いつかは終わるヒーローたちのアカデミア   作:Agateram

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やっぱり2種目終わりそうにないので中編挟みました。

後編はしばらくお待ちください。

あと、爆豪君、キャラ変……といえるかわかりませんが少しずつ原作と乖離していきます。苦手な方はご注意ください。


第33話 雄英体育祭 第2種目 中編

轟チーム

 

「まずは僕らの誘いに乗ってくれてありがとう八百万さん、塩崎さん」

「いいえ。勝つために必要とされたのであれば応えますわ。それに私も勝ち残りたいですから」

「わたくしも同じです。それにたとえ他の組であろうと緑谷さんや八百万さんは体育祭前の訓練にB組も誘ってくださいましたし、自分たちが作った過去体育祭の資料なども見返りもなく提供してくださいました。受けた恩はしっかりと返さねばなりません。」

 

祈るように両手を合わせる塩崎さんと闘志を燃やして両手を握りしめる八百万さん。

A,B組でも汎用性という点ではこの二人はかなり高い。二人が味方になってくれたことは大きな収穫だ。

 

「それで、基本の戦術だが……いいんだな緑谷。お前が騎手じゃなくても」

「構わない。この中で最もフィジカルに長けるのは僕だ。それに足技も槍を使う時用に鍛えてきた。騎馬が僕の強みを最大限に生かせる。そして、肝心の攻撃を、三人にやってもらいたい。これが、この組のベストだと思う。」

 

「わかった。なら俺たちがまずしなきゃならないことは、」

「もちろん、八百万さんを守ること。ただし、それに気づかれないように最初に奇襲がいる。」

「本命を悟らせないために、か。それなら俺が初撃は担当しよう。八百万、わりぃが最初に金属製の棒を出してくれるか?」

「了解しました」

「塩崎さんは命綱を、僕が手綱を握って……」

「それでしたら緑谷さんもいっそのこと…」

 

四人とも頭脳派タイプであるため、作戦会議は15分をほぼフルに使って細部にまで行われた。結論としては15分の間では十分に及第点をとれるだけの策ができた。

 

「細工は流流、仕上げを御覧じろってところだな」

「ええ。仮に作戦がうまくいけば、」

「あの首位をとっていた彼岸さんにも」

「十分に勝てる。いや、勝とうみんなで。」

このチームならどこにも負けない。

まずは一勝。取らせてもらう。

 

 

 

 

 

爆豪チーム

 

「正直、最悪ぼく…俺一人と爆豪君だけでも組めればいいと思っていたが、声をかけてくれてありがたいよ拳藤くん、角取くん」

「最悪ってなんだクソ眼鏡!俺ならだれとでも組めるわ!」

 

礼をいう飯田とは違って目の前の爆豪は名前すら言わずに手の平から小さな爆発と共に叫びをあげる。そういうところが能力が高いのにほとんど誰も寄ってこなかった理由なんだけどね。

そう思って、私は『個性』を発動して軽くその爆発したような頭にチョップを入れた。ズドンといい音がして、爆豪が地面に倒れこむ。…軽くしたつもりだったけど、個性を使ったのはやりすぎだったかな。

 

「なに、すんだ!馬髪女!!」

「まずは、自己紹介をし直そうか。私は拳藤一佳、個性は今見せた『大拳』。大きさに備わったパワーも持ってる。ここの三人を一人でもって走ることも楽勝。こっちは角取ポニー。」

「ポニーデス。個性は『角砲(ホーンホウ)』いいマス。角を飛ばして攻撃や移動ができます。」

「ああ!?テメェ等のことなんざ知るか」

「爆豪君!そういうところが」「てい!」

 

再度、個性を発動してチョップを入れた。今度は爆豪もガードしたけど、関係ない。再度地面にはたき倒す。

 

「テメェ、ケンカ売りにきたのか。そうなんだなオイ!」

 

かなりキレたようでただでさえつり目な目つきが既に鬼の角のようにとがって視えるのは気のせいではないだろう。でもここで引くわけにはいかない。知っているから。2週間の訓練で、私だけでは緑谷にも彼岸にも勝てないってことを、何度も組手をしてわかりきっているから。それでも負けっぱなしでいたくない。

 

