異世界空手部・やわらかスマホの裏技   作:コッコリリン

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結構無茶がすぎる気がします。


4.迫真空手部、演武をしてから今後の方針を決める

「う、美味い! なんと美味な菓子でござるか!?」

 

「おいしいだルルォ?」

 

「ポチャァ!(美味)」

 

 町の中央にある噴水が設置された広場に移動した八重を含めた空手部三人は、噴水を囲うように置かれたベンチの一つに腰掛け、一先ずの休息をとっていた。そこで八重は目に入った看板の文字をいくつか教えたりしながら三浦からもらった不思議な形状のスナック菓子を口にし、食べたことのない味に目を輝かせていた。それを見ていた三浦もまた嬉しそうに笑い、彼の頭の上に乗るポッチャマもスナックを口にして一声鳴いた。

 

「けど、本当によかったんですか八重さん? せっかく受け取った食べ物を僕らの分まで分けてしまって」

 

 そう言う木村の手には、少量のスナックがあった。元々八重に譲ったスナックだったが、何を思ったか八重はスナックを四人分に分けて空手部三人に配った。

 

「構わないでござる。美味なる物は皆で分け合ってこそでござろう?」

 

「粋スギィ! お前いい奴だなぁ!」

 

(多分、野獣先輩が催促するような目で八重さん見てたせいじゃないかな……)

 

 元より皆に配る予定だっただろうが、なんだかんだ言って野獣が物欲しそうな顔をしていれば気まずくもなる。まぁその辺りを指摘するのもどうかと考え、木村も受け取ったスナックを1つ口に放り込んだ。

 

「あ、ところで三浦殿。これは何でござろうか? 箱しかり、これもまた見事な絵でござるが……」

 

 八重はスナックの半分をポッチャマにあげている三浦に、箱の中に入っていた一枚の小さな紙を見せる。そこに描かれていたのは、三浦の相棒ポッチャマの姿。

 

「お~、八重ちゃんすごいゾ! ポッチャマのシールを当てるなんて、八重ちゃんは運がいいゾ~!」

 

「シー、ル?」

 

 おまけのシールのことを知らずにきょとんとする八重に、三浦は嬉々として説明する。

 

「それはスナックのおまけに入っているシールだゾ。それを集めるために通販で買ってたんだ~」

 

「そ、そうでござるか……しかしこの絵、三浦殿の相棒殿と瓜二つでござるが……」

 

 通販というのはわからないがそれは置いておいて。絵と同じ姿であるポッチャマを見て、八重は少しうずうずする。確かに絵に収めたくなるくらいポッチャマは愛らしい姿をしている。いまだ三浦の頭の上で菓子を啄むように食べているポッチャマに、八重は庇護欲を抱いていた。

 

「よかったらそのシール、八重ちゃんにあげるゾ」

 

 と、三浦からそう提案されて意識を三浦へ戻す。

 

「え!? そ、それはさすがに……三浦殿が集めている物でござろう? そんな貴重な物を拙者なんかに……」

 

「全然構わないゾ! その絵のシールはもう持ってるし、それにそのスナックは八重ちゃんにあげた物なんだから、実質八重ちゃんの物だゾ」

 

「いいからもらっとけって。三浦先輩がポッチャマのシール譲るなんて滅多に無いんだぜ?」

 

「そうですよ。僕らがポッチャマのシール当てたら土下座してまで欲しがるんですからこの人」

 

「わ、わかったでござる……重ね重ねかたじけない」

 

 返そうと思っていたが、三人にそこまで言われれば受け取らないわけにはいかない。しかしそれ以上に、内心可愛らしいポッチャマのシールを手にして喜んでいる自分に気付き、素直にもらっておくことにした。

 

「さて、じゃ腹ごしらえ……になったかはわからないけど、これからどうしましょう?」

 

 木村が今後どう動くか問う。昼の時間も大分過ぎていき、このままでは確実に再び野宿になるだろうが、如何せん金がない現状、どうすることもできない。

 

「やっぱり路銀稼がねぇとダメだよなぁ……どうしよっかなぁ」

 

 昨日の疲れがほとんど取れてないばかりか、食事にすらまともにありつけていない。野獣も今のこの状況はよしとしていないが、やはり打つ手はなかった。

 

