転移高校生は転生魔王の甥っ子だった件   作:Many56

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どうも、Many56です。
またしても1ヶ月ぶりの投稿となりました。
ただでさえモチベ下がっているのに、最近は頭文字Dの方メインになってるわ、リアルでも色々とあるわで、こっち側が全く進まないんですよね。
一応ストックを何話か用意してそれを投稿していましたが、それももう尽きかけている状況。
次回は2〜3ヶ月以上かかるかもしれません。
さて、迷宮内で激戦が繰り広げられている中、隔離された街ではどうなっているのでしょうか?
それでは24話お楽しみ下さい。


第24話 戦時下の日常

 

 

 

帝国との開戦から1週間が経った。

今日、俺は町の治安維持をしている。

今の俺の立ち位置は義勇兵団の副団長だ。

このくらいは当然である。

と言っても、マサユキと一緒にパトロールとかしてるくらいでそれ以外大した事はしてないけど。

 

「ああ、マサユキ様だ!」

 

「常に町で何か起きていないか自ら見て回って下さるとは」

 

道端でそんな噂話をしている人達がいる。

マサユキの顔を見ると、どこかバツの悪そうな表情だ。

うん、毎度お疲れ様です。

 

「隣にいるのは、勇者様に次いで迷宮50階層を突破したっていう三上 歩(アユム・ミカミ)じゃない?」

 

「ああ、義勇兵団副団長としてマサユキ様を支えている凄い人だ。噂じゃ、聖騎士団(クルセイダーズ)の隊長格より強いとか」

 

「マジかよ?」

 

「それじゃあ実質西側のナンバー3じゃねえか!」

 

おっと、俺の事も噂しているようだ。

まあ、俺もこの町じゃそれなりに知られているからね。

ただ、まさかそこまで言われるとは思っていなかった。

これはちょっと照れますね。

 

「最強の勇者に、それと同郷の英雄。ついでに魔王リムル」

 

「帝国軍が攻めてくるって話だけど、これならどんなに強い相手でも蹴散らしてくれるだろうさ」

 

「心配しなくても、勝利は間違い無いな!」

 

戦うのは俺やマサユキじゃなくて、叔父さんの軍なんだけどね。

まあそれは置いておいて、今心配すべきは町の治安状況である。

とは言うものの、これが意外にもかなり良い。

むしろ良すぎるくらいだ。

戦争になってトラブルが増えるんじゃないかとも思ったが、杞憂だったようだ。

どうやら市民、特に外の国から移住してきた人に対してマサユキのユニークスキル『英雄覇道(エラバレシモノ)』の影響力がハンパじゃない。

これのおかげで市民にはかなりの安心感が生まれ、それがトラブルの抑制になっているようだ。

実際、戦争が始まる前と現在の犯罪やトラブルの件数を比較してみたら、ここ1週間はそれ以前の平均と比べて明らかに犯罪やトラブルの件数が少ない事が分かった。

 

「さすがは勇者マサユキ」

 

「揶揄うのはよしてくれよ。これ、結構しんどいんだから」

 

「ははは、確かにな」

 

犯罪やトラブルはマサユキの影響力でかなり抑制出来ている。

しかし、問題が無い訳ではない。

 

「おーい、マサユキ君」

 

前からやって来るのらマサユキのパーティ“閃光”のメンバーであるバーニィとジンライだ。

 

「どうしたんだい、2人とも」

 

「それが、ちょっと困った事になってね」

 

「……もしかして、また?」

 

「うん、またなんだ」

 

バーニィの言葉にマサユキの顔がさらに悪くなる。

 

「戦争への志願者、これで何件目だっけ?」

 

「さあ、30件越えたあたりから数えてない」

 

トラブルはないものの、問題はある。

実は、戦争が始まる前から結構志願者が集まっている。

特にここ2、3日にはかなり増えており、その整理だけでもかなり苦労しているのだ。

いやほんと、なんなんだろうね?

この国の奴らには戦闘狂があまりに多すぎるのか?

