いつかは終わるヒーローたちのアカデミア   作:Agateram

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本編はまだまだ進みません。

次こそ、進みます。いやホント。

具体的には原作一巻の半分くらいまで。多分。


第6話 それぞれのスタートライン

騒動が収まった後、出久はヒーロー達に囲まれ、いきなり飛び出したことを怒られ、爆豪はヴィランに捕まっても耐えていたタフネスを褒められていた。

 

私見と身内贔屓を承知で言おう。

 

危険を顧みず数瞬とはいえ敵に捕まった人質を助けた出久を非難する何もできず避難誘導すらまともにできなかった自称ヒーローたち。

 

これが、ヒーローか?

 

自分たちは何もせずに、ただ相性の良い個性持ちを待っていただけのヒーロー。

個性もなくても助けようとして実際に顔の泥を払いのけ、一瞬だけとはいえ爆豪を引っ張り出した出久。

もちろん最後はオールマイトが命を懸けた一撃で始末をつけた。

殊勲はオールマイトだ。そこに異議はない。結果が全てが世の中の理だ。

 

だが、そこで出久を非難、失礼、指導しているヒーロー共。

 

「さっきから出久が出たことを非難してますけど、そこにいて避難誘導しかできなかったあなたたちが出久を非難する資格なんてあるんですか?」

「なんだと?この子の友だちか?」

 

ああ、またこれだ。

俺は平和主義で、臆病な癖に、身内と認めた相手には甘くなり、クソ野郎と判断した奴には短気になりがちなんだ。わかっている。でも一度言い出したら止まらない。

 

「増強系の個性持ち、水を操る個性持ち、木を自在に操る個性持ち、巨大化できる個性持ち、ほかにも多彩なヒーローがいて、『有利な個性持ちを待つしかない』、『あの子には悪いがもう少し耐えてもらおう』?でしたっけ」

 

覚えている。自分は動けなかった癖に、相手の発言だけ覚えている自分に吐き気を覚えながら、しかし、それでも出久を囲むヒーローもどきに告げる。

 

「水をかけた木は燃えづらくなる。その状態のシンリンカムイと増強系のデステゴロが協力すれば爆豪、捕らえられていた少年だけを救出するのは不可能じゃなかったはずだ。無理でもせめてマウントレディ、でしたか?彼女の元まで投げつけるくらいできれば爆豪だけ引っこ抜くのはできたでしょう。自分だけでできないからと言って苦しんでいる子をただ傍観していたあんた達に、助けようと動いて、少しでも泥野郎から爆豪を助けた少年を非難するできるほど、あんたたちは自分の責務を果たそうと命かけていたのかと、そう言ってんですよ」

 

一息に、告げる。

反応は様々。こんな小僧に言われたことに苛立ちこちらを睨みつける者、反論しようとしてしかし声が出ない者、そして、こちらに掴みかかろうとする者。

 

良いだろう。こちらもむしゃくしゃして心がざわついてる。出久を非難した挙句、ケンカを売ってくるならたとえプロだろうが、

 

「はい!!そこまでだ!!」

 

そこで、記者とファンに囲まれていたオールマイトが間に入った。

全く見えないほどのスピードで。

あちらの相手をしながらも、こちらの状況すら把握していたらしい。

 

「とりあえず、互いに冷静になったほうがいいな。

確かにヒーローたちの言い分は正当なものだろう。しかし少年の言い分も間違ってはいない。」

 

ナンバーワンヒーローの一声で、場は静まり、視線は全て彼に行く。

それを確認して彼は口を開いた。

 

「確かに今回は厄介な案件だった。流動性のあるヴィランに、その中央に人質の少年、そして爆破系統の個性が絡み合った三重苦。一人での解決はそれこそ相性のいいヒーローくらいしかできまい」

 

しかし、とヒーローは言葉を結ぶ。

周囲にいる当代、あるいは新人のヒーローに向かって

 

「この少年が言うように互いに協力し合っても解決できないほどの脅威だったかと言われれば、私は断じて否と答えよう。」

 

そう、言い放った。

当然、ナンバーワンヒーローが語る言葉とただの子どもである俺のいう言葉では重みが違う。故に、今度はオールマイトに掴みかかる者も睨みつける者もいない。

ただ言葉を待つだけだ。

 

