異世界空手部・やわらかスマホの裏技   作:コッコリリン

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期間空いてたとは言えど更新したら一度にたくさんお気に入り外されて悲しくて気が狂いそう……!(絶望) 理由わからないけど、何かがあかんかったんでしょうね、しょうがないね……(諦め) けど更新は続けてくからよろしくオナシャス!

まぁそれは置いといて(ジェスチャー)

今回、八重ちゃんには涙目になってもらいます(マジキチスマイル)


30.迫真空手部、夜襲を受ける

 獣人が治める国ミスミドは自然豊かな国であり、場所によっては密林地帯もあるという、地球で言う南米辺りのような場所だ。その分、動物だけでなく魔獣も多く出るという。魔獣の獲物である動物が豊富な分、人里に被害が出ることはあまり多くはなくとも、それでも魔獣は魔獣。ミスミドを守る兵士は、魔獣対策にも力を入れていることが特徴である。

 

 魔獣は闇に潜み獲物を狙う。それ故に、兵士に求められるのは気配を察知する能力と反射神経である。危機に対して素早く臨機応変に対応できるように、獣人特有の鋭い聴覚、嗅覚をより洗練されたものへと昇華するための訓練が施されている。だからこそ、今回のために駆り出された彼ら程、国王陛下護衛という仕事には打ってつけとも言えた。

 

 現に彼らミスミドの兵士たちは、馬に跨りながら獣人特有の獣耳を活かして周囲を厳重に警戒している。もはや猫一匹、接近することを許されないレベルだ。当然、国王陛下護衛という重大にして名誉ある任務に就いているベルファストの兵士たちもまた、その任に就くに値する実力の持ち主たち。どのような異常も見逃さんとするその鋭い眼は、ミスミドの兵士に引けを取らない。

 

 そして、そんな強固にして何よりも頼りになる警護の中心を進む数台の馬車のうち一台の中では、

 

「んんんんん……これでござる!!」

 

「あ、おい待てぇい(江戸っ子)。正解はこれとこれだゾ」

 

「はい、三浦さんの勝利ですね」

 

 白熱したバトル(神経衰弱)を繰り広げていた。

 

「ま、また負けたでござる……」

 

「ちょっと八重弱すぎんよ~?(挑発)」

 

「今のところ八重さんが全戦ビリですね」

 

「いやはやなかなか……私と実力はほぼ互角ですね」

 

「お姉ちゃん、正直八重さんといい勝負だと思う……」

 

「そうだよ」

 

「ポチャ(どんぐりの背比べ)」

 

 神経衰弱をしているのは、八重、野獣、ユミナ、オリガ、アルマ、三浦、そしてポッチャマ。六人と一匹いて今のところ全勝負八重がドンケツという奇跡の弱さを見せつけている試合はなかなかに盛り上がっていた。

 

 結構な大人数でもまだ余裕がある豪華な馬車。とても国王を護衛しているとは思えない程に、それこそ本当に旅行に来ていると言われてもおかしくない程に楽しんでいる一行。アルマは最初こそグイグイ来る野獣と三浦に若干怯えていたが、アルマの緊張を解き解すためにおどけた態度を取ったり、野獣たちがちゃんとアルマの話を聞いてあげているうちにいつの間にかすんなり打ち解け、寧ろ懐いてすらいる様子を見せるようになって、こうして共にテーブルゲームで楽しめるようになっていた。因みに、馬車を操作するのは交代制であり、現在はエルゼとリンゼの二人が外で御者をやっている。

 

「はぁ……王様の護衛だっていうのに、こんなことしてていいのかなぁ」

 

 その光景を横目に一人ため息をつく木村。国王陛下護衛という重要な依頼なのに、警戒しているのは外を歩く兵士たちだけで、まるでここは別世界のよう。緊張感が無さ過ぎて些かどうかと思う木村であったが、

 

