異世界空手部・やわらかスマホの裏技   作:コッコリリン

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新年あけましておめでとうございます。お正月なので初投稿です。

……ふと気付いたのですが、原作異世界スマホはMTDK兄貴の無双を楽しむ小説であると同時にMTDK兄貴のハーレムを見るのも見所の作品なわけで、そう考えたらこの作品、ある意味N〇Rなのでは?

………………………(熟考)

今作ではGO様による介入でMTDK兄貴とヒロインのフラグがばっきりへし折れている。よってN〇Rではない。Q.E.D.証明完了。

とゆーわけで、細かいこたぁいいんだよ!! 読者の皆さん楽しんでくれよな~頼むよ~。

因みに私はN〇Rは口にするのも話題にするのもいや~キツいっス(マジ顔)


32.迫真空手部、竜と遭遇する

「皆さん揃いましたね? ではそろそろ出発といきましょうか」

 

 一行が買い物を済ませて馬車へと戻ると、兵士たちも全員揃っていた。オリガが声をかけ、各々出発する前の最終チェックをしていく。

 

「FOO! じゃけん出発しましょうね~!」

 

「うん、そうだね……」

 

「と、冬夜さん……大丈夫ですか?」

 

「次は股間を蹴り上げてやろうかしらこの能天気男……!」

 

 そして先ほどまで青色吐息だった野獣は頭にタンコブを付けながらクネクネと変な踊りをしながら元気溌剌をアピール。その後ろでは冬夜が代わりに顔色を悪くしてリンゼに気遣われていた。エルゼはというと、目を吊り上げて野獣を睨んでいる。

 

「お、野獣元気になったかゾ?」

 

「おうよ! 出すもん出したらスッキリしたぜ!」

 

「ところで冬夜殿は……あ~……何となく理解したでござる」

 

 船酔いしていた野獣が出すもんと言ったら……そして冬夜が先ほど悲鳴を上げていた理由は……それを考えた瞬間、八重はあまり触れないであげようと思い、冬夜の心中を察した。

 

「それならこの酔い止めの薬は飲まなくても大丈夫ですかね?」

 

 木村が買って来た品々の中から瓶を取り出す。野獣のためにと買った薬だったが、元の調子を取り戻した野獣には不要かと誰もが思ったが。

 

「あぁ、それならあいつにあげてくんない?」

 

 野獣は兵士たちの中にいる一人を、うさ耳を頭に生やした少年兵を指さす。いつぞやの夜盗襲撃の際、一早く襲撃に気付き、警戒を促した兵士だ。確か名前をレインと名乗っていたのを思い出す。そんな彼が心なしかフラフラしているのが目に入る。

 

「船酔い、ですかね?」

 

「さっき見た時は元気そうだったんだけど、今はあんな調子なんだよなぁ。前のお礼の代わりになるかわかんないけど、あいつにあげてくれよな~頼むよ~」

 

「確かに、彼がいなかったら危なかったかもしれませんものね」

 

 野獣が恩義を感じているのもわかると、ユミナも頷く。木村たちも同じ気持ちなため、野獣の案に異論はない。直接手渡したいところだが、決定権を持つミスミド兵の隊長の下へと木村は歩み寄っていった。

 

「あ、すいません隊長さん。あそこの彼なんですけど……」

 

 木村が隊長へ声をかける。それだけで隊長は、木村が言わんとしていることに気が付いた。

 

「これは木村殿。レインの奴なら船に酔ったようでな。先ほど休憩に入るまでは異常はないように見えたのだが……」

 

 そう言って隊長は困ったように頭を掻く。王の護衛という大事な仕事を船酔いという理由で休むのは情けないと思っているようだが、あの調子では本来の実力を十二分に発揮できないだろう。

 

「それなら、これを彼に。酔い止めの薬なので、渡してあげてください」

 

 木村は隊長に瓶を手渡した。

 

「これは……いいのか?」

 

「はい。この間はお世話になったので、是非」

 

 最初は躊躇っている節が見えたが、せっかくの厚意を無碍にするわけにもいかないと、隊長は礼を言ってレインの下へ向かっていった。

 

 やがて全員準備を終え、御者をエルゼと八重が務める馬車に一行は乗り込んだ。

 

