「おおー! 凄く大きくなった~!」
牧場の方でハーデスから得たスキルを試しに使った水宮枢は15mの大きさの景色を一望していた。遅れてラプラス・ダークネスも【巨人化】を使ってる水宮枢と同じ気持ちではしゃぐ姿に・・・・・。
「・・・・・はっ!!」
「どうしたのノエル」
「あの二人のようにスバル先輩も巨人になってもらったら色々とできちゃう事が思いついちゃった!」
「・・・・・ハーデス先輩に【巨人化】のスキルをスバル先輩に渡さないように言っておくよ」
「そんな待ってよフレアー!?」
背筋がゾクッと寒気を覚えた大空スバルは不知火フレアに色々と守られていたことに気付かず、願い事で叶えた真っ白な羽毛のアヒルに『スバトモ』と名付け【巨大化】のスキルを発動させては、スバトモの背中に乗って「しゅばあああああ!!」と空を飛ぶ体験をしていた。
「おおースバルがアヒルの背中に乗って飛んでるよー」
「あとは衣装を着させたらリアルと一緒になるね」
「ねぇねぇ見てみてー。ボクの身体、本当にロボットになってるよー」
「こっちもなってるねー」
両腕をパージさせたり、掌からビームを射ったり、足の裏からブースターにエネルギーの炎を噴かせて宙に浮いたりして変わった自身を楽しげに公開する姿を公開するロボ子さん。
「ロボ子さん、身体はロボットになって金属のように硬いの?」
「ううん、柔肌だよー。おっぱいも柔らかいよ?」
「・・・・・金属のように硬ければよかったのに」
ボソリと呟いたつもりの星街すいせいだが、目付きは親の敵を睨むそれでロボ子さんはその視線に気付き苦笑いをするしかなかった。
「まつりとはあちゃま、アキちゃん、メルちゃんはどう?」
「悪くないと思うよ。お願いした物が貰えたからね」
「吸血鬼専用のスキルの効果、とてもよさそうだよー」
「私もエルフ専用のユニーク装備を手に入れたよ」
「フブキちゃんの方は?」
サイドテールに結んだ茶髪で小柄な体の『夏色まつり』、長い金髪で物腰柔らかそうな感じのハーフエルフ『アキ・ローゼンタール』、金髪ロングで碧眼という王道を行く見た目と、ロングでゆるくまとめたツインテールと、上に少し束ねたサイドのアクセントが特徴の『赤井はぁと』、蜂蜜色のショートボブと髪色と同じ瞳の『夜空メル』が手に入れた物を吟味している間に問われた白上フブキは「まだ」と答えた。
「すこん部をお願いしたから実装待ちだよ」
「そっか。はやく実装できるといいね」
「今度触らせてねー」
「仮想現実のすこん部、フブキちゃんのリスナー達が凄く喜んでくれそうだね」
実際、NWO内でテイムモンスターとしてすこん部と冒険する願いが叶ったことをリスナー達に公言したら、白上フブキのファン達は「全てのリアルすこん部(オタクと変態)の魂と精神、感情がゲームで具現化して嬉しい!」とコメントを残して「オタクはともかく変態な事をしたら物理的に埋めるつもりだからねー!」と返した白上フブキであった。何ならこの機にホロライブの各リスナー達がNWO内に集まっては各アイドルのファンクラブもといギルドを結成しようというコメントで大いに沸き、NWOの新規プレイヤー達が参入することになった。
「ぼたんがお願いしたのって靴なの?」
「そー、空中でも地上のように立ったり跪けたりできる靴をお願いしたの」
「狙撃手として欲しかったんだね」
「充実していくねーぼたんの戦闘スタイルに沿った装備が」
「我輩もサキュバス専用の装備に専用のスキルを付与してもらうようお願いできたぞ。ほらこれ」
「「「ドエ口いよそれ」」」
獅白ぼたん、雪花ラミィの他にフェネックスの獣人を選択した砂色に近い金髪の『尾丸ポルカ』と両サイドにお団子状に結ったふわふわとしてウェーブの効いた髪の『桃鈴ねね』が魔乃アロエの装備を見て突っ込まずにはいられなかった。
「サメー!」
「おおっ、格好いいデスサイズに黒い服!」
「触手ー!」
「フェニックスのスキルが手に入った!」