「ヒーローとは、常に命をかけて綺麗事を実践する仕事!そしてそれは個人だけではなく、ヒーローと言われる者全てが等しく持っている覚悟だと私は信じる。だというのに、私が見た限り、個々で最善はつくしていても、皆でできる最善を尽くしていたかといわれるとNOだ!! 理由は、そこの少年に言われたがね。」

 

まさかオールマイトがこちらについてくるとは思わず、目を見開く俺に彼は茶目っ気まじりにウィンクしてきた。いや、似合わないですよ。まあ、毒を抜かれた気分にはなりましたけど……いやコレも計算か?似合わない茶目っ気でこちらの気勢を削いだ、ってところか。すごいなオールマイトは。

 

「私の考えだけを押し付けたいわけではない。ただ、少なくとも、助けを求める人たちの前で棒立ちでいる者を、私はヒーローとは呼びたくない。それが、私の考えと覚悟だ。それは覚えておいてほしい」

 

訂正。こちらを助けてくれたことには礼を言いたいが、こちらの真新しい傷をつくのは止めてほしい。なんせ、俺こそがあの事態を何とかできたにも関わらず動けなかった者だからだ。

そういう意味では、さきほどのヒーローたちへの言葉は自分への言葉当然か。

 

できるかもしれないのに動けなかった俺。

できないだろうけど動いた出久。

 

正にヒーローを分かつ壁は此処にある。

 

ナンバーワンヒーローの言葉は重く、出久も俺もそのまますぐに帰ることができた。

 

ただ、俺は帰り道、何を話したのかなんて覚えていない。

ただひたすらに、後悔と過去だけが俺を塗りつぶしていた。

 

 

だから、途中で爆豪の阿呆が何かいってきたのも傍観した。出久は何か相手に言っていたが、それも聞こえていない。

 

俺を現実に引き戻したのは、ヒーローの頂点、オールマイトだった。

 

俺たち二人を、人気のない路地裏に連れていき、自身のいきさつを語りだしたのだ。

5年前に大物の敵と戦い呼吸器半壊、胃の全摘、その後遺症と度重なる手術に無理を押して行ってきたヒーロー活動で、既に半死半生の肉体。

ヒーローとしての活動時間は3時間程度という、ナンバーワンヒーローとしての輝かしい一面に隠された、血反吐を吐きつくし、身を骨を命を切り刻んで、なお平和の象徴としてあろうとする姿。

 

そのあまりの悲惨な姿に、自分の問答で時間を取らせてしまった出久は謝ろうとして、止められた。

 

英雄は言う。

 

「君がいなければ、私は私の信念を見失うところだった。

ヒーローはいつだって命がけ。自分の限界。そんなくだらない理由を盾に助けを求める瞳を見逃すところだった。」

 

恥ずべきように、そして賞賛するように、その眼は出久を射抜く。

 

「あの場で、誰よりもヒーローであったのは、君だ。

君の言葉が、君の眼が、君の行動が、私を動かした。」

 

ああ、そうか。ように、などという言葉で済まされるようなものではない。

 

「考えるよりも先に体が動いた。まさに君がそうだ!だから私が言おう!」

 

これは、宣言だ。長年多くのヒーローに頂点に立ってきた者から、次の英雄へのメッセージ。

 

「君は、ヒーローになれる!!」

 

その、ナンバーワンヒーローからの証明という、これ以上ない賛辞に対して、隣の親友は、臆するわけでもなく、いつものように答えた。

「もちろんです!僕はヒーローになります!」

 

ああ、本当に眩しい。

眩しすぎて、目が眩みそうだ。

 

ナンバーワンに何を言われようと揺らがぬその心。

それは諦めの言葉だろうと、証明の言葉だろうと変わらない。

 

体を、技術を、そして何よりも心を鍛え上げた英雄が、そこにいた。

弱冠、14歳。

 

そして、その小さな英雄に、偉大な英雄は問いかける。

 

「私の個性を受け取ってほしい。聖火のごとく、受け継がれてきた思いと共に、他人の個性を譲渡する私の個性「ワンフォーオール」を」

 

他人に個性を譲渡する?そんな個性が存在するなんて、考えもしなかった。けれどそれなら、無個性である出久にも、個性が宿るかもしれないということだ。

ああ、なるほど。神というのはいるらしい。せめて、ここには。その祝福があるかもしれないと信じられた。

そしてその祝福を、最初に憧れたヒーローからの贈り物を、個性というかつて幾度も夢に見たであろう才能をもらえると言われた緑谷出久は、当然のごとく、即答した。

 

 

「申し訳ありません! お断りします!!」

 

—————なんて?