「まぁまぁ、変に肩肘張っててピリピリするよりいいと思うよ僕は。それに僕たちはある意味切り札的扱いらしいしね。危険が察知された時が僕たちの仕事であって、警戒は兵士の人たちの仕事だから、その時に備えて今は英気を養っておく意味でも気楽でいこうよ……っと」

 

 真向いに座る冬夜が苦笑しながら木村に言いつつ、手元の駒を一つ前へ進めた。

 

「あ……いやまぁ、そうなんですけどね」

 

 予想外のところを攻められて声を上げつつ、木村は冬夜に反論はせずともどこか納得いかないという風に言った。

 

 尚、二人がやっているのは日本でもポピュラーな遊戯、将棋である。冬夜が暇つぶしになればと、無属性魔法モデリングで作り上げた品だ。野獣たちが使っているトランプも冬夜がモデリングと物を印刷するという無属性魔法『ドローイング』で柄を描いて作った物だった。聞けば将棋はリフレットですでに流行り出しており、いずれは王都にまでそのブームは届くだろうとさえ言われているのだとか。

 

「……それにしても、やっぱり冬夜くんはすごいなぁ」

 

「え? どうしたの急に?」

 

 盤上の駒を動かしながら何となしに呟く木村に、冬夜が首を傾げた。

 

「この将棋しかり、トランプしかり、無属性魔法を完全に使いこなしているのを見ると、やっぱり到底及ばないなぁと思ったんですよ。僕なんてモデリングなんて使ったら一回でヘロヘロになるし、作れたとしても集中力が足りないのか完成品とは程遠い何かだったりしたこともありましたし……想像力には自信があるんだけど、冬夜くんレベルに至るまでは遠いよなぁ」

 

 木村は思い出す。一人こっそりと、練習のためにモデリングで猫の置物を作ろうとしたが、出来上がった物は猫のような何か……どちらかと言うとスローロリスに近い何かが出来上がったことを。何でそんなマイナーな動物が出来上がったのか、木村にもさっぱりわからなかったが、イメージしていたものとはかけ離れた品が出来上がって落胆した。

 

「う~ん、僕の場合は神様補正で魔力無限だから、魔力を気にせずに集中しやすいっていうのがあるからかもしれないなぁ。はい」

 

「うわ、そこ置く? ……そんなものなんですかねぇ」

 

 冬夜の力と木村の力は、似て非なる物だ。確かに二人は無属性含めた全属性魔法を使えるが、冬夜はそれに加えて魔力無限というオマケ付き。しかも魔法も知ることさえできれば使用できるという破格の待遇だ。対して木村は、魔力は有限で成長していかなければ使える魔法も増えない。まるで冬夜の劣化版みたいだと、木村は己を卑下した。

 

「けど、木村さんは僕にはできないことがちゃんとあるよ」

 

「いやそんな。世辞はいいですよ」

 

「お世辞じゃないよ。ほら、僕は無属性魔法は名称、使い方を知らなければ覚えられないけど、木村さんはその魔法の名前を心の中で強く欲しいって思えば使えるんでしょ? 無属性魔法の名称って結構安直だったりするから、そういう意味じゃ木村さんの方が有利かなって思うんだよね」

 

「……」

 

「僕は僕ができることをやっているだけだから。木村さんにしかできないことがきっとある筈だよ」

 

「……う~ん」

 

 冬夜の言うことは一理ある。確かに、そう考えれば木村の方が無属性魔法を覚えやすい。ただまぁ『覚える=使える』ではあるが『覚える=使いこなせる』にはなりえないため、結局は魔力量を増やすために経験を積まなければいけないのだが。

 

 やっぱりどう足掻いても、今の木村では魔法面では冬夜に太刀打ちできそうにない……何となく、木村は自分が無力に感じてしまった。

 

「はい王手」

 

「あっ」

 

 パチン。乾いた音で現実に引き戻された木村は、盤上で冬夜に追い詰められていることに気が付いた。腕を組んで考える木村だが、この状況から抜け出せる道が見つからない。見れば冬夜はどこか得意げな顔をしていた。