などとやるせない気持ちになりながら、新たな志願者の所へと向かった。

 

 

 

スナック樹羅

俺とマサユキは、なんとか志願者達を宥めて、今休憩中である。

 

「やっと片付いた……」

 

ぼやくマサユキ。

まあ、ここ最近ずっとこんな感じだからな。

疲れるのも当然だ。

俺自身、精神的疲労がかなり溜まってきている。

聖人になったおかげで肉体的疲労とは無縁になったけど。

しかし、マサユキはそうはいかない。

かなりゲッソリしており、肉体的にも精神的にも疲労が蓄積されているのがよく分かる。

この調子だと、最悪過労で倒れかねんぞ……。

 

「はあ、これなら志願者全員に出てもらった方が良いかもね。今じゃ万単位の人数いるし、皆そこそこ強いみたいだし、僕のスキルの補正もあれば……」

 

「やめとけ。それが足引っ張って、最悪こっちが負ける」

 

やれやれ、こいつ疲労で頭おかしくなってるな。

 

「どうして? 確かに数の差はかなりものだったけど、迷宮なら劣勢でも数はかなり減らせられるだろうし、僕のスキルも合わされば……」

 

「量より質という言葉を甘く見過ぎだ。確かに俺らが元いた世界じゃ質より量だったけどな、それは質が同等になりやすかったからであり、質で量に勝った事例なんて記録を漁ればアホほど出てくるぞ」

 

そう言って俺は説明を始めた。

 

「まず第二次世界大戦において、フランス対ドイツでドイツが圧勝しただろ? でもな、兵員や兵器の数だけ見ればそこまで大きな差は無かったんだよ。でも、結果を見ればドイツの圧勝。犠牲者数で比べても、戦死や戦傷、行方不明合わせてドイツは15万強に対し、フランスは36万だった。それは、ドイツの技術的な質や電撃戦のドクトリンによるものだ。エグい物量を持つソ連相手にスターリングラードまで勝てていたのも、やはり技術的な質と電撃戦ドクトリンがあったからこそ」

 

「は、はあ」

 

多分『空の魔王』も要因の1つだろうけど、あの人の事例を上げたらキリがなくなるからちょっと省こう。

もっと分かりやすいし、俺も説明しやすい例がある。

 

「なんなら、ソ連対フィンランドの冬戦争じゃ、フィンランドのたった32人の部隊がソ連の4000人の部隊を撃退したことさえある」

 

「……は?」

 

「フィンランドにおける極寒の環境もあったが、それ以上に『史上最強のスナイパー』とか『白い死神』って異名を持っているシモ・ヘイヘっていうリアルチート(実在した漫画の主人公みたいな人)をはじめとした腕利きの狙撃手が多数いたのが大きい。というかこの人いなかったらフィンランドはソ連の支配下に置かれてたと思う」

 

この言葉にマサユキはポカンと口を開けた状態で硬直した。

確かにね。漫画みたいな話だよね。

でも実際にあった話なんだよね。

 

「嘘でしょ……?」

 

「いや、これがマジ。公式戦果500人超えてるらしい。しかも参加してから負傷して戦線離脱するまでの僅か100日間でコレを出した」

 

再び硬直するマサユキ。

まあ『空の魔王』はもっとやばいんだけどね。

第二次世界大戦中に赤軍戦車の1%強を1人で破壊するわ、負傷してもすぐ病院を抜け出して前線に紛れ込んで戦車のスクラップを量産するわ、その結果軍の公式戦果より信憑性の高い戦果の方が多いわ(普通、戦果は多少盛られて報告されるため、信憑性の高い戦果の方が少なくなる)30回撃墜されても徒歩で帰還するわ、挙げ句の果てには粛清大好き髭面オッサンから名指しでソ連人民最大の敵と言われるわと、本当に頭おかしいエピソードだらけである。

だからあの人の存在出すと説明がダレるから置いておく。

 

