異世界空手部・やわらかスマホの裏技   作:コッコリリン

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望月兄貴のキャラがわかりません!!(今更独白)


18.迫真空手部、公爵邸に招待される

「なるほど……旧王都にそのような魔物が……」

 

「はい、とんでもない奴でした」

 

「今日はもう、スゲ~キツかったゾ~」

 

 公爵邸にて、対面に座る一行の説明を聞いて公爵が唸る。今この場にいるのは空手部一行、そして公爵と家令のレイムのみ。スゥシィとエレンは共に寝室にいる。本来であれば出かけているところだったのだが、いまだ襲撃者の黒幕が判明していない以上、迂闊に外にも出られない。取り調べでわかったことと言えば依頼人は顔を隠して襲撃者たちに依頼をしてきた上、結局偽名だったらしく、詳細はわからず仕舞い。用心深いことだ。

 

 ただ金払いはよかったらしい。着ている物も高級品のようだったと話している。そこから導き出されるのは、黒幕はやはり金持ち、即ち貴族か或いは商人辺りと見られた。スゥシィを二度に渡って攫おうとした輩だ、単なる人さらいという線は薄い。それでも、貴族や商人はこの国に数え切れない程いる。どの道見つけ出すのは困難だろう。

 

 最初その話を聞いて落胆を覚えた一行だったが、どうすることもできない以上、歯痒い思いで過ごすことになる。だが今はとりあえず、旧王都で起きた出来事をどうにかすることが先決だった。

 

「先ほど、気絶した冒険者をギルドへ連れて行ったんです。ギルドに着いたら男が目覚めて、何があったのか知ることができたんですが……」

 

 木村は、苦虫を潰したような顔をしながら説明する。あの男はやはりギルドの冒険者で、最初は数人の仲間たちとあの辺りで討伐依頼をこなしていたらしい。その時、旧王都の廃墟で偶然にも地下への入り口を発見、宝探し感覚で階段を降りると、古代遺跡らしき建造物を見つけ、そしてその奥深くに石像のように安置されていたあのコオロギを発見した。が、その時照明に使っていた光魔法『ライト』の魔力を吸収してコオロギが復活、遺跡は崩れ、男の仲間たちは生き埋めに。男は一人命からがら逃げだし、今に至る……というわけであった。

 

「つまり完全とばっちりを受けたってわけだよ! 頭にきますよ!」

 

 他人の好奇心と欲が招いた出来事だっただけに、無関係であった筈の自分たちがその尻拭いをする羽目になったことでプンプンと怒りを顕わにする野獣。今回は勝てたが、一歩間違えれば命を落としていたかもしれないだけに、その怒りも一入だった。まぁ、件の冒険者の男はギルドで厳重注意を受けることとなったが、意気消沈していた男を見る限り、今後もギルドの活動を続けていくのかは疑問だった。あれだけのことがあった上に仲間を失ったのだ。無理もない。

 

「確かに、犠牲になった者たちは気の毒ではござるが……しかし何故、あのような魔物がかつての王都に封印されていたのか……」

 

 八重が腕を組んで考える。やはりかつての王族があの地を捨てたことと何か関係があるとしか思えないが、断定できる証拠もない以上、憶測するしかない。

 

「その辺りを含め、近々調査団を派遣しようと思う。何故あの地から遷都することとなったのか、理由が掴めるかもしれないからな」

 

「あれ? その辺りって記録とかないんスか?」

 

「ああ、何故か一つも残されていない……今の今まで、私も疑問には思っていなかったがね」

 

「やっぱり変ですよね。遷都って結構大がかりで歴史的にも記されるような出来事なのに、記録が残っていないのはおかしいですよ」

 

「ん~? なんか言えないことでもあったのかもしれないゾ?」

 

「恐らくそうかもしれないでござるが……先の冒険者たちが言っていた古代遺跡というのが引っかかるでござるな」

 

「多分そこに何か隠されているかもしれませんけど……」

 

 一行は思い出す。大きな地震により、地下は瓦礫で埋まってしまったことを。つまり、唯一の手掛かりは失われたも同然……ということだ。

 