 ふと、客席でオリガと向かい合う形で座ったユミナが彼女の髪を見る。そこには、少し前までは無かった筈のものが光っていた。

 

「オリガさん、その髪飾り素敵ですね。お似合いですよ?」

 

「え? あ、そ、そうですか? ありがとうございます」

 

 オリガはそう言って少し照れながら小さく笑う。オリガの髪にある桜のような花の髪飾りに木村たちは見覚えがある。カナンの町の露店にて、野獣がアルマにオリガの好みを聞いた際、アルマが指し示した髪飾りだ。そしてそれをどこかの誰かさんが購入していたのを見ている。

 

「けれど、ユミナ様も素敵なブローチを付けておられますね? とてもお似合いです」

 

「フフ、ありがとうございます」

 

 そしてオリガもまた、ユミナの胸元のリボンの中央で光る翠のブローチを誉める。それもまた木村がカナンで購入した品。嬉しそうに笑うユミナの横で、木村が紅潮した頬を隠すかのように顔を背けた。

 

「本当に素敵、です。どこで買われたのですか?」

 

「ええ、これは先ほど木村さんが」

 

「出発しましょう!! すぐ!!」

 

 リンゼに質問されたユミナが嬉々として答えようとしたのを遮って木村が叫んだ。それを合図にしたかのように、カナンに辿り着くまでの時と同じ形の列で馬車は進み始めた。

 

 やがてラングレーの町を出て、緩やかな道のりを進む馬車の列。と、その頃になってふとエルゼが八重のある一点を見て気付く。

 

「あら? 八重、ペンダントなんてしてたっけ?」

 

「へ? いえ、これは、その……まぁ、色々あったでござる」

 

「……?」

 

 手綱を握りながら明後日の方を向く八重に、エルゼが首を傾げた。まぁ結局、後になって真相を知って野獣たちと混ざって二人の乙女+一人の純情青年にニヤつくこととなるのだが、それはここでは割愛。

 

 

 

 

 

~364分後~

 

 

 

 

 

 森の中を進む馬車の列。やがて日が沈み始め、周囲は闇に覆われつつある。日暮れまでに中間地点であるエルドの村に到着するのは難しいということで、道が開けた場所で野営をすることとなった。その頃には完全に太陽は沈み、月が顔を出し始める時刻となっていた。

 

 せっせと食事を準備する兵士たちの傍ら、野獣たちが乗り込んでいる馬車の中にて、冬夜がゲートを使ってエルゼとリンゼをリフレットの宿屋兼拠点の銀月へ風呂へ入れさせるために戻させていた。致し方ないとはいえ、やはりうら若き乙女である二人にとって風呂は何よりも大事なこと。そこで冬夜に頼み、少々ズルいとは自覚しつつも、一旦リフレットへ戻って入浴するという荒業を使ったのだった。因みに隠れてゲートを使った理由としては、他国にゲートという神出鬼没を可能とする魔法を使えるという事実を隠すためでもある。故に冬夜が見張りつつ、偽装工作もしてバレないように行った。

 

 迫真空手部一行も『ナイスアイデア!』とばかりに冬夜に倣い、入浴をするために木村が馬車内でゲートを唱え、自宅へと繋げた。八重とユミナは勿論のこと、毎日の風呂は欠かせないと豪語する野獣もこれには大喜び。綺麗さっぱりした後、野獣は琥珀の前で腰を左右にクネクネさせながら「どうよ、この香り! 新作のフレーバーを使った石鹸を使って体臭対策もばっちりよ!!」と言うと有無を言わさず後ろ脚サマーソルトキックを顎に喰らった。

 

 やがて全員が身綺麗にすると、たき火を囲みつつ夕食を摂る。森の暗闇から虫や梟、さらには夜行性の獣の声が聞こえてくる。たまに遠吠えのような声も耳に入ってきた。

 

「……なんだかちょっと、怖いですね」

 

 ベルファストにいた時の野営とは違う雰囲気にユミナは少し怯えつつ、木村へと身体を寄せた。木村は少し頬を赤らめるも、避けることはしなかった。

 

「魔物は人里に被害を出すことは少ないとは言っても、やっぱりこういう夜は不気味だなぁ」

 

