いつかは終わるヒーローたちのアカデミア   作:Agateram

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ようやく、オリ主の個性が出ます。

まあ最後にちょっとだけですが。

拙い作品ですが、見てくださる方がいるのなら、最後まで続けていきますのでよろしくお願いします。


第3話 諦めろという俺 諦めなかったアイツ そして今

「甘えるなクソガキ!」

 

吠えた俺の声にビクリと華奢な少年、緑谷出久の体が震える。

だがその姿に、その何かに縋りつかないと立てもしないような弱々しさがかつての自分とあまりにそっくりで、立ち去ろうとした足は動かず、感情は口を動かした。

 

「俺がここでお前はヒーローになれないと言えば、お前は諦めるのか!

ヒーローになりたいなら、泣くな! 己がそう決めたのなら揺らぐな!

本当にヒーローになりたいなら、誰かを助けたいなら、そんな暇なんてない。

無個性なら、なおさらだ。身体も、知識も、技術も、鍛えようとすればもっと鍛えられたはずだ。」

 

 

だが、それもない。少年はお世辞にも良い体格とは言いづらいが、それでも両手が両足があり、目も耳も、おそらく身体も健常だ。だが、それだけ。鍛えている形跡はない。それが、余計に心を騒がせた。

 

無個性でも、身体と技術を鍛え上げればそこらのヴィランになど負けない程度にはなれる。

そうなれる可能性がありながら、この少年が抱いているのはその頭で考えたヒーローの観察日記のようなモノだけ。

 

情報は大事さ。敵も味方も、まずは情報ありけりだ。対策も連携もしやすいだろう。

だが情報や分析だけしてても、実行に移せないのではただの紙きれと何の違いがある。

 

「お前がやっているのは机上の空論だ。そんなもので人が動かせると思うな」

 

返答は、ない。

期待もしない。その涙があふれる瞳で、前が霞んだ目で、助けるべき人が見えるか?

否、考える必要もなく否だ。

 

「あげく、今無様に誰かに答えをもらおうとしている。

誰かに肯定してもらいたいと、そう願っている。ふざけるな!誰かに何かを言われた程度で諦める程度の脆弱さで助けられる者なんか何もない!」

 

何を熱くなっているのか。

相手は10を少し超えただけの子どもだ。わかっている。これは理不尽極まりない叫びだ。この子が悪いわけでも、この子の両親が悪いわけでもない。ただ個性という超常が、幻想が、この子には宿らなかったから、夢を見ることさえできなかった。そんな運の悪いだけの子どもだ。運命にそうはならないとつき尽きられただけの子どもだ。

 

何も責はない。けれど、それでも

 

「俺がヒーローにでも見えるか!?そんなわけねぇだろう。こんなもの戦い方も個性の使い方もわかっていない子どもを力で抑えているだけだ。力だけの正義なんてただの暴力。ヴィランと変わりない。けど綺麗ごと言うだけの正義なんてただの無力だ。ヒーローになりたいならせめて体と技術くらい身に着けろ

両手を合わせて、膝を地につけて祈る暇があるなら、一歩でも多く走れ。一回でも多く拳を振れ!

最低限、死ぬ気で努力してから出直してこいクソガキ—— 今のお前は、ヒーローにはなれない。」

 

苛立ちを年下にぶつける、これではどちらがクソガキだというのか。

間違いなく、俺のほうが餓鬼で、くそったれな生物だ。

 

けれど、この目に映った景色が、この目が映した過去が俺に最後まで胸の内をさらけ出させた。何を偉そうに言っているのか。

自身など、その少年のような夢すら諦めた残骸のくせに。

 

そんな風に考えていたから見逃した。

俺が逃げるように去っていく背中を、見る瞳を。

その体が放つ『色彩』が輝く様を見逃したのだ。

 

それから1年後、俺たちは争乱の中で出会い、クソガキ——緑谷出久との長い付き合いが始まっていくのだが、それは思い返すのは、また今度だ。

 

何故なら、そんな暇がもうなさそうだからだ。

 

 

「出久止まれ。そのマンホールの下、嫌な色が見える」

 

 

俺の声に反応して、出久はカバンを左手だけに持ち替え前に突き出し、右手を曲げて拳を握った。即席の盾と、自分が一番信頼する拳を即座に構える出久に頼もしさを覚えながら、俺もカバンを放り投げて拳を作って、顎の前に盾のように構えた。

 

同時に、マンホールのふたから粘液が凄い勢いで噴出し、悪臭を感じる前に俺たち二人合わせても足りないほど大きな影が、二人を襲った。

 

同時に、俺たちは左右に跳ぶ。

相手は流動性のあるものになれる『個性』。あるいはそういう個性をもつ『異形型の個性』。

 

「MとLサイズの……隠れ蓑が二つ…。一つは殺して一つは奪う…」

 

そして、今瞳を確認した。こちらをただの道具としかみていない目だ。同時に個性による『色彩』確認。色は黄土色、しかしこの眼がとらえるのは照らすような光ではなく周りを侵食するような影。気持ち悪い。見るだけで吐きそうな色に、ついでにマンホールの中から出てきたからか、元からなのか悪臭までしている。そしてそれが俺たち二人を視認して体当たりしてきた。おまけにどちらかを殺す発言を公然としてきた。命の危機。ならば個性を使ってもよい非常事態であることは対外的にも証明されたと思っていいだろう。

 

つまり、こっちも全力でぶっ飛ばしてもOKだ。

 