「確かに、遺跡は崩れてしまったが、それでも何か残されていないとも限らない。君たちが苦戦した化け物が他にもいるかもしれないなど、それこそベルファストの危機でもある。私も最善を尽くそう」

 

「よろしくお願いします」

 

「よろしくお願いさしすせそ(料理の基本)」

 

「野獣殿、そこはちゃんと言うでござる」

 

「そうだよ」

 

「ポッチャ」

 

 お前が言うなという視線を三浦に送る木村。「さて……」と、公爵が真面目な顔から一転、いつもの人のよさそうな笑顔を浮かべた。

 

「君たちも今日は一日ご苦労だったな。大変だっただろう?」

 

「ええ、まぁ。けどみんな無事に生きてるので、そこだけはホッとしました」

 

 木村も真面目な顔から破顔し、公爵に答えた。

 

「そうだな、君たちが無事で何よりだ……と、そんな君たちに少し話があるのだが……」

 

「話、ですか?」

 

「なに、仕事を頼みたいとかではないから安心してくれ。というのもな……」

 

 そうして一行は、公爵から語られる話に耳を傾けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ、そんなことがあったんだ……」

 

「大変だったんだぜ~? まぁ俺の活躍のおかげだけどな!」

 

「何言ってるでござるか野獣殿。拙者たち皆が力を合わせなければ勝てなかったでござるよ」

 

「そうだよ。俺とポッチャマと八重ちゃん、木村とお前、皆の功績だゾ」

 

「わぁってるって冗談だよ冗談!」

 

 場所は変わり、リフレットの街にある喫茶店パレントにて。一行は対面に座る冬夜とエルゼ、リンゼに今日の出来事を報告していた。かつて互いのことを知るために集まったここは、今や近況報告のための場となっている。

 

「その、すみません。私たちもその場にいればお手伝いできたのですけど……」

 

「うん。僕らも一緒に戦っていれば少しは戦力になれたかもしれなかったしね」

 

「仕方ないでござるよ。冬夜殿たちには冬夜殿たちの依頼があったでござるから」

 

「そうだよ。結果的には勝てたし、全然気にしなくていいゾ~」

 

「ポチャ」

 

 リンゼと冬夜が、別の依頼のためにパーティを組めなかったことを悔やみ、八重と三浦が気にしなくてもいいと二人の気遣いに感謝する。ポッチャマも三浦に便乗するように一声鳴いた。

 

「……ところで、アンタの武器ってそんなんだっけ?」

 

 ふとエルゼが野獣の後ろの壁に立てかけられている大剣へ視線をやる。何だか妙に禍々しいオーラみたいなものを感じるのは何故だろうかと思いつつ、野獣へ質問した。

 

「ああこれ? 今日の依頼の魔物討伐でデュラハンが使ってた大剣を拾ったんだよな~」

 

「いやそれ曰く付きじゃないの! よくそんな武器持って帰って来れたわね!?」

 

「大丈夫だって安心しろよ~。ヘーキヘーキ、ヘーキだから! というかこれのおかげであの化け物倒せたんだし、俺にとっちゃ最強の相棒だぜ? これからは野獣丸二号ってことで、はい、よろしくぅ!」

 

「もう勝手に名前付けてるし!? っていうか前の剣もリザードマンから分捕った奴だったらしいし、アンタ魔物が使ってた武器拾って使うのやめなさいよ! 普通に武器屋行って買え普通に!」

 

「ただより安い物はないって、はっきりわかんだね(真理)」

 

「高い安い以前の問題だと思うんだけど……!(名推理)」

 

「お、お姉ちゃん……前も言ったけどここ、お店の中……」

 

「今日のエルゼはなんか生き生きしてるなぁ」

 

「生き生き……と言えるのでござるか、あれ?」

 

 野獣とエルゼの漫才的会話に、リンゼは何といえばいいのかわからずオロオロし、冬夜は達観した様子で呟きながら紅茶を飲み、八重はそんな冬夜に静かにツッコんだ。

 

「あともう一個気になってたんだけど! それ!」

 

