異世界空手部・やわらかスマホの裏技   作:コッコリリン

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皆さんいつもコメントありがとナス! 私の涙腺壊れちまうよ(感動)

今回は原作とはちょっと違う展開ですが、書けてよかったです(満足)

望月兄貴が多用してる無属性魔法について独自解釈というか設定あります。こういうので差別化して原作と離さないといけないって、それ一番言われてるから。


第三章
16.迫真空手部、ヤバイ魔物と遭遇する


 場所は廃墟。そこかしこに崩れた城壁や瓦礫が点在している、かつては立派な建物があり、そこで人々が生活を営んできたであろう文明の名残り。

 

「ぬぅっ!!」

 

「ンアッーーーーー!!」

 

 そこで激闘を繰り広げるのは、毎度おなじみ迫真空手部の面々。

 

 ドゴォッ! そんな豪快な音をたてて、三浦が先ほどまで立っていた地面が砕け散る。直撃とはいかずともその衝撃で三浦の横に立っていた野獣がきりもみ回転で吹っ飛んでいった。

 

 土煙の中、横へ転がって回避した三浦は、地面を破壊した主である身の丈2m程もある屈強な黒い鎧を纏った騎士へ肉薄する。そして三浦は拳を、その手に鉄板が仕込まれたプロテクターを着けたことで威力を底上げした強烈な一撃を騎士の胴体へ叩きつける。鈍い音が空間を震わし、騎士は僅かによろめく。が、大きなダメージを受けた様子はない。

 

 三浦は騎士を鋭い目で見上げる。その視線の先は騎士の頭部……が、ある筈の場所。

 

 その騎士には人としてある筈の首が無く、しかし無いにも関わらずその手に持つ大剣を振るい、己の前に立ちふさがる敵を屠る。

 

 その騎士はデュラハン。元は断頭台で処刑された騎士が無念のあまりに自らの首を求め彷徨いながら罪なき人々に襲い掛かるようになった魔物である。

 

 頑強な黒いプレートメイルで実体無き身体を覆ったデュラハンは、その防御力で三浦の拳を物ともせずに、三浦を両断しようと禍々しい大剣を大きく振り上げた。

 

「はぁぁぁぁっ!!」

 

 が、そうはさせじとデュラハンの背後に聳え立つように転がる苔むした瓦礫の上から、八重が刀を手に飛び掛かる。重力に任せた八重の刀による一撃によって、デュラハンの背中から火花が散る。衝撃でデュラハンはよろめき、その隙に三浦は後ろへ飛び退いた。

 

 デュラハンは標的を八重へ変更。背後へ振り返り様に大剣で大きく薙ぎ払うも、八重は姿勢を低くして回避。ポニーテールの先端の毛を数本飛ばされる程度で済み、すぐさま反撃の刀を振るう。

 

 一合、二合と大剣と刀が切り結んで金属質の音が鳴り響く。大剣の一撃をまともに受け止めては刀がもたないため、八重は全ての攻撃を流すように受けるか、或いは軽い身のこなしで躱し続ける。

 

「八重さん、もう少し引き寄せてください! 三浦先輩は八重さんの援護に!」

 

「心得たでござる!」

 

「任せろ」

 

 城壁の後ろに隠れながら、木村が八重と三浦へ指示を出す。デュラハンが大剣を振るおうと柄を持ち直すが、その僅かな隙をつく形で八重が屈むと同時、その上を飛び越えるようにして三浦が飛び出してデュラハンへ飛び蹴りをかます。槍のような一撃は先ほどの拳よりも強烈で、デュラハンは一歩後ろへ下がった。

 

「ポッチャァァァァ!!」

 

 さらにダメ押しとばかりに、三浦の背中に隠れるように張り付いていたポッチャマが飛び出し、嘴から強烈なみずでっぽうを発射、炸裂。鎧の胸部にぶつかってきた水圧によってさらに一歩、デュラハンがよろめく。

 

「そこ! 光よ穿て、輝く聖槍、シャイニングジャベリン!!」

 

 揃えた人差し指と中指の先に魔法陣を展開させた木村は、その指を銃のように突き出す。狙いをすまし、魔法陣の中心から光の槍を射出、まっすぐデュラハンへと飛んでいく。

 

