒロインだろ?
  • 原作ヒロイン麗日お茶子
  • ケロケロな蛙吹梅雨
  • B組もいいかも。
  • 壊理ちゃんでもええやん
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