 ビシッと野獣の手元を指さすエルゼ。野獣の手にはフォークが握られており、そして野獣の前には皿に乗った焼き色の美しいロールケーキがあった。

 

「あ? 何? やらねえぞ?」

 

「んなこと聞いてんじゃないわよ! あたしが言いたいのはねぇ! アンタそれ何個目!?」

 

 そういうエルゼの眼前、というか野獣と八重の隣に積み重なった皿の山。異様な光景を前に、エルゼの声が荒ぶる。

 

「36……普通だな!」

 

「普通でござるね」

 

「いやアンタらの胃どうなってんのよ!? っていうか八重も何便乗してんの!?」

 

「あっ」

 

「いやあの、三浦さん関係ないです……」

 

 便乗は自分のアイデンティティだと思っているのかショックを受けている三浦に、リンゼが思わずツッコんだ。

 

「いいだろお前木村の奢りだぞ」

 

「―――――――――」

 

「限度ってもんがあるでしょうが! 見なさいよ隣! 木村の顔真っ青んなってるじゃないの! 見てて可哀想になってくるわ!!」

 

「あ、拙者は自分の分は自分で払うのでご心配なく」

 

「あ、そうなの? ……ってアンタはアンタで自重しなさいよ!!」

 

「エルゼ、エルゼ、喉潰れるよ?」

 

「あたしは悪くないわぁ!!」

 

「ポッチャマちゃん、あーん」

 

「ポチャァ(あーん)」

 

「リンゼちゃんからロールケーキもらえてよかったなぁポッチャマ~」

 

 片やエルゼの魂のツッコミが轟き、片やポッチャマに癒されているという両極端の光景は、まさに阿鼻叫喚と呼べるものであった。

 

 

 

 

 

~114秒後~

 

 

 

 

 

「あ、そうだ。冬夜くんたちに話があるんだゾ」

 

「話?」

 

 とりあえず収拾がついて落ち着きを取り戻した(もといエルゼ)ところを見計らい、三浦が声を上げる。

 

「あぁ、あの話ですか。すっかり忘れてました」

 

「おいおい忘れんなよなぁ木村ぁ」

 

「誰のせいだと思ってんだテメェ」

 

「クゥ~ン……(恐怖)」

 

「き、木村さん落ち着いて……性格変わってます」

 

「ってか話進まないからアンタちょっと静かにしてなさいよ……それで話って?」

 

 めっちゃドスの効いた声で野獣を脅す木村を、リンゼがどうどうと落ち着かせつつ、エルゼが野獣に釘を刺してから続きを促す。

 

「つかぬことを聞きますけど、三人とも夜は予定ありますか?」

 

「夜? 僕は無いけど、二人は?」

 

「あたしたちもないわ。でも何で?」

 

 木村に聞かれ、冬夜とエルゼが答える。そして返す質問に、野獣が言った。

 

「実は今日、友達にぃ、夕食会……誘われたんだけど……みんなで行かない?」

 

「友達の娘さんが俺たちと一緒にご飯食べたいって言ってるから誘われたんだゾ~これ! 何なら友人も誘ってくれてもいいって言ってくれたんだゾ~!」

 

「まぁちょっと不用心な気もしなくはないけど、信用してくれて嬉しいってのはありますね。色々事情があって外出しにくいから、家で何か楽しいことをしたいってことみたいで……どうです?」

 

「ポッチャ?」

 

「え? アンタたちの友達の夕食会に……あたしたちが?」

 

「いいんですか? その、私たちその人のこと知らないのに……」

 

 唐突の申し出に、軽く困惑するエルゼたち。無関係な自分たちが行っていいのかどうか疑問だったが、そんな三人の疑問に答えるべく野獣が言う。

 

「いいっていいって! あの人なんだかんだ言って寛容だし、二人三人増えたところで大丈夫だろ。それに大勢で行った方がスゥも喜ぶからな~」

 

「スゥ?」

 

「友達の娘さんだゾ。無邪気で可愛いんだゾ~これ」

 

「僕たちの友達でもありますね。野獣先輩の言う通り、スゥちゃんなら喜んでくれますよ」

 

「ポチャポチャ」

 

