いつかは終わるヒーローたちのアカデミア 作:Agateram
けれど、某感染症で友達に会いにいけず、旅行にもいけず、飲み会すら自粛される始末。
釣りがしたい。ボーリングがしたい。カラオケがしたい。ジムに行きたい。サバゲ―をやりたい。
そんな煩悩の振り払うように仕事に没頭、できずに逃避するように書いたため2時間で終わりました。
10月11日更新とはなんだったのか…
「私の聞き違いかな。それとも伝わらなかったかい、私たちヒーローの覚悟が」
呆けた顔をしていたナンバーワンヒーローは、一瞬で顔を取り繕い、言葉を発した。
ただし、その言葉は先ほどまでの友好的な様子や先人としての余裕さはなく、ひどく真剣で、そしてどこまでも真摯な声だった。
「覚悟は伝わりました。ヒーローはいつだって命がけ。
わかっているとは言いません。僕は命の危機なんて数回しか経験したことありませんから。でもこれだけは、譲れません。個性があろうがなかろうが、僕はヒーローになる!」
臆することなく、言ってのけるのが緑谷出久。
現役ナンバーワンヒーロー相手にそこまで啖呵きれるのは素晴らしい。
「何が、君をそこまで駆り立てる。どうしてそうまでしてヒーローを目指すんだい?
人を助けるなら警察や消防士だって立派な職業さ。そちらのほうがよほど普段人を守っているよ」
「最初は憧れでした。あなたの人を救う姿に憧れました。4歳で無個性と言われて、ヒーローにはなれないと皆から言われて、そして今、あなたにもそう言われた。
昔の僕なら、ここで折れていました。」
出久は自分の手を見る。
年不相応な分厚い手の平。何度も握り、放った拳が傷だらけで肥大化していた。
けれど、それは個性持ちには決して届かない力だ。
増強系や異形型の個性持ちなら今の出久よりも単純な力なら数段上だ。
オールマイトなど天と地、いや天を突き抜け月まで届くほどの差があるだろう。
それでも、この手でできることもあると知っている。
「けれど、もう違います。僕はあなたになりたくてヒーローを目指すんじゃない。人を救うためにヒーローになります。目の前で理不尽に奪われる幸せを、日常を守るヒーローになります。あなたのように派手でなくとも、あなたのような個性がなくとも、人は人を守れろうと思えば、誰かを救える。それを証明できるようなヒーローに僕はなります」
綺麗ごとだ。
子どもの絵空事だ。
笑うなら笑え。
だが、俺は出久のこういうところが好きなのだ。
何も知らない人たちの幸せのために、自分の命の全てを燃やすその光が、何よりも眩しい。
それはおそらく、人としては間違っている。狂っているといってもいい。
だが、だからどうした。
命を救うために、狂わなければならないならそうなればいい!
そうして救われた命が、人が笑えるなら本望だとコイツは本気で思っている。
その『色彩』はまさにエメラルドグリーン。
成長する木々のように雄々しく、瑞々しく、燃えるような緑。
その光に魅入られたから、今でもこうしてコイツと一緒にいるのだ。
「……覚悟は変わらず、か。その年で何が君をそこまでにしたのかわからないが、それならばもう止めはしまい。ただし、君が死んで泣く人がいることを忘れるんじゃないぜ」
「はい!」
決して肯定されたわけではない。しかし、オールマイトも出久の並々ならない覚悟は感じ取ったのだろう。
俺のような眼がなくとも、この人は間違いなく一流のヒーローなのだから。
「ゴホっ、ゴフ」
「オールマイト?」
気のせい、か?今オールマイトに見える『色彩』が歪んだ。それに口からも少し吐血しているように見える。
いや、そういえば俺たちで何とかできるヴィラン相手程度を、オールマイトが逃がすだろうか。否、ありえない。
「オールマイト、あなたから重傷を負った人のような『色彩』が見えます。まさかどこかにケガをされているのでは?」
「し、しきさい?」
「あっ彼、彼岸四季の個性なんです。何でも相手の生命力が見えたりそれに干渉したりできる個性で、その用途は自分の強化だけじゃなくて変装した相手を見つけたり、自分以外の人にも作用できたり幅広く使えって、ケガしてるんですか!?す、すぐに病院に。」
出久の個性研究講座(対象の個性をブツブツ言いまくってノートに書きまくって研究したものの総称、ぶっちゃけこの時は不気味を通り抜けて目がイッテて怖いまである)が出ようとしたが、やはり憧れた人物が大けがをしているかもしれないと聞いて正気に戻る。
「な、なるほど。しかし、問題ないさ。少し古傷が痛んだだけだよ。今日はオフだし少し気を抜きすぎてしまったかなHAHAHA」
いや、絶対嘘だ。古傷痛んだくらいで吐血するか。
「いかん。それではな少年たち。ヒーローは常に時間と敵との闘い。
またテレビを通じて応援よろしく!」
止めようとしたが、さすがにナンバーワン。
ジャンプ一つでビルのはるか向こう側へ消えていった。
最後に少し、煙、水蒸気のようなものが出ていたのは気のせいか?
