異世界空手部・やわらかスマホの裏技   作:コッコリリン

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オリジナル展開が続きますが、次回は原作にもあった展開へ。


15.迫真空手部、休日を過ごす

 時は経ち次の日、王都にある市場にて。

 

「いい天気だゾ~。晴れてよかったなぁ」

 

「そ、そうでござるな……」

 

 賑わう市場を並んで歩くのは、坊主頭の男、三浦。そして着物姿に黒髪をポニーテールにした少女、八重。片やのんびりといつもと変わりなく、片ややや顔を紅潮させつつも背筋を伸ばして歩く少女。

 

 昨日の時点ですでに今日は休みと決めていた今日、王都の店が立ち並ぶ通りを歩く二人。しかしその傍らには、いつものメンバーである野獣と木村、ポッチャマの姿はない。

 

(や、野獣殿~! 昨日のあの話は冗談ではなかったでござるかぁ!?)

 

 そして凛とした立ち振る舞いをしつつも、内心では絶賛狼狽え中の八重。昨日の騒動が起きる前に、三浦と八重の二人で過ごせと言う野獣の言葉が真実であったということを改めて思い知った八重は、出かける直前の二人の言葉を思い出す。

 

『じゃあ俺、木村とカフェ行ってから帰るから』

 

『八重さん、三浦先輩のことお願いしますね』

 

『ポッチャ☆(Good Luck)』

 

 そう言って、ポッチャマを連れてさっさと二人揃って行ってしまった。その時の二人の優しい眼差しがなんか腹立ったのはここだけの秘密だ。あとポッチャマが羽を突き出して親指っぽく立てたのは何故かさっぱりわからない。

 

 しかし、男性と並んで歩くというのは思いのほか気恥ずかしいものがあるというのを改めて思い知った八重は、声が緊張で裏返らないかだけが心配だった。歩き方はまだどうにかなっているものの、それもいつまでもつかわからない。

 

「み、三浦殿、これからどこへ向かうおつもりで?」

 

 とりあえず気を紛らわすために三浦に話題を振ってみる。

 

「あっ」

 

「え?」

 

 が、そこで立ち止まる。何事かと八重が三浦の顔を見ると、

 

「全然考えてなかったゾ」

 

「あらら」

 

 いつもの惚けた顔でそんなことを言うのだから、八重は思わずつんのめった。

 

「と、特に理由もなく歩いていたでござるか……?」

 

「うーん、出かけたいなぁとは考えてはいたけど、何も考えてなかったゾ……八重ちゃん、どっか行きたいとこあるかゾ?」

 

「って、結局拙者が決めるのでござるか……」

 

「八重ちゃんが行きたいところならきっと大丈夫だゾ~!」

 

「いやどんな根拠があって……はぁ」

 

 額に手を当て、やれやれと呆れる八重。相変わらず考え無しな上にのんびりとした性格の持ち主だ。

 

 しかし、悪い気はしない。気付けば先ほどまで緊張で無意識のうちに固まっていた肩が楽になっているのを感じ、自然と笑みが浮かんでいるのを自覚した。

 

「……承知したでござる。けど拙者も特に行きたいところは思いつきませぬ故、一緒にこの辺りを周ってみるというのはどうでござろう?」

 

「お! いいゾ~それ」

 

 何となくだが、三浦が八重をエスコートするとか、そういった光景が思い浮かばない。ならば、こうして並んで気ままに歩き回る方がいいかもしれない。そう考えた八重は三浦に提案すると、三浦は二つ返事で了承。二人は行く場所は特に決めず、のんびり歩き回ることにした。

 

 時には出店で売られていた菓子類を食べ歩き、時には以前の旅の最中で出会ったような大道芸人による華麗な技に子供たちと混ざってはしゃぎ、時には興味のある店に訪れては品定めをしたりと、気ままに二人は過ごす。終始二人は笑い合い、心の底から楽しんでいた。

 

 目的も何もなくただ歩き回り、さりとて惹かれる物があれば共にそこへ赴く……それがこんなにも有意義なものだということを、八重は初めて知ることができた。

 