 ポッチャマも頷いて同意を示す。どうやら相手は野獣たちを信頼しているようで、そこまでして誘ってくれるのならば断わる必要はないだろう。そう思った冬夜が、代表して答えた。

 

「そこまで言ってくれるのなら、喜んで誘いを受けるよ」

 

「そうね。アンタたちの友達っていうのがどんな人なのかも気になるし」

 

「ありがとうございます、皆さん」

 

「こちらこそ、ありがとうございます」

 

「FOO! 楽しみぃ~!」

 

「皆で行ったらスゥちゃんきっと喜ぶゾ~!」

 

「ポッチャ!(歓喜)」

 

 一同、テンションが上がる。ただ一人だけ、何のリアクションも示さない者がいる。

 

「あれ? 八重さん、どうしたの?」

 

 さっきから沈黙を保っている八重を訝しみ、冬夜が聞く。俯いていて表情は見えなかったが、やがてゆっくりと顔を上げていく。

 

「……三人とも、最初に言っておくでござる」

 

「「「……?」」」

 

 そして、菩薩みたいな穏やかな顔でサムズアップしながら言った

 

「お覚悟を」

 

 当然、三人は何のことかわからなかったが……夕食会が始まる時刻が迫ると、その言葉の意味を理解することとなる。

 

 

 

 

 

 

~364分後~

 

 

 

 

 

 

 夕暮れ時、木村はゲートを使い目的地近くへワープ。冬夜たち含めた一行は、少し歩いた先にある立派な門を潜って行った。

 

「ようこそ、皆さん! お待ちしておりました!」

 

「どうもこんちゃーす」

 

「お疲れ様だゾ~!」

 

「ポッチャー(気さくな挨拶)」

 

「ご苦労様です」

 

 通る際、左右に控えている門番に歓迎され、挨拶をしていく面々。八重も軽く頭を下げてから門を潜ると、ふと冬夜たちが門の前で立ち止まっているのが見えた。

 

「ん? どうしたでござる?」

 

 見れば三人とも唖然としているようで、八重が声をかける。と、一早く我に返ったエルゼが八重に駆け寄り、ガシッと肩を掴んだ。

 

「ね、ねぇちょっと? あたしたちはアンタたちの友達の家に招待されたのよね? 間違いないわよね?」

 

「ええ、そうでござるよ?」

 

「あ、あの、どう見ても貴族のお屋敷にしか見えないんですけど、大丈夫なんですかこれ?」

 

「ええ、大丈夫でござるよ?」

 

「あのさ、僕たち普通の服着てきたけど、これでよかったの?」

 

「ええ、それでいいでござるよ?」

 

 声が僅かに震えているエルゼとリンゼと平然としている冬夜に対し、呆気らかんと答えていく八重。心なしか感情が込められていないように聞こえるのは気のせいだろうか。

 

「おーい、何してんだよ。早く来いよー!」

 

「腹減ったなぁ」

 

「今行くでござるー!」

 

 すでに立派な門から大分離れた場所に建つ屋敷の玄関近くに立つ野獣たちが八重たちを呼ぶ。八重が応え、さっさと歩いて行ってしまった。

 

 夕暮れの赤い色に染まりゆく大きな屋敷は、広大な庭も含めてまるで芸術品のような美しさ。どっからどう見ても並の貴族の屋敷じゃないことは一目瞭然。エルゼとリンゼはこのまま進んでいいものか、かなり迷った。

 

「二人ともどうしたの?」

 

 が、状況を理解していない様子の冬夜が二人を促す。何で抵抗ないんだこの人はと内心憤りつつも、やがて思考を切り替える。

 

「そ、そうよねぇ! あの三人が友達呼びしてるんだから全然大丈夫よねぇ!」

 

「そうだよねお姉ちゃん! 大丈夫だよね! ね!」

 

「……?」

 

 自分に言い聞かせるように力強く言って笑う双子を前にきょとんとする冬夜。そして今度こそ意気揚々と屋敷へと向かっていく。

 

 やがて野獣を先頭に、玄関の扉が横に控える使用人の手によって開かれた。

 

「おお! 来てくれたか、迫真空手部の諸君!」

 

