いつかは終わるヒーローたちのアカデミア   作:Agateram

8 / 59
さて、今回でウジウジ悩んでいたオリ主がある意味覚悟を決めます。

あと名前をわざと出していないキャラが出てますが、オリキャラではありません。

まぁ文面で大体わかってしまいますが、直接的な絡みは体育祭ぐらいからです。たぶん。




第7話 彼岸四季 オリジン

 

 

ひたすらに、走る。

アスファルトの上を、土の上を、海岸の砂浜の上を、階段を、坂を、許されている場所ならば家の屋根や外壁の上まで、ありとあらゆる所を走る。

走ることは重要だ。体力がなくてはヒーローなんて務まらない。速さがなければ助けを求める人のところにたどり着けない。そしてあらゆる状況下で速く動くためにはいかに自分が地面と接し、どんな風に地面からの反動を受け、それを体を前に進む力に変えるかを知らなければならない。

要は走る場所と力の入れ具合、体幹と重心のバランス配分にも要点を入れた『どんな場所でも最速、最短で動けるようなランニング』

 

そんな地味目なトレーニングが出久と俺、彼岸四季の朝の日課だ。

 

その後に組手を行う。場所は今は使われていない道場を借りることもあれば、山の中や海岸など人の目につきにくいところで行うこともある。

 

何故か、それは簡単だ。

俺が個性を使い、そして出久は武器を使うからだ。周囲の人たちの目に触れれば下手したら個性を使ったケンカか何かと勘違いされて通報されかねない。

 

とはいえ、開けた場所でないと意味がない。俺たちがやるのは型稽古などではない。

限りなく実践を想定した訓練。

 

俺が生命力を活性化させて全能力を引き上げる『夏』の個性を用いて、出久と打ち合う。出久が武器を使用しだしたのは、単純な身体能力だけでは個性持ちや異形系には届かないからだ。もちろん最も得意なのは素手の打撃主体格闘だが、それだけでは届かない時もある。故に出久は身体能力の向上、格闘技の訓練に加えて、武器術まで習得することになった。

 

もちろん、まだ未熟と言わざるを得ない。なんせ格闘技術なら俺や、俺の知り合いなどから教えてもらえるが、残念ながら知り合いに武器を持って戦うスタイルのヒーローなんていない。

なので出久は個性優位の世の中になってからすたれてしまった武器を使った実践向けの武術を近隣(といっても駅3つは先)から探し出し、そこで基礎を学ぶ日々を2年ほど続けていた。そこで漸く基礎を詰め込んだが、その先生も高齢であったため、これ以上は俺との実践を通して学ぶように言われた。それに武器を使った武術が廃れたのは、個性が世に出たからともいわれている。なんせそれまでの武術はあくまで対人用のモノでしかなく、異形型に代表されるような特殊な体や個性の前ではほとんど通用しないものになってしまった。もちろん全ての武器がそうではないが、確実に数を減らしている。武器を教わるくらいなら自分の個性をのばすか、それに類するような格闘術や特殊な捕縛術などの方を学ぶほうが手っ取り早いというのもあったのだろう。

とはいえ、出久が学んだ武器術も個性に対応したものではない。

だからこそ、こうして必ず俺という個性に対してどのように対応するか、格闘技術と共に自身の武器の使い方を工夫してきたというわけだ。

 

と、ここまでが俺たちの日常。

その俺たちの日常に新たな日課が加わった。

 

それが、

 

「さて、緑谷少年、彼岸少年今日も張り切って掃除しようか」

 

俺たちの組手が終わるのを見ていた人物の課題、漂流物や不法投棄で埋まった海岸のごみ撤去を行っている。これは今やっているトレーニングにプラスして全身の筋肉をナチュラルに鍛えるため、なおかつヒーローの前提、奉仕する心を忘れないための活動とのことであった。

この活動も中々に重労働だが、理には適っている。なんせヒーローなら自分と同じくらいの人の一人や二人は緊急時には背負って走らなければ救助もままならない。重い物をもって走るのは成長期の体を痛めるから今まで考えていなかったが、確かに救助には欠かせない訓練だ。

 

とはいえ、ここにいるのはひたすらにヒーローを目指して鍛えてきた出久と、それに付き合って、あるいはその前から事情があって鍛えてきた俺。この後の訓練に比べればこの程度、どうということはない。そうこの後の、

 

「ようし、さて今日も体は疲れ切ったかな?ではその状態で、私とどこまでやれるか実践の時間だヒーローの卵たち!!」

 

知っているか? 目の前で筋肉モリモリになって張り切っているこの人、オールマイトっていう日本でナンバーワンのヒーローなんだぜ?

