いつかは終わるヒーローたちのアカデミア 作:Agateram
久方ぶりの更新になります。
更新頻度はしばらく下がります。
なので書けたところまでとりあえず投稿していきます。
3月いっぱいまでは週1更新は難しいと思います。読んでくださっている皆さま、誠に申し訳ございません。
未完で終わることだけはしませんので、どうか気が向いたときに読んでいただければ幸いです。
Evern様、誤字報告ありがとうございます。誤字がまだまだありますが、とりあえず先を書こうと思います。
「ずいぶんな負けようだったな出久」
試合からA組に割り当てられた観戦席に戻った僕に放たれたのは鋭い指摘の声だった。
声の主はやはりというか、硬い表情でこちらを見ていた。
「何言ってんだよ彼岸。緑谷は漢らしく勝ったじゃねぇか」
「試合にはな。だけど、実戦なら死んでいたのは出久だ。これを負けといわず何と言う」
切島君の反論にしっかりとした口調で視線を僕から外さずにそういう四季の目は厳しい。
それは死線を超えるような間違いを犯した時に彼を正そうとする時の彼の師匠と同じ目。
厳しさと怒りと、その奥にある心配と優しさが見える彼らの瞳。
その指摘の正しさと、そして彼の優しさに応えるために僕もできるだけ真摯に彼と向き合った。
「確かに負けた。一つの試合の勝ちを拾うために一回死んでた。試合でなく、戦いなら今頃死体になって無様に転んでいるのは僕の方だった」
「わかっているならいい、なんてことは言わないぞ。負けたら自分の命を、守るべき誰かを失う。それがヒーローだ。この敗北をお前が忘れた時、お前はヒーローじゃなくなる。覚えておけ緑谷出久」
四季は冷たく鋭く指摘する。それは正しい。どこまでも正しい言葉だ。ヒーローなら、負けて次がある戦いなんて一つたりともありはしない。負けは死だ。そしてそれは自身の死では終わらない。そんなものは大したことではない。
大切なのは、大事なのは、自分が守ろうとした誰かの命が失われる。そんな最悪を含んだ死だ。ヒーローにも敗走はあり得るだろう。負けても守るべきものを守っての撤退なら、許容範囲だ。しかしただ負ける、一矢も報いず、後にもつなげず、守るべきものを守れない、そんな完全敗北などあり得ていいはずがない。
それが、緑谷出久と彼岸四季が唯一共有するヒーローの在り方だ。だからこそ
「当然、忘れないよ。この敗北も。生きているなら全て次の糧にしてみせる」
その言葉を聞いてから、ようやく四季は視線をこちらから外した。観戦席から腰を上げて未だ座らずに立っていた僕だけに聞こえるようにすれ違い様に声を発した。
「お前の中のソレ、何か掴めたか?」
何故わかったのか、なんて声を発する真似はしない。
元よりこの個性『ワンフォーオール』に、様々な色彩が見えると四季は言っていた。
僕が先代たちに合う前から、彼は『ワンフォーオール』の中に先代たちの生命力が、魂が、あるいは心と言われるものが残っていることを知っていたのだ。
先ほどの洗脳をくらった際に、僕がまた現実ではないどこかで先代たちと会ったことを、その『春夏秋冬』の個性でわかったのだろう。
「転んだなら、ただで起きるなんて真似はしないよ。岩でも砂粒でも掴んで次の武器にする。基本でしょ?」
僕の返答に満足したのか、彼はその仏頂面のままにしかし足取りは軽く観客席を後にした。
「緑谷くん、大丈夫なん?」
「大丈夫。負けそうになったけどダメージはないよ。それに、この試合もその後も是が非でも見ておかないとね」
心配してくれる麗日さんに笑顔で返してから、一転して自分でも目を鋭くして試合会場を見つめる。
そこでは僕の次の試合が既に始まっていた。即ち次の僕の相手を決める試合であり、昔からの知り合いである爆豪勝己とB組のクラス委員である拳藤一佳さんの試合。
そこでは苛烈と言えるだけの遠距離戦が展開されていた。
「もう、一つ、行くぞーー!!」
「クソうっぜぇ!!」
個性『大拳』の拳藤と『爆破』の爆豪。当然試合は距離を詰めたい拳藤を爆豪がどうさばくか、そういう勝負になると会場のほとんどが思っていた。
だが蓋を開けてみれば、試合は全く違う様相を見せた。
拳藤が試合開始と同時に闘技場の床を思い切り殴りつけ、床を割ったかと思えばもう片手で割れた手ごろな石を爆豪に向かって投擲したのだ。ただの石投げと侮るなかれ。投擲された手ごろな石は、彼女にとっての手ごろな石だ。そして個性『大拳』にとって手ごろな石とはつまるところ世間一般では岩であり、その重量は成人男性の平均を凌駕する。それを投擲できてしまうのが彼女の『大拳』。拳という一部のみ肥大化するだけの個性と思われがちだが、自分の体よりも大きくなった手の平に合わせるように身体能力自体が大幅に強化されるのだ。それによって繰り出されるパワーは一年生でも上位に入る。
そのパワーで繰り出される岩つぶて。一撃でもマトモにくらえば最低でも骨折は必至。試合を決めるだけの威力をもったものを拳藤は連続して投擲する。
対して爆豪は手のひらからの爆破で石を破壊する。
だが今のところ、非常に珍しいことにそれだけ。つまりは防戦一方だ。
理由は二つ。相手の岩つぶては一つではなく、手のひらに握れた複数の岩と石が混じった言わば散弾のようなものであったこと。これによって抜群の反射神経を持つ爆豪でも被弾なしで避けるのは難しい。
もう一つは相手にタメがほとんどないことと爆豪の爆破にはわずかにタメが必要なことだ。これは爆豪自身が爆破の源が自身の手のひらから出るニトロによく似た性質を持つ爆発物質であることが原因だ。飛来する岩ごと相手を爆発するには多少なりとも爆破の元になる液体を出すタメがいる。その時間を稼がせないように相手は左右でフックを打つように横投げで岩を投げ続けることでラッシュをかけてきている。
無論この硬直を打破する術はある。自身の最大火力を無理やりにでも使えば、手に反動は来るだろうが、岩ごと相手を爆破で吹き飛ばせる。しかし、その程度のことを考えないほどに相手は容易い雑魚か?