 そうしていると、やがて太陽は真上へと昇る時間になっていた。

 

「ふぅ……随分と歩いたでござる」

 

「お、そうだな」

 

 大通りにあるベンチに腰掛け、休息する三浦と八重。王都の広い市場を時間を忘れて歩いていたせいか、ベンチに座るや否や足が疲れていることを改めて実感する。しかし不思議とその疲れすら心地よく感じる。

 

「お疲れでござるか三浦殿?」

 

「チカレタ……けどスゲ~楽しかったゾ~!」

 

 年は空手部の中でも最年長だというのに、何とも子供らしいという感性の三浦が無邪気にそんなことを言うものだから、どこかおかしくなってクスリと小さく八重は笑う。

 

「八重ちゃんも今日疲れたろ?」

 

「何の。拙者はこれしきのことではへこたれないでござるよ」

 

「お、流石は八重ちゃん。武者修行してるだけあるゾ~」

 

「いや、そんな……」

 

 少し照れながら、八重は視線を通りへ向ける。多くの人々が行き交う王都の道。いつ見ても活気が溢れ、子供たちが笑って走り回るのを見ていると、やはりこの国は平和なのだと改めて実感できる。

 

「あ、そうだ。ちょっと気になってたことがあるんだけど」

 

「ん? 何でござるか?」

 

「王都って動物みたいな耳とか尻尾生やしてる人もいるよなぁ。あれ何ゾ?」

 

 三浦の視線の先には、店先で品物を選んでいる母娘。二人の頭からは犬のような耳が、そして腰辺りからは同じく犬のような尻尾が生えている。店の主は普通の人間のようだが、気にしている素振りはない。母娘だけでなく、王都を歩く人々の中にはちらほらと動物の耳や尻尾を生やしていた。今まではコスプレか民族的なアクセサリーか何かだと大して気にしていなかったが、よく見れば本当に生えているのに三浦は今更気付いた。

 

「ああ、彼らは亜人と呼ばれる人々で、その中の種族の一つである獣人でござるよ」

 

「おぉ、獣人か~。まさにファンタジーだゾ~!」

 

「ふぁんたじー? 何でござるそれ?」

 

「幻想的って意味だゾ~! 俺らが住んでるところは亜人なんていなかったからな~」

 

「へぇ~」

 

 こう、たまに知らない言葉を使ったりするのも彼らの不思議なところではあったものの、八重はあまり気にすることはなかった。

 

「……と、おや? あれは……」

 

 と、ここでふと八重は気になるものが目に入った。建物の影に隠れるようにして蹲る小さな影。気になった八重はベンチから立ち上がり、そこへ歩み寄ってみる。

 

「う……ひぐ……」

 

 小さな影の正体は、幼い少女。年は四歳ほどかという小さな身体を丸め、泣きじゃくっていた。

 

「こ、子供? 何でここに……」

 

 泣きじゃくる子供を前にして、八重は狼狽える。こういった事態に遭遇したことのない八重は、どう接したらよいかわからない。しかしこのままにしておくのもよくはないと思い、八重は少女の前に屈み込んだ。

 

「え、えっと……ど、どうしたでござる?」

 

「うぇぇ……ひっく……!」

 

「その……どこから来たでござるか? 母上殿は……」

 

「ふぇぇぇぇぇ……!」

 

「え、えっと、泣かないで欲しいでござるよ……」

 

 返ってくるのは泣き声のみ。もう進退窮まったといった風に、八重はオロオロするしかできなかった。この年の子供が一人でいるというのは考え辛いため、恐らく迷子だと思われるが……。

 

「ん? 八重ちゃんどうしたゾ?」

 

 三浦も気になったのか、八重の下へと歩み寄る。

 

「三浦殿……それが恐らく、迷子のようで……質問をしても答えてくれないでござるよ」

 

「あ、そっかぁ」

 

 困ったように言う八重に、三浦がのんびりした口調で返す。それでも状況はわかったらしく、八重に代わって三浦が少女の前に屈み込んだ。

 

