異世界空手部・やわらかスマホの裏技   作:コッコリリン

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当初のネタから大きく離れた展開となりました。それでは、ご覧ください。


因みに途中の推奨BGMはこち亀の例のあれ。神社アレンジでも可。


24.迫真空手部、新たなメンバーを迎え入れる

 日付は変わり、場所は王都のギルド。そこに冬夜とエルゼ、リンゼを含む迫真空手部一行は訪れていた。

 

「あの、本当に大丈夫なんですか……?」

 

「はい、木村さん。先ほどもお伝えした通り、これでも私、そこそこ戦えますから!」

 

 そこにプラスアルファにユミナが木村の隣でニコっと笑顔を見せた。

 

 今の彼女の服装は、城で見せたような純白のドレスではなく、若草色のリボンを胸にあしらった白いブラウスと紫の上着、紺色のキュロットスカート、そして黒いニーソックスという動きやすさ重視の出で立ちだ。これならば誰から見ても町娘にしか見えない。現にギルドの冒険者や職員は、彼女を見ても特にこれといった反応は示さない。王族がこの場にいるわけがないという認識もあるのだろう。見た目は可憐であるがゆえに別の意味で注目されてはいるが。

 

 そして一番の特徴は、彼女が背中に背負っているコンポジットボウと呼ばれる小さくて軽い弓と矢が多く入っている矢筒である。それを見て、木村は心配ないと言うユミナをいまだ不安気な顔で見ている。それは木村だけでなく、冬夜たちも同じ気持ちだった。

 

 ことの発端は昨晩、話が纏まった後にユミナが発言した言葉。

 

『私もギルドに登録して、冒険者となって皆さんと一緒に働こうと思います!』

 

 これはさすがに木村だけでなく、八重たちも慌てた。確かに今は仮の立場で庶民ということにはなっているが、それでも王女であるという事実は消えるわけではない。そんな彼女を、よりによって冒険者にさせるのは……そういった理由から止めようとした。

 

 無論、そこであっさり引き下がる彼女ではなく。シャルロッテから魔法の技術を教わり、弓術も習っていたというユミナ。その実力は師であるシャルロッテからも太鼓判を押されており、弓の腕もなかなかのものという。戦う技術は持ち合わせている、というわけだ。

 

 それを聞いた野獣と三浦は、

 

『別にいいんじゃねぇの? 明日の依頼で一度様子見ってことにしてさぁ』

 

『お、そうだな。それにユミナちゃん一人だけお留守番なんて可哀想だもんな~』

 

 という感じに彼女の冒険者稼業を認めた。軽い感じだったが、彼女の頑固さは短い期間で把握したし、野獣たちの意見も一理あると考え、翌日の朝を迎えて今に至る。因みに余談だが、ここへ来る途中の武器屋で弓矢一式買い揃えた際、彼女の手持ちの袋の中に白金貨が入っているのが見えた。聞けば白金貨50枚、父親から選別としてもらってきたという。以前公爵が謝礼にと手渡された金額より10枚多いとは、さすがは王族。しかしここで王族であることを再認識したくはなかった木村であった。

 

 とりあえず、ユミナをギルド登録するためにカウンターへ。一連の流れは空手部が初めてギルド登録した時と変わりなかったため、滞りなく進む。説明の途中で野獣と三浦がギルドに併設されている待合場所兼飲食店へフラっと酒目当てに行こうとしていたところを八重とエルゼが拳骨を落として止めるというハプニングはあったが。

 

「ところでユミナ殿はいくつの属性魔法を使えるのでござるか?」

 

 ユミナのギルド登録が完了し、カードを受け取ってから八重がユミナに聞いた。

 

「はい。風と土、闇属性です。召喚魔法だって使えるんですよ?」

 

「え、召喚魔法ってマジか」

 

 聞いていた野獣が顔を顰める。それに疑問符を浮かべたのはリンゼだ。

 

「召喚魔法がどうかされました?」

 

「いやぁ実はさ。スゥと出会った時なんだけど、スゥを襲ってた奴が召喚魔法でリザードマンめっちゃ呼び出して苦労したんだよなぁ」

 