 

「……はぁ。参りました」

 

 逆転の一手はなし。つまり詰み。冬夜の顔は腹立つが、負けは負けだ。

 

「あ~クッソ、魔法でも負けてこっちも負けてちゃあどうしようもないじゃないか」

 

「魔法に関してはともかく、将棋じゃこっちに分があったね」

 

 ムムムと唸る。そして決意する。いつかその得意げな顔を明かしてやると。

 

「これでござるぅ!!」

 

「はい残念。これとこれが正解です」

 

「なぜッッッ!!」

 

「八重弱すぎる……弱すぎない?」

 

「八重ちゃん負けてばっかだゾ」

 

 そして横では八重が何気に容赦のないユミナの前にまたもや敗北。どうしても勝てずにとうとう心の底からの叫びを上げる八重を、野獣と三浦が可哀想な目で見ていた。アルマも八重を憐れんでおり、小声で「次、負けてあげようかな……」と言い出す始末。

 

「……あの、八重さん。僕と交代します?」

 

 木村も連戦連敗の八重を見てると何だか居た堪れなくなってしまい、今度は将棋を勧めてみた。別の遊戯なら八重も勝てるかもしれないと思ってのことだが。

 

「そ、そうでござるな……将棋ならば以前、リフレットの銀月へ赴いた時にやったことがあるでござる」

 

「あ、じゃあ私も。その将棋? という物、ちょっと気になってたんですよね」

 

 少し消沈している八重に続き、オリガが挙手した。この世界ではまだリフレットでしか流行っていない将棋だが、こうして興味を抱く者が増えていくことで、やがて王都のみならず世界中に広まるのもそう遠くないだろう。

 

「じゃあオリガさんは僕と代わりましょうか」

 

「うーし、じゃ今度はババ抜きやろうぜババ抜き! 俺のポーカーフェイス見とけよ見とけよ~?」

 

「いいゾ~それ!」

 

 木村と冬夜がトランプ組に入り、神経衰弱から別のゲームへ変更。ルールを知らないアルマとユミナに説明している傍ら、八重がオリガに将棋のルールを教えていた。

 

 しばらくし、ルールを完全理解したオリガ。やがて二人は将棋盤を挟んで互いに向き合う。二人の目は闘志に燃えていた。

 

「オリガ殿は初心者でござるから、拙者が手心を加えてもよいでござるよ?」

 

「心配ご無用です。手加減抜きで来てください」

 

「……承知。ならば、全力で行かせてもらうでござる!!」

 

 たかが将棋なのに真剣勝負の如し熱さ。そうして二人のガチ将棋バトルはスタートした。

 

 で、結果はというと、

 

「17連勝です☆」

 

「おいおい……(消沈)」

 

 キャピッ! という音が出そうな勝利宣言をかますオリガの前に八重は項垂れ、

 

「24勝です。楽勝です」

 

「あ、ふーん……(呆然)」

 

 ノリで将棋に参加した野獣(将棋未経験)に余裕で負けて八重の目から光が消え、

 

「ポチャ(王手)」

 

「嘘でござる……(絶望)」

 

 挙句の果てにポッチャマにすら負けて八重は両手で顔を覆った。

 

 こうして合計114戦中114敗を重ねてトランプだけでなく将棋においてもクソザコナメクジっぷりを披露した八重は、馬車の隅っこで寝ていた琥珀を抱きかかえたまま同じく隅っこで身体を丸めるように横になり、しばらく真っ黒いオーラを纏いつつスンスン泣きながら不貞腐れるのであった。強く抱きしめられた琥珀は『お、お助け……』と助けを求めたが、誰も聞こえなかったという。

 

 

 

 

 

 

 

「こうして、悪しき貴族を退治した三人の犬の兄弟たち。その疲れからか、不幸にも黒塗りの高級馬車に追突してしまう。弟を庇い全ての責任を負った長男に対し、馬車の主、悪徳商人バレーヒルが言い渡した示談の条件とは……」

