異世界空手部・やわらかスマホの裏技   作:コッコリリン

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今回は木村サイドです。それでは、ご覧ください。


34.迫真空手部、ピンチに陥る

 時は遡り、ラングレーの町。

 

「ふぅ」

 

 船から下りてからしばらく周囲を警戒していたが、隊長から休憩するようにと言い渡されて馬車の停留所に設置されたベンチの上で一息つく。視線の先では国王がミスミド兵の隊長と何かを話している様子が見えた。

 

 両国の同盟を結ぶため、ベルファスト国王陛下をミスミドの王都まで護衛するという大変に名誉ある任務。ここにいる者たちはミスミドを代表する手練れたちで、自分もまたその中の一人であるということに、改めて誇りに思う。おまけに周囲の危機に一早く気付けるその能力を買われ、選ばれた時は文字通り飛び跳ねたものだ。その分、この任務の責任は重大であり、決して油断することはできない。出発前はひどく緊張したものだ。

 

 だと言うのに、ベルファスト国王直々に指名された迫真空手部という者たちはそんな緊張をおくびにも出さず、まるで旅行感覚な雰囲気で護衛に就いていた。それを見て最初こそ呆れはしていたが、そんな彼らのある意味豪胆さに一種の憧憬も感じていた。

 

 夜盗騒ぎの時はその実力を見ることは叶わなかったものの、国王が認めている人たちなのだから、きっととんでもない実力の持ち主なのだろう。いずれは自分も、国王陛下が認めるような存在になりたい……彼らを見て、そう決意した。

 

 ともかく今は、ベルファスト国王を無事に王都まで送り届ける。この任務を絶対に成功させてみせると、気合を入れ直した。

 

「……ん?」

 

 と、そんな矢先、視界に妙な物が映った。物陰から覗くようにじっとこちらを、国王を見つめている者がいる。体格からして男だろうが、黒いフードを目深に被っており、顔は見えない。だがいかにも怪しいと言わんばかりの姿に、強い警戒心を抱いた。

 

 王を狙う暗殺者かもしれない。腰の剣の柄を握りながら立ち上がり、男へと近寄ろうとした。

 

「あっ……!」

 

 が、こちらの動きに気付いたのか、男は物陰へと姿を消す。慌てて後を追い、男がいた場所を覗き込む。路地裏になっており、その先は建物と建物の間によって日の光が遮られ、薄暗い空間が広がっている。

 

 男はここに逃げ込んだに違いない。この先は一本道。不意打ちを喰らうことはないだろうが、警戒を強めて路地裏へ踏み込んでいく。

 

 一歩一歩、慎重に歩を進めて行く。気配はない。まだ奥だろうか? 訝しみながらもただただ前へ。

 

 暗闇の中、全神経を耳に集中させる。近い筈なのに、路地裏の外の雑踏が遠くに聞こえるよう。どこから来ても絶対に迎え撃てるように、剣の柄からは手を離さない。

 

 数分後……進めていた足が、唐突に止まった。

 

「行き……止まり?」

 

 路地裏の奥は、行き止まり。男の姿形がどこにもない。

 

 そんなバカな。確かにここに……信じられない面持ちで、目の前の壁を見つめていた。

 

 

 

 その油断が命取りだった。

 

 

 

「っ!? が、ぁ……!!」

 

 突如、背後から物音がしたかと思った時には、すでに首に腕を巻かれる形で拘束されていた。突然のことで混乱し、首が絞められていくせいで酸素が思うように供給できない。

 

 そんな中、何故という疑問が湧いて出る。確かに一本道で、どこにも姿はいなかった。どんな物音だって聞き逃さない自信があった。

 

 なのに不意をつかれている。一体どういうことだと困惑している間にも、徐々に首を絞めていく力が強まっていく。

 

「て……が……ぐ……!」

 

 王を守る兵士に危害を加えている時点で、狙いは国王だと判断し、路地裏の外にいる仲間を呼ぼうと足掻く。が、首を絞める腕は屈強な男の物で、まるで鎖を巻かれているかのようにビクともしない。拘束を解こうと腕を掴んで引っ張るも、意味を成さない。声にならない叫びが口から漏れ出るだけで、言葉にすらなっていない。

 

「ちょっと眠ってろお前」

 

 耳元で男の声がした。そして、

 

「落ちろ!」

 

「――――――っ」

 

 グッと、絞める力が強くなる。それにより、酸素が足りなくなったせいで意識が落ちていく。視界が闇に、沈んでいく。

 