「あ、そっかぁ。確かにあの時は大変だったゾ~」

 

「まぁ……そう言えば、スゥから聞いたことがあります。そうですか、そのようなことが……」

 

 無数のリザードマンを相手取ったことを思い出す。あれのせいで護衛の兵士が何人犠牲になったことか……それを思うと、召喚魔法にはいい思い出がないのは確かだった。

 

 スゥシィが狙われたことを知っていたが、どのような輩に襲われたまでは知らなかったユミナは、彼らが召喚魔法によって一度苦しめられたことを知って少し気落ちするも、木村がそれを払ってくれた。

 

「確かにあの時は敵が使ってたから気持ちはわかりますけど、今回はユミナさんが使うんだから問題はないでしょう。これを機に召喚魔法がどんなものか、間近で見ておくのもいいかもしれませんよ」

 

「そうでござるよ。あの時はあの時、今は今、でござる」

 

「んにゃぴ……使い手次第って奴だな」

 

「そうだよ」

 

「ポチャ」

 

 木村と八重に言われて納得する野獣と三浦。あの時は敵が使っていただけで召喚魔法そのものが悪いというわけではないのは確かだ。

 

「木村さん……ありがとうございます」

 

「……な、なんでお礼言う必要なんかあるんですか(謙遜)」

 

 フォローしてくれた木村に、ユミナが礼を述べる。照れた木村はフイっと顔を背けるも、耳が赤くなっていた。

 

「……木村チョロいっスね」

 

「お、そうだな」

 

「案外早くに落とされるかもしれないでござるな」

 

「私も……そう思います」

 

「ポチャ(若いっていいねぇ)」

 

「アンタら好き放題言ってんじゃねぇよ」

 

 遠巻きにそれを見ていた野獣たちが口元をニヤけさせるのを見て、木村は思わず青筋を浮かべた。

 

「ほらほら、アンタたち遊んでないでこっち来なさい」

 

「ちょうどいい依頼書無くなっちゃうよ?」

 

 と、一足早く依頼書が貼られたボードの前に立つエルゼと冬夜に促され、一行も依頼書を吟味していく。登録したてのユミナ以外は全員ランク『緑』のため選択肢は多いが、初心者であるユミナでもこなせるような依頼が無いか探す。

 

「やっぱりここは……王道を征く……魔物討伐ですか」

 

「あまり強すぎないような奴がいいかもしれませんね」

 

 野獣と木村がそう言い合いながら、依頼書を眺める。その横で、冬夜が「あ」と言って一枚の依頼書に目を止めた。

 

「これとかどうかな?」

 

「お、冬夜見つけた?」

 

「どんなのですか?」

 

 エルゼとリンゼが冬夜が指さす依頼書を見る。

 

「ほらこれ、『ギガスライム討伐』っていう」

 

「却下よ」

 

「却下です」

 

「却下でござる」

 

「すいません、それは嫌です」

 

「人間の屑がこの野郎(マジギレ)」

 

「ご、ごめん……」

 

 エルゼ、リンゼ、八重、ユミナ、野獣に口々に拒否+罵倒されて冷や汗を流した冬夜はそそくさと依頼書から離れた。スライムに対する認識は女性陣(?)共通らしい。

 

「ん~……あ、これとかどうだゾ?」

 

 そんな中、三浦が一枚の依頼書を読み上げる。内容は『キングエイプ討伐』というものだった。

 

「キングエイプ? 何ですかそれ?」

 

「大型の猿型の魔物です。数匹で群れを作って人を襲う習性をもっています。力の強さは要注意ですが、知能は低く、簡単な罠に引っかかりやすいのが特徴です。今の私たちなら簡単に討伐できます」

 

「人襲うしかできんのかその猿ぅ!!(突然の罵倒)」

 

「いやいきなり何!?」

 

 木村の疑問にリンゼが答え、突然野獣が意味不明な叫びを上げてエルゼがツッコんだ。

 

 とりあえず、キングエイプ五匹の討伐という依頼が妥当ということで、三浦が依頼書を手に取った。

 

「よし、じゃあ(キングエイプ討伐依頼をギルドカウンターに)ぶち込んでやるぜ!」

 