 

そして、そんな人に日夜戦いを挑む俺たちは、今日も滅茶苦茶手加減された上でボッコボコにされるのだ。

 

実践に勝る経験はない。

これはオールマイトの体験談だそうだ。いつかその体験をさせた御仁に一発撃ちこんでも許されるのではないだろうか。

 

そんなことを考えながら、俺は砂浜の上で仰向けに倒れている。

死ぬわ。マジで。あの人手加減とか下手なのか絶秒なのか大けが一歩手前かつ、こちらに痕が残らないくらいで毎日血反吐吐かせてきやがる。

 

ん?出久はどうしているのか?

満面の笑みで毎日血反吐吐きながら吹っ飛ばされているけど何か?

アドレナリンとかドーパミンとかドバドバ出てるんじゃねぇのアレ。

 

ああ、今日も二人に治療が必要だなぁ

 

そんなことを考えながら、俺の意識は一時的に落ちていく。

 

 

だがその前に、一応断っておきたい。

 

オールマイト、俺はまだヒーローになるとは一言も言ってないのですが、何故出久と同じくあなたの修行を受けているんでしょうね?

 

 

 

 

 

「無茶をしすぎですオールマイト。俺たちに対しても、あなたの体に対してもです」

 

体中にシップや包帯を巻いた俺が小言を言いながら、オールマイトを治療する。もちろんただの応急手当などではない。個性ありきの治療。つまりは俺の個性『春夏秋冬』の側面の一つである『春』を使った癒しをオールマイトに施している。

 

ただこれはオールマイトが傷を負ったから、ではない。

悔しいことに、俺が個性を全開にしても、出久がどんな武器を使って奇襲しようとも、俺たちがどれほど高い連携を用いようとも、この化け物はかすり傷さえ負ってはいない。

 

それほどにレベルが違う。

 

まさにナンバーワンヒーロー。卵とは格どころか次元が違う。

ただ残念なことに、この人教えるのはあまり上手くない。何故か?それはこの人が感覚で物を考えてそれがどんなにシミュレーションした結果を上回るような実践に裏打ちされた膨大な経験と、馬鹿らしいくらいの天賦の才を併せ持つ化け物であるからだ。

 

つまりは、自分の感覚や直感に頼るタイプであり、それを極めた脳筋+天性の直感という、まさに天然の英雄だったわけだ。

 

その勘を、言葉にするのは難しく……説明は擬音や抽象的な言葉のみ。

 

つまり、俺たちのような理論派の凡才は、天才とガチでやりあって、そこから経験や理論を形作るしかないという形に落ち着いた。

 

それが、ほとんど毎日に及ぶ、ナンバーワンとのガチバトル(ただし死なない程度の手加減あり)である。

 

ただこれは、意外にも効果的で理論派な出久はオールマイトの動きや考えをノート2,3冊分書き終えてそれに対する対策や自分も使えそうなところを模倣し、自分の動きへと昇華しようとしている。

 

まぁその代償として、組手をした日は俺が生命力を振り絞って出久とオールマイトを治療する羽目になるのだが。

 

さて、ここで何故傷ついてボロボロの出久ではなく、オールマイトも治療しなければならないかというと、彼が負った過去の傷が起因している。

 

彼は過去の様々な戦闘行為により、本来の肉体は既に半死半生の重傷を負った身だ。

それは通常の治癒や多くの治癒に関する個性でも癒せないものであった。

 

ただし、真に遺憾ながら俺の個性は自分の生命力そのものを相手に分け与える特性上、相手の体力や傷の程度に関係なく、ある一定程度の回復が見込める。

もちろん、失われた臓器が生えてくるほど万能ではない。だが、少なくともオールマイトの活動限界時間、つまりは彼が個性を使うために必要な生命力の補充はできるのだ。

 

これが彼がノリノリで俺たちの組手ができる理由でもある。

俺たちの組手に何時間か使おうが、俺の個性の能力が続く限り彼は、ヒーローとして活動できる時間を回復できるのだ。

 

俺はポーション扱いなのかと思ったのは悪くない。

 

そんなわけで俺は傷だらけの出久だけでなく、オールマイトも治癒(正確には回復)する羽目になった。

 

「いやすまないね彼岸少年。君がいることに甘えてしまってついつい訓練に力が入ってしまう。」

「いや、そのおかげであなたのヒーローとしての時間を削らなくて済むなら、いいですけど」

 