「何か売れる物があればいいんだけど、そんな物持ってないゾ……」

 

「ポッチャァ……」

 

 三浦が顔を手で覆い、絶望を顕わにする。ポッチャマも三浦の真似をしているのか、短い羽で顔を覆った。

 

「も、申し訳ないでござる。拙者も何か手はないかと思ってはいるものの、何分拙者も無一文ゆえ……」

 

「八重ちゃんは気にすることないゾ。これは俺らの問題でもあるんだから」

 

 色々世話になった彼らに報いたいと思ってはいるものの、八重も似たような境遇ゆえにどうすることもできず歯痒い思いをする。どうしたものかと、刻一刻と時間が進んでいく中、一行は悩んだ。

 

「……何か売るか、或いは一発芸か何かで稼げねぇかなぁ……」

 

 ポツリと呟く野獣。しかし売れる物は無いし、一発芸ができるようなネタがない。そもそも派手なことでもしなければ注目は集まらないだろう。それこそ夕方頃の八重とチンピラどもが巻き起こした乱闘騒ぎくらいの……。

 

 そこまで考えた時、野獣に電流走る。

 

 鋭い眼光放つ視線が、八重と、そして三浦へ向けられる。

 

「三浦先輩、八重、ちょっといいか?」

 

「お、どうした野獣?」

 

「野獣殿?」

 

 声をかけた二人に、野獣今しがた思いついた案を説明する。粗方説明し終えた時、話を聞いていた木村が困惑の声を上げた。

 

「だ、大丈夫なんですかねそれ? うまくいくかなぁ……」

 

「大丈夫だって安心しろよ~。それに他に案があれば聞くけど、あるか?」

 

「いや、無いですけど……」

 

 確かに他に案はないが、それでも不安の色を隠せない木村。対し、三浦と八重はというと。

 

「面白そうだなぁ、頑張ってみるゾ~!」

 

「う、うまくできるかはわかりませぬが……他でもない恩人であるお三方のため。九重八重、尽力でやらせていただくでござる!」

 

 野獣の突発的とも言える案に乗る形で、二人がやる気を見せる。

 

「よ~し、見とけよ見とけよ~! 木村もその魔法の本にそんな感じの魔法が無いか探してくれよな〜!」

 

「ポッチャア!」

 

 そして、野獣はスマホを手に自信ありげにニヤリと笑い、ポッチャマも野獣の真似をするようにニヤリと笑(ったつもり)う。

 

 

 

 

 

~364分後~

 

 

 

 

 

 日が暮れようとしている。もうじき太陽は完全に沈み、そして月が顔を出すだろう。それでもまだ夕暮れの光が町を照らし、人々もまた昼と変わらない密度で行き交っている。

 

 そんな中で町の中央広場では人が足を止め、集まっている。時折息を呑むような声と、そして歓声が上がる。それを聞いて何事かと思った人々も吸い込まれるように近づき、そしてその原因を目の当りにして観衆の一部となる。彼らが一同に見ている物、それは、

 

「ふっ! はぁっ!!」

 

「せいやぁっ!!」

 

 一組の男女が、噴水を前に気合の声を上げながら互いに向けて拳や足を突き出している光景だった。ただそれだけならばここまで人は集まらない。しかし二人が繰り出す拳や蹴りは風を切り、それをギリギリで避ける姿は、まさに武闘にして舞踏。男が飛び上がっての蹴りを放てば少女がそれを受け流し、少女が男に拳を突き出せばそれを男は顔を少しズラすだけで回避する。一拍置き、呼吸を整えた二人。そしてすぐさま激しく踊り狂うかのように互いを攻撃し、防ぐ。それらの舞を彩るのは、この場に大音量で流れる音楽。弦楽器や銅鑼を奏でているかのような、それでいて不思議と身体の奥から熱くなるような不思議な音楽。そして音楽に乗せて流れるように響き渡る突きや蹴りを付け止めた際の鋭い音、二人の気合と観衆の声。

 

 凛々しい坊主頭の男は三浦、黒髪を靡かせている東方の独特な服に身を包んだ少女は八重。昼間の乱闘騒ぎで顔を知っている人々からすれば、何故互いに共闘した二人が? と一瞬思うだろう。だが次の瞬間には、素人目から見てもわかるほどに激しい攻防を前にして目が離せなくなり、考えることをやめて意識を集中させることになる。