「けどキャンプしてるみたいでスゲ~楽しいゾ~これ! 俺野営好きだなぁ」

 

「ポッチャ(飯ウメェ)」

 

「三浦殿のその能天気なところ……拙者は羨ましく思うでござるよ」

 

 木村に対し、膝の上でポッチャマに食事を与えながら明るい口調で返す三浦に、八重もまた暗闇に怯えつつも呆れ半分、感心半分に呟きながら、野菜スープを口に運んだ。

 

「そこの辺りは安心してくれていいよ。琥珀がいれば通常の獣とかは近寄ってこないし、魔獣が来ればすぐに察知できるってさ。まぁ、巨大な虫とかスライムは無理らしいけど」

 

 冬夜が琥珀を膝に乗せながら言う。膝上の琥珀はどこか誇らしげだった。

 

「ありがとうございます、琥珀さん」

 

『お任せを。主のお仲間であるならば、これくらい容易いこと』

 

 周りに聞こえないよう、小声で礼を言うユミナに、何てことはないと返す琥珀。

 

「FOO! しっかり守ってくれよな~頼むよ~」

 

『お前は野良犬に食われて死ね』

 

「クゥ~ン……(悲しみ)」

 

 野獣に対してはとことんまでに辛辣な琥珀に野獣はしょんぼりと落ち込んだ。

 

「……ホント、琥珀さん野獣先輩のこと嫌いですよね」

 

「仲良くして欲しいんだけどな~俺もな~」

 

「ポチャ(歩み寄り、大事)」

 

 琥珀の敏感な鼻に野獣の体臭は堪えるということで、琥珀は徹底的に野獣を嫌悪している。どうにかならないものかと思いはするが、こればかりは琥珀にしかわからない苦しみ故、外野がどうすることもできそうにない。そのうち臭いに慣れてくれればいいのだが……まだまだ先のようだ。

 

「せめて努力は認めてあげて欲しい、です」

 

「そうよねぇ。臭いまではどうにもならないとしても」

 

『フンッ!(意地)』

 

「……ダメみたいだね」

 

 リンゼとエルゼが野獣を擁護しようにも、肝心の琥珀がプイっと顔を背けて拒絶の意思を示し、どうしようもないなと冬夜は苦笑した。

 

 そうして一行がたき火を中心に語り合っている時、ある者から声をかけられた。

 

「君たち、今日はご苦労だったな」

 

 威厳と穏やかさを感じさせる声で、一行に労いの言葉をかける人物。そんな人物は一人しかいない。

 

「お父様!」

 

 声の主がユミナの肉親にしてこの旅の護衛対象であるベルファスト国王であると認識した瞬間、木村とエルゼ、リンゼ、八重は恭しく片膝を着いた。

 

「よう、王様! 王様もここまでお疲れさん!」

 

「王様も今日疲れたろ?」

 

「ポチャ(ご苦労さん)」

 

「なぁに、この旅もベルファストの未来のため。こんなところでへこたれては国王は務まらんさ」

 

 そして恭しさなんて欠片もない気さくな挨拶を交わす男二人と一匹に、王は若者のように笑う。木村はもとより、彼らのことを知る者たちにとっては呆れと諦めに近い感情を抱いているが、何も知らない者たちからすればそれは異様な光景に映るだろう。現にほとんどのミスミド兵たちは、野獣たちと王のやり取りを見てぎょっとしている者もいる。

 

「そうだ、君にも礼を言わなければな。こうしてゆっくり話すことがなかったから遅くなってしまった。襲撃の時は助かったぞ、冬夜殿」

 

「あぁ、いえ。恐縮です」

 

 夜盗の件で礼を言う王に、冬夜は所在なさげに頭を下げる。思えば冬夜と王がこうして面と向かって話すことはこれが初であったが、王は冬夜のことを前々から知っていた。

 

「さすがはシャルロッテから聞いていた通りの者だったな。その魔法の腕、実に素晴らしかったぞ」

 

「…………………い、いやぁそれほどでも。ハハハ、ハ……」

 

 王からの賞賛に、冬夜はビシッと凍り付いたように固まったかと思えば、すぐに笑みを浮かべた。ただその笑みは引きつっていたが。

 