「ポチャ!(ファイト一発)」

 

「オッスお願いしまーす!」

 

「私も頑張ります!」

 

「……大丈夫かなぁ」

 

 気合を入れる三浦とポッチャマと野獣、そしてユミナを見て、若干の不安を覚える木村。ユミナの実力を疑いたくはないが、それでもやはり不安なものは不安だ……しかし、木村はそれ以上に別の嫌な予感がしてならなかった。

 

 後にこういう予感は当たるものなのだということ、木村は嫌でも実感することになる。

 

 

 

 

 

~1145141919810秒後~

 

 

 

 

 

 一行は馬車を使い、川を渡って、王都から大分離れた森へと訪れた。依頼書にあった場所はこの森らしく、鬱蒼と生い茂った森の前で一行は馬車から降り、森の中を少し進んだ先で立ち止まる。

 

「ここみたいですね」

 

「旅人を襲って食物を奪うだけでなく、何人もの人が大怪我を負ってるらしいからね……十分注意していかないと」

 

 リンゼが杖を手に、エルゼがガントレットを装着して戦闘態勢に入る。

 

「……で、そのキングエイプってのはどこにいんだ?」

 

 背中に大剣を担いだ野獣は、キョロキョロと辺りを見回す。鳥や獣の鳴き声は聞こえるが、肝心の討伐対象の姿が無ければ依頼遂行しようがない。

 

「冬夜くん、サーチを使って探せたりしますか?」

 

「う~ん……この森結構広いし、50m圏内だったら普通に気付くと思うけど……」

 

 木村が周辺地形を把握するためにスマホのマップを開いている冬夜に聞くも、芳しい返答ではない。

 

「え~、じゃあこの森歩くのかよ~。はぁ~……めんどくさ」

 

「致し方ないでござるよ野獣殿。これもまたお仕事でござる」

 

「お、そうだな」

 

「ポチャ」

 

 ぼやく野獣を窘めつつ、八重は刀をいつでも抜刀できるように鞘の位置を調整する。三浦も肩にポッチャマを乗せたままプロテクターを手に付けて八重に同意した。

 

「あ、待ってください」

 

 と、ここでユミナが全員に待ったをかけた。

 

「私、今から召喚魔法使います。キングエイプを探すのに役に立つ筈です」

 

「お! いいゾ~それ」

 

「しっかり頼むぜぇ?」

 

 ユミナの提案に三浦と野獣が同意する。木村たちも異論はなく、しかしどういった存在を召喚するのか気になった。

 

 ユミナは一行から少し離れた位置へ立ち、両手を前方へ翳す。そして意識を集中させ、呪文を唱え始めた。

 

「闇よ来たれ、我が求むは誇り高き銀狼、シルバーウルフ!」

 

 森にユミナの声が響く。声に応じるように、地面に紫色の魔法陣が展開、輝き始め、やがてその輝きの中から現れたのは五匹の狼だった。1m程の大きさに銀色の美しい体毛を靡かせ、ユミナの周りを回り出す。

 

「おぉ、これが召喚魔法……初めて見たなぁ」

 

「僕はこれで二回目ですけど、目の前に動物を召喚か……やっぱりすごいな」

 

 冬夜と木村が感嘆の声を上げる。その間、眉間に十字の傷が入った一番体格のいい狼がユミナの前に座る。その狼の首回りを、ユミナは優しく撫でた。

 

「じゃあみんな、お願いね?」

 

 愛犬に言うように優しい声色でユミナが命ずる。それに応え、ウォンと一吠え。そしていざ駆け出そうと立ち上がった。

 

 その瞬間、五匹一斉にビクンと尻尾が垂直に立つ。

 

「……へ?」

 

 主であるユミナが異変に気付くも、狼たちは突如として鼻を鳴らして周囲をウロウロし出す。それも一心不乱に。

 

「ユミナさん? 何かあったんですか?」

 

「い、いえ、私も何がなんだか……こんなこと初めてで……」

 

 木村が狼たちの様子に疑問を抱いてユミナに聞くも、ユミナ自身よくわからないでいた。主の命令に背くことなど今まで無かったのに……そう思っていると、

 

