いつかは終わるヒーローたちのアカデミア 作:Agateram
どうぞ今年もよろしくお願いいたします。
早速ですが、前回のトーナメント表、若干修正いたしました。プロットもどきと違うことに後から気づいた次第です。正しくは
左ブロック一回戦組み合わせ 右ブロック一回戦組み合わせ
『緑谷VS佐藤』 『耳郎VS口田』
『角取VS心操』 『轟VS八百万』
『尾白VS爆豪』 『発目VS塩崎』
『飯田VS拳籐』 『彼岸VS上鳴』
以上になります。申し訳ございません。
『おいおい!どうなってんだ!?一回戦緑谷、心操、そして、爆豪までが、全員1分以内の瞬殺劇だぜ!!』
プレゼントマイクのよく通る声が会場を震わせ、会場全体も選び抜かれたはずの精鋭16名がこうも簡単に勝敗が決まることに驚いているのかざわざわとして動揺が広がっている。
内容は当然、現在行われた一回戦の三試合共に10数秒以内で決着がついているという事実からである。しかし、プロヒーローたち、特にその練度の高い者たちしっかりと見ている。たとえ10数秒の中でも決して派手とはいかずとも濃密な駆け引きがあったことを見抜いていた。
それが解説するのが解説と司会の役目である。だから司会であるプレゼントマイクは古くからの旧友であるイレイザーヘッドを小突く。解説をしてくれという合図だ。イレイザーヘッドこと相澤はほぼ独学であっても個性に対抗する武術、特に捕縛術を中心とした近接戦闘にも造詣が深く、遠距離のヴィランとの戦闘経験豊富な雄英時代からの友人である。相澤はこのような目立つ場所が嫌いであるが、役目とあれば仕方なく、各戦闘の補足を行う。
『確かに戦っている時間は短かった。だが、その中でも紙一重だったところ、眼を見張るべきところだった場面はある。それに気づけていないのは仕方ないことだろう。誰もが武術や戦闘技術を知っているわけじゃない。それにそもそも出場者の内情を詳しく知らないから仕方ないだろう。
戦闘技術でわかりやすい例は、1戦目の緑谷だな。
増強系の個性同士、力と力のぶつかり合いになると多くの者が予想しただろう。だが、緑谷はそこをついた。緑谷は個性『フルカウル』は増強系でも上位に入る個性だが、制御を失敗すると自分の個性で自分の体を傷つけ、骨を折ったりするらしい。それほどの個性だからこそ、失敗した時のリスクを恐れて対人戦ではあえて個性無しの技術のみで1戦目を制した。この試合の見るべき点は個性無しでも相手を制することができる技量の高さだ。身長差で振り下ろすような右ストレートに合わせて相手の胸元に入り込む歩法と相手の勢いを利用した投げ技。そして相手が立とうとした瞬間に顎をかすめるだけの左フックと対角線上の頭をかすめるだけの右回し蹴りで砂糖の意識を完全に刈り取った。その技術は一年では1人を除けば頭一つ抜けている。まだ個性制御が未熟ということが玉に瑕だがな。
2戦目、これは詳細を省かせてもらうが、心操の作戦勝ちというところだろう。皆も見ただろうがアレは的を小さくするように走ってきて避けるような動作を見せた後にあえて角を受けた。確実に受けとめるために角取を誘導したと見るべきだろう。勝つために何でもやるという姿勢は合理的でいいな。
3戦目は他の二つとは別で相性差だな。近接戦闘が主な尾白と中距離から遠距離まで広域攻撃できる爆豪、その相性差を尾白が埋められなかった。まぁ仮に近接に持ち込めても爆豪は近接でも爆破をコントロールして独自の格闘戦を行うし、ゼロ距離爆破もできる。どの道勝つにはかなりの工夫が必要だっただろうな」
『OK!!解説サンキュー!!おかげで番組の尺もだいたい合わせられそうだぜイレイザー!』
『尺稼ぎのための解説じゃないぞ山田』
『本名はノーサンキュー!!さあて、次はA組とB組のクラス委員同士の激突だ!期待してなリスナー!!』
『今回は互いの臨機応変さが試されるな。チームを組んだからお互いにそれぞれの『個性』を知っている。だからこそどう相手に対処するか、見物だな』
会場の歓声を聞きながら、拳籐 一佳は深呼吸を繰り返し、入場口の少し手前、まだ姿を見えない位置で戦略を整えていた。