 最後に鋭い聴覚がかろうじて拾えたのは、

 

「……落ちたな(確信)」

 

 男の確信めいた、そんな言葉だった。

 

 

 

―――――

―――

――

 

 

 

「う~ん……」

 

 木村は馬車の座席に座りつつ、腕を組んで唸っていた。時にはチラチラと窓の外を見ては小さくため息をつく。対面に座るオリガも、不安な面持ちのまま怯えるアルマを抱きつつ窓の外を景色を眺めていた。

 

「……木村さん、心配ですか?」

 

 そんな彼を見かね、木村の横に座るユミナが覗き込みながら声をかけた。

 

「え……いや、そんなこと」

 

 ユミナを不安にさせるわけにはいかないと、木村は否定しようとした。が、ユミナはクスリと笑う。

 

「無理もないですよね。相手は竜ですから……木村さんが野獣さんたちの身を案じるのは当たり前です」

 

「…………」

 

 木村は、野獣たちが負けるとは思っていない……しかし相手は凶悪な竜。未知の相手を前にして、皆無事で済むだろうか。ユミナはそんな不安を抱く木村を労わる。

 

「私たちは、お父様の護衛のためにここを動けません……ですから、せめて無事を祈りましょう。それがきっと皆さんの助けになりますから。ね?」

 

 そうしてユミナは笑う。その笑みは慈愛に満ちた、心を落ち着かせるような温かさを感じさせるものだった。

 

 おかげで落ち着いた木村は、ユミナに頭を下げた。

 

「……そう、ですね……すいません、ユミナさん」

 

「フフ、謝る必要はありませんわ」

 

 一回りも年下なのに、なんだか年上に見えてしまう。王族という立場が彼女をそう足らしめているのだろうか、木村はそう予想した。

 

 木村は自分が情けなく思う。ユミナとて皆を心配しているだろうに、そんなことをおくびにも出さない。対して自分は成人しているにも関わらずこの様だ。

 

(……無事を祈る、か……)

 

 そして、木村は野獣たちが村へ向かう直前のことを思い出していた。

 

 三浦がここにいて欲しいと言われた時、木村は不満を抱いた。無論、王の身の安全が何よりも大事だということは理解している。王を蔑ろにしようなどとは考えていない。

 

 木村が抱いた不満の理由。それは自分では力不足であるということを突きつけられたと、一瞬でも思ったが故だ。

 

 木村の魔法は確かに強力ではある。だが冬夜と比べれば見劣りするし、何より魔力に底がある。無蓄蔵の魔力を持つ冬夜とは違う。

 

 肉弾戦も野獣と三浦の方が強いし、剣の腕も八重に劣る。ユミナのように弓の実力があるわけでもない。空手部のメンバーの中でも、自分は一番下だと理解していた。

 

 つまり、自分には何の取り得が無いのだと、嫌でも実感してしまうのだ。

 

 だとしても、自分は空手部の一人なのだから、共に戦いたい……そう三浦に言おうとした。

 

 言おうとした……が、結局止めた。

 

 あそこには木村の上位互換とも呼べる冬夜がいる。自分が出る幕はない。ならばここで国王を護衛している方がまだ役に立つ筈だ。

 

(……ハハ。何を言い訳してるんだ、僕は)

 

 それも、結局は言い訳に過ぎなかった。

 

 竜という恐ろしい相手に恐怖している自分がいる。だがそれ以上に、自分が弱いと改めて突きつけられたくないという、自己保身が無意識に働いていた。

 

 それがどうしようもなく……情けない。

 

(……こんなんじゃ、救える命も救えやしないや……)

 

 右の掌を見つめる。公爵家の家令のレイムを始め、多くの人々をこの手で救ってきた。しかし、今の力ではいずれ限界が訪れるだろう。

 

 もっと強くならなければ……木村の心を、焦燥が蝕む。なのにどう強くなればいいのか、それがわからなかった。

 

「……はぁ」

 

 心の内のモヤモヤを吐き出そうと、ため息をついた。それでどうにかなるわけではないが、少しでも気を晴らしたかった。

 

「……あら?」

 

 と、そんな時にオリガが狐耳をピクリと反応した。次いで訝し気に窓の外を見やる。

 

「オリガさん? どうかされました?」

 

 オリガの様子が変わったことに木村が疑問を抱き、問うてみる。その間も、オリガの耳がピクピクと動く。

 

