異世界空手部・やわらかスマホの裏技   作:コッコリリン

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ストックがちょっとだけ溜まったので初投稿です。

ついでに投稿までの間が空いたのでおさらいついでに本作における主要登場人物の軽い紹介

『田所(野獣)』
迫真空手部のムードメーカー。三浦と一緒に悪ふざけしてはよく木村と八重とエルゼにボコられている。この世界線では後輩レ〇プをしない気のいい先輩。

『三浦』
迫真空手部の主将。お気楽で天然。しかし本気になると閣下モードとなって凛々しい顔立ちになる。この世界線では後輩にいちゃもんつけない大先輩。

『木村』
迫真空手部最年少にして司令塔。先輩二人を大切に思いつつも振り回される毎日を送っている。この世界線では先輩に3Pレ〇プされないイケメン後輩。

『ポッチャマ』
迫真空手部のマスコット。三浦の相棒。よく野獣と三浦と一緒に悪乗りしてはおやつを抜かれる。

『八重』
迫真空手部のおかん。ある意味木村以上に苦労人。最近、三浦のことをチラチラ見ている。

『ユミナ』
迫真空手部の妹的存在。王女の身でありながら、一目惚れした木村と共にいたいと押しかけてきた。

『冬夜』
原作イセスマの主人公。ただし本作では脇役ポジション。故にハーレムはなし。いや待て、双子と一緒にいるということはこれもうハーレムなのでは? やはりMTDK兄貴は格が違った。爆ぜろ(唐突な掌返し)

『エルゼ』
双子姉。銀髪のツンデレっ子。力任せな戦い方を活かして野獣を折檻したりしている。

『リンゼ』
双子妹。銀髪の清純っ子。木村にとっては魔法の先生的存在で野獣にとってはある意味癒し。

『琥珀』
冬夜の召喚獣。四の神獣のうちの一つ、白帝。今はマスコット。野獣の臭いが苦手で犬猿の中。虎なのに。

『作者』
バカ(直球)

※本作に最後の奴は出ません


29.迫真空手部、いざミスミドへ

「みんなー! 会いに来たのじゃー!」

 

 新たな拠点となった家での生活二日目、リビングでくつろいでいる野獣たちの耳に聞き慣れた、それでいて元気いっぱいな声が聞こえてきたことにより、物語は動き始める。

 

 

 

 

 

「やぁ、突然訪ねてきてすまないね。つまらないものだが、引っ越し祝いに持ってきたよ」

 

「お久しぶりです、公爵様。いつもありがとうございます」

 

「ご無沙汰でござる」

 

「オッス公爵~! スゥも久しぶりだなぁオイ!」

 

「スゥちゃん元気だったかゾ~?」

 

「ポッチャー!(お久~)」

 

「うむ! みんなも元気そうじゃな! ユミナ姉さまもこんにちはじゃ!」

 

「ええ、こんにちは。久しぶりですね、スゥ」

 

 馬車に乗って訪れて来た公爵とスゥシィを、一行は快く迎え入れる。公爵から祝いの品を受け取ってからリビングの奥、向かい合う形で置かれたソファに座ると、公爵たちの前に紅茶が注がれたカップが静かに置かれた。

 

「おまたせいたしました。お紅茶でよろしかったでしょうか」

 

「ああ、ありがとう」

 

 紅茶を差し出した人物は、メイド服を身に纏ったボブカットの女性。理知的でどことなく冷たい印象を受けるが、動作一つ一つに無駄がなく、洗練されている。

 

「いい家ではないか。メイドも雇ったのか?」

 

「ええ、まぁ。恥ずかしい話ですが、僕たち皆料理とかの家事が苦手なものでして……国王陛下が気を利かせてくれたんですよ」

 

「ラピスさんって言うんだゾ~! 滅茶苦茶料理が美味いんだゾ~これ!」

 

「ええ。昨晩の夕餉はまこと美味でござった」

 

 公爵の質問に恥ずかしそうに答える木村と、メイドを紹介する三浦と八重。ラピスと呼ばれたメイドは、銀盆を持ったまま公爵とスゥシィに頭を下げた。各自室以外の家全部の掃除と洗濯、料理をこなす彼女は、一行にとってとてつもなくありがたい存在以外何物でもなかった。

 

「ほう、彼女が家事全般を?」

 