 槍はデュラハンの左腕の肘関節部分に命中。当たった個所が爆散し、デュラハンの鎧の左手部分が消失する。弾け飛んだ腕の先からは血ではなく、黒い靄のような瘴気が噴き出てきた。

 

「くそ、外した!」

 

 それを見て、木村は歯噛みする。狙ったのは胴体だったが、デュラハンはその寸前で回避運動を取ってしまい、致命打を与えることが叶わなかった。頭が無いというのに何とも鋭い。生前の騎士としての経験が鎧に宿っているのだろうか? 確かめる術はないが、もしそうなら何とも厄介な話だ。

 

 身体にかかる僅かな疲労感を鞭打ち、木村は再び魔法を唱えようとする。だが、デュラハンは木村を脅威と捉えたのか、身体を木村へと向けた。

 

 三浦と八重が動く……寸前、この場にいなかったもう一人が先に動く。

 

「爆砕かけますね!(仕返し)」

 

 先ほど吹っ飛ばされた筈の野獣が、曲刀を手に低い姿勢のまま獣のように疾走、デュラハンの懐へ潜り込み、そこから飛び上がりつつの切り上げを繰り出す。そこで終わらず、野獣の踊るような無数の剣戟が、残像を残す程の速度で次々とデュラハンへ火花を散らしつつ命中していく。出鱈目な攻撃のようでいて、その実、全ての斬撃は残された右腕、両足の関節部へと叩き込まれていた。いかに頑丈な鎧と言えども、関節部分はどうしても脆くなる。そんな部分に、一撃一撃は大したことは無い攻撃でも、ダメージは着実に積み重なっていく。

 

 デュラハンは手足に走る衝撃を前に反撃もままらない。それでもかろうじて、緩慢な動きで大剣を野獣へと振り下ろす。が、

 

「三浦先輩! 八重!」

 

「応!」

 

「承知!」

 

 一通り攻撃した野獣は後ろへと回転しながら飛び上がって大剣の刃を回避。その際、突き出されて無防備な右腕に三浦のプロテクターで固められた拳が叩きつけられ、左足の膝関節目掛けて八重の刀の刃が走る。

 

 結果、右腕はひしゃげるように折れ、左足の関節が変な方向へ曲がる。立つこともままならず、デュラハンはとうとう膝を着いた。

 

「今度こそ……! マルチプル!!」

 

 次は確実に仕留める。その意思を込め、木村は以前冬夜が使用していた、魔法を同時に発動させることが可能になる無属性魔法『マルチプル』を唱え、木村の眼前に二つの魔法陣が現れる。そして、

 

「光よ穿て、輝く聖槍、シャイニングジャベリン!!」

 

 先ほどの魔法を再び唱えると、二つの魔法陣から光の槍を発射した。逃れようとするデュラハンだが、足が思うように動けない。大剣を盾にしようにも残された右腕は自由に動かない。

 

 故に、そこから導き出される結末を回避することは不可能だ。

 

 二本の槍は今度こそ鎧の胴体と腹部へと命中、突き刺さる。白い光が鎧の中へ注ぎ込まれ、闇の瘴気で構成された身体に毒となって回る。最後まで足掻いていたデュラハンの身体は、やがて大剣を地面に突き立てたままゆっくりと倒れ込んでいく。その身体からは黒い靄が煙のように噴き出て、やがてそれは一陣の風によって掻き消されていった。

 

 後に残されたのは、もはや動くことのないボロボロの鎧と、墓標のように突き立てられた大剣のみだった。

 

 

 

 

 

 

「ぬわぁぁぁぁぁん疲れたもぉぉぉぉぉぉん」

 

「……野獣殿はいっつも疲れてるでござるな……」

 

「スゲ〜キツかったゾ〜」

 

 廃墟におあつらえ向きの段差があり、そこに座り込みながら野獣と閣下モードからいつもの調子に戻った三浦が疲労の声を上げた。八重もまた段差に座る。

 

「はぁ……何とか勝てましたねぇ」

 

「ポチャ(労わり)」

 