まぁそれにしても
「これで、3度目のヴィラン遭遇と撃退か。その上今度はナンバーワンヒーローとかち合うなんて、出久、お前もしかしなくてもトラブルに愛されてるのか?」
「いや……多分それは絶対四季だと思う。」
言うようになったものである。
否定できないのは辛いところだが。なんせ俺の個性『春夏秋冬』は自分を含め多くの人の生命を視る。その中で、まれに眼がズレることがある。
ズレるとは、その生命の今を見るのではない。生命が培われた環境、つまりは過去を見ることもある。それ以外もたまに視えてしまう。
今は個性が制御できるからいいが、個性発動時はよくズレてしまって、いろいろあった。
まあそんな特殊な個性だからか、俺はよく面倒ごとに巻き込まれるタイプだ。
もちろんこの目つきや表情が固いことが原因のことも多いが。
「さて、帰るか。今日の訓練もしなきゃならないしな」
「そうだね。ところで、四季は進路希望雄英にしたの?」
「………俺はヒーローのガラじゃないだろ。だいたいヒーローなんてのは、お前やオールマイトみたいな輝いている奴がなるものだ。俺は他人のために命かけられるほどお人よしの狂人じゃないんだよ」
「あれ?今褒められた?貶された?」
もちろん褒めている。
ただお前の狂っているところを褒めているだけのことだ。
そう、他人のために命を懸けるなんて狂っている。
それなら名声や富のためにヒーローしてます、なんてのがよっぽどまともだ。
だって自分のためだからな。自分のために人助けします。大いに結構。よほど人間らしい。
けれどまぁ、そんな人間辞めてる連中こそが、きっとトップヒーローの資質なのだろう。
そして、それこそが、俺の眼に焼き付いて離れない眩い光を放つ、何かなのだ。
それは、俺にはない。
ないのだ。俺には。
どうしても、どうしようもなく、その光だけは俺の『眼』には映らない。
俺は平和主義で臆病で、そしてどうしようもなく、人でなしで、人殺しなのだ。
「SHITだ。全く情けない。子どもたちとの問答に気をとられて、自分の活動限界すら把握できなかったなんてな」
ビルの屋上で柵を背に一息つく。
先ほどここに飛び移る前とは似ても似つかぬ痩身の身体に止まらない痛みと吐血。
吐血と痛みはこのビルに飛び移る前に個性の限界が来たためだ。
着地の寸前でトゥルーフォーム、今の痩身な身体に戻ってしまった。
咄嗟に受け身をとったが、それでもダメージがゼロになったわけではない。
全く、個性の活動限界時間といい、この痩身といい、己の身体の劣化具合に、己自身のふがいなさに腹が立つ。
だがまだ、私はヒーローでいなければならない。
まだヒーロー、オールマイトは死ねんのだ。
せめて、この身が朽ちるその前に、後継たる者をさがさねばならない。
そのために、来年から無理を押して雄英高校、かつての我が母校にしてヒーロー育成機関として最高峰の学園への教師としての赴任するのだ。
新しい平和の象徴を育てるために。
「そういえば…あの二人、中学3年と言っていたか…。もしかしたら…」
あの二人が雄英に受かり自分が授業を受け持つこともあるかもしれない。そう思うのは彼岸少年のこちらの深淵を覗き込むような視線を見たためか、それとも、あの無個性の少年の揺ぎ無い精神を垣間見たためか。
「やれやれ…若い熱に当てられたかな。取らぬ狸のなんとやらだ。まずはこのヴィランを警察に届けて…」
そうしてポケットに入れたはずのヴィランが入ったペットボトルに手を伸ばし……
「シーーーーーーット!!!!」
ここに来て、ようやくこのビルに飛び移る前、おそらく個性が解けた時に捕獲していたペットボトルを、ヴィランを逃がしてしまっていたことに気が付いた。
爆音が街に響き渡る。
それに、俺と出久は足を止めた。俺は聞きなれた音であったため。出久は、聞きなれすぎた音が、いつもよりずっとひどかったため。
「おい、出久、まさか、だが」
「行くよ。今のは、かっちゃ…爆豪の個性の音だ」
「いや爆発音なんてどれも同じようなもんだろ」
と言っても聞く気はないな。
既に走り始めた出久を追って俺も疾走を開始した。
ああ、本当にトラブルメイカーはどちらなのか。あるいはどちらもなのか。
そんなことを考えている間にも俺たちは走り、そしてビルの隙間の暗がりに俺は今まで一度しか見ていないような信じられないような『色彩』をもう一度、全く別の風貌の人物から見た。
肺と胃の部分が痛み、おまけにビルに飛び降りた際に足の骨を痛めたらしい。走ることすらままならない。
それでも私は行かねばならない。
何故ならこの混乱は私の失態であり、私がヒーローだからだ。
だから足を進める。この身体で何ができるか、そんなことは考えず進めた先で、
「オール、マイト?」
先ほどの少年たちに出くわした。それも、オールマイトの肉体ではなくトゥルーフォーム、今の痩身瀕死の肉体で、だ。
オールマイトとは似ても似つかぬ人相に背丈。だが、この眼がその『色彩』を見間違えることはない。