「あ、全部ラピスさんに任せるわけじゃないんスよ。週の前半はラピスさんで、残りはセシルさんてメイドさんが来てくれることになっててさぁ」

 

「セシルさんとは顔合わせをしただけですけどね。けどラピスさんと同じように国王陛下のお墨付きですし、それに美じいででででッ!?」

 

 野獣が答える木村が補足するも、冗談交じりに余計なことを言いかけたところを横に座るユミナが木村の腕を抓ったことで顔が思いっきり歪んだ。

 

「木村さん? もしかしてああいう方が好みなのですか?」

 

「す、すいません、冗談です……」

 

 ニッコリと、しかしどことなく圧を感じるユミナのすげぇいい笑顔に、木村は痛みに呻きながら謝罪した。それを見て公爵が笑う。

 

「ハハハ。すでに上下関係が構築されつつあるな、木村殿」

 

「い、いやぁ、ははは……」

 

 恥ずかしいところを見られたと、木村は苦笑した。

 

「しかし、驚いたな。王宮ではっきりとユミナとの婚姻を断ったというのに、こうして同じ家で共に暮らしているとは……君も中々隅に置けんな、木村殿」

 

「わらわも驚いたぞ? ユミナ姉さまと木村がそのような関係だったとはのぅ」

 

「い、いやいや、別に同棲って訳じゃありませんし、そんな関係じゃありませんから」

 

「そうです。そんな関係ではありません」

 

 公爵とスゥシィが感心したように言うも、木村とユミナがそれを否定した。

 

「……今はまだ、ですけど」

 

「なんで最後付け足す必要あるんですか(ツッコミ)」

 

 最後にユミナがボソッと呟いたのを木村は聞き逃さなかった。ゆくゆくは何をするつもりなのかと聞きかけたが、何となく怖くなって聞くのをやめた。

 

「まぁ、後一……歩のような気がします」

 

「そうだよ」

 

「何が後一歩なんですか先輩」

 

 ついでに何か不穏なことを言う先輩二人に対するジト目も忘れない。

 

「ともかく、これからは近所同士、何か困ったことがあれば遠慮なく訪ねてくれ。力になろう」

 

「近所って言っても、僕たちは外周区で公爵様は内周区じゃないですか」

 

「なに、似たようなものだろう」

 

 全然違うが。木村は面倒になってきたのでもう訂正するのはやめておいた。

 

 ここまでいつも通りにおちゃらけながら話していた公爵。しかしここで、顔を真剣なものへと変える。

 

「さてと……今日は、引っ越し祝いだけでなく、君たちに頼みがあって来たんだ」

 

「頼み、ですか?」

 

 重大な話に違いないと木村は思い、話を聞く態勢に入る。

 

「実はこの度、我がベルファストとミスミド王国との同盟が結ばれることとなった」

 

「……いよいよ、ですね」

 

「ああ。ついては、国王同士の会談の席を設けられれば、と思っている。今回は兄上、ベルファスト国王がミスミドへ赴き、直接国王同士が顔を合わせることとなった……のだが、ここで一つ問題がある」

 

「問題?」

 

 ベルファストとミスミドの未来のために重要な会談。何か一つでも問題が起きれば、同盟は白紙になりかねない。

 

「ミスミドへの道のりは遠い。順調に行けたとしても、馬車で六日、そしてガウの大河を渡ってミスミドへはさらに四日という距離だ。その間、国王の身に何かが起こらないとも限らない」

 

「……なるほど。つまり僕たちに護衛をお願いしたいということですね」

 

 木村が公爵が言わんとしていることを予測すると、公爵は深く頷いた。

 

「その通りだ。君たち程の腕の立つ者たちにしか頼めない。この件はギルドを通して依頼という形でお願いしたい。危険な任務だが、報酬も出る上に事が事だ、ギルドランクも上がる。何なら、君たちの他に信頼のおける者に声をかけることも構わないが……どうだろう?」

 

 護衛する際、どのような襲撃が来るかわからない。しかしその割に合った報酬が出る。まさにハイリスクハイリターンな任務だ。国の未来を担うのだ、当然と言えば当然である。

 

「……先輩たちはどうしますか?」

 

 一人が決めることではない。木村は仲間たちに問うてみる。せっかく家を手に入れたのに、早々に留守にしなければいけないことに対する不満が出てもおかしくない。

 

 と言っても、そんなことは杞憂に過ぎなかったが。

 