 

「「はぁぁぁぁぁっ!!」」

 

 やがて二人が織りなす舞も佳境に入る。互いに腹の底からの声を出し、鋭い拳が突き出され……クロスカウンターの如く、腕が交差し、互いの拳は二人の頬ギリギリを掠る形で止まる。まるで拳の圧が噴水に届いたかのように、噴水から水が爆発するように勢いよく吹き上がり、水柱を作る。それと同時、見計らったように音楽もちょうど終了した。

 

 静寂。吹き上がった噴水の水が降りしきる中、二人の動きが時間が停止したように止まり、そして息をするのを忘れたかのように観衆も誰一人として声を上げない。

 

 一秒、十秒、もしくは一分。やがて動き出したのは、三浦と八重。ゆっくりと拳を戻していき、そして向かい合って直立不動に立ったかと思うと、スッと、音も無く同時に頭を下げた。

 

 それを合図に、観衆からワッと歓声が上がる。本気の喧嘩ではないことを知った観衆は、見事なまでの二人の攻防を見て、惜しみない拍手を送る。

 

「どうもどうも~! 二人の見事なまでの演武を見てどうでしたか~!? 見ててよかったと思った方々、よければその気持ちの分だけお心づけの方、オッスお願いしまーす!」

 

「ポッチャ! ポッチャ!(オナシャス)」

 

 三浦と八重、そして観衆の間に入るように現れた野獣が、噴水から飛び出してきて野獣の頭の上に着地して両羽をパタパタさせるポッチャマを乗せたまま称賛の嵐を送る観衆に向けて声を張り上げる。そしてさらに観衆の近くを木村が「お願いしまーす」と言いつつ、適当に拾って来た木製バケツを手に万雷の拍手喝采の中を歩き回っていく。

 

 そのバケツの中に、「すごかったぜ!」や「いやぁ見事なもんだった!」や「ウホッいい男!」や「やらないか?」と言いながら次々と銅貨や銀貨を投げ入れて行く人々。数十分後、日が落ちて暗くなっていく中、興奮冷めやらぬ観衆が各々帰路につく頃には、木村の手に持っているバケツは片手では持ちきれない程の重さになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

「「「カンパーイ!!」」」

 

「チャ!」

 

「か、乾杯でござる!」

 

 ハイテンションな三人が掲げた木のジョッキに合わせ、同じノリのポッチャマが手に焼いた魚を、八重も何とかテンションに付いて行こうと顔を赤らめながらジョッキを同様に掲げ、そしてぶつけ合った。

 

「んっんっんっんっ……ンアッーーーーー!! FOO! 気持ちい~!(爽快)」

 

「久しぶりに飲むお酒は最高ですね!」

 

「今日はもう、スゲ~疲れたゾ~!」

 

「ポッチャー!」

 

 ジョッキに注がれたエールを一気に飲み干し、解放感に包まれながら一行は上機嫌になった。

 

 ここは町にある食事処。あの後、観衆からの心づけを手に入れた一行は、まっすぐこの店に入り、すぐさま注文。頼めるだけ頼み、そしてテーブル一杯の料理を前に祝杯を挙げるに至った。

 

「しっかし、三浦先輩と八重のおかげで本当に助かったぜぇ! 二人のおかげでこうしてやっと飯にありつけるんだからさ!」

 

「本当ですね。お二人の演武、すごかったですもんね」

 

「何言ってるんだゾ。発案は野獣なんだから野獣のおかげでもあるゾ~! それに木村だって不慣れな魔法を使ってまで協力してくれたから感謝しかないゾ!」

 

「い、いや、そんなこと……」

 

「お、じゃあ今日は木村が全額奢ってくれるってことで」

 

「おぅ、舐めてんじゃねーぞ」

 

「すいません、許してください!」

 

「木村怒らせるとホント怖いゾ……」

 

「あ、あはは……」

 

 酒のせいで目が据わっている木村にすごまれた野獣は即座に謝罪。それを見て恐怖する三浦に、苦笑する八重。

 