「他にも、卓越した戦略や戦闘技術、兵器といった質の差で数の差を埋めた例は多数存在する。質の差が極端になりやすいこちらの世界なら尚更質の重要性が高まる。だから中途半端に質の低い戦力を組み込むより、正規軍だけで戦った方がいい」

 

「分かったよ」

 

マサユキも納得してくれたみたいだ。

さて、そろそろ休憩も終えて仕事に戻るとしますかね。

そう考えていると、店の中に入って来る人影が2つ。

ジンライとバーニィだ。

 

「大変ですぜ、マサユキさん。魔王の軍勢に慌ただしい動きがあったってんで、志願者達が騒ぎ出してます」

 

「他にも、魔王配下の研究者って人達も参加させて欲しいってさ」

 

ああ、もう面倒くさい。

 

「分かった、止めに行こうか」

 

俺たちは迷宮都市内にある研究施設に向かった。

中に入ると、話し声が聞こえてきた。

ルベリオスから派遣されてきたバッカスと“閃光”のパーティメンバーのジウが吸血鬼(ヴァンパイア)の研究者達を止めている。

 

「だから、それは出来ません」

 

「良いじゃないか。ミー達だってそこそこ強いし、リムル様にはお世話になってるし、こんな時くらい恩返ししたいのネ」

 

「一体どういう事?」

 

部屋に入るとジウがマサユキの方に駆け寄ってきた。

 

「マサユキ様、この方々が戦いに参加したいと言って聞かないんです」

 

「どうも、この地に残っていた戦力も出撃する様子なのを見て触発されたようで」

 

はあ、どいつもこいつも面倒だ。

とりあえずバッカスさんに耳打ちする。

 

「同じルベリオスの人なんだから、説得くらい簡単じゃないんですか?」

 

「いや、無理ですよ。さすがに吸血鬼達は知らない人がほとんどだし、かれこれ30分近くこのやり取りやってるんですよ」

 

マジかよ。

 

「ね、少しだけでいいから手伝わせて欲しいのネ」

 

ああ、こりゃもう全然諦めるつもりはないらしい。

 

「どうする、マサユキ?」

 

……あれ、反応が無い?

ってこれ、魂抜けかけてね⁉︎

 

「おーい、戻ってこいマサユキ!」

 

「あ、ごめん。ちょっとボーッとしちゃってた」

 

ヤバい、こりゃほんとに限界近いな。

 

「仕方ないな。取り敢えず、バッカスさんとジウは皆さんの説得を続けておいて。ちょっとリムルさんに掛け合ってくる」

 

「そうだな、それがいい」

 

1週間経って、戦況がどんな感じなのかも聞きたいしね。

そうして、俺達は叔父さんの所に向かった。

 

「おーい、リムルさーん!」

 

叔父さんの隣にいるのはベニマルである。

珍しいな。普段ならシオンやランガ、ディアブロが護衛として隣についているのに。

 

「おう、マサユキ。どうしたんだ?」

 

「どうしたんだ、じゃないですよ! 僕を勝手に軍団長に任命するもんだから、かなり迷惑してるんですよ!」

 

かなり本気で訴えてるマサユキ。

俺も見てられないし、ここはマサユキに加勢させてもらうよ。

 

「リムルさん、血の気の多い奴らが戦いに参加したいって騒ぎ始めてまして、吸血鬼(ヴァンパイア)の研究者達さえ参加させて欲しいって言ってるんですよ」

 

因みに、今俺が“叔父さん”ではなく“リムルさん”と呼んだのは後ろのジンライとバーニィは俺と叔父さんの関係を知らないからだ。

当事者以外でこの場で知ってるのはマサユキとベニマルだけだからね。

 

「ここ数日、志願者がどんどん増えてて、整理だけでも大変なんですから! このままだと収集がつかなくなるから、なんとかしてくれませんか、リムルさん?」

 

「ははは、それは大変だったな……」

 

「でしょう?」

 

「でもまあ、安心してくれ。もう少しで戦争は終わるから、それまでのらりくらりと言い逃れをしててくれれば大丈夫」

 