「野獣! 三浦! 木村! 八重! ポッチャマ! 待っておったのじゃー!」

 

 そして出迎えてくれたのは、左右に並ぶ大勢のメイドたち。そして正面の階段からは公爵と妻のエレン、そしてスゥシィが階段を下りて駆け寄ってきた。

 

「よ、公爵! ゴチになりにきたぜー!」

 

「スゥちゃん、元気だったかゾ~?」

 

「すいません、お邪魔します」

 

「いやいや、突然の誘いを受けてくれて感謝しているよ。よく来てくれた」

 

 野獣がフレンドリーに、三浦が駆け寄ってきたスゥシィを抱き上げて高い高いをし、木村が丁寧に頭を下げて会釈する。もういつもの光景すぎてツッコむ気力すら起きない八重は、やれやれとため息をついた。

 

 が、突然背後からガシッと肩を掴まれる。先ほどよりも、遥かに、強く。

 

「ねぇ八重? 聞き間違いよね? 今さっき野獣があの人のこと思いっきり『公爵』って呼んでたような気がするんだけど? 友達感覚で」

 

「き、きの、気のせいですよね? っていうより嘘ですよね? 嘘って言ってくれませんか?」

 

 先ほどよりも固い声に振り返ってみれば、顔面蒼白のエルゼとリンゼがガクガク震えながら八重に訴えかけていた。心なしか目が僅かに潤んでいる。

 

「どうしたの?」

 

 そして何故ゆえか冬夜は二人を見てきょとんとしていた。さすがに屋敷の荘厳さには圧倒されていたが、二人ほど動揺はしていない。やっぱりこの不遜というか豪胆さは野獣たちと同郷だからなのだろうかと八重は思っていた。

 

「おや、そこの者たちは?」

 

 と、ここで公爵が冬夜たちに気付く。その瞬間、エルゼとリンゼの肩がビクゥと跳ねるように上がった。

 

「最近、一緒にギルドで仕事するようになった仲間だゾ~! 三人とも優しくていい人たちだから誘ったんだゾ!」

 

「あ、この人オルトリンデさんって言うから、三人ともよろしくしてくれよな~頼むよ~」

 

「ちょっと野獣先輩、そんな紹介の仕方は失礼ですよ!」

 

「いや、構わないさ」

 

 言って、公爵は三人に歩み寄る。そして柔らかく微笑みながら名乗った。

 

「挨拶が遅れてしまったな。私はアルフレッド・エルネス・オルトリンデ公爵だ。こちらが妻のエレン、そして娘のスゥシィだ。よろしく頼むよ」

 

「スゥシィ・エルネア・オルトリンデじゃ! よろしくな、お主たち!」

 

 公爵の横に立ったエレンがドレスを摘まみ上げながら頭を下げ、続いてスゥシィが元気よく名乗りを上げた。

 

「あ、初めまして。僕は望月冬夜といいます。こちらの二人が……あれ?」

 

 公爵に名乗られ、冬夜も自己紹介をしつつ二人を紹介しようとした……が、気付けば二人は冬夜の後ろで片膝を着いて深々と頭を下げていた。あとものすごい冷や汗をかいていた。

 

(ほ、本物ぉぉぉぉ!! この人本物の公爵様じゃないのぉぉぉぉぉ!! 何思いっきり昔からの友達感覚で紹介してんのよあの肌黒男はぁぁぁぁぁぁ!?)

 

(三浦さん、思いっきり普通の子供のように扱ってたけど相手公爵家のご令嬢じゃないですかぁぁぁぁっ!! しかも愛称呼びとか無礼通り越して極刑ものですよこれぇぇぇぇっ!?)