「けど、見切り発車とはいえど本当成功してよかったですよ。最初は野獣先輩の発案でいけるかすごく不安だったんですけど」

 

「そうだなぁ。俺と八重ちゃんが演武をして、裏方で野獣が音楽を流して、その音楽を木村が大音量にして……本当に成功してよかったゾ~。八重ちゃんも本当にお疲れさまだったゾ。八重ちゃんが俺に合わせてくれたおかげで演武もやり遂げることができたんだゾ」

 

「いえ、拙者も三浦殿に付いて行くので精一杯でござった……分かっていたとは言えど、やはり三浦殿は只者ではないでござるな。野獣殿のその不思議な魔法具や木村殿の魔法の力も素晴らしかったでござる」

 

「ポッチャ! ポッチャ!(アピール)」

 

「おぉ、ポッチャマも最後のみずでっぽうすごかったゾ~!」

 

 野獣が提案した打開策。それは、三浦と八重による演武パフォーマンスだ。昼間の八重の実力からして、武術には明るい筈だと確信していた野獣は、同じように迫真空手の実力者である三浦と組み合いをしてもらい、その迫力と派手さを見せつけて観衆を集め、お金を稼ぐという方法だった。

 

 無論、今日会ったばかりの三浦と八重にとってそれは無茶振りもいいところだったが、昼間の二人の立ち回りを見ていた人々にはウケるはずだという野獣の判断だった。

 

 それから日暮れまでの短時間、みっちり息を合わせるように練習を繰り返した。元より柔術で体捌きは心得ていた八重と迫真空手有段者の三浦は相性がよかったらしく、即席ではあったものの結果は見事大成功。互いをフォローし合って形にした演武は、観衆におおいに受けたのであった。

 

 そしてその場を盛り上げたのは、野獣のスマホに入っている音楽再生アプリにあった有名なカンフー映画のBGMだ。演武だけでは不安だと考えた野獣は、自分のスマホの中にあった音楽を再生し、二人の演武をより迫力のある物へと昇華させることを考えた。だがこれだけでは音量は小さく、役に立てない。そこで野獣は、木村の魔法に頼ることにし、木村は最初から使える魔法の中にある唯一の無属性魔法『スピーカー』を選び、文字通りスピーカーとなる魔法を使って音楽を大音量にして再生させることに成功。そしてシメは、ポッチャマの噴水の中から放たれた力強いみずでっぽうによる水柱でフィナーレ。

 

 全てをするには本来ならば時間をかけて入念に準備を行うべきパフォーマンスだったが、それを可能にしたのは迫真空手部三人と一匹の息のあったチームワーク、そして八重の鍛えられた直感や身体能力、何より路銀を稼がないと最悪飢えて死ぬという生存本能に突き動かされた結果だった。

 

 余談だが、野獣のスマホは八重には特殊な魔法具であると説明してある。異世界の技術で作られた道具だ、という説明などできるわけがないからだった。

 

「けど今日は成功しましたが、いっつもこれをするとなるとさすがに大変ですよ?」

 

「あ、そっかぁ。これで食べて行くのはさすがに無理があるなぁ」

 

 しかし、これはある意味その場凌ぎでしかない。やろうと思えばできるが、しかし毎回やっていればそのうち人々は飽きがくる。そうなれば再び極貧生活だ。

 

「あ、そうだ。八重ちゃんはこれからどうするんだゾ?」

 

 さてどうしたものか、と野獣たちが考えていた時、唐突に三浦が気になったことを聞いた。

 

 当の八重はというと、

 

「もぐもぐ……拙者は明日、王都へ向かうでござる。ずず~っ……というのも、父上が……むしゃむしゃ……世話になったという方がいるので、そこを訪ねてみようと思ってるでござるよ……はぐはぐ……」

 

 目の前の皿にある料理をおいしそうに食べながら、三浦の質問にそう答えた。

 

「王都? お父さんがお世話になった人がそこにいるんですか?」

 

「いかにも……ハフハフ……というのも我が家は代々武家の家柄でござる……ごくごく……実家は兄上が継ぎ、拙者は腕を磨くために旅に出たでござるよ……もごもご」

 

「ということは、八重ちゃんは武者修行のために旅をしているってことかゾ? その若さですごいゾ」

 