飯田の強さを理解している。自分よりも大きく重い相手が次元の違う速さで絶えず重い蹴りを入れてくる。2種目目に見せたレシプロバーストならば、最悪大拳の守りを抜けてこちらの意識を奪われるか、場外まで吹き飛ばされかねない。なら如何にして勝つか。如何なる力も届かなければ無力だ。そして、相手のスピードはこちらのはるか上。どうするか、答えは出ない。心の動揺を、緊張を示すように手がわずかに震える。その僅かが止まらない。
「何変なツラしてんだテメェ」
「爆豪…」
そんな中、今しがた尾白を瞬殺した爆豪が目の前に立っていた。
戦闘を行ったと思えないほどに怪我はなく、しかし肌には汗が浮かんでいる。
そして、勝者である風格が滲んでいた。
「テメェ、まさかここで負けるなんて思ってねぇだろうな?」
「は?」
「テメェはここで負けるようなタマじゃねぇだろ。テメェは俺が2回戦でぶっ殺す。覚えとけよ拳藤」
それだけ言って、爆豪は去っていった。
ただ自分の勝利宣言だけして去っていったのだ。自分が2回戦に上がってくることを前提で話していた。もしかして、あれは激励のつもりなのだろうか。だとしたら、
「すっごいムカつく…」
自分が勝ちたいからお前も勝てってことだろうか。どれだけ自信家で自己中なのか。
あんな輩はもう一発叩き倒されねばなるまい。
そう思ったらなんだか笑えてきた。そういえば自分はもう三回も叩き倒してきたのだったか。あの時の爆豪はおかしかった。彼には悪いがあの爆発頭は地面に這いつくばる姿なんてちっとも似合わないのだ。自信満々にイキっている姿の方がよほど似合う。
ああ、けれどそれを下から見上げるのは嫌だ。そのくらいならもう一度叩き倒してやろう。うん、あの傍若無人の化身にはそのくらいがちょうどいい。
「さぁて、行こうかね!!」
バシンと合わせた手のひらと拳が良い音を立てた。いつの間にか、震えは止まっていた。
『さあまずはA組だ。平面のスピードならばこの男!2種目目の最後の最後で勝利を持って行った立役者の一人、飯田天哉!!
そして続くはB組、パワーならばこちらが上だ!!見かけによらず個性はパワー派、使う武術を合わせた近接戦闘術は一撃でも致命傷だぜ、拳藤一佳!!
2種目目では同じ班、しかし今回は敵同士だ。だがそれは百も承知だろう。スピードVSパワー対決!勝つのはどっちだ!』
まだ春先とは思えない熱さを会場の中央に立った飯田は感じていた。それはきっと周囲から感じる視線、発せられる声が会場の熱気となって降り注ぐからだ。それだけの注目を集める中で、立った二人が戦う。それもお互いの『個性』を全開にして。身体が思ったよりも固く感じるのはその重圧を感じるからか。しかし、そんなことを気にしている場合ではもはやない。試合の時間はすでにすぐそこ。そして相手も既に覚悟を決めた瞳でこちらを見ていた。
拳藤一佳。第2種目でチームを組んでくれた信用おける人物。しかしその個性である『大拳』に捕まれば、それで終わりといってもいい力強さをもつ油断ならないものであることも理解している。一度体を捕まえられれば闘技場の外に投げ飛ばされる。あるいはその一撃をまともに受けても、無事には済むまい。あの拳には、それだけの力とリーチがある。なら勝つためには、どうするか。決まっている。
『READY!START!!』
スタートと同時に、全力疾走を開始する。ただし相手への突撃ではなく、その周囲を大きく円を描くように走り抜ける。
『エンジン』の個性はその性質上、最大ギアまでいくのに助走を必要とする。だからその起こりを抑えられることが一番嫌な方法だったが、もはやその心配はない。なぜなら、既にギアは最大まで上げた。後は蹴りぬくのみ!
ズドン、と重い音が響く。帰ってくる反動からして、拳藤君を軽く吹き飛ばせるくらいの威力の蹴りが彼女に当たったが、彼女はその場所から微動だにしない。
個性『大拳』で大きくした手で自分自身をすっぽりと覆い隠すようにガードを固めていたからだ。流石のパワーだが、それは悪手だろう。確かにこちらのスピードで蹴りぬいても致命打にはならないが、そもそもその状態では縦横無尽に動き回るこちらを視認すらできないはず。だが、それでも迂闊に近づくのは危険。ならばとる方法は決まっている。
最高ギアでの、ヒット&アウェイ。
レシプロは使えない。あれは一時的に限界以上の速度を出せるがその後にエンストして機動力を失う。そこを捕まればアウト……もしやそれが狙いの防御か?そうだとしたらますますレシプロは使えない。このまま、攻め続けさせてもらう!