 

「ゴクリ……そ、その後は? その後はどうなったんですか!?」

 

「っと、残念だけど今回は終わり! 閉廷! よい子はもう寝る時間だど~」

 

「え~!? 気になって眠れませんよぉ!」

 

「まま、そう焦んないで。ちゃんと明日話してあげるからさ~。楽しみは最後に取っとくべきだって、それ一番言われてるから(大好物並感)」

 

「こらこらアルマ。野獣殿を困らせないの」

 

「大丈夫だゾ~アルマちゃん。野獣はちゃんと約束は守る男だからな~」

 

「う~……わかりました。けど絶対! 絶対明日お話してくださいね野獣さん!」

 

「大丈夫だって安心しろよ~。楽しみにしててくれよな~頼むよ~」

 

 その日の晩、一行は森林の中でおあつらえ向きに広い空間で野営をすることとなり、中央に王が身体を休めるために建てられたテントを囲う形で各々たき火を囲い、周囲を警戒していた。見通しの悪い夜の森は、もっとも警戒しなければいけない場所。兵士たちは注意を払い、森の中を睨んでいた。

 

 一応、迫真空手部のメンバーたちもその中に入っていたが、主な警戒は両国の兵士に任せ、面々たき火を中心に話に花を咲かせていた。特に野獣が語る童話は耳をピコピコ動かして感情を顕わにしているアルマだけでなく、周りの兵士たちにも好評な様子だった。亜人に対する偏見がまだ蔓延る世の中、獣人が活躍する話は興味の対象になるのだろう。

 

「それにしても、とても面白かったです野獣殿。そのお話はどこで?」

 

「俺が子供の頃から聞かされてたお話にちょこっとアレンジ加えてんだよな~。まぁ大筋は変わってないから、多少はね?」

 

「……僕が知っている童話と随分違う気がする……」

 

 オリガに聞かれて答える野獣に、冬夜が苦笑交じりに呟いた。ベースはかの有名な『三匹の子豚』のようだが、子豚ではなく犬が主役なのには驚いた。そしてこらしめる対象が狼ではなく貴族になっていたが、それはミスミドの兵士の隊長が狼の獣人だから、野獣が配慮したのだろう。それでも、確かにお話の大筋は変わっていないよう……だと思わせておいて、最後の最後に出て来た黒塗りの高級馬車が冬夜の『平行世界の違いって奴かぁ』という感心を全て掻っ攫っていった。

 

 色々ツッコミたいのは山々なれど、オリガたち獣人にはウケたため、冬夜はもう何も言うまいと決めたのだった。

 

「スゥから手紙越しでしか聞いてませんでしたが、野獣さんのお話は本当に面白いですね」

 

「先輩、演劇部とか行けたんじゃないかなぁ……語り方がプロ並ですよ」

 

 ユミナがクスクス笑い、木村が何となく言う。木村たちには聞き慣れた童話だが、野獣はそれを腕を使ったリアクションと、口調に感情を込めて語ることで臨場感を醸し出し、さもその場にいるかのような錯覚を覚えてしまう。野獣にそういう才能があることを木村は初めて知った。

 

「昔取った杵柄って奴だよ。けど(演劇とかやる気は)ないです。空手部と水泳部以外に掛け持ちなんて無理だって、はっきりわかんだね」

 

「二つの部活掛け持ちしてた時点で十分すごいですよ」

 

 よく部活を両立させておいてスケジュール管理ができるものだと木村は呆れ半分、感心半分に言った。

 

 ともあれ、夜も更けてきたことだし、後は見張り兵に任せて休もう……誰かがそう提案しようとした時だった。

 

「……っ!」

 

 一行と共に座っていたウサギ耳の少年兵士が、突然大きな耳をピンと立てる。そして立ち上がったかと思うと、耳をピクピク動かした。

 

「どうした?」

 