「爆豪、私は勝ちに来た。この体育祭でB組とかA組とか関係なく、勝ちに来た。アンタは違うの?」

「ああ!?勝負で勝ちにいくのは当然だろうが!!」

「だったら、せめて集団戦くらい自分以外を見なさい!アンタ一人で勝てるほど、他の組は、緑谷、轟、彼岸は甘くないってわかってんでしょうが!」

 

そう、こいつはわかっているはずだ。何故なら幼馴染である緑谷が言っていた。爆豪 勝己は天才だと。間違いなくプロヒーローのトップクラスになる才能を持っていると。

第一種目を見て、その確信は深くなった。あの緑谷と、とんでもない破壊力で一瞬でロボを一掃した轟に対しても一歩も引かない気力、体力、そして個性。

緑谷の凄さは同じく武術を個性と合わせて使う者として、そして何度も組手をしてわかっている。その技術、身体能力、分析力は悔しいけれど全部あっちが上。その緑谷をして爆豪は天才と言われた。彼岸は宝の持ち腐れと言っていたけれど。

 

「これは集団戦なんだよ爆豪。あんた一人じゃ騎馬も組めない。それじゃ勝てないでしょうが。勝つために何だってやる!その気がないなら舞台に上がるべきじゃない」

 

こんな正論で大人しくなるタマじゃないのはわかっている。でも、私たちが勝つには爆豪が必要なんだ。

 

「負けっぱなしで、アンタは満足!?私はごめんだ!!」

 

拳が大きくなる、それだけの個性と揶揄されたこともある。けれど、頑張って腕を磨いてきた。武術を学び、個性を伸ばしてパワーを上げた。自分の何倍もある入試のロボットヴィランだってぶっ飛ばして、雄英高校に受かって自信もついた。けれど、そんなのはこの2週間で粉砕された。緑谷の手は分厚く、何度も何度も拳を振るってきた痕があった。彼岸の足技は多彩な軌跡を残して、まともに防御すらさせてもらえなかった。

もちろん、恨みはない。純粋にその技量に、そこまで至った努力に賞賛を送ろう。自分にはまだ努力が足りなかった。それだけだ。

けれど、勝ちたい。勝ちたいんだよ。負けたままじゃいたくない。

 

それは、きっとコイツも爆豪も一緒だと、そう思ったから声をかけたんだ。これで、ダメなら私の見込みが甘かったってことに…

 

「おい、拳藤」

「あっう、うん。何?あれ?名前」

「テメェが俺達三人乗せても大丈夫なパワーがあるのはわかった。角取は人一人くらい運べるってのは何度もできんのか?例えば、俺が騎馬から飛んだとして、回収することはどんくらい可能だ?」

「は、はい。私の角を二つ使えば何度でも可能デス。最高4本あつかえますから、四人とも空に浮かせるくらいならOKデス。」

「なら、俺が敵をヤル。テメェに回収を任せる。飯田は俺の指示に合わせて動け。拳藤、テメェはそのデケェ手で守りを任せる」

 

コイツ、ノッテきた。即座に私たちの個性で作戦を組み立ててる。さっきの形相もなくなって、でも目がさっきよりも鋭さを増している。

 

「勝つ。そのためにテメェ等を使う。それで作戦はこれでいいかよ」

「っ~~上出来!!やればできんじゃん爆豪!」

 

思っていたよりも十分すぎる結果に嬉しくなって、思いっきり爆豪の背中を叩いた。もちろん賞賛と私たちを認めてくれた感謝を込めて。ただちょっと、思い切りが良すぎたのか、三度、爆豪は地面に沈んだ。

 

「………おい、やっぱりケンカ売ってんじゃねぇだろうなぁ!!?」

「ごめん。今のはわざとじゃなくってさ。嬉しかっただけだよ」

 

そういって、地面からこっちを見上げて指の関節をポキポキならしながら立とうとする爆豪の手を握って引っ張って立たせた。その上でがっしりと相手の手を握る。まるで腕相撲をするような握り方になってしまったけれど、まぁこれでも握手は握手だろう。

 

「よろしく爆豪。」

「………おう」

 

2週間前に繋ぎ損ねた握手をして、小さくだけど、確かに爆豪は返事を返してくれた。こうして私たちのチームは完成した。

 

 

「………コイツ、なんかクソババぁに似てやがる」

 

 

そんな呟きは本人以外の誰にも聞かれることなく体育祭の歓声の中に消えていった。

 