「いえいえ……もしゃもしゃ……拙者などまだまだ未熟。そのためにも……ズルズル……王都にいる方に修行をつけてもらおうと……んく……思ってるでござる」

 

「ってか食いスギィ! 食うか説明するかどっちかにしろよ!?」

 

 説明の合間、串焼きやら牛ステーキやらサンドイッチやらうどんやら、様々な料理を口いっぱいに頬張る彼女に野獣が思わずツッコんだ。

 

「こ、これは失敬。拙者、久々の食事に我を忘れていたでござる」

 

 野獣に言われ、料理を飲み込んでから一度手を止めて謝罪する八重。

 

「別に大丈夫だゾ~。腹減ってる時は思わずがっついちゃうもんな~。綺麗な人がいっぱい食べるのを見るのはやっぱり気持ちいいゾ~」

 

「き、きれ……拙者がで、ござるか?」

 

「ん? 八重ちゃん以外にいないゾ?」

 

 面と向かって屈託なくハッキリそう言われたことのない八重は、きょとんとする三浦から視線を外し、何となく照れ臭くなって赤くなった頬を掻く。やはり、乱闘騒ぎの時しかり、演武の時しかり、凛々しい顔つきの三浦と普段の天真爛漫な三浦とではギャップがありすぎてどうも調子が狂う。

 

「んで、とりあえず話を戻すとして、八重は明日王都に向かうってことなんだよな?」

 

「え、ええ。お三方のおかげで路銀も手に入ったので」

 

 今の八重の懐には、四人で分配したお金が入っている。気持ち八重の方が多めの金額であることに気付いた時、さすがにこれは遠慮願おうと思ったが、三人から八重がいなければできなかったと言われて無理矢理押し付けられる形で受け取ることになった。自分でも押しに弱いなぁと思いながらも、彼らの心遣いには感謝していた。

 

「んじゃあさ、俺たちも一緒に王都に付いてっていい?」

 

 と、ここで野獣の突然の頼みを聞き、思わず目が点になった。

 

「え、拙者と一緒に王都へ、でござるか?」

 

「それいいですね。実は僕たちも放浪の旅をしているんですよ。ここには周りに知り合いがいないし、八重さんのような腕の立つ人がいれば心強いですね」

 

「お、そうだな。俺はもっと八重ちゃんと一緒に色々お話したいゾ~。な? ポッチャマ」

 

「ポッチャ!」

 

 正直、この町も悪くはないが、せっかく出会って親しくなった異世界の人間である八重とここで別れるということは、それすなわちまたも路頭に迷うことになってしまう。仲良くなった八重と別れるのはあまりにも寂しいという思いも勿論あるが、再び一文無しというのはどうしても避けたいと思う野獣と木村(三浦は純粋にまだ八重といたいと思っているためノーカン)。

 

 それに、王都という場所も気になる。一体どんな場所なのか、三人の好奇心はムクムクと膨れて止まらない。元より行く宛のない旅だ。それなら目的地を決めた方が歩く意欲は湧くというもの。

 

「まことでござるか? 拙者としては願ってもない話でござるが……拙者などと一緒に、よろしいので?」

 

「当たり前だよなぁ?」

 

「ポッチャ」

 

「そうですねぇ。木村の言う通り、八重のような腕の立つ奴と一緒に行けば俺たちも心強いしな」

 

「寧ろ僕たちが足を引っ張ったりしてしまうかもしれませんけど、いいですか?」

 

「い、いえそんな! 拙者もまだお三方にご恩を返し切れておりませぬゆえ、是非ともお願いする所存でござる!」

 

 慌て、八重からも三人の同行を願い出る。彼らがいなければ今頃自分もまた路頭に迷っていたのは確実だった上、まだスナックのお礼も返し切れていないのだ。何としても恩を返さないといけないと思っていたところ、彼らの頼みは義理堅い八重にとって願ってもないことだった。

 

「いいねぇ! じゃあ王都までよろしくってことで、改めてお祝いしようぜぇ!」

 

「いいゾ~それ! おいじゃもっと注文せぃ!」

 

「オッスお願いしまーす!」

 

「ポッチャー!!」

 

「二人共飲みすぎですよ!」

 