 兵士の一人が少年兵に声をかけると、少年兵は「しっ!」と人差し指を口に当てた。

 

「……獣の気配じゃない。何者かが近づいてきています。それも複数……我々を取り囲む形で」

 

 その言葉で緩んでいた空気が一転、ベルファストとミスミドの兵士たちは剣を抜き放ち、野獣たちもまた得物を手に取って立ち上がった。オリガは怯えるアルマを抱き寄せる。そして一同、王がいるテントを中心に円を作るようにフォーメーションを組んだ。

 

「……何者でしょうか?」

 

 木村が小声で言いつつ、本を広げる。

 

「恐らく、街道に現れる盗賊団でしょう。気配の消し方が手練れのそれです。一人一人は大したことはなくとも、数が多いと厄介ですぞ」

 

 木村に答えたのは、ミスミド兵士の隊長。狼の耳を立て、360°どこからでも対応できるように警戒している。

 

「今琥珀から聞いたけど、やっぱり夜盗のようだよ。どう考えても友好的とは言えないな」

 

 冬夜もまた刀の柄に手をかけながら言う。彼の隣で琥珀がマスコット姿のまま身構えており、森の暗闇をつぶらな瞳で睨みつけていた。兵士がいる手前、迂闊に本来の姿に戻れないのだろう。

 

「……迎え撃つでござるか?」

 

「あ、おい待てぇい(江戸っ子)。ここには王様だけじゃなくてオリガさんとアルマちゃんもいるゾ。ここで戦ったら三人が危ないゾ」

 

 刀を構える八重が提案するも、三浦がそれに異議を唱える。相手の数がわからない以上、今この場所で敵味方入り乱れることになれば非戦闘員であるオリガたちに危険が及びかねない。彼らに危険が及ばないように立ち回る必要がある。

 

「じゃあ撃って出ますかぁ? 私は一向に構わん!(RKO)」

 

「構ってください。こっちから出ても視界が暗い中での戦闘は無理がありますよ。逆に松明を使っても相手に位置が知られて不利です」

 

「じゃあどうすりゃいいのよ?」

 

 野獣が大剣を手にしながら気合を入れるも、木村がそれを止める。有効な手が無い中、エルゼが見えない敵を相手に苛立ちを含ませながら言うと、その隣で何を思ったか、冬夜がスマホを手にし、タップしていく。

 

「えーと……北に八人、東に五人、南に八人、西に七人。相手は合計で28人か。結構多いな」

 

「ファッ!?」

 

 サラっと敵の数を言い当てた冬夜に、野獣が驚き奇声を上げた。

 

「え、わかるんですか冬夜くん!?」

 

「ああ、うん。スマホにサーチをエンチャントさせてるんだ。マップアプリで検索をかければ、何がどこにいるのかわかるってわけ」

 

「ええ……(困惑)」

 

 何てことの無いように木村の驚愕を伴う問いに答える冬夜に、野獣が冬夜のスマホの使い方に思わず困惑した。その発想に至った冬夜がすごいのか、またはそんなことができる無属性魔法という存在がすごいのか……多分両方だろう。

 

 しばしスマホの画面を見ながら冬夜は何かを考え込み、ボソリと呟いた。

 

「……試してみるか。エンチャント:マルチプル!」

 

 スマホに翳した手の先に魔法陣を展開させると、スマホが一瞬輝く。そしてすかさずスマホを連続でタッチしていった。

 

「これでよしっと……パラライズ!」

 

 冬夜が対象を麻痺させる魔法を発動させる。対象はスマホ。しかし発動した先はスマホではなく。

 

「うぐっ!?」

 

「ぬあっ!?」

 

「ぎゃぁっ!?」

 

「はう!?」

 

「ンンッマ゜ッ!? アッ!!」

 

 周囲の森の暗闇の中から、男たちの悲鳴が聞こえ、その後くぐもった呻き声へと変わった。

 

「……え、今度は何したんですか?」

 