「こんにちはだゾ、お嬢ちゃん。どうかしたゾ?」

 

「う、うぇぇ……ママァ……!」

 

 三浦が挨拶するも、少女は泣き止まない。しかし代わりに、少女の言葉から今どういう状況に陥っているのか把握することはできた。

 

「そっかぁ、カッチャマがいないのか~。それで泣いてたんだなぁ」

 

「……」

 

 コクリ……少女は顔を上げることなく、僅かに頷く。それを見て、三浦は笑う。

 

「わかったゾ。俺たちが一緒にカッチャマを探してやるゾ~!」

 

 三浦が言うと、ずっと泣いていた少女が顔を上げる。泣き腫らした顔は、いまだ不安で揺れている。母親とはぐれたことによるものか、或いは目の前の人物たちに対する不安によるものかはわからないが。

 

「……お兄ちゃんたちが?」

 

「そうだよ。きっとカッチャマもお嬢ちゃんとはぐれて泣いてるゾ~これ。早く探してあげないと、カッチャマ可哀想だゾ」

 

 そっと、三浦が少女の頭を撫でる。大きくも優しい手つきの三浦の手の温もりに、少女は少しだけ気持ちが楽になったのか、先ほどよりも大きく頷いた。

 

「俺は三浦って言うんだゾ。お嬢ちゃん、名前は何て言うゾ?」

 

「……レム……」

 

「レムちゃんか~。いい名前だゾ~これ!」

 

 三浦は立ち上がり少女の手を引くと、一緒に立った少女は三浦と並んだ。

 

「八重ちゃんすまんゾ。ちょっと付き合って欲しいゾ」

 

 あっという間に少女の心を解き解した三浦に呆気に取られている時に、三浦からそう声をかけられた八重は正気に戻って気を取り直す。

 

「わ、わかったでござる。とりあえず、警備兵の詰め所へ行ってみてはござろう? 迷い人を尋ねる時は、まずそこへ行けばわかると思うでござる」

 

「交番みたいなものだな~。よし、カッチャマを探しに出発だゾ~!」

 

「……」

 

 意気揚々と歩き出した三浦の手を握りながら、少女も一緒に歩き出す。八重はその後に続き、そしてその後ろ姿を見つめる。

 

「……なんだかまるで、兄妹のようでござるな」

 

 何となく微笑ましくなった八重は、そう呟いた。

 

 

 

〜11分4秒後〜

 

 

 

「お兄ちゃん、お姉ちゃん! ありがとう!」

 

「本当に、娘がお世話になりました……」

 

 迷子の母親探しは、思いのほかあっさりと解決した。警備兵の詰め所前で娘を探していたという母親を見つけることができ、少女は先ほどとは打って変わって明るい笑顔で三浦と八重に礼を言い、彼女の手を握っている母親が頭を下げた。

 

「いえ、お互い見つかって何よりでござる」

 

「レムちゃん、カッチャマが見つかってよかったゾ~。今度ははぐれないようにな~」

 

「うん!」

 

 最後、レムの頭を撫でてから三浦と八重はそこから離れる。少女が手を振るのを返しつつ、母娘と別れた。

 

「……しかし、意外でござったなぁ」

 

「ん? 何ゾ?」

 

「いえ、三浦殿も野獣殿に負けないくらいに子供の面倒見がよいと思って……何だか拙者、兄上のことを思い出してしまったでござるよ」

 

 しばらく歩いた先で、八重が先ほどの光景を思い返しながら、三浦に笑いかけつつ言った。

 

「ん? 八重ちゃん、兄ちゃんがいるのかゾ?」

 

「ええ……拙者にとっての目標であり、かけがえのない人でござる。普段は穏やかなお人柄でござるが、剣のこととなると人が変わって夢中になるのでござるよ。それこそ食事のことを忘れてしまう程に夢中になってしまう程でござった」

 

 実家にいるであろう兄のことを思い、懐かしそうに語る八重。幼い頃に頭を撫でてくれた感触は、今も忘れていない。

 