「そうですねぇ……んじゃ公爵、帰って来た暁にはまた晩飯ご馳走してくれよな~頼むよ~!」

 

「公爵さんのお願いなら断るわけないゾ~!」

 

「ポッチャ(当たり前)」

 

「確かにかなり重要な依頼でござるが、これもまた修行の一環。拙者は異論なしでござる」

 

「勿論、私も木村さんと共に行きます」

 

 満場一致だった。そもそも野獣たちにとって報酬の高さ云々よりも、色々と世話になっている上、すでに気の置けないような仲にまで進展している王を手助けするのに断らない理由がない。それに他ならない公爵からの依頼ならば尚更だ。ユミナに至っては、自分もまた王族であるが故に無関係ではないと思っているが故、そして木村と共にどこまでも行くつもりでいた。

 

「……まぁ、こういう感じなので、その依頼受けさせていただきます、公爵様」

 

 無論、木村とて仲間たちと同じ意見だ。断る筈もない。

 

「おお、ありがとう! 君たちは大使とその妹、そして警護の兵士の一団に加わってもらう予定だから、そのつもりでいてくれ」

 

「大使……オリガさんですね。というより、オリガさん妹さんがいたんですか?」

 

 意外な事実。王が倒れた時以来会っていないが、ミスミドの大使であるオリガに妹がいるとは露知らず、木村は少し驚いた。

 

「ああ。ベルファストに観光ついでに連れて来ていたそうだ。私は会ったことはないがね」

 

「…………」

 

 妹……そのワードを聞いて、八重はチラと三浦の横顔を見やる。いつもと変わらない様子だったが、一瞬だけ三浦の目が僅かに揺れたのを八重は見逃さなかった。

 

「ともかく、頼んだ。君たちならば大丈夫だとは思うが、無事を祈らせてもらうよ」

 

「はい! 任せてください」

 

「かしこまり! パパパッと依頼果たして終わり! にしてみせっからさ!」

 

 公爵からそう言われ、木村は大きく頷いた。野獣もまたふざけてるようでいて頼もし気に胸を叩いた。

 

「いいの~……わらわもミスミドに行ってみたかったの~……」

 

 と、ここまで話に参加せずにいたスゥシィだったが、一行がミスミドへ行くと決めると唇を尖らせて拗ねたように言った。

 

「大丈夫だゾ~スゥちゃん! 向こうに行けば木村がゲートを繋げられるようになるから、また木村にお願いすればいいんだゾ~!」

 

「まま、そう拗ねないで! ちゃんとお土産も買ってくっから、待っとけよ待っとけよ~」

 

「本当か!? 約束じゃぞ!」

 

 三浦と野獣がおどけながら言うと、スゥシィの目が輝く。旅行に行くんじゃないんだけどなぁ……と木村は思ったが、楽しみにしているスゥシィの手前、口には出さないでおいた。

 

「あ、それで出発はいつ頃なのでしょうか?」

 

 最終確認に木村が公爵に聞いた。

 

「今からだ」

 

「だから見切り発車ってレベルじゃねーっつってんだろ!?」

 

「叔父様、それ私がすでにやりました」

 

「何、そうなのか? クッ、先を越されたか……」

 

「アンタら何を張り合ってんですか」

 

 冗談で返された上、ユミナと公爵のやり取りを聞いて若干額に血管を浮かべる木村。結局、出発は三日後と伝えられ、その日は公爵と共に打ち合わせを行うこととなった。

 

 

 

 

 

 

~三日後~

 

 

 

 

 

 

 早朝、王都アレフィスの南門。そこには豪奢な馬車を挟むようにして、幾つもの馬車が出発を今か今かと待っているかのように鎮座していた。その馬車の前に並ぶのは、ベルファスト王国の兵士、そしてミスミド王国の兵士たち。ミスミドの兵士の頭にはうさ耳が生えていたり、犬耳が生えていたりと、顔立ちのいい青年や厳つい男性がそんな姿なものだからある意味異様な光景でもある。ファンシーと言えばファンシーなのかもしれないが、彼らは王の警護を任された歴戦の勇士たちだ。決して侮れない実力の持ち主であることは変わりない。

 

「ファァァァ……眠ぃ……」

 

「ねっむぅ……」

 

「ポチャ……(クソ眠)」

 

「先輩、だから早く寝ろってあれほど言ったじゃないですか。旅行の前日みたいに興奮し過ぎです」

 