 こうして、空手部三人と八重は王都へ行くまでのパーティとして組むことになり、テンションの上がった野獣と三浦がさらに酒と料理を追加し、これまでの飢えと渇きを癒そうとばかりに食べに食べ、飲みに飲み、再びどんちゃん騒ぎが巻き起こる。それを自重するよう注意する木村の声と、野獣と三浦とポッチャマの騒がしい声、そして八重の控えめな笑い声が店に響き渡った。

 

 

 

〜364364秒後〜

 

 

 

「それでは、お三方。拙者はお先に宿へ向かうでござる」

 

「ポッチャァ……(幸福)」

 

「ああ、八重ちゃんポッチャマをよろしく頼むゾ~」

 

「ホラホラホラ、もっと口開けて口開けてホラ(健康志向)」

 

「やめてくれよ……」

 

「ア、アハハ……あまり羽目を外しすぎませぬよう」

 

 夜も大分更けてきて、満腹になった八重は三浦に自分の食べた分の料金を渡すと、一足先に宿に行くことにした。腕に抱きかかえられたお腹がパンパンになったポッチャマが、満腹のおかげでどこか幸せそうに目を細めている。

 

 空手部の三人はというと、遅くならないうちに八重に満腹になったポッチャマを連れて先に宿へ戻るよう促して、自分たちはもう少し飲むために店に残った。八重は振り返りながら見送る三浦と、酔ってどこからか持ってきた生のニンジンを無理矢理木村に食わそうとしている野獣と抵抗する木村の姿を見て、苦笑しつつ店を後にした。

 

「ふぅ……」

 

 夜風が気持ちいい。店の熱気に当てられて火照った身体から熱が奪われていくかのようだった。

 

「本当、今日は騒がしい一日でござったなぁ」

 

 路銀を落としてどうしようか悩んでいた矢先、チンピラの報復に合い、連中を投げ飛ばしていると助太刀として空手部の三人が乱入、連中を退けてから、路頭に迷っていると言う彼らから何とも美味いスナック菓子という食べ物を受け取り、その見返りとして少しの文字を教えたりし、さらに路銀を稼ぐために意図せず三浦と演武を繰り広げることとなり、そして先ほどまでは彼らと食事を共にし騒ぎ合った。

 

 何とも濃い一日だった。家を出て旅をしてきてから、これまで会ったことのない個性豊かな三人組に翻弄された八重にとっては初めての経験だった。その中でも、三浦の頼もしくも純粋な性格には、八重も調子を狂わされっぱなしだった。

 

 しかし、不思議と嫌な感じはしない、寧ろどこか楽しんでいる自分がいることに気付く。

 

「……何とも不思議な御仁たちでござる」

 

 最初、彼らは国を追われた罪人ではないかとも考えた。しかし、八重の目が節穴でなければ、彼らはそんな人間ではないことに気付く。悪人ではないことをわかっているからこそ、彼らと旅を共にすることに迷いはなかった。あの不思議なスナックやシールといった見たことのない技術は確かに気にはなるが、詮索はしないで欲しいと頼まれた手前、深く考えるのはやめておいた。

 

 我ながら油断しすぎているのではないか? と自問する。しかし、八重は己の直感を信じたいと、心から思った。

 

 明日は王都へ向かう。その道中はきっと騒がしいものになるだろう。そのことに心躍らせつつ、八重は足取り軽く宿へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一人一泊銅貨5枚ね」

 

「クゥ~ン……(絶望)」←残り銅貨0枚

 

「嘘だよ……(後悔)」←残り銅貨1枚

 

「何であそこまで飲む必要あったんですか……(自問自答)」←残り銅貨2枚

 

 羽目外しすぎた結果、結局野宿することになった3バカなのであった。

 




最後のシーンはデデドン! の効果音が似合う(決めつけ)

もっとコメディー書きたくて狂いそう……!(悶絶)

今後の活動についてではなくお気楽アンケート開催。アニメ異世界スマホのEDでスマホ太郎がヒロインたちに手を差し出すシーン、差し替えるとしたら誰がいい?

  • スマホ太郎(アニメ主人公)
  • 望月冬夜(原作主人公)
  • 野獣先輩
  • 三浦
  • 木村
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