「そっかぁ、八重ちゃんは兄ちゃんのこと大好きなんだな~」

 

「もちろんでござる。強くて優しい兄上が、拙者は大好きでござるよ」

 

 そんな八重を、三浦も嬉しそうに見る。そして三浦もまた、懐かしそうに目を細めた。

 

「俺も実は兄ちゃんなんだゾ。年は離れてるけど、妹が一人いるんだゾ~」

 

「なんと……なるほど、道理で子供との接し方がうまい訳でござる」

 

 そう言われれば、公爵邸で紅茶を飲んでいた時にそれとなく妹にも飲ませたい等言っていた気がする。野獣しかり、三浦もまた幼いスゥシィと仲良くなるのに全くと言っていいほど時間がかからなかったのも頷ける。彼に妹がいるというのならば、小さい子供の世話はお手の物なのだろう。

 

「妹はいっつも俺の後ろを付いて回ってきててな~。俺が『そうだよ』って言うといっつも『そーなのかー!』って返したりして、すごくかわいいんだゾ~これ!」

 

「あはは、そこの辺りもご兄妹なのでござるなぁ」

 

「そうだよ。休みの日は一緒にお昼寝するんだゾ。俺の腹を枕にするのが妹の定位置だったんだゾ~!」

 

 その光景が容易に想像できて、八重は笑う。何とも微笑ましい光景だった。

 

「それで、妹君は家にいるので? たまに顔を見せに帰られたりは?」

 

 妹のことを話す時の三浦はいつも以上に生き生きとしているのを見て、とても大切に思っているということがはっきりとわかる。だからこそ、八重は聞いてみる。

 

 八重からすれば雑談交じりの発言だったのだろう。しかし、三浦の顔は八重の想像とは全く違っていた。

 

「……」

 

「……三浦殿?」

 

 何故か押し黙ってしまった三浦。怪訝に思い、彼の顔を覗き込もうとした。

 

「……家に、いるゾ……けどもう、会いたくても会えないんだゾ……」

 

「え……」

 

 明るい声から暗い声へ……そして笑顔は消え、三浦の目からはつぅっと一筋の雫が流れ落ちたのを、八重は見た。

 

 戸惑う八重。そしてそんな彼女を他所に、三浦の脳裏に昨日の冬夜との会話が呼び起こされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「平行世界って……そんなの、ありえるんですか?」

 

「けど、それ以外は考えられないんですよね……神様が違うのと、僕たちの常識が当て嵌まらないのを考えると。スマホがヒラヒラになる技術なんて聞いたこともないし」

 

「いや、マジ意味わ、わかんないんですけど、それは大丈夫なんですかねぇ……?(動揺)」

 

「そうだよ」

 

 冬夜の仮説を聞いて、三人は理解できないとばかりに困惑する。だが、的を得ているようにも思えて、反論のしようがないこともわかった。

 

「まぁけど、世界は違えども同じ日本出身みたいだし、同郷みたいなものですよね」

 

「いや、そうあっさり認めるのもなぁ……まぁ違いはないかもだけど」

 

 仮説を建てた張本人である冬夜は呆気らかんというも、いまだ受け入れられていない木村は言いにくそうにそう返した。

 

「そっかぁ……けどやっぱり、冬夜くんも大変だったろ?」

 

「え? 何がですか?」

 

 三浦が気遣うが、冬夜はきょとんとする。

 

「何ってお前、一回死んじまったんだぞ。こんなん誰だって唐突すぎてパニックになるって、はっきりわかんだね」

 

「僕も最初は意味がわからなすぎて受け入れられませんでしたもんねぇ……僕らより若いのに、心中察しますよ」

 

 野獣の言葉に同意し、木村も気の毒そうに冬夜に言う。まだ自分たちより若いというのに死んでしまった彼を思いやっての言葉だったが、

 

「あぁ、僕は平気ですよ。そりゃ最初は現実味はなかったけど、思いのほか早く受け入れられました」

 

 そう言って、はははと笑った。

 

「え……お前、それでいいのかよ?」

 