その通りだ。まだヒーローの卵でしかないで出久に時間をとって、オールマイトが助けられたかもしれない人を助けられなくなる、なんて未来は俺も出久も望むところではない。

 

だから、治療自体はいいのだ。治療自体は、な。

 

 

だが、この個性には3つ欠点があるのだ。

 

1つ目、いつか述べたように、傷を治すのは俺の生命力。つまりは相手の傷を治すのに本来治るのに何週間、あるいは月単位でかかる傷を治すために、俺の生命力をガンガン使う必要があること。

 

2つ目、相手が重傷であればあるほど俺の生命力を多量に消費するため、それを扱うための集中力がいる。それこそ自己暗示、ルーティンなどを駆使して自身と相手しか見えないくらいの集中力がいる。なので、その際は正に無防備。たとえナイフで刺されても死ぬまで俺はそれを感じることがないくらいには集中が必要な場合もあるのだ。

 

そして、一番重要な3つ目にして、俺がこの個性で医師などを決して目指そうと思わない理由。

 

さて、俺の治療は生命力、と仮定したものを相手の生命力に注ぐことで治癒をする。

それは何度も確認したと思う。だが、そこで乗じる弊害があることはほとんどの人物には言っていない。

 

生命力、と仮に仮定しているが、俺はこの力の本質は詳しくわかっていない。

いや、理解したくないというべきだ。

 

何故か、というなら簡単だ。生命力とは命の在り方。その生命が辿ってきた道筋の結果。だからこそなのか、俺が相手の生命力を視る時、その人を形作った過去が見える(・・・・・・・・・・・・・・)

 

それは相手の思い出を盗み見るという、冒涜だ。だからこそ、この個性の基本である生命力を視る、という力を思い通りにコントロールできるまでに鍛え上げた。そうしないとふとした瞬間に視界が相手の生命力を通して、勝手に相手の過去を垣間見てしまうというズレが生じてしまうからだ。

これを直し、コントロールするまでに一年かかった。これが俺が出久よりも年上である理由の一つである。

しかし、このコントロールはまだ完全でなく、そして、俺としては最悪なことにこの生命力を通して過去を視るという以外にも、この個性にはもう一つ重大な欠陥がある。

 

それこそは俺がこの個性を嫌う理由のトップ3に入る理由の一つ。

 

相手の死の間際を、視てしまうという何とも摩訶不思議な現象が起きることがあるのだ。

 

過去は、わかる。先もいったように今ここにある人は過去が重なり、生命の形を作る。だからその生命に直接干渉できる俺はその人の過去を垣間見ることもあるだろう。理屈にもならない理屈だが、そのように俺の状況を診断した医師はそう言った。

 

だが、ならば何故、未来のそれも死の間際を垣間見ることができるのか。

 

これは医師も首を傾げた。そして俺も、その理由はわからなかった。

 

考えて考えて考えて、苦しいほどの吐き気がするほどの死を視ながら考えた結果、俺は一つの仮説を立てた。立てざるをえなかった。

 

それは、———仮に神様が本当にいたとして、運命というものがあるとするならば、俺たちはただ既に定まった運命というレールに乗せられたモノに過ぎず、だからこそ俺には未来が見えるのではないかという、空想や妄想に入るような部類のものだった。

 

しかし、これは恐ろしいほどに俺の心にストンと落ちた。

何故なら、俺がこれまで死期を見た人は必ずその通りに死んでいくからだ。

 

子どもも大人も高齢者も幼児もヒーローもヴィランも関係なく、容赦なく、確実に終わりを見たものはその通りに終わる。

 

これを見て、それを変えようとあがいて変えられなかった俺は、運命というレールに抗えないと結論づけた。

 

ならば、この人生に、その体に宿っているといわれている魂に、その身を動かす意思に、意味はあるのか。

 

その結論に至った俺は無数の屍の上で狂い、持ち直すまでに季節が巡るほどの時を要した。

 

 

まだ、この個性とも確定された運命とも折り合いはついていない。

ただコントロールがある程度可能になって観なくても個性を使えるようになったから、精神が安定しただけだ。

 

だから、俺は忘れていたんだ。

 

個性『春夏秋冬』

 

その個性の中で、最も相手と同調してしまうのが相手へ自分の生命力を送る『春』の特徴であり、それはつまり、相手の過去や未来を視やすいという、あまりに単純なことを忘れていた。

 