 明らか冬夜が何かをしたことに気付いた木村が、引きつった笑いを浮かべながら冬夜に聞いた。

 

「ああ。スマホに今度はマルチプルをエンチャントしてからマップに表示されてる夜盗をタッチしていってターゲットを指定して、パラライズを唱えて夜盗を麻痺させたんだよ」

 

「はぇ~……すっごいチート(オリ主並感)」

 

「お前スマホの使い方おかしいよ……(愕然)」

 

「すごいゾ~冬夜くん。あっという間だったなぁ」

 

「ポチャ!(賞賛)」

 

『当然だ。私の主なのだからな』

 

 スマホを別の何かへと魔改造させた冬夜に、野獣と木村は開いた口が塞がらなかった。八重たち、そして兵士たちも冬夜の出鱈目なやり方に驚けばいいのか呆れればいいのか。三浦とポッチャマは素直に賞賛し、その横で琥珀が周りに聞こえない程度の小声でフフンとドヤっていた。

 

 ともあれ、相手は全員無力化した。野獣たちは冬夜のスマホのマップアプリの下、森の中に潜んでいた男たちを引きずり出していく。冬夜の言う通り、男たちは28人。全員手の甲に蜥蜴の刺繍が彫られており、仲間であることがわかる。痺れて動けない彼らを縄で縛り、捕縛した。

 

「これで全員ですかね?」

 

「うん。もう敵はいないね」

 

 木村が一息つき、冬夜がスマホで周囲に敵がいないことを確認した。襲撃は想定こそされていたが、冬夜のおかげで大事にならずに済み、一行はホッと安堵のため息をついた。

 

「あ~よかった。ホント、冬夜ってば何でもできるんだから」

 

「まったくですよ……僕たち護衛として形無しですね」

 

「いやぁ、別にそんな大したことじゃ……」

 

 エルゼと木村に言われ、冬夜が照れて頭を掻く。そんな冬夜に野獣が強引に肩を組む。

 

「謙遜すんなよなぁお前なぁ! おかげで王様たちも無事だったんだし、お手柄だぜ~?」

 

「あ、ありがとう。けど、ホントに大したことじゃ」

 

 野獣にも賞賛され、冬夜は謙遜しようとしたが、

 

「じゃけんこれからの仕事は全部冬夜に任せましょうね!」

 

「え、ちょ……!?」

 

「何言ってんですかアンタ。冬夜くん一人に負担おっ被せないでください」

 

「そうだよ」

 

「ポチャ」

 

 思いっきり冬夜に丸投げしようとした野獣に木村がツッコんで三浦とポッチャマが便乗した。

 

 ついでに、

 

『グギギギギギ……主に臭い付けるな悪臭めぇぇぇぇぇぇ……!』

 

「こ、琥珀殿、どうどう……」

 

「落ち着いて琥珀さん。声が出てます出てます」

 

(顔、精一杯怖く見せようとしてる……可愛い、です)

 

 少し離れた場所で冬夜にくっ付く野獣に向けて威嚇と共に牙を向ける琥珀を、八重とユミナとリンゼが抑えていた。

 

 騒ぐ彼らを見て、兵士たちも笑う。先ほどまでの緊張感に包まれた空気から、再び穏やかな物へと変わっていった。

 

 

 

 その光景を、一匹の蜥蜴が木に張り付きながら見つめていることには誰も気付かない。

 

 

 




原作における望月兄貴のチートっぷり、私は好きですよ(無自覚ハーレムが好きとは言ってない)

原作には書かれてませんでしたが、ミスミドの魔獣対策は独自設定です。被害は少なくとも魔獣多いって言うなら対策するだろうし、多少はね?

今後の活動についてではなくお気楽アンケート開催。アニメ異世界スマホのEDでスマホ太郎がヒロインたちに手を差し出すシーン、差し替えるとしたら誰がいい?

  • スマホ太郎(アニメ主人公)
  • 望月冬夜(原作主人公)
  • 野獣先輩
  • 三浦
  • 木村
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