 

 

 

 

 

 

嬉しかった。

憧れた人に自分の夢を肯定してもらえたことが。

光栄だった。

憧れた人から、その個性を譲り受けないかと言われたことが。

 

けれど、それでいいのか?

オールマイトは僕たちに見せた。輝かしい経歴と笑顔の裏に隠された壮絶な戦いの傷跡。何代も個性を譲渡し続け、育まれた力。そこに託された思いと願い。

 

誰かのために、とそう願い続けて育てられたその個性を、たかが数年努力しただけの自分程度が受け取る権利が、力が、覚悟が、本当にあるのか?

 

オールマイトは認めてくれた。それは素直に嬉しい。

けれど、僕自身は、認めていない。

 

だって僕は知っている。

緑谷出久は、彼岸四季という少年に逢うことがなければ、体を鍛えることも技術を磨くこともせずに、ただただヒーローの勉強や分析だけしかしない、身もふたもないことを言えば妄想だけの世界にいるだけのヒーローオタクに過ぎなかったということを知っている。

 

四季に背中を蹴とばされるような言葉で気づかされた。

自分の甘さ。自分への諦め。誰かに縋って自分を認めてもらおうとする幼く、浅ましい思い。

 

わかっている。オールマイトのこの提案は自分の夢への近道だ。

いや近道なんて、回りくどいものじゃない。夢へのチケットだ。

 

きっと僕をヒーローに連れて行ってくれる。

 

連れて行ってもらって、それで満足か?

無論、ヒーローになることが目的じゃない。ヒーローになるのはスタートライン。

大事なのはなった先で何を為すのかだ。

 

けれど、ただチケットをもらってヒーローにさせてもらっただけの僕は、果たして何かを為すに足る人物なのか。

 

否、全くもってどうしようもないほど否だ。

 

「オールマイトに認めてもらえたこと、嬉しく思います。けれど、違う。

今、貴方の個性に縋ってしまったら僕は、それに縋りついてしまうでしょう。

誰かに、何かに縋りついて、それを自分の礎にするような甘い覚悟で、あなたを超えられるヒーローになんてなれない!だから、少なくとも今の僕に、その個性をもらう資格はありません!!」

 

そうだ。まだ何も為しちゃいない。

自分だけの力で何かを成し遂げたわけではない。

オールマイトにも、緑谷出久の全てを見てもらっていない。

 

「今の僕には、か。まさかそんな答えがくるとは思ってなかったよ。

では、緑谷少年、君は何をもってすれば私の提案を受け入れてくれるのかな」

 

「………僕なんかがそれを決めるのはおこがましいと思いますが、それなら2つだけ、お願いがあります。」

 

「もちろん聞こう。なんせ、お願いしたのはこちらからだからね。」

 

「ありがとうございます。僕は、ここにいる四季といつもいろんな訓練をしています。オールマイトがもし時間があれば、その訓練で僕たちを見定めてください。そして、」

 

僕は視線を珍しく呆けたままでこちらをみる友人、彼岸四季へ移す。

 

「その個性が僕ではなく、四季やほかの個性持ちで相応しいと思う人がいたら、その人に渡してください。」

 

「ま、待て出久。俺は、ヒーローになんてならないし、なれない。それはいつも言ってきたことだろう」

 

知っている。四季自身が言っていた。自分はヒーローになるには足りてない、と。

それを望む資格もないと。

 

けれど、僕は知っている。

 

「ヒーローになれない?そんなことはないだろう彼岸少年」

 