「うわぁ……滅多打ちじゃねぇかよ」
「う…これ、止めたほうがいいんじゃ…」
峰田君や麗日さんから、そんな声が聞こえるくらいに戦況は一方的だった。
拳藤さんが守りを固めて、その上から飯田君が蹴っては離れ、蹴っては離れを繰り返し、もはやサンドバッグ状態に見えなくもない。会場からもチラホラとそんな意見が聞こえてくる。でもたぶん違う。
「このままいけば、不味いよ飯田君」
しかしぼそりとつぶやいた声は、彼には届かない。
しぶとい。いや、流石というべきか。これだけ打ち込んでも防御はなかなか揺るがない。
だが、それももう少しだ。徐々にだが確実に聞いている。当然だ。今の僕の速度は60キロは超えている。その勢いで蹴りぬくのだ。いかにパワーがある個性だろうと速度と体重を乗せた蹴りでダメージは蓄積している。その証拠に防御に使っている手、その指の間が少しずつ広がっている。蹴った場所、特に指先は既に限界が近いはず。ならばそこから崩す。
そう判断して、彼女の左半身、巨大化した薬指が守る場所を蹴りこもうとした瞬間、対象が一気に縮んだ。いや、『大拳』の個性を解いたのか!ならば此処こそが勝機。一気に蹴りぬく。
そうして、試合を終わらせるつもりで振り抜こうとした足は、確かな衝撃こそあったが、降り抜けなかった。彼女が、こちらの足をつかんでいたからだ。身体ごと脚を抱きとめるように、体であえて蹴りを受けてこちらの脚を止めてきた。何という無茶を!だが、これは不味い!
互いにほぼ密着状態。この距離からでは相手に決定打を打つことは難しい。パンチを放とうとしても手打ちになってしまい、どうしても威力が足りないからだ。だが、それを覆す手段が彼女にはある。そう考え、何とか逃げようとした脚は絶対に離さないとばかりにいつの間に再度肥大化し左手に抱え上げられ、右拳は小さいままに、しかし触れる瞬間にその大きさを一瞬で変えて、僕が記憶しているのはそこまでだった。
「大・寸・勁ぃぃぃ!!」
裂帛の気合の声と共に放たれたのは、正に乾坤一転。
ほぼゼロ距離からの速さだけで威力がない手打ちを個性によってインパクトの瞬間に『大拳』を発動させることでスピードに重さを乗せた『寸勁』もどき。その威力は男性一人など悠々と闘技場の外へ吹き飛ばし、その意識も刈り取った。
一方拳藤も意識が若干朦朧としていた。小型バイクを正面から受けたようなものだ。この程度のダメージは予測済み。彼女はバイクが好きだ。だからあの速度と体躯がどの程度の衝撃を自分に与えるかも、おおよそわかっていたし、その威力とタイミングをつかむために何度も防御の上から受けた。だがそれを個性で強化された手と生身で受けるのでは条件が違う。事実、拳は傷だらけ。その上からとはいえ何度もくらった蹴りのダメージは体中に重りをつけたかのような倦怠感と痛みを拳藤に与える。
『大、逆、てぇぇぇん!!劣勢だった状況を気合と根性の一撃で覆し、試合を制したのは1-Bのクラス委員!拳藤一佳だ!!』
プレゼントマイクの声に反応して、勝利の実感をようやく得た。会場からの歓声は勢いよく彼女に降り注ぐ。ならここは黙って引っ込む場面でも、その場に崩れ落ちるところでもない。ヒーローなら、自分が目指すヒーローならこうするだろうと思い、傷だらけでも、勝ったのは自分だと誇り高く拳を掲げることで歓声に応えた。
一回戦第4試合 勝者 拳藤一佳。
そうして、彼女が膝をついたのは、会場から見えなくなった通路に入ってからだ。脚が、体が思うように言うことをきいてくれない。それだけのダメージが防御の上から、そして大拳のままでは捕えきれないと判断したが故に体全身で止めた一撃によって体に爪痕を残していた。
このまま寝てしまおうか、そんなことを思った瞬間に、担ぎ上げられた。
「……なに、してんの?爆豪?」
「うるせぇ。なに一人でぶっ倒れようとしとんだテメェは。次の試合で俺がぶっ殺すっつっただろうが。………救護室のババぁの所に行く。テメェは次に俺にぶっ飛ばされるまで寝てろ」
先ほどの2種目目で組んだ傍若無人の爆発頭は、あろうことか女子を許可なく俵担ぎして歩き出した。そこはこう、もう少し優しく抱き上げるとかあるだろうと思うがどうにも意識が遠い。だから文句は今度言おうと心に決めて、意識が途切れる前に二言だけ言った。
「ありがと。けっこう優しいじゃん爆豪」
それを最後に拳籐一佳は完全に意識を手放した。
