いつかは終わるヒーローたちのアカデミア 作:Agateram
2話書いておいて、オリ主は個性すらまともに出せてません。
さて、皆さん中学三年生とはどんなイメージだろうか。
個人的には将来を考える大事な時期だと思う。進路、受験、将来設計などを考える大切な時期だ。
それは、多くの夢を描くと同時に多くの夢が挫折する期間でもある。
例えばミュージシャンを目指す、プロスポーツ選手を目指す、芸能人などを目指すなど、誰でもとは言わずとも多くの人が一度夢見た職業ではないだろうか。
しかしそれらは競争率が高く、才能、努力、幸運、様々な要素が適さないとなれない狭き門を目指す人は、まず教師から自分と家族の希望を聞いた後に、それがどれほど困難な道か正確に伝える、まあ簡単にいえば、「困難だし、成功する人なんてほんの一握りだからやめとけ」と遠回しに助言することが多いだろう。特別な才能があれば、まあ別だろうが。
当然、この公立中学校でも教師が進路希望用紙を提出させ、
「えーお前たちも本格的に進路を考えていく時期だ。」
生徒に向けて、まずは軽い注意事項なり、真剣に自分の将来を考えてなど話して、
「まぁだいたいヒーロー科希望だよね」
などということは一切しなかった。
そして同時に騒ぎ出し、個性を発動し始めるクラスメイト。
ちなみに、個性は基本自分の敷地内など限られた環境でしか使用禁止。
もちろん校則違反で学校では使用してはならない。
にも関わらず、笑顔で軽く注意で済ます軽さ。
言いはしないがこの人は絶対教師に向いてないのではなかろうか。
ヒーローを目指す危険性、つまるところ殉職率やヒーローになるまでにどれだけの試験があり、成功例、つまり皆が夢見るヒーローがどれだけ大変で狭い門なのか、話す気などないようだ。
世界総人口の約八割が何らかの特異体質、「個性」を発現するようになった現代。
個性の発現に伴って爆発的に増加した犯罪件数、それに対抗するように生まれた犯罪者から民衆を助けるために生まれたのが、今でいうところの『ヒーロー』。
まるでアニメや特撮のように派手で、カッコ良く、敵を打ち倒すヒーローは時代を経るごとに人気が出ていき、なんと国から正式に公的職務として定められた。
もはやヒーローはテレビの中の架空の存在ではなく、世界的な職業となったのだ。
とはいえ、全員がそれを目指すのはどうなのだろう。
「これが中二病、というやつだろうか」
騒ぐ教室でボソリとつぶやく。
数世紀前によく流行った思春期特有の病だという。
万能感を感じたり妄想を現実のように思い、思い描いた自分を現実でも振る舞うようになるという、まぁ微笑ましい、大人になったら恥ずかしい病というか人生の地雷。
だが、それも目の前の光景を見れば、一概に中二病とも言い切れない。
なんせ手が岩になったり、火を噴いたり、手から針が突き出ていたり、数世紀前は考えはしてもできなかったことが、実際できてしまっているのだから。
だからといって、それだけだ。ヒーローになれる奴なんてほとんどいない。
ヒーローになるためには、条件があるからだ。
ではヒーローの条件とは何か?
強い個性を持つこと?
重要だ。弱者では凶悪には立ち向かえても正面切っては勝てない。だが、そんなもの道具や状況、連携などの条件を整えれば大抵どうとでもなる。
敵を倒すこと?