「出久!相手はまともな攻撃は効果ないかもしれん。対処法はわかるな!」

「固まらせる個性持ちを待つか、それに類する道具を使うか、まともじゃない方法で倒す!」「なら答えは一つだな」

 

発言とほぼ同時、俺と出久が左右の壁を蹴り、その勢いのまま互いの拳が相手の頭と思われる目がある場所を一息で振りぬいた。ラリアットのような一撃は互いに交差するぎりぎりで振りぬかれ、その分僅かではあるが、相手の身体が回りに飛び散った。

 

「こ、このガキども」

 

痛みを感じた形跡、なし。つまり痛覚はほぼないと仮定して良いだろう。

 

好都合だ。思う存分にやれる。

 

「四季、できるだけ吹き飛ばそう。原型留められないくらいコマ切れにすれば無力化できそうだ。ただ捕まえようとしたら、その場から身体ごと移動して。さっきの感触からして手で振り払ったくらいじゃ効果なさそうだ。攻撃するならできるだけ当てる面積を大きく!」

「OK。いい判断だ出久。とりあえず俺が前に出るから、その間にヒーローか警察に連絡頼んだ」

 

相手の分析、及び、こちらへの脅威確認。これなら個性を使っても文句はないだろう。故に自身の個性の一端を開放するための、準備を口にする。

 

『紅く目覚め、夏の太陽のように視界の全てに手を伸ばせ。』

 

個性の使用は私有地など特別な場所以外では許可が必要だ。だが、例外もある。それは、例えば自身の命に危機が迫った時のような非常事態だ。相手の詳細事情などわからない。しかし、この瞳にとらえた『色彩』は既に地下の相手が誰かの命を奪っているような外道だと判断した。そして、実際にいきなり襲い掛かられた。故に、迷いはない。

 

彼岸 四季。その個性の名は『春夏秋冬』

 

四つの側面を持つ、一つの個性。

それが俺の個性。

そして、最も単純で、戦闘向きなのが、『夏』を冠された個性。

その能力は簡単に言えば、強化。

何を強化するのか。それも単純明快。

全て、だ。

 

瞬発力、持久力、耐久力、視力、聴力、嗅覚、触覚、反射神経、運動神経、思考能力から第六感といわれる直感に至るまで、全ての力が生物として人間の範疇を、常識を超える。

 

ただし、その強化率は時間と効果が反比例している。

つまり強化率を高くすれば、短時間しか活動できない。

逆に強化率を低くすれば、数時間以上の活動が可能だが全ての強化が最高強化とはくらべものにならないほど弱々しくなってしまう。

 

とはいえ、今はそれは関係ない。

先ほどの攻防から見ても、相手は自身の物理攻撃をほぼ無効化する個性に胡坐をかいて、たかだがちょっと鍛えているだけの中学生の攻撃をまともにくらう程度だ。

油断ならない個性だが、脅威になるだけの存在じゃない。

 

「なめるな!俺にはお前らの攻撃なんてきかねぇんだよ。さっさと身体よこせ!!」

 

身体をよこす。

つまりは身体の中に入って隠れたり、操ったりもできるのだろうか。

なるほど。情報はありがたい。そしてこいつが馬鹿で、ずいぶん慌てているのも今の会話でわかった。

 

急いでいる。何かに責め立てられるかのように急いで俺たちの中に隠れるなどという行為をしようとしている。だから行動が一直線だ。

 

だから俺がとった行動も単純だった。

 

正面からの迎撃。

引くことなどなし。むしろこちらも突撃を開始する。

ただし、先ほどの出久のアドバイスは忘れずに。

 

今そこらにある物体で、相手の攻撃を防ぐ硬度があって、なおかつ面積が広いものは、すぐ見つかった。即座に隙間に指を引っかけて引き抜き、片手をつかみ上げて、大きく振りかぶる。

 

 

俺が手にしたのは武器というにはあまりに異質だった。

それは金属の塊だった。

それは武器になるような刃などはついていなかった。

それは綺麗な円形をしていた。

それはいつもなら道路など、地面についている物だった。

 

もうお分かりだろうか。マンホールの蓋である。

ただし、これは金属製、大きさ90cm、重さは実に100キロ超。

 

盾にも武器にも使える便利な鈍器である。そこらにあるし、硬度、攻撃面積、重さも申し分ない優れものだが珍しくもないだろう。

まあもちろんそんなものを武器にする阿呆など俺は見たことがないが。

 

「は?」

 

強化した五感が相手の流動体の中にある眼球の瞳孔が驚きで開いたのと間抜けな声を確認した。

 

うん、殴るならあそこが良さそうだ。

これがホントの目印ってやつか。

 

そんなどうでもいいことを感じつつ、相手の眼球めがけて最初のマンホールフルスイングが炸裂した。

 

 

 

 




流動体の相手には直接攻撃って効きにくいですよね。たぶん。
ならどうするか。

オールマイトみたいな常識外れの超パワー?いや、無理です。
エンデヴァーみたいな流動体でも効果があるような特殊攻撃?
そんな便利な個性はそうそうない。

だったらどうするか?
そんなことを考えた時に大きな鉄塊が転がっていました。
それは蓋だった。けれど、ただの蓋というにはあまりに重く、分厚く、そして振り回したら楽しそうだった。

つまりはそんな感じで、主人公が初めて使った武器はマンホールの蓋です。

次は10月11日に投稿予定です。
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