(……ごめん、冬夜くん)

 

 そんな冬夜の反応に心当たりがある木村は、内心で謝罪してそっと顔を逸らした。十中八九、木村がシャルロッテに冬夜を紹介したことが起因しているのだろう。木村の紹介でシャルロッテの下に訪れると、すぐさま研究室に引きずり込まれて彼女の話を徹夜で聞かされた挙句、無属性魔法を利用したマジックアイテム作成の手伝いをされたのだ。冬夜にとってはハードな出来事だったに違いない。

 

 ついでに、少し前に冬夜に『またシャルロッテさんが来て欲しいらしいですよ』とレオン将軍からの言伝を伝えたところ、一瞬でFXで財産溶かした人みたいな顔になったのは印象深い。

 

「また今度シャルロッテの下を訪ねる時は声をかけてくれ。木村殿の友人ならば歓迎するよ。ハッハッハ!」

 

「アハハ……ありがとう、ございます」

 

 気さくな王の言葉に、冬夜は力なき声で返事をした。またあの地獄を味わうのか……そう冬夜は思った。

 

 チラっとその地獄へ誘った張本人を見やると、両手を合わせて頭を下げていた。冬夜は色んな感情がないまぜになった口の端が引きつるのを感じた。

 

「しかし、ミスミドの王都ベルジュまではまだ遠い。引き続き、君たちには気を引き締めて欲しい。頼んだぞ」

 

「はい!」

 

 王の身に危険が及ぶこと、それすなわちベルファストとミスミドの両国の未来までも危うくなるということ。改めて今後の護衛を願い出る王に、木村が一行を代表して力強く返事した。

 

「大丈夫だって安心しろよ~。俺らがいれば百人力だからさぁ!」

 

「俺たちだけじゃなくって兵士の人たちも頼りになるから、王様安心してて欲しいゾ~!」

 

「ポッチャ!(任せんかい)」

 

「僕はアンタらの態度が安心できねぇんだよ(憤怒)」

 

 代表して返事したというのに相変わらず風船の如く軽い先輩どもに血管を浮かせながら木村がドスの効いた声を上げた。気分を害することなく笑う王に、女性陣は呆れたため息を吐く。

 

 平常運転の彼ら。周囲は暗闇に覆われているというのに、たき火による明かりとは別の明るさが野営地を包んでいた。

 

 が、その雰囲気は突如として一変する。

 

「……ん?」

 

 冬夜の耳が異常を捉える。周辺の森から聞こえて来る鳥や獣の声。先ほどまでは気配はすれども聞こえて来るのは狼の遠吠えくらいで、静かなものだった。

 

 だが静寂は破られる。木々から聞こえて来るのは、けたたましく鳴き、喚いているような動物たちの声。それがいつまで経っても鳴り止まない。

 

「おいおい何だぁ? えらい騒がしいなぁ?」

 

「……何だろう。様子がおかしい」

 

 野獣が怪訝な顔をし、その横で冬夜が只事ではないことを察知する。兵士たちも同じく、動揺しながらも各々武器を構えて警戒態勢に入った。

 

「動物たちが……一体何が……?」

 

 ユミナがこの異様な空気の中、狼狽える。一行は立ち上がり、王を守るように囲いながら得物を手に取った。

 

 普通、動物は自分の身の危険が迫った時に騒ぎ出す。そして森中の獣が身の危険が迫りつつあると察している。

 

 危険……それ即ち、

 

「何か……空から来るぞ!!」

 

 

 

 己の天敵が、上位の存在が近くに来ている、ということだ。

 

 

 

「なんだありゃ!?」

 

 野獣が空を見上げ、驚愕する。一行の視線の先、暗い夜空を突風を吹かせながら大きな影が飛んでいく。悠々と、空は己の庭だとばかりにゆっくりと飛んでいく影は、一行の頭上を横切っていく。その際、影はまるで爬虫類のような形に見えた。

 

 野獣たちには影の輪郭しか見えなかったが、夜目が効く獣人たちから声が轟く。

 

「竜だ! 竜が現れたぞ!!」

 

 ミスミド兵の隊長が、信じられないとばかりに目を見開きながら叫んだ。

 

「竜……え、ドラゴンですか!?」

 