「探偵らしい装備!」
「「BAUBA~U!!」」
「結晶のドレス、キレー!! ちゃんとお願いしたスキルもあるー!」
外国勢のニューライブメンバーも叶えたかった願いが実現となった喜びを露にし、もっとこのゲームにドハマりして楽しめそうだと予感は確信近くなっている。さっそくと言わんばかり手に入れた新しい力を試すため各自行動を移した彼女達のように、【蒼龍の聖剣】のプレイヤー達もイベントに向けて試行錯誤する。それとは別に違うことに対して熱量を注いでいるプレイヤーも存在する。
「念願の俺の板前の店だ!! さっそく開店準備に取り掛かるぞ!」
「やったー!! 俺だけの宇宙戦艦が手に入った~!!」
「セレーネ! ハーデスがオリハルコンのゴーレムの居場所を特定したって!」
「行こうイズ!」
真実の鏡で遊ぶラプラスから鏡を回収した後に、ランダムアイテムボックスをまた開け続けていくと既出したアイテムがたくさんダブる中、ペインが手に入れた鯉の王という鯉がまた手に入った。
『鯉の王』
ただの鯉と思うなかれ。全ての鯉の中の鯉で今は無色透明であるこの鯉の王は環境や育成、与えると何でも食べる餌によって千差万別の変化が起きる。
そんなテキストを見せられたらどんな変化がみられるのか気になる人の性。ホームの池に泳がして眺めていると黄竜が着て一緒に鯉の王を見下ろした。
『ほう、この鯉は・・・・・』
「育てるといいみたいだから育て始めたんだが、知っているのか」
『いずれ昇り龍となる可能性を秘めた鯉だな。実を言うと我と青竜は元々鯉から変化したのだ』
「登竜門でか」
『その通りだ。遥か昔この大陸の地上で唯一ある滝でこの姿に至った』
懐かし気に遠い目で語り出す黄竜の話を聞きながら、何でも食べるというなら何を食べさせようと思考の海に飛び込んでいた。
「なぁ、何でも食べるってこと本当か?」
『間違いない。我がこの黄金の輝きの身体なのも、かつて鯉だった我が住んでいた池に人間が落とした金貨を食べたからなのだ』
そうか・・・それを聞くと色々と試しに食べさせたくなるな。
『そしてこれはアドバイスだが鯉の王はどんな汚れた水や湖、毒の沼だろうと泳ぐことができる』
「ほう?」
『逆に多種多彩な餌次第で体の色と力は決まる。我の場合は金貨を食べてこの姿と金と土の力を得たように、青竜は青魚と草と根を食べて青い身体に、嵐に巻き込まれてる際に得た木と風と雷の力を得たように外部から力を直接食うこともできる』
雑食どころか悪食極めりじゃないですかねー。
「登竜門ができればどんな餌でも鯉から竜になることは確定なんだな?」
『できたら、な。その登竜門の場所へ案内を望むなら送ってやろう』
「ありがとう。因みにこのまま無色透明で登竜門をさせたらとうなる?」
『知りたいなら自分の目で確かめるといい』
黄竜が空の彼方へと飛んでいく姿を見てどんな色にするかますます悩む。一先ず検証をするか。火・水・風・木・土・光・闇はオルト達でいっぱいいるから他の属性の色がいいな・・・と鯉の王育成計画を考える思考の海に飛び込んだ。属性以外ならいまのところ毒と無に金属や氷と呪、それから雷があるな・・・・・でも待て。竜にさせた後はどうなるんだ? またレイドボス戦に発展するかそのままテイムできるのか? ・・・・・まぁ、その時はその時か。さーて、鯉の育成をしながらイベントの準備をしなくちゃならないから忙しくなるぞ・・・・・。
「・・・・・ハーデス」
聞き覚えありすぎる声に振り返ると、なんか恥ずかしそうにしてるフレデリカが立っていた。
「どうした?」
「ちょっと話がしたくて、ハーデスが開けてくれたランダムアイテムボックスから出たアイテムについてなんだけど」
「アイテム? ・・・・・ああ、運命の赤い糸のことか?」
まさかまた出るとは思わなかったがな。アイテムのことを指摘しても黙っていたフレデリカだったが、少しして小さく頷いた。
「あのアイテムって、前にメイプルの件で教えてくれたアイテムだよね」