これも重要だ。敵とは個性を悪用する存在を指す。野放しにすればそれだけ被害が増える。だから間違えてはいない。かといって、それは一番重要なことではない。
少なくとも、今目の前で個性をひけらかす連中は持っていないものだ。
持っているとするならば、
「そういえば緑谷も雄英志望だったな」
「んだとコラーーー!!無個性のテメェが俺と同じ土俵に立てるわきゃねぇだろうが!!」
今吠えたツンツンした頭も手のひらも爆発している爆豪勝己。その勢いで出久の机も爆破する。
そして周囲の何人かは「勉強だけじゃ合格できねぇぞ」「いくら体力テストでいい点とっても無個性じゃ意味ねぇしな」と追随して馬鹿にしている奴らは決して持ってないだろう。
「そんなことはない!」
周囲の叫びも嘲りも押し返すような強い声が響く。
馬鹿にされていた緑の天然パーマのもじゃもじゃ頭、緑谷出久が忽然と立ち上がって目の前まできた自身の幼馴染、爆豪を見返す。
「偉大なヒーローを数多く輩出してきた偏差値79の国立【雄英高校】。日本屈指の難関ヒーロー科!でも、その入学規定に個性限定とは書いていない!無個性でもヒーローになれないとは言っていない!ヒーローに僕がなれるかどうか、決めるのは君たちじゃない!」
力強い瞳で、揺ぎ無く言い返す。
「ヒーローになれるかどうかは国が決めること!
そして僕がヒーローになりたいかどうかは僕が決めることだ! どこの誰にもそれを否定させない」
それを見つめ、俺は今日始めて笑った。
カラカラと心底おかしくて、笑う。
ああ、それだ。その目だ出久。その目が、その意思がヒーローに必要なんだ。
みんな出久がそんなにきっぱりと否定するとは思ってもいなかったのか、静まり返った教室に俺の笑い声はよく響いたのか、視線のほとんどがこちらを向いた。
だが、そんな視線はどうだっていい。
「何がおかしいんだクソ
出久を睨みつけていた爆豪がこちらを向く。しかし、それもどうでもいい。
大事なのは、俺の視線の先、ブレない瞳でこちらを見る出久だけ。
だから視線すらあわせず、俺は笑った理由を述べる。
「おかしいからに決まっている。ヒーローが持つべき絶対の資質。それを持っている者に、持っていない奴らがお前には無理だと笑う姿が滑稽だ。だから笑った。それだけだ」
「んだとコラァ!! ヒーローの資質なんて無個性のデクが一番持ってねぇだろうが!!」
爆豪の反論に周囲のクラスメイトも同じように目線を鋭くしてこちらを見る。
ああ、本当にわかってない。わかろうともしてない。
「なら、校則や法律を無視して個性を使用し、無個性を集団で笑い者にするのが、お前らの言うヒーローなのか? 俺には他者を傷つけ、排斥しようとするヴィラン予備軍にしか見えなかったぞ?」
言われてバツの悪そうな顔をする者が半数、視線を下げて自分の行動を顧みている者がその更に半数。残りはさらに視線を鋭くこちらを見る。
そういうのだよ。多少煽った自覚はあるが、俺が言ったのはただの事実でしかない。
「ヒーローに必要な絶対条件の一つ!それは、他者を思いやり、見知らぬ誰かだろうと助けようとする心!ヴィランを倒すのがヒーローじゃない。ヴィランを倒すことで人を助けるのがヒーローだ。 それで、お前らはそれができるのか?」
こちらをにらんで来る者に視線を返しながら話す。今こちらを睨んでいる連中には見覚えがあった。この三年間で俺にケンカや因縁をつけてきた連中だ。俺は平和主義者だ。ケンカを売るなんて真似はしない。ただ無抵抗で殴られるほど馬鹿じゃない。少なくとも、このクラスで今俺を睨んでいる連中で、俺に組み伏せられたことがない者はいない。
だから、最後にはほぼ全員顔をそらした。ああ、だからダメなんだお前らは。
最低でも、あくまで最低でもだが、
「まぐれで勝ったくらいでいい気になるなよテメェ!