爆轟の答えは否だ。
拳藤一佳は頭もキレる。そして負けず嫌いな女だ。この試合も勝つために戦っている。
ならば、この岩を投げるだけの単調な攻めが手ではない。なんせ試合が始まってそれほど時間が経っていないが、それでも爆破の威力は高くなってきている。それは爆豪勝己の個性である『爆破』は体があったまってくるほどに手のひらの爆発物質も出てきやすくなる性質を持つ、本人の気質とは真逆のスロースターターな個性だからだ。
このままだならあと数分もしない間に腕に負担がなく、強化されていった爆破だけで決着がつく。それだけの単調な試合になる。
第2種目で組んだ相手同士、個性はある程度把握している。なら時間が経過するほど不利な状況になるのがわからないはずがない。
——なんか企んでんだろ。だが、関係ねぇ。全部正面から叩いて潰す!だから、
「来いよ
獰猛な笑みを浮かべて、両手を広げて立つ相手に思わず笑みが漏れる。
名前を呼んでくれている。こちらを相手として認めてくれている。
爆豪勝己は天才。格上。自分よりも実力は上。
そんなことはわかっている。だけど、戦いは格上が必ず勝つなんて簡単なものじゃない。岩つぶて……砕大拳と名付けた技の連続はあくまで眼くらまし。
そんなもので勝てるなら、決勝種目まで残っているわけがない。こんなに勝つために戦略を練るはずがない。
勝つための条件は、個性の関係上どうしたって私の射程に入ること。つまりは近接戦闘に持ち込み一撃で決着をつけることが理想。
爆豪は近接戦闘も優れている。生半可な技でも近接戦闘でも遅れをとるかもしれない。だからこその一撃決着狙い。
だから、少しずつ投げる踏み込みをする度に、少しだけ、気取られないように距離を詰めた。全ては乾坤一擲の一撃を当てるために。
初動は砕大拳と同じ。眼下の岩を左手で砕き、右手で掴み投げる。
当然、相手はそれを無視できずに迎撃するだろう。
そこが、狙い目。私の勝機!
投擲して即座に片手を通常サイズに戻す。そしてもう一つの肥大化した手のひらを使って、全力で自分の体を斜め前へと押しだした。
同時に『大拳』を解除し、押しだしたその身に頭を前へと押しだすことで縦回転を加える。
爆発が岩を粉砕した音と煙が見えたが、気にしない。寧ろその起点に爆豪がいるという証拠になってわかりやすい。
砕大拳を囮にして、大拳にて自分を最大速度で押しだし、最大威力の一撃を撃ちこむ。
爆豪がいくら頑丈でも、この一撃が決まれば、この手が届きさえすれば勝てる!
そうして私が全力を込めた一撃を放とうとした瞬間に、
「ようやく、近づいたな拳藤。」
目の前に、宙に飛んだ爆豪がいた。
読まれていたんだ!目くらましも、自分が距離を徐々につめていて一気に勝負をつけにいくつもりであることも。
でもここは私の距離!最大威力の掌底を当てるために手の平を肥大化し、その手を回転の勢いすら利用して相手を叩きつけようとして、
「俺相手に空中戦とはいい度胸だ!だがそれがテメェの敗因だ!」
空中を踊るように手のひらの爆発だけで駆け抜ける。それはどれほどの体幹とバランス、個性の制御が必要な技巧だろうか。宙を駆けることが叶わないこの身では創造もできない。届けと願い、振り下ろした拳はその複雑な軌道と体さばきで避けられ、空中でスピンをするように爆豪が体を躍らせて、気づけば背後を取られた。
感じるのは背後の襟ががっちりと掴まれた感触。身体を浮かされるように背中を押し体制を崩す爆破。背後から個性の爆破を利用した変形の背負い投げだと悟ったときには既に体は場外に向けて放り出されていた。
悔しい。悔しいけど空中で、この勢いで投げられて、受け身は取れても闘技場内で戻れるような技術や個性は私にはない。
「ああ、ちくしょう!頑張れよ爆豪!」
そんな負け惜しみと激励を交えた言葉を最後に、その体を場外へと投げつけられた。それで、おしまいだ。
——たりめぇだクソが。
そんな言葉を聞いたような気がして、クスリと笑いながら準々決勝第2試合目は決着がついた。
準々決勝 2回戦 勝者 爆豪 勝己
あと一話投稿したら、また少し時間が空きます。ちょこちょこと書いていますので、少々おまちください。
あとこの小説、もうお分かりの方も多いと思いますがちょいちょい原作にはないカップリング要素もあります。そのあたりは寛大なお心でお許しください。
緑谷出久にヒロインは必要でしょうか?あるいは必要なら誰がいいと思いますか?
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必要なし。あるいは主人公がヒロインだろ?
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原作ヒロイン麗日お茶子
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ケロケロな蛙吹梅雨
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B組もいいかも。
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壊理ちゃんでもええやん