「「っ!!」」

 

 狼たちが一斉にグルンと同じ方角へ顔を向ける。そして狼たちの視線の先には、

 

 

 

「……は?」

 

 

 

 野獣が立っていた。

 

「「「グゥゥゥ……!」」

 

 いきり立ち、唸り声を上げ出す狼たち。目は剣呑な光を帯び、牙を剥きだしているその姿は、まるで獲物を目の前にしたかの如し。

 

「え、おい、ちょ、へ? 何だ何だ何だ何だ?」

 

 嫌な予感がした野獣は一歩後ろへ。狼たちも一歩前へ。

 

 また一歩下がると、一歩前へ。

 

 下がる。前へ。

 

 そして、

 

 

 

「「ウォォォォォォォォン!!」」

 

「ンアッーーーーーーーーー!?」

 

 

 

 いきなり襲い掛かってきた狼たちから逃げるべく、全力疾走で森の中へと野獣は逃げ込んでいった。

 

「え、えぇぇぇぇ!?」

 

「野獣先輩!?」

 

 さすがのユミナも驚愕、木村が野獣を呼び止めようとするも、すでに森の奥深くへと狼たちと共に走り去っていってしまった。後に残るのは遠くから聞こえて来る野獣の奇声と狼たちの声だけ。

 

「ちょ、ちょっと!? 一体どうなってんのよ!?」

 

「野獣さんが、追いかけられて……えぇ!?」

 

「野獣殿ぉぉぉ!?」

 

「え……えぇ……?」

 

 いきなりの展開すぎて取り乱すエルゼたち。冬夜も何がなんだかわからず、唖然としている。

 

「お~、すごいゾ野獣! ワンコにも好かれやすい体質なんだなぁ」

 

「ポッチャ(お前それでいいのか)」

 

「いやあれって好かれてるって言えるんですか!?」

 

 どう考えても獲物を見る目をしていた狼たちを見てそんな呑気なことをのたまう三浦に、たまらずリンゼがツッコんだ。後あれはワンコじゃない。

 

「ちょ、ユミナさん!? 何が起きてるんですか!?」

 

「え、えっと……その……」

 

 召喚主であるユミナですらも、木村の疑問に答えられずにオロオロしていた。ユミナ以外召喚魔法の使い手がいない上にまさかの事態に、誰も何もできず。しかも野獣と狼たちが森のどこへ行ったのかわからないため、追うことすらできない。もう野獣の声も聞こえなくなった。

 

 八方ふさがりで途方に暮れるしかない一行……だったが。

 

 

 

「―――――アッーーーーーーー!!」

 

 

 

「……あ、野獣殿の声でござる!」

 

「よかった、戻ってきたんですね……」

 

「相変わらず人騒がせな奴」

 

 しばらくしてから、八重が森の奥から聞こえて来る野獣の声に気付き、リンゼがホッと一息。エルゼも呆れを含んだため息をついた。

 

 木村も安堵していたが……ふと横を見れば、先ほどよりも顔面蒼白になったユミナの顔。

 

「……ユミナさん?」

 

「あの……皆さん、これ、まずいですよ……」

 

「え」

 

 それはどういう意味かと木村が問いかけようとした時だった。

 

「ん? なんか森の奥騒がしくないかゾ?」

 

「ポチャ?」

 

 三浦が森の異変に気付く。野獣の声と狼たちの鳴き声。後何か聞きなれない声が木々の枝をへし折る音をたてながら、どんどんこちらへ近づいてきているように感じた。

 

 一体何事かと誰かが声を上げようとしたその時だった。

 

「アァッ! ハァッ! ハァッ! ハァッ!」

 

 草むらから必死の形相で走る野獣と、

 

「「ウオオオオオオオオンッ!!」」

 

 その野獣に牙を剥く五匹の銀狼と、

 

「「ウガガガガガァァァァァァッ!!」」

 

 猿型の魔物、キングエイプが飛び出してきた。

 

 木村たちが知るゴリラよりも大きく、尖った耳に鋭く長い牙、血のように赤い目が特徴のキングエイプは、野獣と狼を襲わんと凶悪な顔を歪めつつ、二十匹程の数が追いすがる。

 