「そうだぞ。もうあの方法で作ろうとは思わないぞ」
「うん、そうだよね。でさ、これって重複しても問題ないよね」
「何人までなのかわからないけど多分な」
曖昧な肯定をする俺に赤い糸をインベントリから出したフレデリカが自ら小指に巻き、片方の糸を俺に巻き付けた結果。お互いのスキルが共有して使用可能になった。フレデリカの魔法スキルを俺が使う日がくるとはな・・・・・。逆にフレデリカの場合は俺とイカル、メイプルのスキルを使えるようになったから。
「え、えぐい量のスキルがこんなに・・・・・覚えるのが一苦労するよ・・・・・」
一方のフレデリカは夏休みの宿題を学校が始まる前日までしていなかった男児みたいに必死で100以上はあるスキルの名前とその効果を頭に叩き込み始めていた。
フレデリカのスキルも加わったことで、彼女が愛用している【多重詠唱】。使用する魔法三発分のMPでそれよりも遥かに多い数の魔法を発動するという反則じみたスキルで、これに合わせて【八重ノ狂龍】で倍にしたらとんでもないことになるなこれ・・・・・。
「ねぇ、【八重ノ狂龍】の効果が凄いけど。今までこのスキルを使っていたの?」
「お気づきになられたか。これでフレデリカもそのスキルを使えば一人で百人のプレイヤーを相手に一掃できるぞ。【相乗効果】でどの魔法にも【悪食】を付与することもできるようになったし」
「・・・・・できそうで否定できないんだけど」
これでフレデリカもこちら側になった事実に心中で邪な笑みを浮かべた。
「今更だがいいのか? 今後のレベルアップ時のステータスのポイントを振る時は通常の三倍もポイントが必要になるぞ。一応俺が別の職業になって【絶対防御】のステータスに関する抜け穴を突けばいいだけだが」
「そう言えばそうだったね。じゃあ、そうしてくれると助かるかな」
「もちろんだ」
「あ、よかった。ここにいたんだハーデス」
俺に用があるとクリムが庭を経由してこっちに来た。
「どうした? クリムが俺に用か?」
「うんそう。サリーから聞いたけど、武器と防具を融合することができるんだって? 私も試しに武器を融合してみたいんだよ」
「そういうことか。融合させるのはいいけど、融合後は完全にランダムだからな見た目とスキル。それでもいいなら構わないぞ」
「うんいいよ。頼む」
彼女から了承を得て、ユニークの大鎌とレアの大鎌を出したクリムに50%の確率で融合できる秘薬を使ってもらった。俺達が見ている手前で秘薬を振り掛けた二つの鎌が光に包まれ、やがて一つになるように光が重なったあと。
『呪渦ノ死刈』
【七死熾呪鶯】
【赤血魔水晶】
クリムの背丈より2倍はある赤黒い二枚刃の大鎌が出来上がった。武器の名前は死を連想させるものだが、スキルの内容は敢えて見ないことにした。ステータスもだ。変わった武器を持ち上げ、感動したように目と口を開いたまま大鎌に釘付けだ。
「おおっ・・・・・格好いい・・・・・!」
「満足感ある武器になってくれてよかったよ」
「うん、ありがとう。でもこれって何度も融合することができるのか?」
「試したことがないからなんとも言えない。できたとして成功率が格段に低くなると思うぞ」
「やっぱりそうだよなー。その辺りは運ゲーでプレイヤー自身がどうすることもできないや」
戦闘以外の成功率が高まるスキルやアイテムがあるがな。
「幼馴染みコンビは?」
「二人は、というかリコリスと雛菊も含めて次のエリアボスに備えて準備してるよ」
「そうか。雛菊も一緒なら最後のエリアまでスムーズに辿り着きそうだな」
「もう少し待っていてくれよ。すぐに追い付くから」
「気長に待っている」
用が済んでこの場から後にするクリムの背中を見送ってもフレデリカはまだ居残った。
「ハーデスはこれからどうするか決まってる?」
「ログアウトするつもりだぞ。明日も仕事だからな」
そう言ってログアウトした俺は明日の準備を済ませてから眠りについた。