 

 

そして、騎馬は出揃い、広いコンクリートのリング上に気合いが満ちる。

 

『さあ作戦は決まったか?覚悟はOK!? どちらがなくとも既に時間はいっぱいだ。

さあエブリバディ、レディ!!スタァァァァァト!!!』

 

プレゼントマイクの轟くような叫びと共に始まった騎馬戦。

始まって早々に直進してくるのは2組。当然狙われるのは1000万ポイントを持つ彼岸チームだ。

 

「実質1000万の奪い合いだ!行くぜ彼岸!!」

「最初っから全力だ!常闇、瀬呂、攻めは頼んだぜ。下は俺たちに任せろ。」

 

 

A組、B組の切り込み隊長は鬨の声を上げる二人、一組はB組の鉄哲、もう一人はA組の切島だ。互いに体を硬化させることができる系統の個性、熱血漢とキャラがかぶっている二人だが、その勢いは正に怒涛。

 

そしてその他の騎馬たちも一癖も二癖もある生徒たちだ。

 

鉄哲を先頭に推薦入学者の一人である骨抜、大きな体躯と体を液体状から瞬時に固まらせる『セメダイン』の個性を持つ凡戸が騎馬を組み、その上には重量級であり騎手としては向かないかと思われる宍田をしっかりと支えている。その巨躯と騎手の宍田がもつ個性『ビースト』でライオンと人を合わせたようなその見た目と化した彼等の迫力は随一だろう。

 

切島の方は逆にスマートが印象を受けるが、全員が曲者と言っていいだろう。防御が固い切島を先頭に右には、腕から伸びる『テープ』の個性で遠距離からでもポイントであるハチマキを狙える瀬呂、左には『酸』を操り迂闊に近づけない芦戸、そして騎手である常闇は『ダークシャドウ』という自律した性格をもち、明確な物体でないため物理攻撃がほとんど通用しない中距離、遠距離では無敵に近い。守りも攻めも考えられた侮れない騎馬だ。

 

その二組に狙われる彼岸は大きく息を吸い込んで、叫ぶ。

 

「真正面から迎え撃つ!前進を頼む」

「「「了解」」」

 

その号令と共に、突進してくる二組を真正面から迎え撃ちに行った。

 

『おおっと!いきなり突っ込んだ2組に対して、彼岸チームも突っ込んでいったぞ!?だがいいのかよ?体格差と個性、両騎馬侮れねぇぞ!?』

『明らかな悪手だ。だが、そんな単純な手を打つほどアイツは甘くない』

 

「男らしいじゃねぇか!だがなめんなよ。」

「……まずいな。一度止まってくれ!彼岸のことだ。何か考えがある」

 

ここで、彼岸チームの行動で、両騎馬の動きに差が出た。

彼岸をよく知るからこそ警戒して止まったA組のチームとポイントを狙うべく動きを止めないB組のチーム。

 

これで、両チームを同時に相手取ることはなくなった。

彼岸の口角がわずかに上がる。そして次の指示は

 

「発目、サポート器具全開B組の方に前進。心操が触れればこっちの勝ちだ。響香は騎手を狙ってくれ」

 

B組との激突コースだった。しかし騎馬は全員疑いもなく進む。

 

「触れたら?鉄哲氏、あの普通科の生徒の個性はわかりませんか?」

「わからねぇ。だが俺達なら当たり負けはしねぇ。このまま…」

 

行くぜ、と言おうとして、ふと2週間前の彼岸の台詞を思い出す。

 

『1-Bの鉄哲徹鐵。個性『スティール』のバリバリの近接戦闘スタイル、であっていたかな?』

 

——相手は、こちらの個性を知っている。それなのに、突っ込んでくる?