 中でも一番疲労困憊な様子の木村が、額に汗をかきながらも笑みを交えて言う。ポッチャマはそんな木村を、小さな羽で優しくペチペチした。

 

「木村も結構、魔法の使い方上手いじゃん」

 

「あ、ありがとうございます……以前よりもコツを掴めてきた感じですね」

 

 三浦からの賞賛を受け、木村は照れつつ確かな成長を実感していた。

 

「そうでござるなぁ。正直、今回の相手は木村殿の力あってこそ勝てたようなものでござる」

 

「鎧相手に物理攻撃とか効かなさすぎんよ~……ってか緑ランク初の依頼がこれとかキツいですね……これはキツい」

 

「そうだよ。俺もエルゼちゃんからオススメのプロテクター買わなかったら今頃手ぇボロボロだったゾ~これ」

 

 八重と野獣は、今回の相手、デュラハンの強敵っぷりを思い返しつつ、改めて木村が魔法を使えることに内心感謝した。三浦もまた、新たに購入したプロテクターの有効性を改めて実感する。

 

 冬夜たちと出会ってから早数か月の月日が流れ、その間に一行のランクは『緑』へと上がっていた。そうして早速、今回初の緑の依頼を受け、こうしてこの廃墟へ訪れていた。

 

 依頼内容は『廃墟に巣くう魔物の排除』というシンプルなもの。最初に訪れた彼らを待っていたものは、群れをなした一角狼。しかし今の彼らにとって、一角狼は雑魚中の雑魚。一転攻勢を許すこともなく殲滅、これで依頼は達成……と思った矢先、デュラハンによる襲撃を受けた彼らはこれに応戦。辛くも勝利を収めることができ、こうして休息を取りつつ健闘を称え合うことができた。

 

「……けど、やっぱり冬夜くんたちと組んだ方が効率はよかったですよね……」

 

「仕方ないゾ。冬夜くんたちは冬夜くんたちで依頼を受けてたんだから、無理強いはできないゾ」

 

 木村はここにいない、時折共に組んで依頼を受けるようになった者たちの実力の高さを改めて思い知った。

 

 冬夜と連絡を取れるようになってから、お互い都合がつけば同じ依頼を受けて共に遂行するようになった。内容は基本規模の大きめの魔物討伐依頼。共に依頼をこなしていくうちに、一行は彼らと次第に打ち解けていった。

 

 やがて木村は、魔法の技術や知識が木村よりも一歩先へ行っているリンゼと、無属性魔法すらも使いこなす冬夜から教えを乞うようになり、以前よりも遥かに魔力をコントロールできるようになった。冬夜からは数種類の無属性魔法を教わり、特に『マルチプル』に関しては修行すれば同時に四つ、五つの魔法を行使することができると知り、これを中心に鍛えていくようになった。

 

 因みに、『スリップ』や『エンチャント』、『モデリング』も一応教えてもらったが、これらの魔法のいくつかは癖が強すぎる。つまるところ、予想以上に魔力の消費が半端なかったりするのだ。特にモデリングなど魔力消費に合わせて集中力も併せて使わなければいけないため、今の木村には使いこなせそうにないと判断し、現在は封印という形で使用するのはやめておくことにした。

 

 スリップは一応消費魔力はまだ少ないものの、これもまた扱い方が難しい。相手との距離、または大きさによって魔力の消費量が変わってくるだけでなく、意識を集中させないと思った通りの場所に魔法陣が展開できない。冬夜は難なく使っているようだが、これもまた封印案件だった。どうしても相手を足止めする必要性が出てくる時以外に使用するのは控えた方がいい。

 

 簡単なように見える魔法が、実は難易度の高い魔法だと知った時の衝撃は計り知れない。特にスリップ。何でゲートのような異空間転移魔法の方が簡単なのか、これがわからない。

 

 聞けば冬夜はスマートフォンだけでなく、身体能力底上げに加えて魔力無限大というとんでも能力を神から授かったため、あらゆる無属性魔法を使うのに制限がないという。故にモデリングもエンチャントも余裕で使える。あっという間に使いこなせたのは、それだけ冬夜が魔法の扱いに長けた天才だからか、或いはそれもまた神様補正か、はたまた変態だからか。魔力に限りがあってたくさんの魔法を使えばバテてしまう木村とはえらい違いだ。自分たち以上に至れり尽くせりなところ、ちょっとズルいとも思う。