「しょうがねぇじゃん、この世界(こっち)に来て初の外国だぜ? そりゃテンションも上がるってなもんだろ」

 

「そうだよ」

 

「ポチャ」

 

「完全に遊び半分でござるな……」

 

「フフフ」

 

 そんな彼らの前に、遅れて現れたのは迫真空手部一行。野獣と三浦は眠気と戦うかのように欠伸をかまし、緊張感の無さを露呈させている。その横で木村が先輩二人を叱責し、八重が呆れ、ユミナは面白そうに笑う。

 

「……ねぇ、これ王様の護衛よね? 超重要依頼よね? なのに何? この緊張感の無さ」

 

「結局いつも通りだね。なんだか妙な安心感があるよ」

 

「安心……感?」

 

『ファ~ァ……』

 

 そして迫真空手部の後ろでは、冬夜とエルゼ、リンゼの三人と、冬夜の肩に乗ったまま欠伸をする琥珀というメンバーが付いてきていた。

 

 空手部一行が三日前に公爵から依頼を受けるのを承諾してから、野獣たちは冬夜たちを依頼に誘った。冬夜のスマホに電話をかけた野獣が第一声に『まずうちさぁ、王様の護衛依頼、あんだけど……やってかない?』と言うものだから『は?(意味不明)』と冬夜が返し、そのすぐ後に木村が電話を代わって報酬も含めて補足説明をした。とんでもなく重要な依頼を前に一瞬エルゼとリンゼは委縮するも、冬夜の依頼を受けるという鶴の一声によって二人も共に行くこととなった。冬夜としては今までの依頼と大して変わらないだろうし、旅行気分も味わえるしいいんじゃない? という認識だったが。相変わらず事の重大さの理解度が野獣と三浦並な男である。

 

 後そんな重大な依頼をまるで屋上で肌焼いてかない? みたいなノリで誘って来た野獣の神経を疑ったついでに、とりあえずエルゼが冬夜にゲートを使わせて野獣の下へ転移、助走つけて殴ったのは別の話。

 

 そして三日後、今に至る。

 

「迫真空手部御一行様! お待ちしておりました! この度はご協力、感謝いたします!」

 

 そんな彼らだが、兵士たちにとって一行は王様お墨付きの人物。直立不動で立ち、ベルファスト側の兵士の隊長が敬意をもって挨拶をした。

 

「すいません、少し遅れました。本日は皆さん、よろしくお願いします」

 

「オッスお願いしまーす」

 

「よろしくお願いさしすせそ(挨拶の基本)」

 

「ポチャチャ(夜露死苦)」

 

「お頼み申し上げる」

 

「お願いしますね?」

 

「「ハッ!」」

 

 木村を筆頭に挨拶を交わす。一部ふざけた挨拶をかます者がいるにも関わらず律儀に返す彼らはまさに兵士の鑑と言えた。

 

「皆さん、お久しぶりです」

 

 と、兵士たちの間から歩み出てきたのは、茶髪に狐耳を生やした女性。それと彼女の足元に隠れるようにして付いて来ているのは、同じ狐耳を生やした長い金髪の少女。女性の方は野獣たちにとって見覚えのある姿だった。

 

「あ、オリガさん。お久しぶりです」

 

 以前、バルサ伯爵によって国王暗殺の罪を被せられそうになっていたミスミド王国の大使であるオリガに、木村が挨拶を返した。

 

「オリガさん! 久しぶりっスねぇ!」

 

「元気してたかゾ~?」

 

「ポッチャ!(YO!)」

 

「ええ、お陰様で」

 

 野獣と三浦、ポッチャマも以前と変わらないままの彼女に喜色の面を浮かべながら元気な声を上げた。そんな彼らに、オリガは笑顔をもって答える。そして足元でいまだ身を隠すようにしている少女の頭にそっと手を乗せた。

 

「紹介します。この子は妹のアルマです。ほら、アルマ」

 

「は、はじめまして……」

 

 促され、オリガの影に隠れていた少女ことアルマは一行の前に姿を見せる。年は12、3程といったくらいで、見るからに緊張しているのがわかる。人見知りをする性格のようだった。

 

「オッス、初めましてだな! 俺は田所! けど皆は野獣って呼んでるからそう呼んでくれよな~!」

 

「初めましてだゾ~アルマちゃん。俺は三浦って名前だゾ。こっちはポッチャマ。よろしくな~」

 