「いやいや、他人事だと思ってそんな簡単に……」

 

そう情けない文句を言ってるが、完全にスルーされてるわ。

 

「ちょっと、絶対逃げようとしてるでしょ!」

 

「ハッハッハ!」

 

「ハッハッハ、じゃないですって!」

 

ダメだこりゃ。

完全にスルーモードに入ってる。

 

「やれやれ、大人の処世術ってやつですか。さすがリムルさん、手段が小汚いですね」

 

反応なし。

俺の言葉もスルーですか、そうですか。

このまま地面凹ませて埋めてやろうかな?

 

「ともかく、用件はそれだけか?」

 

「ええ、まあ。本当にもうすぐ戦争が終わるんですか?」

 

「今日中には決着をつけるつもりだ」

 

「僕達は何もしてないし、まるで実感が湧きませんね」

 

「一般市民には悟らせない、それが俺の理想とする戦いのあり方さ。という訳で、安心してくれ」

 

そう言うと、叔父さんは笑顔を浮かべた。

やれやれ、今回は見逃してやるか。

その分負担はこっちにかかるが、あと1日の辛抱だ。

そう考えてると不満をぶち撒ける者が現れた。

 

「おいおい、ちょっと待ってくれよ。マサユキさんがアンタに気を遣ってるから俺も我慢してたんだが、俺達はアンタを倒す事を諦めた訳じゃねーんだぜ? それを忘れて俺達をいいように利用するなんざ、さすがにふざけがすぎるだろうが」

 

ジンライがそう言った。

こりゃ叔父さん分が悪いぞ。

 

「嫌だな、それは誤解だよ。利用しようだなんて人聞きの悪い……」

 

叔父さん内心ちょっと焦ってるな。

ここはちょっと止めないと。

 

「ストップ、ジンライ。それは言い過ぎだと思うぞ」

 

「そうでもねえだろ、アユム。ここはガツンと言ってやらねえと」

 

アカン、これちょっと止められないかも。

 

「いや、アユムの言う通りだよ、ジンライ! リムルさんだって、今は町の人達のために頑張ってくれてるんだからさ!」

 

さらにマサユキが加わってくれた。

一応、一国の王として民を守るためにやるべき事をちゃんとやってる。

ジンライも、マサユキの言葉でそれ以上の文句は止めてくれた。

良かった、これで一件落着である。

そう思ったが、そうは問屋がおろさなかった。

 

「いやいや、ジンライの言う通りだよ、マサユキ君! 本来ならば、勇者と魔王は敵対する定めだ。いつまでも我慢してないで、こんな奴なんかさっさと倒してしまおう!」

 

普段なら一歩引いた立ち位置のバーニィがこんな事を言うなんてね。

はい、さっさと止めましょう。

 

「おいバーニィ、何言ってんだ? 戦う理由も倒す必要もないだろう。マサユキもそれを分かっているからそうしないんじゃないのか?」

 

「だからさ、本来の定めというものがあるじゃないか」

 

「別に例外があってもいいでしょ。そもそも、その定めとやらは誰が決めたんだよ?」

 

ほんとコイツいい加減に止まれよ。

何で今日に限ってこんなんになってんの?

一方のバーニィは俺の事を無言で見やる。

 

「……はあ、このままじゃあ話は平行線だ。マサユキ君もやる気がないみたいだし、君に至っては魔王の味方をする。こうなったら僕が君ごと魔王を成敗してやる!」

 

そしてバーニィは魔法の詠唱を始めた。

そんな馬鹿な   そう言いかけた俺は直後、衝撃を受けた。

 

聖浄化結界(ホーリーフィールド)

 

1人で発動するなど困難な魔法結界が周囲を取り囲み、一瞬にして周囲の魔素が浄化される。

そしてその直後、俺は反射的に超速の一撃を放った。

 

『朧流水斬』

 