 

 どうせだったら自分も魔力無限大にしてくれたらよかったのに……と木村は常々思うも、無いものねだりしても仕方がない。自分を鍛えて、できることを増やしていくしかない。

 

 閑話休題。

 

 とにもかくにも、木村は元々独学で勉強していたこともプラスして二人の教えを受けたおかげで、使用可能な属性魔法が増えて魔法書が数ページ埋まっただけでなく、魔力量が上がったことによってマルチプルをどうにか使用できるようになり、戦略の幅が増えた。その分、魔力消費量も二倍だが、ここぞという時の必殺技として使うのならば申し分ない。デュラハンも倒せたし、しっかり成長しているのを自覚できた。

 

 今回は三浦の言う通り、冬夜たちはリフレットのギルドでの依頼があったためここにはいないが、今度会ったら礼を言わなければいけないと木村は思いつつ、持ってきた水筒に入れた水を飲んだ。

 

「……それにしても、ここは随分と荒れてんなぁ」

 

 野獣が座りながら辺りを見渡す。崩れて苔むした城壁、ボロボロに朽ちた石柱、穴だらけの石畳だった地面。かろうじて街の面影を残すこの場所は、話に聞けば1000年前に王都として栄えていた土地だったという。今野獣たちが座っている小高い丘の上には王城が建っていたという。だが当時の王は新たな場所に王都を造るために遷都し、この地を捨て、そして魔物の巣くう廃墟となって今に至る。

 

「これが当時は栄えていたって思うと、なんだか切ない気持ちになりますね……」

 

「お、そうだな。そういう気持ちを味わいたい人たちが廃墟巡りとかするってよく聞くゾ」

 

「ポチャ」

 

 そう言う三浦の横に座りながら、ポッチャマは三浦からもらったビスケットを食べていた。そのポッチャマの頭を八重が優しく撫でる。

 

「遷都した後、何があったのかはわかっていないらしいでござる……謎が深まるばかりでござるなぁ」

 

「災害か、疫病か……けどそういった理由なら何か記録に残っててもおかしくないですよね」

 

「これもうわかんねぇな(ミステリー)」

 

 記録が残されていない以上、何が起きたか知る由もないため想像するしかできない。ここまで廃れているのなら、何かが起きたと見るべきだが、それすらも知りようがないのではどうしようもない。

 

「……あ、でもさぁ。もしかしたら当時のお宝とかそんなん残ってたりしねぇかな?」

 

「お! いいゾ~これ! 宝探しとかしてぇなぁ」

 

「そりゃないでござるよ。国を滅ぼされたのではなく遷都したのだから、当時の物は全て持っていってるでござる」

 

「あ、そっかぁ」

 

「しょうがないね(残念)」

 

 一瞬テンションを上げた野獣と三浦だったが、八重に事実を突きつけられると一気にテンションを下げた。木村も一瞬、財宝などを期待はしたが八重の言葉で「仕方ないね……」と内心思った。

 

 ぶっちゃけると、冬夜から教わった『サーチ』という無属性魔法を使う手もあったが、あれもかなり魔力消費が激しい上にモデリング並に集中力を使う。ある可能性の方が少ない財宝を探すのに、そんなことで魔力切れは起こしたくなかった。というよりも、そう言った魔法を使うのは無限の魔力を持つ冬夜に任せようと考えている木村は、サーチの魔法を欲しいと思わず、それ故に魔法書にも記されることはなかった。

 

 まぁ、使えると知った瞬間、絶対野獣に悪用される可能性が高いとも考えたという方が理由としては大きいが。モデリングにしてもそうだし。

 

「じゃ、とりあえず休憩も終わったことですし、そろそろギルドに戻って報告しましょうか」

 

「お、そうだな。その後一旦公爵さんとこにも行きたいゾ~。最近顔出してないし、スゥちゃんにも会いたいゾ」

 

「ポチャ!」

 

「そういや、襲撃者の黒幕のことについてなんかわかったんスかねぇ?」

 

