いつかは終わるヒーローたちのアカデミア   作:Agateram

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書けた側から投稿していくスタイル。
しばらく休みがないので次回からホントに間が空きます。


第43話 決勝種目 準々決勝④

 

 

『さあ準々決勝もいよいよラストだ!長い雄英体育祭の歴史の中でも、選手宣誓で優勝宣言をしたのはコイツくらいじゃねぇか?1年でもトップクラスの実力は既に周知のとおり!あと3つ、勝って有言実行なるか!? 1-A 彼岸 四季!!』

 

『綺麗な花には棘がつきもの!!2種目目ではA組とB組の枠を超えたチームでの見事な立ち回りで彼岸チームからポイントを奪った実力者の一角!B組最後の選手として意地を見せてくれよ!1-B 塩崎 茨!!』

 

 

「試合前にカッコ悪いところを思い出させてくれる。とはいえ、確かに騎馬戦では貴女の立ち回り、茨を操る個性も、清廉な意志も、見事なものだった。」

 

騎馬戦での事を思い出し、その瞳で見える色彩の澄んだ色に賞賛を贈る。

闘技場で相対する髪が茨の個性を持つB組、塩崎茨。聖女の様な見た目と敬虔な信徒のような振る舞いとは裏腹に、その実力は緑谷、八百万、轟という1-Aでも実力、知能が長けた三人からも認められたほどの応用力を持つ実力者。

 

「ありがとうございます。そして、こちらからも言わせていただきます。

選手宣誓に始まり、1種目、2種目と生徒たちの先導し、諦めを打破させて、その実力を発揮させようとするその気骨と手腕、お見事でした。」

 

「ありがとう。ならお互い全力で、と言いたいところだが、一つだけ確認したい」

 

「確認?なんでしょうか?」

 

「君の髪、その茨だが痛覚はあるのか?切られて痛むとかそういうことがないか。それだけ確認したい。」

 

相手は一瞬ポカンと呆けたような表情をした後に、塩崎さんは鋭く目を細めてこちらを見てきた。

 

「……ある、と言ったらどうなさいますか?」

 

「拳と蹴りで応戦する。違うなら斬る。」

 

「……紳士的ですね。しかし、それは私がヴィランでも同じ対処をなさいますか?」

 

問いに対して、問いを重ねられた。そして彼女の双眸が語るのは、どちらにしても遠慮は無用という覚悟と舐めるなという意地。

 

ああ、見た目など本当に当てにならない。

 

「謝罪しよう。まだ貴女を低く見積もっていた。申し訳ない。

代わりに、全身全霊を賭して、いや、それすら超えて貴女を倒す。」

 

「ええ。それでこそ、です!ここに至って気遣いは無粋。わたくしも、優勝するつもりでここに立っています。全力で、真っ向から貴方を倒します!」

 

お互いが、互いの覚悟を完了させたところで、ミッドナイト先生が手を上げる。あの手が下がった瞬間に試合開始だ。

しかし、審判であるミッドナイト先生は、本来ならアナウンスがあった時点で試合開始をしていいはずだが、俺達のやり取りを面白そうに見ていた。今も頬を紅潮させて満面の笑みを浮かべている。話し始めた俺が言うことじゃないが、あの人、ホントにこの大会楽しんでるな。

 

「さあ!思う存分ぶつかり合いなさい!試合、開始!!」

 

開始と同時、彼女が神にでも祈る構えを取った瞬間、その頭上の髪、茨であるそれが一瞬で膨れ上がり、津波のように襲ってくる。

 

開始早々からの全力の面制圧攻撃!