流石におかしくねぇか?いくら彼岸の野郎がフィジカルに優れていても、騎馬の身体能力はこちらが上。マトモにぶつかれば結果は見えてる。ならあんなに自信を持つ理由は…

 

「何か仕掛けてやがるのか?」

「どうする?俺か凡戸の個性で相手の脚を止めるか?」

「だが、相手に触れればと言っていましたぞ。どちらにせよ我々は近づかなければポイントは取れない編成。このまま行ったほうが」

 

集団戦、それも騎馬という他人と組んで移動するという特殊な環境故の混乱。それゆえに足が止まり、注意がそれぞればらける。

その間に彼岸チームの騎馬は一気呵成にこちらの手が届く寸前まで飛び込んで

 

「今!」

 

一斉に、三者が騎馬を解き、鉄哲チームの脇をすり抜けるように走り出した。

 

「「「「はあ!?」」」」

 

驚きはチーム全体、あるいはその成り行きを見ていた会場中から発せられたものであった。

 

騎馬戦は基本全員で同じ方向に移動しなければならない。

そしてその騎馬を崩してはならない。騎馬が崩れれば騎手が落下する。

この競技ではそれでも失格にはならないが、それでも騎手が落下してしまえば再度騎馬の形を作るまでどうしたって時間を取るし、無防備になる。

自ら騎馬を解くなど普通は考えない。考える必要すらない愚行だ。

 

だから、いきなりその型を一瞬で破ったチームの動きに全員が驚愕した。

 

否、驚愕したのはそれだけが理由ではない。騎馬が崩れた瞬間、そちらに目を取られて、騎馬を支えている鉄哲たちは、騎手である彼岸四季を見失った。

 

それらが重なって生まれる隙に、宍田の頭につけていたハチマキは掠め取られた。

彼らの騎馬の上空を跳びこえながら、彼がその手にいつの間にか握りしめていた槍に巻き付かせるようにして奪っていったのだ。

 

そして、それに気づく前に凡戸は誰かの手が自分に触れているのに気付いた

 

それは、彼岸チームの騎馬だった心操。触れば勝ちと言われていた男の手が自分に振れている。

そのことに気づいた凡戸はその手を払おうとして、その前に言葉を聞いた。

 

 

「俺より、上に気をつけろよ」「なに?」

 

 

そこで、凡戸の意識は一瞬途切れた。次に気が付いたのは自分の騎馬が全員自分の上に倒れていた時だった。

 

 

『おおっと何が起こった!? 彼岸の騎馬がぶつかる直前で分散して、彼岸自身は空を駆けながら、いつの間にか出した槍でハチマキをゲット! しかし、それに動揺したのか!?B組宍田チーム騎馬が総崩れだーー!!』

 

『最初の前進はおそらくだが彼岸の能力をよく知るA組で編成された常闇チームを警戒させて止めるためのブラフだろう。次にぶつかる前に彼岸が何か言っていたな。おそらく宍田チームが直前に一瞬動きを止めてしまったのもそれのせいだろう。騎馬は一人でも迷いがあると機能しなくなる。その隙をついて、自身は己の身体能力と背中に背負ったサポート科のアイテムで飛び越えながら、個性で生成した槍で騎馬の上空を駆け抜けながらハチマキを取った、というところか。恐るべきは空中機動の最中でもハチマキをとれる技量と、そこに行きつくまでの噓八百……機転だな』

『アンビリーバボー!! 寄せ集めかと思ったが、抜群のコンビネーションみせるじゃねぇか。しかし、あの槍はどっから出したんだ?』

『アレは彼岸の個性『春夏秋冬』の派生技の一つだな。ただアレは一つこの種目向けじゃない弱点があるんだが』

『弱点?言っちまっていいのかよイレイザー?』

『ああ、既にテレビの前の人にはわかっている弱点だ。あの槍はカメラなどの機械には映らない。あいつが形作る物は物質ではなく、生命力という力を基にして作っているから、命ある者にしか認識できないそうだ。』

『それってテレビの前のリスナーたちには俺達の会話もアイツが何したのかもよくわかってねぇってことじゃねぇか!!?メディアに優しくない個性だなオイ!』

 

——だが、B組の騎馬の崩れ方はただの動揺じゃない。おそらくは、心操の個性か。それにサポート科のアイテムを自分にも、他の奴らにも効率よく使わせている。

 

「本当に、油断ならない奴だ」

 

放送のコードを一時的に切って、相澤は珍しく笑みを浮かべて眼下のトップチームを見下ろした。

 

 

 

「テレビに映らないのはプレゼントマイクと相澤先生の解説で補完してくださいよっと」

 

会場にも響くプレゼントマイクたちの実況を聞きながら、背負ったバックパックを左手に握ったスイッチを押すことで起動させる。空気を圧縮排出することで、一時的な飛翔や着地の減速を行ってくれるアイテムだ。エアジェットというヒーローの個性の補助に使うものを参考に発目が作り上げた物だ。