「……何かしら? 妙な音が……」

 

 オリガが拾った音が何なのか考えていた時、

 

 

 

「て、敵襲!! 魔物だぁ!!」

 

 

 

 外にいる兵士の声が馬車の中にまで響いて来た。オリガの腕の中にいたアルマが怯えた声を上げる。

 

「っ! ユミナさんはオリガさんたちと一緒にいててください!」

 

 その声を聞いた瞬間、木村は馬車の扉を開けて飛び出した。

 

「木村さん!?」

 

 背後のユミナの声に応える間もなく、木村は馬車の扉を閉めた。そして眼前に広がる光景に絶句する。

 

 一体、二体……いや、数十体もの数の魔物の群れ。鎧を纏った、二足歩行の爬虫類。兵士たちを襲っているその姿は、木村も見覚えがあった。

 

「こいつら……リザードマン!? いや、でも……!」

 

 以前、スゥシィを襲った賊が召喚し、使役していた魔物。武器を持つ程度の知性を兼ね備えた爬虫類の戦士、リザードマン。だがその身体を覆う鱗は、木村の知る毒々しい緑色ではなく、鮮血のように真っ赤に染まっていた。

 

「ブラッディリザードマンだと!? そんなバカな、こいつらはこの辺りには生息していないぞ!?」

 

 ミスミド兵の一人が、一体のリザードマンからの斬撃を防ぎながら困惑の声を上げる。まさに見た目通りの名を持つリザードマンだが、彼の言葉が事実なら、連中がここにいる理由は一つ。

 

「スゥちゃんの時と同じか……!!」

 

 何者かが使役している……そう捉えてもおかしくない。

 

 ともあれ、木村は襲撃者であるリザードマンを迎え撃つため、魔法書を広げた。

 

「炎よ来たれ、赤の飛礫、イグニスファイア!!」

 

 掲げた手の先に展開される赤い魔法陣。その中心から、大きな炎弾が飛び出し、一か所に集まっているリザードマンたちの中心に着弾。リザードマンたちは爆炎に巻かれ、断末魔の悲鳴を上げて黒焦げとなって倒れ伏した。

 

「木村殿!」

 

「っ、リオンさん!」

 

 次の魔法を放とうとした矢先、リザードマンを切り伏せながら走り寄ってきたのは、ベルファスト兵隊長のリオンだった。流石と言うべきか、カナンの町で見せた恋する青年の姿とは打って変わり、その太刀筋は熟練の兵士のそれだった。

 

「国王陛下は!? オリガ殿たちも無事ですか!?」

 

「はい、陛下は馬車の中です。オリガさんたちも」

 

 木村は背後に並ぶ二つの馬車を見やる。一つには安全のために国王が、もう一つにはユミナたちが隠れている。

 

「そうですか……ならば、ここを通すわけにはいきませんね!」

 

「はい。岩よ来たれ、隆起せしは岩の鋭槍、アーススピアー!!」

 

 安堵しつつ、リオンは再び剣を振るう。槍を手にしたリザードマンが槍ごと両断され、その横で木村が土魔法を唱えて地面から生やした鋭い岩槍で一体のリザードマンを串刺しにして葬った。

 

「みんな、後退するな! 絶対に連中を追い払うぞ!!」

 

「「おぉぉぉぉっ!!」」

 

 リオンが剣を掲げて叫ぶ。兵士たちは一丸となり、鬨の声を上げながらリザードマンの群れに果敢に挑んでいった。兵士たちとリザードマンたちが入り乱れ、混戦状態となる。

 

「けど、どうして奴らの接近が……地面から現れたんですか!?」

 

「いいえ、連中は森の中から現れました。普段ならばミスミド側の兵士たちが気付く筈なのですが……」

 

 木村が魔法で迎え撃つ傍ら質問を投げかけ、リオンはそれに答える。周囲を警戒していた筈なのに、何故なのか……リオンがそう考えていると、

 

「うわっ!?」

 

 不意に、横から剣が突き出される。リザードマンかと、回避したリオンが剣を構えて対峙した。

 

 が、その顔は驚愕で彩られることとなる。

 

「な……何故!?」

 

 相手は、少年だった。サラサラの赤毛に、頭の上に生やしたウサギの耳。

 

 リオンが驚いているのは、その点ではない。彼が一番驚愕していることは、ただ一つ。

 

 

 

「何故あなたが……レイン殿!!」

 

 

 