下手なAランク冒険者などでは動きを捉える事さえ不可能な一撃だった。防げるとすれば、それは最低でも仙人級以上の実力者くらいで、本来ならばバーニィに防げる代物ではなかった。にも関わらず、それをバーニィはいつの間にか握っていた剣を使ってアッサリと防いだ。

その瞬間、甲高い音が鳴り響き、それが周囲の空気を張り詰めたものへと一変させた。

 

「なるほど、そういうことか。驚いたよ。まさかこんな所にリムルさんを狙う刺客がいたとはね」

 

「それは僕の台詞(セリフ)さ。君がそれほどの実力を隠していたなんてね」

 

俺の言葉に対し、バーニィはそう返した。

そして、俺はバーニィと距離を取り、そのまま睨み合いの状態になる。

しかし、本当に予想外だった。

平静を装ってはいるが、内心ちょっとしたパニック状態になっているのが本音だ。

そして、バーニィと付き合いの長いマサユキやジンライにとっては俺以上に衝撃だったようだ。

 

「バーニィ、お前……剣も扱えたのかよ⁉︎」

 

ジンライがそう呟く。

ああ、やっぱり。

知らなかったという事は、初めから完全に騙してたんだ。

 

「フッ、手の内を簡単に曝け出すなんて、そんな馬鹿な真似をするとでも?」

 

「クソッタレ! テメエ、俺だけでなくマサユキさんまで騙していやがったのか‼︎」

 

「騙す? 人聞きが悪い事を言うなよ。魔王に接近するために利用していただけさ」

 

「利用……だと?」

 

「ああ。マサユキ君は都合良く踊ってくれたよ。そのおかげで、今こうして最高の機会が訪れた。本当に感謝してるよ」

 

その態度が本当に腹立たしい。

しかも、コイツの実力は間違いなく聖人級だ。

少しでも気を緩めたら即ジエンドである。

 

「アユム、手を貸すよ」

 

「それは何がなんでも却下で。コイツの狙いはリムルさん、貴方だ。それに、俺の親友(ダチ)を騙してくれたお礼もしたいし。だから、コイツの相手は俺がやります」

 

バーニィの狙いが叔父さんである以上、この人に戦わせちゃいけない。

まあ確かに叔父さんの実力は凄まじい、というかエゲツないレベルだが、それでも危険すぎる。

 

「だが……!」

 

まだ言うか、この人は!

 

「2回も自分の叔父に死んでもらいたい甥っ子なんている訳ないでしょうが!」

 

ちょっと強めに言った。

これが一番の本音だ。この人にはもう2度と死んでほしくない。

絶対にだ。

この人は、何がなんでも守り切る。

クロエに未来で叔父さんが殺された話を聞いた時から、俺はそう誓ったのだ。

 

「分かった……」

 

叔父さんも納得してくれたみたいで何より。

一方、バーニィとジンライは俺と叔父さんとの会話に驚いていた。

 

「叔父さん? おいアユム、どういう事だ?」

 

「言葉通りさ。この人が生まれ変わる前の三上悟は俺の叔父にあたる。転生しようと、俺にとってその人は俺の大切な叔父さんだ」

 

「そうだったのかよ……!」

 

「なるほど、どおりで魔王リムルにべったりだった訳だ」

 

話を戻そう。

 

「ところで、バーニィ。マサユキが都合良く踊ってくれたとか、ふざけた事言ってくれたな?」

 

「ああ、この上ない最高の道具になってくれたさ」

 

「何だと、テメエ‼︎」

 

ジンライが再び激昂する。

 

「そう言うなよ、ジンライ。それに、君だって薄々気付いているんじゃないか? ソイツの実力は、本当は大した事ない。ハッタリだけで生きているエセ勇者だって」

 

それを聞いて、マサユキは一気に顔色を悪くした。

 

「おい、バーニィ。マサユキの事を悪く言うのは大概にしろよ……!」

 

今にも爆発しそうだが、ここでキレたらコイツの思う壺だ。落ち着け、俺。

しかし、これはマサユキにとっては死活問題だ。

本気でマズイ。

だが、ジンライからは意外な反応が返ってきた。

 