 

この物量、2種目目で船体と轟たちを微動だにさせなかった一本一本の強度から考えるに、単純な力押しでは攻略は至難。

 

『大いなる星の息吹。秋にもたらされる恵みのようにその力の一端をここに譲り受ける』

 

迫りくる茨の波から全力で後退しつつ、言葉を紡ぐ。求めるのは刃。通常の剣では足りない。手にするのは大剣。強化した身体能力で

 

「真正面から、切り捨てる!!」

 

言葉と同時に振るわれる太刀筋は一閃に留まらない。

目の前の全てを蹂躙せんとする茨を、目の前の全てを切り裂く剣で対抗する。

 

正に真っ向勝負。ただし、先に根を上げるのはこちらだ。

 

それは体力でも、物量に圧されるわけでもない。

 

こちらの大剣が実体として保っていられる時間が短いからだ。これは出久も知らない俺の『秋』の力で作る物質なきものが、この世界に留められる時間には限界時間があるのだ。そりゃ実体がないのに実体あるものに干渉させている荒業だからか、俺の生命力を形作る技量の問題か。

とにかく、このままじゃジリ貧。打開する術はあるが、使えば決勝までは持たない。

俺の生命力は無尽蔵ではないのだ。簡単にいればRPGであるMP。強化などで常にその力は失われていく。

『秋』の力で自然などから生命力を分けてもらって回復はできるがそれは微々たるもの。本格的に回復しようとすれば、深い眠りにつく休眠状態になる必要がある。そうなれば起きるころには夜になっているだろう。

 

————どう切り抜けるか。

 

考える。身体は半ば自動的に防御として対処してくれる。それくらいには鍛えあげてきた。だから考える。俺の中の引き出し、技、技術、個性、その中で最善の選択肢は………。

 

そんな思考の渦の中で、ふと茨の隙間から敵が、塩崎さんが見えた。

聖女じみたその両手を合わせる構えこそ変わらないが、膝をつき、肩で息をしながら、鼻血すら出して、それでも茨の増殖を止めない。

必ず勝つという気概が、負けたくないという意思が、確かにそこにあった。

 

———ああ、本当に、雄英の生徒たちは見事なまでの輝きを見せてくれる。

 

なのに、俺はなんだ?何故俺は今できることの中で最善を選ぼうとしている?

 

先ほど言ったはずだ。全身全霊を超えて彼女を倒すと。

 

ならば俺がやることは今の手札だけで勝負することか?それだけで、ただ小賢しく持っているものをやりくりするだけでいいのか?目の前の彼女へ放った言葉に、全力をもって俺を打倒しようとする彼女に対してそれでいいのか?

 

否、断じて否。

目の前の本気にも応えられない男が、未来を変えることなどできるはずもない。

 

「まだだ。まだ足りない。足りないものだらけだ」

 

もうすぐ今持っている大剣が壊れるのがわかる。だから、強化された生命力を乗せて、まずは目の前の茨を吹き飛ばした。

 

その暴風は茨を切り刻み、面となっていたが故に圧をまともに受けて一時的に塩崎さんの姿が見える位置まで後退する。

 

ここで飛び込んで一撃、は無駄だろう。あの津波のような茨の波状攻撃の中で、彼女は自分を会場に固定するように背後にも茨を展開させていた。

すでに闘技場のほとんどの面積を彼女の茨が覆っている。飛び込んでも対処されるだろう。

 

無論、彼女とて簡単にそれを成したわけではないのだろう。

立つことさえままならないほどに消耗しながらも、それでも俺を倒すために茨の増殖を止めない。その覚悟があるからこそ、ここまで押し込まれている。

 

だから俺も応じよう。超えてやろう。今までの俺を。

 

イメージするのは生命以外の何物をも作り出すことができるクラスメイト。

地を踏みしめる。空気を吸って、空を見る。その先の虚空へ右手を伸ばした。

 

できる。今ならできる。生命力で作ったものに時間制限があるのは、それを受け止める器がないからだ。だから、器ごと、作ってやればいい。

 

できるはずだ。何故ならば、俺が目にしてきた全てはこの地、この星、この宇宙の中から全て生まれたもの。ならば、そこにある生命力に、すべての力の根源に干渉できる俺が、作れないはずはない。

 

「大いなる星の息吹。秋にもたらされる恵みのようにその力の一端をここに譲り受ける。その形、その意味を、ここに現出せしめよう」

 