「それも含めて、一度会いに行った方がよいでござるな」

 

 もう八重は公爵に会いに行くのに抵抗がない。木村は何だかんだでもう慣れてしまったのか三浦の発言に気にも留めていない。そんな三人に毒されたことに、八重は気付くことはなかった。

 

「じゃあ、開きますね(ゲート)」

 

 木村が手を翳すと、空間に穴が開く。穴の先にはギルドの玄関先の光景が広がっており、ここを通れば一瞬でギルドへ着けるというわけである。

 

「FOO! 便利だよなぁゲートって! 移動時間も短縮できるし、助かるぜ!」

 

 片道数時間かかる距離も、このゲートがあれば一瞬だ。おかげで依頼遂行も随分とスムーズになり、空手部面々にとっても重宝していた。

 

「言っておきますけど、乱用だけはやめてくださいよ。僕は冬夜くんと違って魔力有限なんですから」

 

「大丈夫だって安心しろよ~! ちょっと遠出したい時に頼むだけだからさぁ」

 

「それが頻繁に起こると困るって言ってんですよ」

 

「まぁまぁ、二人とも。とりあえず今はギルドへ戻るでござるよ」

 

「そうだよ」

 

「ポッチャ」

 

 軽く言い争いになりかけた野獣と木村を窘めながら、八重がゲートを先に潜ろうと足を一歩踏み出した。

 

 その瞬間、いきなり足元が大きく揺らぎ始める。

 

「ファッ!? 地震!?」

 

「うわわっ!?」

 

「あっ」

 

「ポチャ!?」

 

「っ!?」

 

 戸惑う四人だったが、咄嗟に姿勢を低くすることで揺れに耐える。足元から腹に響くような地震により集中力を切らしたため、木村のゲートが閉じた。

 

 しばらく低姿勢を維持していた四人だったが、野獣が違和感に気付く。

 

「なぁ!? なんかこの地震長い……長くない!?」

 

「た、確かに長いですね……単なる地震じゃない!?」

 

 揺れに耐えつつ、木村が答える。一体何事かと誰もが疑問に思っていた時だった。

 

「誰か助けてっ!!」

 

 聞きなれない声が聞こえ、全員がそちらを向く。革の鎧を身を包んだ若い男が、地震で周囲が揺れる中、必死の形相で駆け寄ってきていた。

 

 冒険者だろうか? 一体何があったのか木村が問おうとした。

 

 が、それは叶わず。

 

「お、おい! 足元見ろ足元ぉ!!」

 

 野獣が叫ぶ。視線の先、男が踏み込んだ場所が、突如として罅割れていく。揺れに伴い、罅はますます大きくなって地割れとも呼べる程になると、男が立っている場所の周囲はもう立てる場所が無くなった。

 

 そして、男が立っている場所もまた等しく、地割れが襲う。

 

「ああ!? 逃れられない!?」

 

 周囲の城壁が崩れ、地割れに飲み込まれて行く。そして自らの運命もまた、城壁と同じ末路を辿ると察した男は、それでも藻掻こうとその場から逃げようとする。が、地震のせいで足が思うように動かない。

 

「やだ、やだ、やだぁ~! ねぇ本当ムリムリムリ! やぁぁぁぁぁ!!」

 

 情けなく泣き叫ぶ男。しかし助けたくとも、一行には助ける術がない。このまま男が地割れに飲まれ、瓦礫に埋もれていくのを見ることしかできない……が。

 

「仕方ない……風よ来たれ、暴風の鉄槌、ウィンドブロウ!」

 

 木村が手を翳し、魔法を詠唱。風の拳が男目掛けて飛んでいき、

 

「ヴォエッ!?」

 

 腹に思いっきり命中。男が吐瀉物をまき散らしてくの字に吹っ飛んだ直後、間一髪、さっきまで男が立っていた場所が崩れていった。

 

 それが合図のように、揺れが収まっていく。完全に地震が止まってから、一行は立ち上がった。

 

「み、みんな無事でござるか?」

 

「(怪我とかは)ないです」

 

「僕は大丈夫です……」

 

「スゲー揺れだったゾ~」

 