「そうだよ。家族とか心配じゃないゾ?」

 

「まぁ、さすがに家族を置いて死んじゃったのは辛かったかな。今でもどうしてるかなって思います……けど、起きたことをくよくよ悩んだところでしょうがないですし、それに僕を生き返らしてくれた神様は悪気はなかったみたいだし、あんな頭下げられて謝られたら許すしかないでしょ」

 

「……えぇ?(困惑)」

 

 野獣と三浦の質問に、本当に何てことのないようにそう返した冬夜。それを見て、木村は困惑の声を上げる。

 

 故意ではなかったと言えど、自分を殺した相手をあっさりと許したという冬夜。確かに、冬夜の言うように起きたことは覆せないし、人を許せる心は素晴らしく思う……だが、大切な人たちと離れ離れにさせられた張本人を前にして、自分たちは例え相手がGOではなく冬夜の言う神様だったとしても、その謝罪を受け入れられるのかと言えば、確実にNOだろう。

 

 と言っても、自分たちも詫びという形で神から能力を授かった手前、あまり強くも言えないのも事実ではあるが。それでも内心ではまだ神であるGOに対して複雑な心境を抱いていた。

 

「冬夜ー? そろそろ帰るわよー!?」

 

「あ、うん! わかった!」

 

 と、ここでエルゼから呼ばれた冬夜は応え、もう一度三人へ振り返った。

 

「じゃあ、僕はこれで。あ、ところで野獣さんのスマホと僕のスマホ、連絡先交換できるか試しませんか?」

 

「あ、いいっスよ(寛容)」

 

 世界が違うため、連絡先の交換はできるのかどうか疑問だったが、互いの連絡先を登録してみてから一度コールを鳴らしてみた結果、問題なく繋がった。これも神様による補正なのかどうかはわからないが、今回の場合は都合がいい。

 

「これでよしっと。いつか依頼を一緒にする時は連絡を取り合いましょう」

 

「あ、そっスね」

 

「じゃあ僕はこれで! また会いましょう!」

 

 野獣たちに背を向け、エルゼたちの下へ向かう冬夜。その背を見つめつつ、野獣たちは様々な思いが渦巻いていく。

 

「……何て言うか、変わってる人っていうか……意外と淡泊な子ですね、冬夜くん」

 

「普通神様と言えど殺されてあっさり許すかぁ? しかも家族のこと心配じゃねぇのかよあいつよぉ?」

 

 木村と野獣は、冬夜のあっさりとした態度が気になった。家族のことを心配していると口にはしているが、どうもそうは見えない。あの若さで達観し過ぎているというか、全てを許すような広い心の持ち主かとも思えるかもしれないが、どうもそういうのとは違うように思えた。

 

「いや……あれはきっと、冬夜くんなりの受け入れ方なんだと思うゾ」

 

「三浦先輩?」

 

 しかし、一人違う考え方をしている者がいる。三浦もまた冬夜の背中を見つめていたが、それはどこか物悲しそうな表情だった。

 

「きっと最初は死んでしまったことが信じられなかったんだゾ。けど、ずっと抱えてたらきっと壊れてしまう……そう思ったからこそ、ああやって何でもない風な態度を取って、自分なりに受け入れようとしてるんだゾ」

 

「……本当スかぁ?」

 

 三浦の捉え方はよく言えば好意的、悪く言えば人を信じすぎているようだった。三浦の言っていることは正しいかもしれないし、そうでないかもしれない……それを知るのは、冬夜のみだ。

 

 しかし、

 

「もちろん、これは俺の憶測だし、正解だとは言わないゾ……けど」

 

 ツゥ……と、涙を流す三浦を見ると、野獣たちは何も言えなくなった。

 

「大切な家族と離れ離れになって、辛くない人間なんていないゾ」

 

「「……」」

 

 三浦は、大好きな家族と永遠の離別をしてしまったことを完全に受け入れられていなかった。普段は明るく、仲間たちを励ます立場にいる三浦。しかしその心は、家族に会いたいと願いながらもそれができないことがわかっているがために、悲しむことしかできない一人の人間に過ぎなかった。