そして、俺は視ることになる。

 

ナンバーワンヒーローが、数多のヴィランに囲まれて死にゆく様を。

 

そして、自分の友人であり、ヒーローを目指す卵である緑谷出久が、命を落とすその瞬間を。

 

 

だからこそ、俺は決めた。

 

俺は、ヒーローになる。たとえその資格などなくとも、赤の他人のために命がかけられない臆病者でも、けれど、だけど、ああ、せめて、

———友と呼べる人くらいは命を懸けて救おうとするくらいのなけなしの小さな矜持だけはまだ残っているのだ。

 

 

 

 

 

 

「よーーーやく決めやがったか。まぁヒーローを目指す理由としては弱いかもしれねぇがな。まぁ結果的に誰かを助けられれば問題ねぇさ」

 

そんな決意を固めた冬も近づいたある日の夜のこと。いつものように何の連絡もなく俺が基本一人住むアパートにやってきた彼女は俺にそういって頭をぺしぺしと叩いてくる。

こちらに若干不満げに文句を言うわりには、既に俺に作らせたご飯はお替り3杯目だ。まさに自由奔放、そして最後には屈託ない笑顔で「ごちそうさん。いやぁ今日も美味かったぜ。」なんて言うものだからこちらは文句もはさむ暇もない。

まぁもとよりこの人には一度たりとも頭が上がらないのだが。なんせ、こう見えて彼女はプロヒーローにして、俺の恩人であるからだ。

それで、と前置きして、彼女はこちらをその赤い瞳で見てきた。

 

「お前はいいんだな?その理由で自分が死んだとしても、後悔しないな?」

 

個性で見える『色彩』は白、真珠のように白く、キラキラと輝く星のような光を放つ。

ヒーローの中でも一級、実力も実績もその精神も全てが一流そのもの。

その瞳が、誰でもなく俺を見ている。

嘘偽りは許さないと、俺の一挙手一投足をしかと捕らえ、こちらの魂まで覗き込むように俺を映している。

 

それが、嫌だった。

俺には、俺自身には彼らのようなプロヒーローのような輝きがない。

 

人の生命力を『色彩』としてとらえる俺だからわかる。

自分には、一流のヒーローが皆持っているような光がない。

 

出久のように助ける人を見た瞬間に全ての投げだす精神性がない。

オールマイトのように血反吐を吐きながら、正義と平和の象徴であり続ける覚悟がない。

彼女のように、奔放で、不敵で、けれど決して悪を逃さないという気高さがない。

 

見知らぬ誰かのために自分の全てをかけられるような人間ではないのだ。

だって、助けられなかったから。救えなかったから。あまつさえ、この手で屠ったのだから。

ヒーローになるべき人ではないのだ。

 

そんな自分を吐き出すように彼女に言う。

 

———俺はあなたのようなヒーローには、なれない。けれど、身近な誰かだけでも救うくらいのヒーローにはなりたいと思う。

 

そんな情けなくて、どうしようもないような言葉が俺の最後の後戻りの道をかき消した。

 

彼女は、俺が尊敬する保護者にして義理の姉たる彼女はそんな情けない俺をそれでも満足そうに、そして少しだけ寂しそうな笑みで抱きしめてくれた。

 

 

 

これが、俺のオリジン。

ヒーローとしてはあまりに希薄な俺の始まりである。

そして、最後にもう一度、確認しておこう。これは悲劇()で始まって喜劇()で終わる俺の物語だ。

 

 

 




更新も進行も遅い、けれど一度書くと決めたからには最後まで書きます。とか処女作のくせに豪語するのが私です。

面倒くさいオリ主は他人のためには命はかけられません。臆病者なので。
けれど、友だち、親友、親しい誰かのためなら命をかけられるくらいの凡人です。

そんな主人公がようやく、進むことを決意したところで、これから物語も徐々に進んでいきますので、まだ見てやろうという寛大な方々はどうかお付き合いくださいませ。

あとさらっと流しましたが、出久君は武器も使います。そりゃ無個性なんだから素の性能で届かない時は道具を使いますよ。武器の使い手、武術家が少なくなっているというのはオリ設定です。本当は武器自体アンケート取ろうと思いましたが……そんな勇気も知識もないので、既に決めてあります。賛否両論あるでしょうが、お許しください。あっもちろん武器は補助的なものになる予定です。作者は男が最後に信じる自分の武器は己の拳と決めておりますので。


閲覧、お気に入り登録、感想、ありがとうございます。今後もよろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。