「オールマイト! どうしたんですかその姿、いやその前にやっぱり傷が」
「いや、私は八木俊則というものでオールマイトでは」
「俺の個性にそんなウソは通じません!」
「えええええ!!!?オールマイト!? しぼんだ!?個性!?? しぼむ個性!?い、いや違う考えろ緑谷出久。しぼむというよりはやせ細っている。ということはオールマイトの個性はやせ細ること?そんなわけないだろ。個性は基本的に身体機能の拡張や超常現実化がメイン。つまりマイナスの退化ではなく何かしらのプラスの進化であるはずだ。それならやせ細ったというよりもさっきまでの姿が個性でこちらが個性なしのオールマイト?でもそんな記事や情報なんてどこにもないし。情報隠蔽?それともやっぱり別人?でも四季が見分けられないわけもないし、ああでも双子ってことも」
後方で混乱している出久がいるが今は無視だ。
とりあえず、目の前の怪我人の治癒が最優先。
「個性を使用します。動かないでください」
「個性?君の個性は生命力を活性化した増強系では……」
「それを知っているってことは間違いないですね」
「うっ………」
思わぬところでオールマイトである証拠が出てきたが関係ない。
今から使う力はかなり繊細で、集中力いるし滅茶苦茶疲れるんだ。
「すまん出久!『春』を使う!周りが見えなくなるから周囲の警戒頼んだ。爆発音が近づいてきたら教えてくれ!」
「あっりょ、了解!」
ようやくまともに戻った出久に警戒を任せる。
これは集中するあまり周囲に対して全く無警戒になる、仲間がいる場所か安全なところでないと使えない。まあ俺の練度不足なのかもしれんが。
「彼岸少年、何を」
「とりあえず、今の傷だけ先に治します。ひどいのは中身ですが、とりあえずは足ですね」
手のひらを相手に向けて集中。自分の生命力を手と心臓だけに集中。
心臓をポンプに、手から血を輸血するようなイメージ。
そして癒すことに自分を使うというイメージを形作るための、自己暗示。
「春は芽吹き、命が世界に表す四季の一節。すべての傷ついた者に、我が春の息吹を持って健やかなる癒しをここに」
詠唱、なんてファンタジーなものじゃない。ただこの自己暗示がないと使えないほど没頭しないといけない。
俺の生命力が他人にも可視化され、その色彩は桜のそれ。
それを相手に流し込む。
相手の傷に自分の命を流しこむことで治癒を施す。
それが俺の個性『春夏秋冬』の一側面、『春』の能力。
かの有名なヒーロー『リカバリーガール』は相手の体力を使って傷を癒すのだという。
だが俺は相手に自分の力の源である生命力を流し込む特性上、相手の傷は自分の力を一切使わず傷を癒せる、つまり傷を癒すのは俺の生命力。
結果、俺の生命力は戦闘などとは比べ物にならないほどのスピードで枯渇する。多くの人を治癒できるリカバリーガールとは違って救えるのはせいぜい重傷者なら2~3人といったところだろう。それほどにこの能力は燃費が悪い。
だが、その見返りは十分だ。
「足が、動く。それに傷も身体の痛みもなくなった……驚いたな。
増強だけでなく、治癒まで使える複合系の個性持ちなど滅多にいないのに」
「もうすぐ俺の治療は終わります。すみませんが今はこれで精一杯です…。申し訳ありません。あなたの中身まで治せるほどの力はなくて」
「…それもわかるのか。本当にすごい個性だ」
「四季!爆発音が大きくなってる!先に行くね」
「おい、出久!?待て。俺も行く。もう少しで治療は終わるから」
「ごめん。待てない」
ああ、ちくしょう。そりゃそうか。
こっちは俺が話せるくらいには治療が済んで、周りへの警戒もできるくらいになっている。
なら、現場に行こうとするだろう。それが出久だ。
言ってるそばから既に走り出している。
「っクソ。すみませんオールマイト。動けますか?」
「ああ。もちろん大丈夫さ。ありがとう」
「それなら、俺は行きます」
「ああ、私もゴフっ」
やはり、吐血。個性を使った治療をした感じから相手のケガの度合いはわかる。
足の骨にヒビが入っていたので先にそれを治したが、重要なのは内臓だ。
おそらく片方の肺、胃は全摘。それだけじゃなくおそらくほかの臓器もかなりやられている。かなりの生命力を与えてもなかなか傷がふさがなかったのは、それだけオールマイト自身に生きる力が……。
いや、そんなことを考えるのはやめよう。
まずは出久だ。あいつは絶対に現場についている。
そして、おそらく、いや間違いなく、やらかす。
爆発音が聞こえ始めてから既に10分以上経っている。
ヒーロは現着しているはず。なのに、音が消えないのは、誰もアイツを救えていないから。
救えない人がそこにいるなら、助けを求める人がそこにいるなら、たとえ毛嫌いするような奴だろうと助けようとするのが緑谷出久だ。
そして、やはり、現場は予想通りのあり様だった。
騒動の中心にいるのは、爆豪。
そしてそれを取り巻くのは、さっきの泥ヴィラン!?