「ポッチャァァ」

 

 お互い無事を確認してから、全員目の前の光景を見る。下は空洞だったらしく、地震によって大きく陥没した地面は瓦礫で埋まり、ひどい有様だった。

 

「少しでも位置がズレていたら、拙者たちも危うく生き埋めだったでござるな……」

 

「あ、そうだ。さっきの人はどこゾ?」

 

 ゾっとしつつ、運がよかったと心から安堵する八重。ここで三浦が、先ほど木村が吹っ飛ばした男の行方を捜す。

 

「あ、いたっスよ。あそこ」

 

 野獣が見つけ、指を差す。その先には城壁にもたれかかるようにして、先ほどの男が倒れていた。口元から唾液が出ており、目も白目を向いている。一瞬死んでいるのかと思いきや、遠目から見ても呼吸はあるのがわかった。しかし正直、見てて哀れな姿だった。

 

「……咄嗟のことで威力の加減ができなかったな……」

 

「ポチャ……」

 

 助けるためとはいえ、さすがに何の罪のないであろう男に対して威力調整を忘れていた風魔法はやばかったかもしれない……内心冷や汗を流しながら、木村は気まずそうに言った。まぁ、けれど死ぬよりかは遥かにマシだろう。

 

「まま、ええわ(命あっての物種)。とりあえずあいつ連れて王都戻らねえ? 余震があったらいよいよやべぇよやべぇよ……(危機感)」

 

 野獣の提案に誰もが賛成する。そして男の下へと行こうとした……が、ここでまたも足止めされる。

 

「って、いきなりかよ!?(余震)」

 

 再び足元が揺れ出す。余震かと誰もが思ったが、ここで八重が違和感を覚えた。

 

「……いや……これは……!」

 

 足元から来る揺れが、徐々に大きくなっていく。揺れだけではない、地鳴りの音もまた同じく。まるで何かが迫ってきているかのような……それを裏付けるが如く、八重の第六感が察知した。

 

 気配が近づいてくる……足元から、それも巨大な何かが。

 

 

 

 ―――キィィィィン……

 

 

 

「な、何だこの音!?」

 

 思わず木村が鼓膜を震わせる程の甲高い、嫌な音に反応して耳を抑えながら叫ぶ。先ほどまで聞こえなかった音がいきなり響いたことで、一行の警戒心はより高まる。

 

 

 

 ―――キィィィィン

 

 

 

 ―――キィィィィン!

 

 

 

「……ポッチャマ、野獣、木村、八重。構えろ」

 

 三浦はすでにその顔つきを凛々しいものに、閣下モードへと切り替えていた。そして音の発生源が近づいてくる方角……地割れによって陥没した地面へと視線を向ける。

 

 三浦が閣下モードになるのはよほどの時以外。それが意味するものはつまり、

 

「何か……来るぞ!」

 

 脅威が迫っている、ということである。

 

 そしてその脅威は、現実の物となって一行の前に現れた。

 

 

 

『――――――――ッ!!』

 

 

 

 今しがた陥没した地面から、土煙と瓦礫を巻き上げながら勢いよく何かが飛び出す。それは空中で一瞬停滞すると、重力に乗って落下、大きな揺れと共に一行の目の前に着地した。

 

 その外見は、異様の一言だった。アーモンドのような形の身体に、長い六本の足。生物に例えるならばコオロギにも似ている。だが何よりも異様だったのは、エメラルドグリーンの水晶のような物質で構成されているその身体だ。その体内に埋め込まれている赤くて丸い石のような物体が、太陽の光に反射して猛禽類の目が如し鋭い光を放つ。

 

 そしてその目に睨まれ、哀れな獲物となった者たち。それは目の前で戦闘態勢に入った迫真空手部一行であった。

 




この二次創作……まるで将棋だな(半笑い)

今後の活動についてではなくお気楽アンケート開催。アニメ異世界スマホのEDでスマホ太郎がヒロインたちに手を差し出すシーン、差し替えるとしたら誰がいい?

  • スマホ太郎(アニメ主人公)
  • 望月冬夜(原作主人公)
  • 野獣先輩
  • 三浦
  • 木村
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