「ポッチャ(お初)」

 

「木村ナオキです。よろしくね」

 

「九重八重と申す。よろしくでござる」

 

「ユミナです。よろしくお願いします、アルマさん」

 

 そんな彼女に、野獣たちはいつも通りのテンションで挨拶をする。それに倣い、八重たちも自己紹介をした。ユミナの自己紹介を見た木村は、ユミナはアルマと年は大体同じくらいな筈なのに、何故かユミナの方が年上に見えてしまったのは気のせいではないだろう。

 

「お、お姉ちゃんからお話は聞いていました……その、よろしくお願いします」

 

 そう言って、アルマは会釈した。まだ固いが、野獣たちの陽気な気性を前にして幾分か緊張は解れてはいるようで、オリガに隠れることはもうなかった。

 

 それを見ていたオリガは小さく笑ってから、改めて木村たちへ向き直る。そして頭を下げた。

 

「先日は本当にありがとうございました。あなた方がいなければ、今頃はどうなっていたことか……この御恩はいつかきっとお返しします」

 

「いや、そんなこと……僕たちは成り行きであそこにいただけですし」

 

 オリガからお礼を言われ、木村が遠慮しようとした……が、ここで野獣が遮るように前に出る。

 

「あ、そんならさぁ! オリガさんに聞きたいこと、あるんスけど。いいスかねぇ?」

 

「聞きたいこと、ですか? ええ、私に答えられることなら何でも」

 

 意気揚々と質問してきた野獣に、オリガが首を傾げた。前科のある野獣に対して木村は内心(何聞くつもりだこいつ……!)とハラハラしていた。

 

「ホラ、前に王様に持ってきたワインあんじゃん? あれ滅茶苦茶美味かったんだよな~!」

 

「あっ。確かに美味かったゾ~あれ! また飲みてぇなぁ?」

 

「ですよねぇ? あれまた飲みたいんスけど、どこで買えるか教えてくれませんか? オナシャス!」

 

 野獣と三浦の言っているワイン……オリガの記憶にも新しい、ベルファスト国王に友好の証として献上するために持参したミスミドで作られた極上のワイン。毒を仕込まれたかと思われていたそれを、まさか王の目の前で堂々と飲んで騒ぐとは思っていなかったオリガは驚いた、もとい彼らは正気かどうか疑った。結局、それがオリガの無実を証明することとなったばかりではなく、真犯人を追い詰めることになるとも思っていなかったが。

 

 そのことを思い返し、思わずクスリと笑うオリガ。オリガとしても因縁深い品ではあるが、ワインそのものに罪はないし、何より自分たちの国のワインをそこまで言ってくれることを嬉しく思い、快く答える。

 

「あのワインはとある村で作られた、とっても貴重な品なんです。けれどもしかしたらまだ残っているかもしれませんし、あなた方がお望みならば今度その村までご案内しましょうか?」

 

「いいっスかぁ!? ありがとナス!」

 

「スゲ~楽しみだゾ~これ!」

 

「……すいません、オリガさん。うちの先輩二人がご面倒おかけします」

 

「いえ、これで少しでも御恩が返せれば」

 

 諸手を挙げて喜ぶ野獣と三浦に呆れ、木村がオリガに謝罪した。その後ろで八重は顔を覆って恥ずかしそうにし、ユミナは口元を抑えて小さく笑っていた。

 

「あ、それで今回一緒に来てくれることになった仲間なんですけど」

 

 言って、木村は冬夜たちを紹介すべく振り向いた。

 

「えっと、彼らが僕らとよく組んで仕事をする仲間たちの……」

 

「あれ、あなたは……」

 

「え……あの時の!?」

 

「あ、冬夜さん」

 

「……え?」

 

 が、ここで予想外の反応を返したのは冬夜とオリガ、アルマ。明らかに初対面同士では出てこない言葉が出たことで、思わず木村は二人を二度見する。

 

「あの、知り合いですか? 三人は」

 

「え、ええ……以前、妹がお世話になりまして」

 

「お姉ちゃんとはぐれちゃった時に助けてもらったんです」

 

「マジか!? たまげたなぁ……」

 

「スゲ~偶然だゾ~!」

 

 まさかの再会に驚きを隠せないオリガと、意外な接点に驚きを隠せない野獣たち。聞けば大使として王都へ訪れたオリガについて来たアルマが迷子になった際、冬夜が偶然見かけてオリガを見つけてくれたという話だった。