試験だろうがケンカだろうが、次は俺が勝つ!」
そう、最低でも自分よりも強い相手だろうが向かっていく勇気、あるいは反骨精神くらいは持ってないと話にならない。
「そうか。精々頑張れ。ところで、いつまでこんな馬鹿らしいホームルームを止めないつもりですか先生」
そこで、話を切る。なぜなら爆豪の相手が面倒くさいからだ。
アイツこそ、今言ったことさえ改善できれば良いヒーローになるだろうに。
今のままなら、アイツの結末なんてこの『目』で見るまでもないだろう。
「やらかしたなぁ。暫くは静かな生活ができていたのに」
「うん。盛大に敵視されたね。特にガラの悪い連中に」
目立ちたくないから、しばらく大人しく生活していたのに、今日の出来事についつい本気で反応してしまった。大人げない。相手はまだ14、15の子どもだというのに。
「いや、四季も16だから。1歳か2歳しか変わらないから」
隣で出久が笑いながら訂正してくる。
確かに俺は1,2歳しか変わらないが、それでも年上だ。いろいろあって俺は学校に通えていない時期があったため、出久たちより年上なのだ。
相手はまだ世間を知らない中学生。なのに、少々、かなり、説教くさい言いかたをしてしまった。まるで大人ぶった子どもそのものではないか。
穴があったら入りたいとはこのことか。30歳ごろに黒歴史になりそうだ。
「でも、言ってることは間違ってないと思う。」
「ありがと。そういう出久も随分と立派なこと言えるようになったなぁ。三年前勉強ばかりしてたお前に見せてやりたいよ」
「『力だけの正義なんてただの暴力。ヴィランと変わりない。けど綺麗ごと言うだけの正義なんてただの無力だ。ヒーローになりたいならせめて体と技術くらい身に着けろ』、だったね。ホント、四季さんに出会ってなかったらそのままだっただろうなぁ」
「さん付けはいらない。たまに出るよな。」
「あっごめん。」
俺、彼岸 四季と緑谷 出久があったのは小学校卒業をひかえた時分だった。
それから3年ほどの付き合いになる。出久は俺が引くほどのヒーローマニアでオールマイトオタクで、そして強烈なヒーロー志望者だった。だが彼は個性がなかった。それで毎日のようにイジメを受けていたという。
それを目撃した俺が、まぁ、なんだ。年下相手にこう、くしゃっと軽くやってしまったわけだ。なお相手は手のひらから爆発する個性持ちやら指が伸びる個性やらを使ってきたがもちろん個性なんて使わない。
まっすぐ行ってぶっ飛ばす。
大抵の荒事はこれだけで済むのだ。昔の偉い人はいいことを言った。
まぁ流石に殴りまくるのはまずいので、大抵は体格差を生かして体当たりか、カウンターの掌底で吹っ飛ばして寝技で組み伏せていたが。
それからだ。個性を使わずに相手を倒す俺に、出久が教えを乞うようになったのは。
諸事情から荒事や個性の扱い、対応に長けていたとはいえ俺も14手前になったばかりの弱卒。教えられるものなんて少ない。
それにたまたま個性を使ったイジメの現場を見て、危険そうだから止めただけで、当時の俺たちに面識などなかった。だから最初は断った。
だが、何度か同じような場面に出くわし、または負けたお返しにと何度も馬鹿どもが来て相手をする度に、出久は俺にその技術を教えてほしいと頼んできた。
何故、と問うた。
返ってきたのは、無個性でも、ヒーローになれますかという問いだった。
答えでも何でもない。それは出久の叫びだった。心の奥にしまった、誰かに肯定してもらいたいと思う、出久の傷だった。
その涙まじりに縋りつく子どもに俺はあらん限りの声を出して答えた。
「甘えるなクソガキ!」
ああ、本当に中学時代とは黒歴史が多いものだ。
とりあえず2話投稿です。
まだ原作でいうと1話の半分も行ってないという進行の遅さ…申し訳ない。
チラシ裏から移動してきました。
週に一回、日曜日に投稿予定です。たぶん。