オールマイトも否定をする。流石に四季のことを調べているわけではないと思うけれど、それでもオールマイトは自分が感じたままを彼に告げた。

「私は考える前に無個性でも助けを求める者を救おうとする緑谷少年の気高い意志を個性継承に足ると考えたから彼を後継に選んだ。

しかし、君がヒーローになれないかというとそれは違うと私は思う。君はあのヘドロの時に足を踏み出しかけて、一瞬止まったね」

 

「……よく、見てますね。そうです。友達の緊急時に足を止めてしまう臆病者。

それが俺です。そんな俺には、ヒーローなんてなれ「なれるさ!!」…え?」

 

四季の声を遮って、オールマイトが声を発する。痩身の口元から血を吐きながら、それでも鋭い眼光と張り上げた声で否定した。

 

「確かに君は足を止めた。しかしそれは、ヴィランが怖いのではない。なぜなら君は一度あのヴィランを退けている。なら何が怖いのか。なんとなく、わかっているよ。君、あの時、自分の個性で人を殺すことを怖がったね?」

 

どこで、どうやってそれを判断できたのか。

それともこれこそがナチュラルボーンヒーローというものか。

 

「あの時、君からは殺意がないのに、死の気配だけがなんとなく感じ取れた。おそらく、君の個性は増強系でも治療系も本質じゃない。その本質を、怖がっている。だから、君は一歩が踏み出せなかった。」

 

一目で、見抜いている。

僕が三年以上隣でいて、ようやく至った答えに、この人は一見で、しかも感覚でそれを感じ取っている。

 

「だが、それでも君は私の治療をしてくれた。」

 

「それは、そのくらいはしますよ。目の前で誰かが危ないなら助けるくらいはします。

でも、俺は、赤の他人のために命なんてかけられない。そんな正義感も度胸もない。だから俺はヒーローにはなれませんし、なる資格もない」

 

「だが、なりたくないというわけではないのだね。なる資格がない、なれないと諦めているだけで。」

 

そして、そこ核心を、一刺しでついた。

そう、いくら普段ヒーローになれないと、相応しくないと言ってはいても、僕が事件や事故に巻き込まれそうになる度に力を貸してくれたり、僕と訓練や稽古を一緒にやってくれる彼が、ヒーローになれないはずはないのだ。

 

ただ、その諦めの理由が根深く、彼を苦しめているだけ。

 

「なら、君が本当にヒーローにふさわしくないのか、そうでないのか。決めるのは君自身の未来さ。今と過去だけを見て未来を見ないのはもったいないぜ少年」

 

四季はいつもの調子が全く出ない様子で、否定も肯定もできずに立ちすくんでいた。

迷っている。諦めていた彼が迷っている。今はそれで充分だ。

 

「さて、緑谷少年、話がズレてしまったが、もう一つのお願いは何だい?」

 

オールマイトが四季の悩みを感じて、こちらに話を向ける。

悩むことも必要と感じたのだろう。

本当に天然の英雄気質な人だ。

 

「もう一つの願いは単純です。

僕がその個性を引き継ぐに値するとしても、雄英高校に入るまでは渡さないでほしいということです。」

 

「少年、それはつまり」

 

「はい。僕は、無個性の僕のままで、日本最難関のヒーロー科に受かって見せます。最低でもそれぐらいできないのであれば、あなたの後継なんて絶対になれません」

 

 

これは、疾走を開始する前、スタートラインにつくまでの物語。

 

 

そしてここからが、彼のそして僕らが一つの終わりへの疾走する物語だ。

 

 

 

 

 




オリ主は拗らせているので、その視界は思ったより狭いです。
そしていろいろまだ表になっていない設定があるとはいえ16の子どもです。

なにが言いたいのかというと、多少説教臭くても嫌いにならないでください。

いつか、たぶん、きっと少しはマトモに……なります。

出会いと経験とそこから感じ取ったことが自我を作る大事な要素らしいです。
つまりは、それがない今は変わりようがないままです。
何が言いたいのかというと、1-Aと交流を深めるまでしばらくネガティブな主人公と原作より精神マッチョな出久君にお付き合いください。

なお当作品の出久君は、基本強請るな、勝ち取れ、さすれば与えられん。的なノリで生きております。

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