 

「え、えっと……二人とも?」

 

 内心大パニックの双子と、相変わらず平然としている冬夜。どうしたのかと二人に聞くも、相変わらず顔は強張っている。

 

「あ、アンタ何してんの! 頭下げなさい、頭!」

 

「え、何で?」

 

「何でって、この方は公爵様ですよ!? 公爵は普通の爵位と違って王族のみにしか与えられない特別な位です!」

 

「……えっと、じゃあつまり物凄く偉い人ってこと、ですか?」

 

 冬夜が確認のために公爵に聞く。その時点で双子は「「アッーーーーー!!」」と内心で大絶叫。対し、公爵は朗らかに笑った。

 

「ははは。いかにも、私は現国王の弟だ。だが、公の場ではない今は気にしなくてもよい。何より君たちは木村殿たちの友人だと聞いた。ならば私にとっても友人みたいなものだ」

 

「そうじゃぞ! 野獣たちの友ならばわらわにとっても友じゃ! 遠慮などいらんからな!」

 

「なんだスゥ嬉しいこと言ってくれんじゃねぇかよ~!」

 

「公爵さんも器がでっかいゾ~これ!」

 

「アンタらは少しは礼節ってもんを学んでくださいよ……今更ですけど」

 

 そう言って笑い合う公爵家と空手部の面々。だがそんなことで双子が落ち着けるわけなく。

 

(気にするわぁぁぁぁぁぁっ!! だって公爵よ!? 公爵相手に普通に接するとか世界広しと言えどあの肌黒男と坊主頭くらいよ!! あたしがやったら胃に穴空くわ!!)

 

(そもそも何で公爵様のご令嬢を呼び捨てにできるんですか野獣さん!? もう完全に昔からの友達みたいな感覚じゃないですかどうなってるんですかぁぁぁ!?)

 

「あ~……じゃあ、僕もそうするようにします」

 

「ああ、そうしてくれ。よろしく頼むぞ、冬夜殿」

 

「よろしくな、冬夜とやら!」

 

((そしてもう一人いたぁぁぁぁぁっ!!))

 

 普通に公爵からの握手に応じる冬夜に、双子の心が今、リンクする。

 

「ふむ、それで君たちの名前は?」

 

「ももも申し遅れました! エルゼ・シルエスカと申します!!」

 

「い、妹のリンゼ・シルエスカです!」

 

 公爵に聞かれ、慌てて名乗る二人。まさか名乗るのを忘れるとは相当失礼をしてしまったと後悔したが、公爵は全く気にする素振りは見せず。

 

「そうか、二人は姉妹か。よろしく頼むぞ」

 

「「ひゃい!!」」

 

 噛んだ。しかし誰も気にしなかった。

 

「野獣~! 早く来るのじゃ~!」

 

「慌てんなよ、慌てんなよ(大人の余裕)」

 

「公爵さんの夕飯とか、スゲ~楽しみだゾ~これ」

 

「ポッチャァ!(ハイテンション)」

 

「口に合うかわからないが、遠慮なく食べていってくれ。うちのシェフが作る料理は美味いぞ?」

 

「エレンさん、あれからお身体大丈夫ですか?」

 

「ええ、お陰様でもうすっかり。お気遣いありがとうございます、木村様」

 

「二人とも、行くよ~?」

 

 スゥシィに引かれるように、野獣たちは階段を昇っていく。冬夜もその後に続こうとしたが、立ち上がっても尚プルプルして動けない双子に呼びかけた。

 

「二人とも」

 

 そして、そんな二人の肩に軽い衝撃。二人が振り返れば、二人の間に立つ八重。そしてその顔は、

 

 

 

「そのうち慣れるでござるよ」

 

 

 

 ものすっげぇいい笑顔だった。なんか背景がきらめいているし。

 

 そして二人の脳裏に『道連れ』という文字が浮かんだとか浮かばなかったとか。

 




多分双子の反応が当たり前だと思います。後原作よりも動揺してるのは、望月兄貴以上に馴れ馴れしい空手部のせいです。仕方ないね。

よいこのみんなは目上の人たちにはちゃんと敬語をつかおうね! 不敬罪でしょっ引かれちゃうゾ☆(常識)

今後の活動についてではなくお気楽アンケート開催。アニメ異世界スマホのEDでスマホ太郎がヒロインたちに手を差し出すシーン、差し替えるとしたら誰がいい?

  • スマホ太郎(アニメ主人公)
  • 望月冬夜(原作主人公)
  • 野獣先輩
  • 三浦
  • 木村
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