「ハッタリだってのは、薄々どころか、ずっと前から確信してたさ。だがよ、それが何だって言うんだ? ハッタリだろうが何だろうが、マサユキさんは凄いんだよ! この人はな、俺の期待を一度でも裏切った事がねえんだ‼︎」

 

コイツ、見た目の割に中身イケメンじゃねえか。

本気で見直したよ。

マサユキも、信じられないという反応をしている。

しかし、バーニィはそんなジンライの返答が気に入らなかったようだ。

 

「チッ、気付いていたのにくっついていたのかよ。しかも、そんなザコを尊敬するなんて、笑わせるなよ」

 

バーニィはマサユキの事をそう吐き捨てた。

コイツ、ここまで言うか。

だが、この言葉に対して俺以上にキレた人がいた。

 

「ハッタリの何が悪い。俺だってハッタリで生きているんだよ!」

 

叔父さんだった。

そして、その言葉に1番驚いているのはマサユキだ。

 

「り、リムルさん……!」

 

「だってそうだろ? 俺は元々ただのサラリーマンだったんだ。魔王だとか勇者だとか、そんな世界で生きちゃいなかった。それでもな、なってしまった以上やるしかないんだよ。だから、頑張ってやってるんだ。それを、何も知らないヤツに笑われたくはねえ‼︎」

 

その言葉に動かされて、マサユキは頷き、ジンライも戸惑った風だ。

そして、叔父さんはさらに続ける。

 

「自分のやってる事は正しいんだと、自分に言い聞かせなけりゃ王様なんてやってられないんだよ。誰だって生きるのに精一杯だ。だから俺は、皆が楽しく暮らせる国を、世界を目指して頑張っているんだ。そして、マサユキはそんな俺に力を貸してくれている。凄く助かってる。だから、マサユキを馬鹿にするのは許さん‼︎」

 

叔父さんはマサユキの隣まで行き、そう言い切った。

そのおかげで、マサユキはさっきまで狼狽えていたのが嘘のように自信が戻った様子だ。

 

「バーニィ、君は最初から僕を利用するつもりだったんだね?」

 

「そう言ってるだろ」

 

俺との睨み合いを続けながら、バーニィは太々しく答えた。

 

「それは、ユウキさんからの命令だったのか?」

 

「はあ? ああ、そうか。フフフ、教えてやってもいいが、僕にメリットがない」

 

人を馬鹿にしたような言葉を紡ぐバーニィ。

だが、一応会話は続けるつもりのようだ。

それにしても、違和感を感じる。

コイツに、ここで会話を継続する理由はない。

自分が優位だと思っている?

いや、いくら聖人に至っているとしても、魔王である叔父さんに、その配下の中でトップクラスの実力者であるベニマル、そして同じく聖人の俺がいる。

どう考えても、不利と考えるはずだ。

となると、時間稼ぎとか?

そういえば、もう1人のメンバーのジウは今どうして   

って……おいちょっと待てよ?

まさかコイツは、俺達の気を引くための囮か⁉︎

そうなると、まさか()()1()()   

咄嗟に叔父さんの方を振り向くと、既に刺客が現れていた。

 

「死ね!」

 

殺意のこもった声と共に、黒い閃光が叔父さんへと迫った。

間に合わない   そう考えたが、俺が気付くよりも早く叔父さんは回避行動を取っており、紙一重のところで攻撃を避けていた。

フッと胸を撫で下ろしたい気持ちだが、そんな悠長な事はやってられない。

マジでヤバい。

俺でさえ気付けなかったし、叔父さんの余裕のなさからも、ついさっきまで気付くことが出来なかった事が伺えた。

究極能力(アルティメットスキル)保有者が2人いるにも関わらず、暗殺者を察知出来なかった訳だ。

究極能力(アルティメットスキル)に対抗できるのは究極能力(アルティメットスキル)のみ。

すなわち、相手は究極能力(アルティメットスキル)を持っているという事だ。

そして、暗殺者の正体はやはりジウだった。

しかし、纏っている雰囲気は以前とは比べ物にならないほど冷酷で鋭かった。

 