無論これがなくとも飛び上がれるし着地も槍を突き立ててそこに静止すればいいが、騎馬を再度組むときに時間がかからないし、減速している分騎馬の皆に負担がかからない。

 

それ以外にもアンカーを打ち出す装置や高所からの着地を補助したり、響香や心操の走行を補助するレッグパーツに発目自身が背中に装備している油圧式アタッチメントバーなど、本当に多数のアイテムを作っている。

驚くべきはこれらが全て発目自身の作品だということ。

この大会で使えるサポート科のアイテムは自作に限るという制限がつく。

つまりまだ入学して一ヶ月そこらでこれだけのアイテムを作り出したということだ。

サポート科、発目 明。そんじょそこらにいる天才じゃない。Try&errorを繰り返し、それでもめげることなく次を、また次をと進み続ける傑物、ある種の化け物だ。そして今は頼りになる味方。この縁は今後に大いに生かせるだろう。今日は実に運がいいらしい。

 

「とりあえず、ポイントゲット。ついでに今ので心操の個性の不気味さに気づいた奴らもいるだろう。初手は上手くいった。発目のアイテムのお披露目もしといたから文句ないだろ」

「いいですね!1位の人!あなた中々話せる人で使えそうです」

「彼岸だ。あと欲望丸出しにするにはまだ早い。第三競技がおそらく本選。そこで活躍したほうがより目立てるだろう。なら、この2種目目を何としても突破する。いいな?」

「いいですね!!あなた、本当に使えそうです!」

「お前が俺を物として見ているのがよーーくわかった。だがそれもまた良し。次に備えるぞ」

 

とりあえず一騎くずしたが、そう長く混乱はしている場合ではない。すぐに立て直してくるだろう。それにこちらを狙うのは先の2騎だけではない。

 

「四季、7時の方向。障子と…中に峰田、梅雨ちゃんがいる」

「了解!」

 

ほとんど背後から来る飛来物を槍で切り落とし、こちらに伸びてきた鞭のごとき蛙吹の舌を傷つけないように払う。

 

「一人で二人を背負ってしかもほぼ完ぺきに姿を隠すかよ。厄介な作戦思いつくな障子」

 

「俺のアイデアではないがな」

 

方向転換して相手を視認すると目の前にいるのは障子一人だけ。

だが先ほどの攻撃から察するに障子の背中、『複製腕』の個性で殻の様に覆われた中に、二つの顔がうっすらと見て取れた。 

 

「ちくしょう!おいらの初見殺しのアイデアを防ぎやがって。」

「流石ね彼岸ちゃん。 それに気づいた耳郎ちゃんも凄いわ」

 

騎馬を単騎で行えれば、確かにそれが一番機動に迷いは出ない。だが、それを為すには障子のように大きな体格が必要だ。それぞれの個性を生かした上手い作戦だ。

 

そして、それと同時にいくつかの騎馬がこちらを狙ってじりじりと距離をつめようとしている。

だが、俺の身体能力と槍という長物、耳郎のイヤホンジャック、発目の何が出るかわからない発明品、そしてさきほどB組の騎馬を触れたとたんに不自然に崩した個性不明の心操。

 

それらを警戒してどの騎馬も膠着した状態を作っているところで、

 

「っ!9時、緑谷たち、空!」

 

最小限の注意で、つまりはそれだけ余裕がない速度で、飛来するのは二人。

 

この騎馬戦で最も注意していた騎馬の二人。

 

その内の一人、あまりに見慣れたシルエットが太陽をバックに既に金属製の槍を大きく振りかぶっていた。

 

打ち砕く飛翔の槍(スマッシュ オブ スピア アナザー)!!」

 

音速を一瞬で超えた一撃は俺に、ではなくこちらの足場を崩す一撃。

いや、こちらの騎馬の足元だけではない。破壊の余波は10mはあった他の騎馬の連中の脚まで止めざるを得ないほどの振動と破壊痕を残す。

 

槍の穂先が丸く、重くつくってあったのだ。槍というよりは重り付きの棍棒か。

そこに更に突き刺さるもう一つの棍棒。それをもつのは…焦凍!