 

 

 もう一度言う。

 

 

 

 二 十 匹 である。

 

 

 

「「いや多すぎーーーーーーーーーーーー!?」」

 

 目ん玉飛び出る程にびっくりして全員が大絶叫。視界を埋め尽くすほどのキングエイプの群れがこちらに駆け寄ってくる野獣と狼へ、もとい一行へ迫る。

 

「て、撤退! 撤退でござるうううううう!!」

 

「当たり前だよなぁ?(戦略的撤退)」

 

「ポッチャ!(逃げるんだよ〜〜〜〜〜!)」

 

「何なのよあの数はあああああ!?」

 

「いやぁぁぁぁっ! 無理です無理です無理ですううううう!!」

 

「さすがにあれはやばいってぇ!?」

 

「ごめんなさい私のせいでごめんなさぁぁぁぁぁい!!」

 

「このステハゲぇぇぇぇぇ!! 何してくれてんだぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「待って! 助けて! 待ってくださいお願いします! ア″ア″ア″ア″ア″ア″ア″ア″ア″!!(発狂)」

 

「「ウォォォォォォォン!!」」

 

 森に轟く一行の叫び、野獣の悲鳴、狼の遠吠え。キングエイプ五匹討伐依頼という簡単な仕事は一人の男によって難易度ルナティックへと変貌を遂げ、全員キングエイプの軍勢から逃げ回るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

~114514秒後~

 

 

 

 

 

 

「ぜぇ、はぁ、ぜぇ、はぁ……!」

 

「な……なんとか……終わった……!」

 

 場所は森の入り口。一行が乗ってきた馬車が止まっている場所近く。疲労困憊で呼吸を荒くする一行の周りにはキングエイプ二十匹が物言わぬ屍となって転がっていた。

 

 あれから逃げ回っていた一行だったが、死角の多い森の中では戦えないために十分な広さのある入り口付近へと辿り着いた。そしてユミナが土魔法で落とし穴を作って追って来たキングエイプを罠に嵌めたり、冬夜がスリップをして転ばせたり、木村が接近してきたキングエイプをスローで他のキングエイプに投げつけたり、ポッチャマがみずでっぽうで視界を塞いだり等々、それぞれの力で錯乱させながら一体一体確実に仕留めていった。

 

 そうしてやっと二十匹全部を倒すことができた一行は、ようやく一息入れることができたのだった。

 

 そしてこうなった原因である件の男はというと、

 

「アァァァァァァァ、ハァ、アァァァァ……」

 

 頭を思いっきり狼に噛まれて瀕死に陥っていた。

 

「皆お疲れだゾ~。スゲ~キツかったゾ~」

 

「ポッチャ(お疲れ)」

 

「キ、キツいどころの騒ぎじゃないでござるよ三浦殿……」

 

「ってか、キツかったって言いながら何で平然としてんのよアンタは……」

 

 三浦がいつもの調子で言うものだから思わずジト目をしてしまう八重とエルゼ。その間、ユミナが野獣に謝り倒した後に五匹の狼たちに「めっ!」と叱りつけていた。叱られた狼たちはしょぼんとしながらも、ユミナの影の中へと戻っていく。

 

「本当に、すみませんでした……私のせいで……」

 

「い、いや、こればっかりはどうしようも……それで結局、野獣先輩を追い回した原因は何だったんですか?」

 

 狼同様、しょんぼりするユミナを慰めつつ木村が問う。ユミナはやや困惑しながら答えた。

 

「その、私もあの子たちに聞いてみたんですけど……野獣さんの存在を認知した瞬間」

 

 

 

『噛まなきゃ(使命感)』

 

 

 

「……って思ったらしいです」

 

「えぇ……(困惑)」

 

 何だそれは。どうしてそうなった。しかも主語がないから何でその発想に思い至ったのかさっぱりわからない。

 

 で、結局野獣を追い回している間にキングエイプの巣に足を踏み入れ、そのまま野獣と一緒に爆走し続けていたら群れと群れが合流、その繰り返しであの数になった……という訳だ。

 