「ファッ!?」

 

 木村と野獣が驚愕の声を上げる。野獣たちの知識にもある、ファンタジー系の作品でよく見かける架空の生物。巨大な爬虫類の身体を持ち、背中には大きなコウモリのような翼を持つ、幻想生物の中でも上位の存在としてよく描かれている。

 

 だがこの世界は架空ではない、現実の世界。架空でしかなかった本物のドラゴンを前にした野獣たちは、普段であれば感動を覚えるものだが、ミスミド兵たちの様子を見ると、そんな場合ではないことを知る。

 

「そんな、どうして竜がここに……!?」

 

「お姉ちゃん……!」

 

 オリガが怯えるアルマを抱き寄せるも、オリガもまた顔が強張っていた。オリガの言葉に疑問を覚えた木村が質問をする。

 

「オリガさん、竜は普段はここまで来ないんですか?」

 

「はい。竜……ドラゴンはミスミドの中央にある聖域で暮らしています。そこは竜のテリトリー、何人たりとて足を踏み入ることはなく、竜たちも侵入者がなければそこから出て暴れることはない……筈なのですが……」

 

「するってーと、誰かがそのテリトリーに踏み込んだってことになるわけか?」

 

「何ですと!?」

 

 野獣の指摘に、ミスミド兵の隊長が声を荒げた。しかしそれをオリガは首を振って否定する。

 

「そうとも限りません。何年か一度に若い竜が人里に現れ、暴れることもあります」

 

「……竜っていうのは撃退できるものでござるか?」

 

「我々、王宮戦士中隊……その中の手練れ100人が揃えば何とか。しかし中途半端な攻撃はかえって怒りを買うことになりかねません」

 

 八重の質問に、ミスミド兵隊長が答えた。道理で周囲の森が騒然としている筈であると木村は思う。

 

 そしてふと気付く。あの竜はどちらへ飛んでいったのか。勘違いでなければ、自分たちが進む方角へ飛んでいったのではないか……嫌な予感がする。

 

 瞬間、冬夜が愕然とした声を上げた。

 

「おい……あいつ、エルドの村に向かってるぞ!?」

 

「なっ……!?」

 

 スマホのマップアプリを見ていた冬夜の声に、一同が驚きの声を上げた。そして木村は予感が的中したことで歯噛みした。

 

 兵士たちは何故村を襲うのか、家畜を狙っているのではないかと憶測を建てるも、そんなことをしている場合ではないのは明白だ。

 

「しかし、救援に向かおうにも国王陛下を危険な目に合わすわけにはいかない!」

 

「確かにそうだ……しかしこのままでは国民が犠牲になってしまう!」

 

 リオンの言葉に、ミスミド兵隊長が歯を食い縛る。王を連れて行くことも勿論だが、護衛対象である王を放置して町へ向かうのも無理だ。何かあれば国交問題に発展しかねない。だが国の一兵士として、民が傷つくのを黙って見ていることなどできるはずもない。それはミスミド側だけでなく、ベルファストの者たちもまた同じ気持ちだった。

 

 どうすればいいのか、こうしている間に竜による暴挙の犠牲が出てしまう。もはや時間に猶予はない。

 

「……仕方ありません。二手に別れましょう」

 

 リオンが致し方なしと提案する。兵士の半分が救援に、その間もう半分が国王護衛にあたる案だ。竜を相手取る必要はない。住民を避難させ、竜が去るのを待つ。問題としては、人数が心もとないという点だが……。

 

「それなら、竜の相手は僕たちがします。皆さんはその間、住民を避難を」

 

「マジもんのドラゴンを相手取るとか……怖いですね、これは怖い……けどしょうがないね(人命第一)」

 

 冬夜と野獣が進み出る。野獣は口では怖いとは言ってはいるが、胸の内では静かに闘志を燃やしていた。

 

「そんな! そんな危険なことを……」

 

「大丈夫だゾ~! 俺たちも無理に相手取ることはしないからな~」

 

「正直、かなり危ないけど……やるしかないわね」

 

 オリガが止めるも、三浦が呆気らかんと言う。エルゼもまたガントレットを装着した拳をぶつけ、気合を入れる。八重もリンゼも同様、不退転の決意を瞳に宿す。

 