 

 しかし、互いに見知っているのならばある意味好都合。アルマも冬夜がいると知って心なしか安堵している風だった。

 

「あ、僕も紹介します。僕の仲間のエルゼとリンゼです」

 

「エルゼ・シルエスカよ。ミスミドまでよろしくね」

 

「リンゼ・シルエスカです。よろしくお願いいたします」

 

 冬夜がエルゼとリンゼを紹介し、これで全員の顔合わせは済んだ。後は国王がこの場に来れば、ミスミドへ出発ということとなる。

 

「ミスミドまでの十日間……何事もなければよいでござるが……」

 

「そうですね。公爵曰く、バルサ伯爵の件で反対勢力は大幅に削れてもう余力はほとんど残されていない現状、そっち方面からの襲撃の可能性は低いと言われてますが、それでも警戒は必要ですよね」

 

「護衛は十分だけどね……それでもやっぱり、王様の護衛ともなると気合入れなきゃ」

 

「私も微力ながら精一杯、頑張ります!」

 

「わ、私も……!」

 

 長い道のりを、国王を護衛しながら歩く旅……決して楽なものではないのは明白だ。八重と木村が不安を口にし、エルゼも同調して頷く。しかしそれでも双方の国の未来のためにやり遂げなければならない。プレッシャーを感じ、ユミナとリンゼが両手で握り拳を作って気合を顕わにする。

 

 兵士たちも同様だ。厳重な警護の中の長い旅路。一時たりとも油断はしないと、決意を新たにしていた。

 

 

 

「三浦先輩、スゥのお土産どんなのにしますかぁ? やっぱりここは、王道を征く……お菓子系ですか(決めつけ)」

 

「お、そうだな。けど玩具とかも捨てがたいゾ。公爵さんたちには酒とかおつまみ系かな~。ラピスさんとセシルさんにも何か買ってってやりたいゾ~!」

 

「ポッチャ(魚希望)」

 

「ちょっと高いけど服とかもいいんじゃないかな? 国によって服装文化も違うって言うし、お土産にはいいと思うよ」

 

「いいゾ~それ!」

 

「なぁアルマ。アルマだったら何もらったら嬉しかったりする?」

 

「え!? 私ですか? ……わ、私は、小物系のアクセサリーとかもらったら、嬉しいかなって思います……はい」

 

「いいねぇ! お洒落もできて一石二鳥じゃんアゼルバイジャン! やっぱり頼りになるのは近い年頃の女の子の意見だって、はっきりわかんだね」

 

「よし! じゃあ(お土産屋さんで色々と)買い込んでやるぜ!」

 

「とっておきのお土産買って、びっくりさせたる!」

 

「ポチャ!」

 

 

 

「……すいません、ちょっとあの二人しばき倒してきます」

 

「あ、私も参加するわ」

 

 木村とエルゼが拳を鳴らしつつ、明らか護衛としてではなく観光旅行みたいなノリで行こうとしているお気楽バカ二人と一匹+冬夜に鉄槌を下すべく歩み寄っていく。八重は何だか不安になっているのがバカらしくなって天を仰ぎ、ユミナはちょっと困ったように笑いながら頬を掻く。リンゼは木村と姉が加減を忘れないかどうかハラハラしながら見ていた。

 

 そしてその光景を見ていた兵士たちも、最初は唖然として見ていたが、あまりの緊張感の無さに肩の力が抜けていく。前情報では彼らは十分な戦力になると教えられていたが、大丈夫かこの人たちと一株の不安も抱いていた。

 

 出発の時間は刻一刻と迫って来ていた。

 

 




原作イセスマ=MTDK兄貴のゲートを使って王様をミスミドまで送っちゃえば安全じゃん! とゆーわけでMTDK兄貴、ミスミドまで行ってゲート繋いできて、どうぞ。

とゆー感じでしたが、本作はそんなんじゃ甘いよってな感じで王様には自ら行ってもらいます(スパルタ)

何とかしてWメイドさんを登場させなきゃ(使命感)

今後の活動についてではなくお気楽アンケート開催。アニメ異世界スマホのEDでスマホ太郎がヒロインたちに手を差し出すシーン、差し替えるとしたら誰がいい?

  • スマホ太郎(アニメ主人公)
  • 望月冬夜(原作主人公)
  • 野獣先輩
  • 三浦
  • 木村
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