 リオンに切りかかってきた相手は、ミスミド兵の一人。夜盗襲撃の際、一早く危機に気付いたウサ耳の少年兵、レインだったからだ。

 

「そんな……何で!?」

 

 木村もまた愕然とし、声を上げる。レインは答えることなく、再び剣を手にリオンと木に襲い掛かった。

 

「くっ!」

 

 状況が理解できなくとも、防がなければやられる。そう判断したリオンはレインの剣を防いだ。

 

 細身の身体からは想像もできない程の力強い一撃。競り合う刃と刃が音をたて、リオンは歯を食い縛って耐えた。

 

「何と言う、力だ……!」

 

 押し返そうにも、力が強すぎて押し返せそうにない。徐々にリオンの顔に迫る死の刃。後数センチでリオンの顔を傷つけるだろう。だが木村がそれを許す筈もない。

 

「火よ来たれ、赤き玉、ファイアショット!!」

 

 牽制のつもりで火属性の基礎魔法を撃つ。効果は覿面で、命中する寸前で競り合いからレインが抜け出し、飛び退った。

 

「感謝します、木村殿」

 

「いえ……けど、レインさんが……理由はわかりませんが、接近に気付けなかったのも頷けますね」

 

 レインの危機察知能力はミスミド兵の中でも特に優秀だ。誰も気付けなかった夜盗の気配を瞬時に察知し、危機を知らせてくれたのを思い出した木村は、本来であればリザードマンたちが音もなく接近してきたのを察知する筈のレインが敵に回ってしまったことで、ここまでの接近を許してしまったのだ。

 

「しかし何故……レイン殿! あなたはミスミドを、国を裏切るおつもりか!?」

 

 リオンが激昂し、問う。ミスミドという国に忠誠を誓う兵士が、このようなことをしてはただでは済まない。それがわからない筈がないと、リオンは叫んだ。

 

 木村もまた、レインがそんな人物だとは思いたくない。しかし現に彼は裏切り、こうして剣を向けている。何故か言葉を発しないが、その眼は明らかな敵意を……。

 

「……ん?」

 

 敵意……が、ない。寧ろその眼に光は無く、虚ろだ。顔も能面のように無表情で、意思がまるで感じられない。まるで人形がそこに立っているようだ。

 

 そして鎧に隠れてしまっているが、一瞬レインの首元に光る物が見えた。

 

「……首輪?」

 

 一瞬見えた物は、金色の首輪だった。だが首輪などしていただろうかと、木村は以前のレインの姿を思い出す。木村の記憶の中にいるレインは、首輪などしていない。

 

 まさか……木村は己の疑念の確証を得るべく、リオンに声をかける。

 

「リオンさん。リオンさんは人を操る首輪ってご存知ですか?」

 

「人を操る、首輪?」

 

 木村の質問の意図が読めなかったが、リオンはそれに答える。

 

「……あるにはあります。相手を隷属化させ、己の意のままに操るアーティファクト。ベルファストでは禁制品ですが……」

 

 リオンの口から出た言葉に、木村は確信を得る。人形のように意思のない眼、そして以前は付けていなかった首輪。それらから導き出された結論は一つ。

 

 

 

「レインさんは裏切ったんじゃない! 何者かに操られてます!!」

 

 

 

 木村の声を皮切りに、再びレインが剣を突き出してくる。木村は横へ飛んで避け、リオンは剣を盾にして受け流した。

 

「操られている!? 本当ですか!?」

 

「はい、恐らく! 前は付けていなかった首輪と表情からして、間違いないと思います!」

 

 いつの間に付けられたのか……木村の脳裏に蘇る。ラングレーの町で出発する直前の具合の悪そうなレインの姿。恐らくあれは船酔いではなく、あの時点でレインは洗脳されていたのだろう。

 

 リオンも、レインの意思ではないことを知って内心安堵する。共に任務に当たった仲間の裏切り程、辛いものはない。

 

 だがレインの乱心の原因はわかったが、状況は改善されていない。容赦のない剣戟がリオンを、木村を襲う。

 

「しかしどうすれば……首輪を狙うにも、下手をすれば喉を切り裂いてしまいます!」

 

 首輪を破壊すれば、レインは戻るかもしれない。しかし、如何にリオンの実力が高くとも、首輪のみを狙って切るなど至難の業だ。レインを殺すわけにもいかず、リオンは歯噛みする。

 

 一方、木村はこの状況を覆す方法を持っている。あの首輪の力は、一種の状態異常だと睨んだ木村は、あの魔法を使えばどうにかすることができるかもしれないと勘付いた。

 