「あ、そうだ(提案)。おい木村ぁ。お前はここに残って王様を守ってやって欲しいゾ」

 

「え……」

 

 と、ここで三浦が木村を呼び、王の護衛を頼む。木村も野獣たちと共に向かう気満々だったのだが、ここで出鼻を挫かれる形となり思わず聞き返した。

 

「王様の守りを手薄にするのもよくないし、やっぱり誰残った方が俺たちも安心だゾ。それに木村にはゲート(あの魔法)があるから、いざとなったら王様を逃がすことだってできる筈だゾ」

 

 なるほど、三浦の案は理に適っている。木村とてそこらの魔物に後れを取るような実力ではないし、もし王に危険が及んだとしても、木村のゲートで王宮へ逃がせばいい。それに護衛の兵士半数もまたここに残るのだから、戦力的にも申し分はない筈。

 

「けど……」

 

 それでも木村は納得はいっていない。相手のドラゴンは強敵だ。それも未知なる存在。そんな相手に先輩二人が立ち向かうのに、木村一人がこの場に残る……不安と同時、不服でもあった。

 

 だが、

 

「……いえ、わかりました。この場は任せてください」

 

 確かに、王を放っておくことはできない。自分の私情を挟んで、強引について行く程、木村は自分勝手ではない。野獣と三浦は手練れだ。そして他のメンバーも実力者である。

 

 だから皆は大丈夫だ。そう信じ、木村はここに残ることを了承した。

 

 そして、そんな彼の横に立つ者がいた。

 

「それなら、私もここに残ります」

 

「ユミナさん……?」

 

「何かあった時に守れる人が一人でも多くいた方がいい筈です。それに、私とてお父様を置いて行くなんてできませんから」

 

 言って、ユミナは木村を真っ直ぐ見る。その眼には先ほどまであった怯えはない。

 

「……わかりました。僕とユミナさんはここに残ります。先輩たちも気を付けてください」

 

「心配しなくたって大丈夫だって! ヘーキヘーキ、ヘーキだから! 空飛ぶ蜥蜴とか、大タル爆弾設置して、石ぶつけて、パパパっとやって、終わり!(モン狩脳) にしてみせっからさ! 信じてくれよな~」

 

「木村もユミナちゃんも気を付けるんだゾ!」

 

「ポッチャァ!」

 

 木村の不安を払拭させようと明るくふざけたことを言う野獣と二人を案ずる三浦、ポッチャマ。ユミナは両手を祈るように組んだ。隣で王も野獣たちの無事を祈る。

 

「皆さん……どうかご無事で」

 

「王として何もできないのが歯痒い……君たちに神の加護があるよう」

 

「任せるでござる!」

 

「みんな、行こう!」

 

 琥珀が真っ先に駆け出す。そしてその身を元の白虎の姿へ戻した瞬間、冬夜がその背に飛び乗った。

 

「いくぞおおおおおおおお!!」

 

 野獣の号令の叫びと共に、野獣たちも冬夜の後ろを追走する形で駆けだした。ミスミド兵隊長率いるミスミド、ベルファストの両国の兵士も後に続いた。

 

 国王の護衛にはベルファスト兵隊長のリオンと物音に敏感なうさ耳の少年兵レインを含めたミスミド兵数名、そしてベルファスト兵数名が当たる。彼らと共に、木村とユミナは野獣たちの無事を祈りつつ見送った。

 

 野獣たちが向かう先。そこから炎による赤い光が、空を照らしているのが見えた。

 




次回までまたちょっと間が空きますが、念のため次回予告的なものをば。

次回、ドラゴン戦。



以上だ!!!!!!



原作では望月兄貴無双回。

尚今作では作者によって色々ぐっちょんぐっちょんに弄られまくったせいで色々ヤヴァイ回になる模様。安心してください。バトル回ですよ!(とにかく明るいYSMR)

今後の活動についてではなくお気楽アンケート開催。アニメ異世界スマホのEDでスマホ太郎がヒロインたちに手を差し出すシーン、差し替えるとしたら誰がいい?

  • スマホ太郎(アニメ主人公)
  • 望月冬夜(原作主人公)
  • 野獣先輩
  • 三浦
  • 木村
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