 

 それは、野獣と木村も同じ。大切な人と離れてしまった彼らもまた、心に深い悲しみを抱えた者たちである。

 

 大切な人に会いたいけど会えない……そんな彼らの心のように、リフレットの町をオレンジ色に染めていた輝く太陽は、ゆっくりと沈んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

「み……三浦殿?」

 

「あっ」

 

 昨日のことを考えていたら、八重からおずおずと声をかけられた三浦は思考を現実へ戻す。その瞬間、三浦の顔はいつもの顔へと戻っていた。

 

「すまんゾ八重ちゃん、しんみりしちゃったゾ~」

 

「い、いえ……何か、拙者余計なことを……」

 

「それは違うゾ。まぁ今は色々あって会えないだけで、そのうち会えると思うから心配ないゾ」

 

 嘘をつく。しかしそうでも言わないと、八重が余計に心配してしまう。それは三浦としても本意じゃない。

 

「だから八重ちゃんはなーんも心配することないゾ。俺は大丈夫だからな~」

 

「……」

 

 八重を安心させようといつものように楽観的なことを言う三浦……八重にはそれがどこか強がっているように見えてしまう。

 

 三浦が家族のことを本当に大切に思っている……それには嘘がないのは彼の態度から見て明らかだ。しかし、彼が家族に会えないのには、何か大きな理由があるのだろうとしか思えない。

 

(……拙者は、彼らのことを何も知らないでござるな……)

 

 彼らは八重を仲間だと、友達だとはっきり言ってくれた。それを八重は嬉しく思うし、彼らが危機に瀕したら昨日のように八重もまた我が身を顧みずに駆けつけるだろう……だというのに、八重は彼らのことを何も知らないでいる。

 

 本当に、何か大きな……八重ですら想像しえない秘密を、彼らは抱えているのかもしれない。

 

 そんな途方もない秘密を抱えていたとしたら……自分はどうすべきなのか、八重は考える。そしてすぐに、答えは出た。

 

「あ、そうだ。八重ちゃん、お昼まだ食ってないゾ。こないだ旨そうな店見つけたし、一緒に食いに行くゾ。腹減ったなぁ」

 

「……ええ、お供するでござる」

 

 マイペースに、楽しそうに歩き出す三浦の少し後ろに付くようにして、微笑みながら八重もまた共に歩き出した。

 

(そんなの、関係ないでござる)

 

 そう、関係ない。

 

 例えどのような秘密を抱えていたとしても、八重にとってはここにいる彼らこそが全てだ。知らないことがあるならば、これから知っていけばいいのだ。

 

 彼らが彼らでいる限り……八重もまた『迫真空手部』の一人なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃。

 

「みんな踊れぇぇぇぇぇ! ダイナモ感覚! ダイナモ感覚! YO! YO! YO! YO!!」

 

「「うおおおおおおおおおおおお!!」」

 

「……やめてくれよ(絶望)」

 

「ポッチャァ……」

 

 カフェから酒場へ移動した野獣と強引に連れてこられた木村withポッチャマは、そこの酒飲みたちと意気投合。野獣は夜までテンションMAXで騒ぎまくって泥酔して翌日二日酔いに悩まされながら八重から怒涛の説教を喰らうのであった。

 

 




空手部にどんどん設定がついていく……もうこれ彼らオリ主と変わらない……変わらなくない?(自問自答)

あとすでにお気づきの方もおられると思いますが、一応ちょっとクッキー☆要素ちらほら入っとります。タグ追加すっかな〜俺もな〜。

次回から第三章。王家の方々と濃い関係(卑猥は一切ない)へ。

今後の活動についてではなくお気楽アンケート開催。アニメ異世界スマホのEDでスマホ太郎がヒロインたちに手を差し出すシーン、差し替えるとしたら誰がいい?

  • スマホ太郎(アニメ主人公)
  • 望月冬夜(原作主人公)
  • 野獣先輩
  • 三浦
  • 木村
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