その様子を見て、爆豪勝己は苦々しそうな顔をして、しかし手は離さずに一言うるせぇと負け惜しみのようにつぶやくのだった。
『さあさあ一回戦もいよいよ後半戦だぜ。右ブロックの組み合わせはどう思うよ解説のイレイザー?』
『いくつか相性が悪いものがあるな。何か対策を立ててないと覆すのは難しいだろう。』
その宣言通りに右ブロックは進む。
相性といってもその性質は様々だ。例えば場所の相性差が明確に表れたのは右ブロック1戦目、口田と耳郎の試合だった。
口田の個性は『生き物ボイス』。これは周囲に自分以外の生物(人間以外)がいる場合、かなりの強個性となる。人間以外の生物へ命令を下すことができる個性であるため、場所によっては大量の鳥や猫、犬などを操れる。まだ本人が苦手として無理であるがなんならムカデやハチ、サソリといった毒を持つ虫なども操ることができるのだ。森や大量に動物たちがいる環境ならば、この体育祭でももっと上位に行けただろう。
だが惜しむらくは場所が悪い。人に埋め尽くされ、歓声が入り乱れるこの場所に限っては操るための声を動物に届かせることができない。せめて拡声器などのサポートアイテムが使えれば違っただろうが、結果として口田は肉弾戦のみで決勝種目を戦うことになり、そうなれば異形型のパワーと体躯があろうともリーチが長く、内部に音を響かせれば一撃必倒すら狙える耳郎の敵にはなりえなかった。
発目と塩崎の試合は逆に個性の独壇場だった。発目が公平にとアイテムを相手に渡そうと提案するが(もちろん自分のアイテムを目立たせて売り込むため、そして自分のアイテムであるためその性能、弱点を知っているので試合も長引かせることができるという下心のみであるが)潔癖かつ清廉を旨とする塩崎は自分の力だけで挑むことこそ、発目という2ヶ月に満たない期間で数えきれないほどのアイテムを作った鬼才への礼儀であると解釈し、結果として1分と持たずに大量のツルに捕まって発目は場外へ運ばれた。最も発目 明という少女は敗北してただで起きるような発明家ではない。すぐさま物量で押された際の対処可能なサポートアイテムの制作に取り掛かるために、一回戦が終わると同時に会場すら後にして研究室に走っていった。
秒殺で終わったこの2試合と比べて、観客の目を惹いたのは、他の2試合。
推薦入学という入学者の中でも特にエリートである轟vs八百万。
そして彼岸vs上鳴。遮蔽物無し、奇襲なしの一対一ならば、つまりはこの試合の場ならば圧勝すら可能な広域殲滅能力をもつ轟と上鳴に対して、彼岸と八百万がとった戦法は、観客の度肝を抜くものだった。
轟戦と彼岸戦は一回戦もちゃんと書こうと思って右ブロックの他の試合はダイジェストでお送りしました。
まぁ正直そうしないとまた長々とした文章になってしまうので。
あと違和感を持たれた方も多いかもしれませんが、爆豪君がマイルドになってらしくないことをしています。そして『負け惜しみ』のように呟いていますね。つまり、まぁキャラ変というか、なんというか、人を変えるのは友情、敗北、勝利、あとはまぁ、わかりますよね?珍しいでしょうが、一応理由というか言い訳はあるので、その辺りはまた次の次辺りで。
アンケート、まだ募集しております。またできたら感想をいただけたら幸いです。正直処女作なので、何がいいのかよくわかっておりません。皆さまのご意見をいただけたら嬉しいです。そして何よりモチベーションが上がります。厚かましい物言い、失礼いたしました。
それでは皆様、良いお年を。
緑谷出久にヒロインは必要でしょうか?あるいは必要なら誰がいいと思いますか?
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必要なし。あるいは主人公がヒロインだろ?
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原作ヒロイン麗日お茶子
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ケロケロな蛙吹梅雨
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B組もいいかも。
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壊理ちゃんでもええやん