 

不味い。

 

そう思ったときには棍棒を中心として脚を止めた騎馬たちの足元を氷結が覆っていた。

 

出久が力で足止めして、焦凍の氷結を確実に行わせた。完全に考えられた作戦だ。

だが、二人とも空中。そのまま落ちればルール上騎馬を組みなおさないといけないはずだが。

 

そんな疑問を持つと同時に、答えは出た。B組の塩崎 茨。彼女の個性『ツル』は髪が茨状になっており、伸縮自在でその範囲も広い。それを二人に巻き付けることで一瞬で元の位置に戻して騎馬を組みなおした。

棍棒は八百万の作だろう。そして出久のパワーで焦凍と共にジャンプし、攻撃。塩崎が二人を即座に回収する。見事なまでのヒットアンドウェイだ。

 

槍に氷を砕くためのエネルギーを纏わせ自分たちの周りだけ砕く。しかしそれでも周囲は氷漬け。

足元がおぼつかない中では俺達の騎馬は囲まれている状態。

この状態から早く抜け出さないと、また緑谷たちが来たら不味い、とそちらばかりに意識を向けていたから、背後の気配に気づくのが遅れた。

 

「真後ろ。爆豪!」

「オラぁ!!」

「いつの間に!?」

 

こちらからまだ離れた位置で他の騎馬と爆炎を上げてやりあっていたはずだったが、チャンスと踏んだのか一瞬で飛翔し、こちらに飛んでくる。その首には既にほかの騎馬からとったハチマキが2,3枚握られている。

——おかしい。アイツの性格ならまず一番に俺か出久を狙いそうなものなのに、周りの騎馬との乱戦の中でポイントを取りながら、こちらが隙を見せた瞬間を狙ってきやがった。しかも、爆発なしでこっちに飛んで来た!?

 

爆豪が来るなら爆発音ですぐにわかる。だから離れていたのもあり警戒が薄かった。

咄嗟に槍でガードするが、爆発で壊される。舌打ちする間もなく、頭のハチマキをガードするように両手を上げると、今度も爆発もないままで元いた位置まで戻っていく。だが、その際に脚でこちらの顎を蹴り上げ、避けたと思ったときには首元にあったハチマキ、首にかけていた先ほどのB組から取ったものを奪取されていた。

 

爆豪の組は、拳藤さん、角取さん、飯田。そういうことか。こちらに飛翔するのに爆音がなかったのは拳藤さんが投げて飛ばしたから。そして回収したのは爆豪の腰を挟むようにつけられた角取さんの『角砲』の遠隔操作。それなら爆豪は攻撃だけに専念できるし、こちらが予想したような爆音もない。

そして視線の先では拳藤さんが大きくした手の平で帰ってきた爆豪を受け止めていた。

こいつは思ったよりもずっとヤバい。爆豪がなぜか冷静な上にチームとして機能している。あの才能を無駄にしている、天上天下唯我独尊を悪い意味で実践する爆豪が周りにしっかり合わせて行動している。何があったのかは知らないが、今の爆豪チームはかなりの難敵だ。

 

それに加えて出久と轟のタッグに八百万たちの万全のサポート。出久や八百万がいることからさっきのものとは違う策も練っているだろう。なんせこちらや周囲を崩してきたが、ポイントまでは獲りに来なかったのだから。

 

更に常闇たちを筆頭として、まだこちらを狙うに十分な力と気力を持った面々。

 

「……余裕はなさそうだな。皆、少し早いが、ここから2番目の策で行く。キツイかもしれないが、ついてきてくれるか?」

「当然!」

「勝つためならなんだってやるさ」

「私のベイビーたちを目立たせてくれるならなんでもやりますよ」

「…まぁよし。頼んだぞ皆」

 

3つのチームを主軸にして、騎馬たちは猛り、ステージの中を縦横無尽に駆けまわる。

その戦いも、場が煮詰まり、それぞれの手札を切ろうとしていた。

 

決着は近い。

 




次回で騎馬戦決着!

ですが、次の更新まではお時間をください。

緑谷出久にヒロインは必要でしょうか?あるいは必要なら誰がいいと思いますか?

  • 必要なし。あるいは主人公がヒロインだろ?
  • 原作ヒロイン麗日お茶子
  • ケロケロな蛙吹梅雨
  • B組もいいかも。
  • 壊理ちゃんでもええやん
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