「今まで召喚魔法でこんなことなかったのに……皆さんの足を引っ張らないようにって頑張ったのに……これじゃ私、木村さんと……うぅ」

 

 ジワリ。俯いた彼女のオッドアイが揺れ出したのを見て、木村は焦って思わず頭を撫でた。

 

「いやいやいや! 泣かないでください! こればっかりは仕方ないですよ! 野獣先輩は皆から『人の汚物の擬人化』って言われてるくらいだから! 狼も気に食わなかっただけだと思うから! ね? ね?」

 

「お前木村さぁ……本人がいる時にそういうフォローとか普通にひどい……ひどくない?」

 

 サラっと暴言を吐く木村に『人の汚物の擬人化』本人は頭から血を流しながらポロポロ泣き出した。

 

「それにユミナさんの弓と他の魔法の後方支援があったおかげで、討伐もスムーズにできたんですよ! だから全然大丈夫ですから! そうでしょ皆さん!」

 

「お、そうだな。ユミナちゃんの弓スゲ~命中率だったゾ~!」

 

「魔法の方も全然問題なかったね。おかげで助かったよ」

 

 木村に聞かれ、三浦と冬夜もユミナをフォローする。事実、援護のために彼女は放った矢全てをキングエイプの急所に命中させるという高い技術力を披露したし、土魔法による落とし穴もしっかり作用してキングエイプを追い込むのに十分役立った。こうなった事態を招いたのは彼女の召喚獣ではあるものの、駆け出しの冒険者とは思えない力でそれを補った。

 

「うん、全然大丈夫よ。あたしもユミナが冒険者になるのは賛成ね」

 

「同じく。拙者も助けられたでござるからなぁ」

 

 エルゼと八重も異論はなく、ユミナの実力を評価した。

 

「ほら、全然大丈夫ですから。一緒にいても全然問題ないですから。だからこれからもよろしくお願いします!」

 

「……本当、ですか?」

 

 瞳を潤ませながら木村を見上げたユミナ。その顔を見て不覚にもドキリとした木村は、内心で(この子は12歳! この子は12歳!!)と言い聞かせて気を取り直す。

 

「も、勿論! なんで拒絶する必要なんかあるんですか!?(全てを受け入れる心)」

 

「……っ! 木村さん!」

 

「えっちょ」

 

 その瞬間、感極まったユミナは木村の胸に飛び込み、しがみついた。さすがに相手が12歳といえども、突然のことで顔を真っ赤にした木村は、一瞬で頭がショート。目を白黒させ、手をわちゃわちゃさせるしかなく。

 

「あっ。木村顔真っ赤だゾ。熱でもあんのかなぁ」

 

「いやいやそんなわけないでしょうが」

 

「……やっぱりそのうち陥落するでござるな、あれ」

 

「うん。っていうかもうほぼ陥落してるよね、あれ」

 

 そしてそんな微笑ましい光景を遠くから眺めている三浦とエルゼと八重と冬夜。木村は絶対結婚しない! と意気込んでいたようだが、その意思もいつまで持つのやら……四人は、そんな風に思っていた。

 

 で、一方たど頃、ではなくその頃。

 

「オォン……アォン……!(号泣)」

 

「な、泣かないでください野獣さん。野獣さんも頑張ってましたから、ね?」

 

「ポッチャ(涙拭けよ)」

 

 リンゼとポッチャマに慰められながら、『人の汚物の擬人化』は一行から少し離れた位置で膝に顔を埋めてめそめそしていた。

 

 

 

 こうして、紆余曲折はありはしたものの、迫真空手部に新たなメンバーが一人加わることとなるのであった。

 

 

 




望月兄貴、アニメでアイキャッチだからと言ってジョジョパロはねぇぜ……。

本当はもうちょっと続けたかったんですが、キリがいいのでここまで。あんま長々やるとだれちゃうから、ま多少はね?

今後の活動についてではなくお気楽アンケート開催。アニメ異世界スマホのEDでスマホ太郎がヒロインたちに手を差し出すシーン、差し替えるとしたら誰がいい?

  • スマホ太郎(アニメ主人公)
  • 望月冬夜(原作主人公)
  • 野獣先輩
  • 三浦
  • 木村
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