「驚いた。まさか、私に気付かせずに尾行していただなんてね」

 

ジウは叔父さんの暗殺に失敗したというのに、動揺する事はなかった。そして、手に持ったペンダントから伸びる刃を同時に現れたクロエに向けていた。

どうやらクロエは、早い段階でジウが暗殺者だという事を看破していたようだ。

 

「あれだけ堂々と戦っていたからね。気配に気付くのは当然よ」

 

「優秀なのね、おチビちゃん」

 

「貴女なんかに言われたくないし、私はおチビじゃない!」

 

クロエはそう言うと、大人の姿へと変身する。

そして月光の細剣(ムーンライト)を引き抜き、ピタリとジウに向けて止まる。

“仮面の勇者”クロノアが、そこにいた。

 

「完璧にお膳立てした絶好のチャンスで、まさかこんな失敗を犯すとはな。大失態にもほどがあるぞ、ジウ!」

 

バーニィが不愉快そうに告げる。

 

「悪かった。邪魔が入らないようにしたつもりだったんだけど、こんな伏兵がいたなんてね。さすがに計算外だった」

 

欠片も悪びれずにジウが答える。

なるほど。この2人は叔父さんを殺すために来たみたいだ。

互角の立場である事から考えて、バーニィも究極能力(アルティメットスキル)を保有していると考えられるな。

 

「こうなっては仕方ない。正体をバラした作戦が失敗した以上、実力を隠しておく意味もないな」

 

「その判断に同意する。速やかに敵を殲滅しましょ」

 

そう言うと、2人はペンダントを握った

ペンダントからは眩い光が放たれ、直後2人は独特の鎧に身を包んでいた。

同じような装備に見覚えがあった。

1週間前、ドワルゴン方面の戦いでテスタロッサが戦った3人組が使っていたものとよく似ていた。

確か、アイツらはガドラさんの言っていた帝国皇帝近衛騎士団(インペリアルガーディアン)の一員だった。

という事はつまり   

 

「そうか。お前達は帝国皇帝近衛騎士団(インペリアルガーディアン)なんだな」

 

同じ答えに叔父さんも行き着いたようだ。

そして、それを聞いたバーニィがやれやれとばかりに答えた。

 

「やはり既に、本国の連中との戦争は始まっていたんだな。だが、僕達を他の近衛騎士(ロイヤルナイト)と同じだとは思わない事だ」

 

確かに、テスタロッサに殺された奴らより遥かに高い実力を持っているのは確かだ。

 

「確か、帝国皇帝近衛騎士団(インペリアルガーディアン)には序列があるらしいな? お前らはいくつなんだ?」

 

そう聞いたら、答えが返ってきた。

 

「へえ、よく知っているな。まあ隠す意味もないし、教えてやるよ。僕が第7位で、ジウが第9位。僕らは帝国皇帝近衛騎士団(インペリアルガーディアン)最強の9人、一桁数字(ダブルオーナンバー)さ」

 

「お喋りはそこまで、さっさと殺す!」

 

まさかコイツらが帝国皇帝近衛騎士団(インペリアルガーディアン)上位1割とはな。

これは骨が折れそうだ。

しかも、纏っている武装は間違いなく伝説級(レジェンド)以上の代物。

厄介極まりないな。

 

「ジウ……まさか、君も僕の事を?」

 

マサユキの問いに、ジウの冷たい答えが返ってきた。

 

「当然。それが任務だから、貴方を守っていただけ」

 

あまりに端的である。

そこには、それ以上の意味など含まれておらず、それが理解出来るだけにマサユキがどれほど傷ついた事か。

慰めの言葉でも送ってやりたいが、そんな暇は無さそうだ。

 

こうして、迷宮内の最後の戦いが始まった。

 

 

 




さて、今回が今年最後の投稿となります。
それでは皆さん、良いお年を。
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