爆豪は操らているのか、いやあれは抵抗、しているのだろうか。
だが、身体全体を覆われ、口から体内にも入ろうとしているように見える。
あれでは、抜けられない。
周りのヒーローも流動性のある身体と爆豪という子どもが中心にいること、そして爆豪の個性である爆破の影響もあって近づけないでいる。
「すまない。私が、はっ、はっ、個性を保てなかったばかりに、逃がして」
息も絶え絶えで、オールマイトがやってくる。だがその身体は相変わらず痩身で、息切れし、血反吐すら吐いている。
そうか。詳しくはわからないが、おそらく彼の個性には時間制限があるのだろう。だが、そんなことは百戦錬磨の彼なら計算できて当然のはず。だが、俺たちが話をして引き留めてしまった。故に個性が解けてしまい、あのヴィランを逃がした。
つまり、これは俺たちの責任もあるってことか。でなければナンバーワンヒーローがこんなミスを犯すはずがない。
「オール、八木さんはここで。まずは出久を」
探さないと、という言葉は出てこなかった。
何故なら、既にアイツは飛び出していた。
全速力で、迷うことなく、疾走する。
ああ、やっぱりこうなった。
フォローにいかないと。アイツはきっと無意識だ。いつものように、助けたいという一心で身体を動かしている。だから、いつものようにフォローしないと。
けれど、どうする?
さっきまでのように力技は使えない。中にいる爆豪が死にかねないからだ。
けれど他の能力を使っている余裕はない。唯一爆豪を傷つけずヴィランだけ始末する方法は、ある。
けれど、できるか?俺に?
一瞬、迷った。
また、あの時のように失敗してしまったら。
だから足が止まった。
そして、その間に事態は収束した。
爆豪を引っ張り出した出久、そしてそのタイミングで自身の傷も痛みも何もかも無視して命がけで突っ込んでいったオールマイトの一撃によって。
俺は、何もできなかった。
また、何もできなかったのだ。
いつも怖くて、だから強くなろうとした。
強くなったつもりでいた。
それでも、やっぱり俺はあの一歩が踏み出せない。
出久のように無意識に体が動く前に恐怖で固まる。
オールマイトのように無理を通して道理を引っ込めるような度胸と覚悟もない。
だから、俺はヒーローには、なれない。
誰かを助けるための一瞬を迷う俺は、ヒーローには決してなれないのだ。
オールマイトを称える拍手と歓声の中で、俺だけが、その場で立ち尽くすだけでいた。
更新日を守らないことに定評があるなとリア友に言われました。
早く出す分には問題ないでしょうか。まぁ書き溜めとかないし、仕事も忙しい時期に入るからこれから遅れると思いますが、週に1回の更新はしていきたいです。
こんな私ですが、これからもよろしくお願いします。
追加情報 彼岸 四季の個性『春夏秋冬』の春について
『春』…視認した命に自分の命をわけて、水を相手の器に注ぐように与えることで相手の傷を癒す。病は癒せないものが多い。命を注ぐことで病の元にも力を与えてしまうためであると思われる。
ちなみに使うためには本人のイメージが大切なため、自己暗示としての言葉や集中力が最も必要な力である。中二病設定? いえいえこれはある種のルーティンですよ?
そんな感じですが、とりあえず一応確認しておきます。
当オリ主は基本強個性で、年上の余裕があるような雰囲気を出しておきながら、作中の誰より余裕がありません。面倒な男なのです。
そんな作品しか書けないのですが、これからもどうぞよろしくお願いします。