 ただ一つ、問題があるとすれば、この魔法は魔力消費が大きい。この状況の中、使用した直後に倒れ込んでしまうわけにはいかない……だが、他に手はなかった。

 

「……僕がやります。リオンさんはレインさんを引き付けておいてください!」

 

 自分の魔力を信じるしかない。木村は祈るような思いで、リオンに頼んだ。

 

「っ! わかりました!」

 

 ガィンッ! 甲高い音をたてながら剣と剣がぶつかり合う。続けて繰り出される横からの一撃も防ぎ、リオンは後ろへ飛び退った。それを追い、レインが走る。

 

「隙を見計らって……チャンスは一回……!」

 

 本を手に、木村はレインを目で追う。失敗するわけにはいかない。木村は来るチャンスを絶対物にすると決意しつつ、己の身の内の魔力を練り上げていった。

 

「くっ!」

 

 レインの重い一撃がリオンの剣を持つ手を痺れさせる。それが仇となり、続けて振るわれたレインの剣により、リオンの剣が弾き飛ばされた。

 

「しまっ……!」

 

 顔を顰めるリオン。そこを、情け容赦のない一撃で屠らんとレインが剣を大きく振りかぶり……、

 

「っと! 何てな!」

 

 表情を変え、ニヤリと笑うリオンは、レインの上段から振るわれた剣を横へ移動して回避。背後へ周ったかと思うと、レインを羽交い絞めにした。

 

「今です、木村殿!!」

 

 拘束されたレインは、無表情のまま身を捩って暴れる。体格的にはリオンの方が優れているが、尋常ならざる力により、振り解かれそうになる。足を踏ん張り、リオンは必死に耐えた。

 

「よし……喰らえ!」

 

 リオンが生んでくれたチャンスを逃してなるかと、木村はレインに駆け寄った。直後、リオンの拘束から抜け出したレイン。だがそこから行動するよりも前に右手をレインの首元に、正確に言うならば首輪に翳し、叫ぶ。

 

「リカバリー!!」

 

 展開される白い魔法陣。首輪が白く輝いたかと思うと、ピキリと音をたてて罅が入り始める。そして、

 

 パキィン―――そんな音をたてながら、首輪が木っ端みじんに砕け散った。

 

「っ――――…………」

 

「っと」

 

 その瞬間、一瞬ビクンと身体が引きつったかと思うと、レインの身体は糸の切れた人形のように、木村の腕の中で力なく倒れ込んできた。慌てて頭から地に落ちないように、ゆっくりと地面に下ろした。

 

「……気絶しています」

 

 地面の上で横になったレインの容態をリオンが軽く確認したところ、大きな外傷は見当たらなかった。瞳を閉じ、意識を失っているのみに留まっている。

 

「よ、よかった……」

 

「お見事です、木村殿」

 

 リオンの賞賛を受けながら、木村は倦怠感を覚えつつホッと安堵のため息をついた。リカバリーの消費魔力の多さは尋常ではないが、木村は意識を失うことなく立っている。感覚ではあるが、まだ魔力は半分程度残っているのを感じた。

 

 やはり、成長している。以前ならば野獣の補助無しだと倒れ込んでいたのが、今ではこうして疲労は感じれど意識を失うことはない事実に、内心歓喜していた。

 

 自分はまだやれる……己の中の可能性に、木村は希望を見い出し、

 

 

 

「全員動くな」

 

 

 

 背後から聞こえてきた野太い声に思考を中断、振り向くと、その希望が凍り付いた。

 

 木村の視界に映ったのは、一人の目つきの悪い男がクロスボウを手に、左右にブラッディリザードマンを従えている姿。

 

 そしてそのブラッディリザードマンの腕の中で、王とオリガ、アルマ……そしてユミナが拘束されている姿だった。

 




毎日投稿したいところですが、仕事忙しすぎて俺の投稿頻度落ちちまうよ……!

次の話は野獣サイドです。こういうローテーション方式での展開がしばし続きますがご了承いただけたら幸い。次回も見とけよ見とけよ~!

今後の活動についてではなくお気楽アンケート開催。アニメ異世界スマホのEDでスマホ太郎がヒロインたちに手を差し出すシーン、差し替えるとしたら誰がいい?

  • スマホ太郎(アニメ主人公)
  • 望月冬夜(原作主人公)
  • 野獣先輩
  • 三浦
  • 木村
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