イメージするのは大剣。それも先ほどまでの実体無き剣ではない。

鋼を鍛え上げ、物を切るという意味を持って生み出される剣の一振り。

 

「出久たちに倣って、俺も限界を一つ越えた証にこの技に名をつけよう。」

 

虚空に突き出した手には、今までのものにはなかった確かな重みと固い質感があった。

 

鋼には似合わない白い、柄も刃も真っ白な大剣。

材質などは知らぬ。これは鋼のようにあれかしと望んで作ったこの世ならざる剣。

だが、確かにここに存在する。おそらくは今までのように機械越しでは見えない物ではない、

 

「この剣、この実体を作り出す技は『曼珠沙華』。先ほどまでの紛い物とはわけが違うぞ」

 

わかる。この剣は求めた俺の意志に応えている。それはただ実体を持ち、壊れないというだけではない。

実体をもち、そして俺や自然の生命力を今までよりもはるかに通す剣だ。

 

故に、俺が生命力を活性化させて剣に纏わせると、先ほどまで純白だった刀身が赤く染まる。夏の特性で現れる強化と闘争を示す赤色を刀身に纏わせることができる。

以前、轟と戦った時に一振りで壊れてしまい、俺自身も力のほとんどが持っていかれたことが、今息をするように容易くできる。

 

「限界の先へ、俺は行けたらしい。行くぞ塩崎 茨。

この一撃を持って、限界を超えさせてくれた貴女への手向けとする」

 

「いい、でしょう。……私も、この一撃をもってしてあなたの最強を打ち負かします」

 

俺の剣に、生物として脅威を感じ取ったのか、彼女も全ての茨が一つの形に収束する。

織り成すのは一つの塊。茨で編み上げられた山と見まがうほど巨大な茨の槌。

その大きさ、その物量は焦凍の大氷塊に匹敵し、おそらくそれを壊しうるほどの力を持つだろう。

 

会場が静まり返る。わかっているのだ。

この一撃で、この試合が決すると。

 

「行きます!! これが私の全力全開、『セフィロト』!!」

 

動いたのは、塩崎さんが先。繰り出された技はその巨体であっても速度も十分。回避はこの狭い闘技場では不可能だろう。

 

だから、正面からそれに相対する。

目前に迫る振り上げられた茨の槌。

渦を巻きながら、空を切り裂いて迫りくる巨大な一撃に対して、一足踏み込み、大上段から全力全霊をもって手にした大剣を振った。

 

その数、計八回。

 

赤色の光を纏った斬撃は、視界の全てを薙ぎ払った。

山のごとき茨はもはやない。

開けた視界に、膝をつきながらもまだ諦めていない瞳の彼女が映る。

だから、さらに一足踏み込み、彼我の距離をゼロにした。

その首元には突き出された剣。

後は曲げられた肘を伸ばすだけで、その命を奪える体制。それを理解し、漸く彼女は全身の力を抜いた。

いや力尽きたというべきか、重力に従って前に倒れる彼女に剣を打ち捨てて、床に落ちるまえに慌てて抱え上げる。

 

本当に全てを出し切ったということだろう。見事な技と覚悟だった。

だからこそ、俺も今までできなかったことへ手を伸ばすことができた。

 

「ありがとう、塩崎さん。貴女のおかげで俺もまた一歩強くなれた」

 

既に聞こえないであろう彼女に感謝を贈る。

 

そしてミッドナイト先生の勝者を告げる声と共に、歓声思い出したように俺達二人に降り注いできた。

 

 

 

準々決勝 最終戦 勝者 彼岸 四季

 

 

 

 






彼岸四季はレベルが上がった。
特技『武器創成』を手に入れた。

つまりは今回はそういうお話です。

八百万さんほど万能ではなく、武器も単純な形のモノだけですが、実体があり、生命力を通す理外の武器を顕在化する技。

技の名前は『曼珠沙華(まんんじゅしゃげ)』

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