異世界空手部・やわらかスマホの裏技   作:コッコリリン

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PCを買い替えていざ執筆すると途中で展開が訳わからんくなって一旦停止、その後全身にアトピー性皮膚炎が悪化して執筆どころではなくなり、落ち着いた現在、ニコ動やヨウツベでホラー淫夢やバトル淫夢、原作異世界スマホ他、アニメイセスマや淫夢本編を視聴して瀕死に陥ってようやく帰還を果たしましたところで言わせてくださいすいません許してください何でもしますから!!(早口謝罪)


42.迫真空手部、王都へ繰り出す

~朝だあ~さ~だ~、YO!!(目覚ましおじさん)~

 

 

 

 

 次の日の朝。ベルジュの王宮にて用意された一室で、木村は目を覚ました。

 

「ふぁぁ……よく寝たなぁ」

 

 客人用というだけあってフカフカで最高の寝心地のベッドから上半身を起こし、伸びをする。しばしぼんやりした後、ベッドから下りて窓のカーテンを開く。すると眩い朝日が木村を照らし、しばし光に目を慣らすこと数秒。光に慣れた視界に映るのは、眼下に広がるベルファストとは違うベルジュの街並み。

 

 そんな光景を見下ろしながら、木村は首を左右に動かし、筋肉をほぐす。そして頭の中で今日一日を過ごすスケジュールを組み立てる。

 

(国王陛下の会談までまだ時間はあるし……先輩たちのことをとやかく言えないけど、今日はミスミドをしっかり楽しもうかな)

 

 旅行気分で護衛依頼を引き受けた先輩二人と違って、木村は木村なりに真面目に取り組みはしたが、やはり初めての外国ということもあって内心では浮かれている自分がいることに気付く。それに苦笑しながら、木村はいつもの服に袖を通した。

 

 その後に、使用人が木村の部屋に朝食を届けてくれた。さすがは王宮の朝食といったところで、素材もよければ味も抜群だった。やがて朝食を食べ終えると、扉のノックの音が木村の耳に届く。

 

「ん? こんな朝っぱらから誰だろ?」

 

 配膳を下げに使用人が訪れたのかと思った木村は扉の前へ移動する。そして再びノックが鳴る前に、扉を開いた。

 

「おはようございます、木村さん」

 

 はたして、そこに立っていたのはプラチナブロンドが光るユミナだった。昨晩の異国の服装からいつもの見慣れた服を纏い、ふわりと笑いかけながら木村に明るく朝の挨拶をする。

 

「あぁ、ユミナさん。おはようございます」

 

 相手がユミナとわかると、木村もまた挨拶を返した。まだ少し眠気がある木村に対し、ユミナは眠気など全く感じさせない笑顔を木村に向け続ける。昨晩、あれだけ皆で騒いだというのに、これも若さかとしみじみ感じ入る木村。当の木村もまだ20代と若い筈なのに。

 

「それじゃ、行きましょうか」

 

 そう思っていると、にこやかに言うユミナに木村は思わず「え?」と返す。

 

「……もしかして、昨日の約束、お忘れですか?」

 

「約束?」

 

 突然行きましょうかと言われて戸惑っていた木村だったが、ユミナに聞かれて昨晩の出来事を思い返す。パーティの最中、レイン含めすっかり顔なじみとなったミスミドの兵士たちやベルファストの兵士たちと語らった後、ようやくミスミドの服で着飾ったユミナに気付いた木村だったが、ずっとほったらかしにされて膨れっ面になったユミナに謝罪し、そのお詫びとして約束を取り付けてようやくユミナも機嫌を直した……と、記憶を掘り返し、木村はようやく思い出す。そして顔面蒼白となった。

 

(……し、しまった、今日はユミナさんと一緒に城下町に行く約束してたんだった……!)

 

 何たる失態。木村はお詫びの印として約束を取り付けたというのに、それすらも忘れてしまうとは……ユミナも木村がすっかり忘れていたという顔に気付いた。

 

「もう! 木村さんにとって私はどうでもいい存在なんですか?」

 

 プンスカと擬音が付きそうな怒りを顕わにするユミナに、木村が平身低頭で謝罪する。

 

「す、すいません、許してください! 何でもしますから!」

 

「ん? 今何でもするっておっしゃいましたよね?」

 

「は、はい…………その、できる範囲で……」

 

 最後でちょっとヘタれた。

 

 そんな木村を形のいい眉を吊り上げて険しい目付き(と言っても迫力よりも愛らしさが勝っていたが)で見つめることしばし。やがてユミナはプッと吹き出した。

 

「ウフフ、冗談ですよ。完全に忘れてしまっていたのならともかく、ちゃんと思い出してくれたんですから、それで十分です」

 

「は、はぁ……けど、すいません。せっかく約束したのに」

 

「ですから、いいんです……あ、でも何でもしてくれるっておっしゃるのなら」

 

 言って、ユミナは木村の腕に手を回した。そして木村を見上げ、ニコっと笑う。

 

「今日は私と一緒に、心ゆくまで楽しみましょう?」

 

「……ええ。お安い御用です」

 

 相変わらず子供ながら懐の広い子だ、と木村は苦笑混じりに思う。伊達に王女として育てられてないというわけだ。

 

 そうして、木村はユミナと共に部屋を出て、王宮を歩く。その道すがら、挨拶を交わした城の使用人たちに微笑ましい物を見るような目で見られて肩身の狭い思いをするというオマケもあったが、何事もなく外の中庭へと出る。昨日も城の庭を面した道を歩いたが、こうしてのんびりと眺めてみると、その美しさがより鮮明に見える。花壇の花々が朝日に照らされ、庭の手入れをしている使用人が撒いた水を反射して煌めき、より鮮やかな色合いを放つ。

 

「綺麗だなぁ」

 

「そうですね……手入れが行き届いてます」

 

 まるで立派な植物園だと、そんな感想を抱いて呟く木村にユミナも同意する。中庭の景色に心奪われつつ、二人は中庭をのんびりと散歩しながら城門を目指した。すでに二人の外出の許可はユミナが宰相から取っている。

 

「あれ、木村さんとユミナさん?」

 

 もうすぐで城門というところで、二人の背後から聞き慣れた声がかかる。振り返れば、琥珀を連れた冬夜とリンゼが手を振りながら二人に歩み寄ってきていた。

 

「ああ、冬夜くんとリンゼさん。琥珀さんも」

 

「おはようございます」

 

 木村とユミナも二人に気付き、挨拶をした。

 

「おはようございます。お二人はこれから城下町へ?」

 

「ああ、はい」

 

 リンゼの質問に木村が返すと、冬夜が「あ、そうだ」と提案を出す。

 

「僕たちも今から買いたい物があるから城下町へ行くんだけど、一緒に行く?」

 

「一緒に、ですか?」

 

 と、ここで木村はユミナを見やる。ユミナは木村の視線を受け、ニコリと笑う。

 

「私は構いませんよ。これを巷ではダブルデート、と呼ぶんでしたよね?」

 

「それ誰からって、ああわかりました野獣先輩ですね今度会ったらしばき倒します」

 

 またユミナにいらない知識を植え付けた張本人に対してスローをかけてやることを誓った木村に、冬夜は苦笑した。リンゼはというと、デートという言葉に顔を赤く染めて「はわわわ」と慌てふためいている。

 

「あ、ところでエルゼさんはどこへ? 一緒に行かないんですか?」

 

 ふと木村はリンゼの片割れであるエルゼの姿が見えないことに疑問を抱くも、リンゼは隠すことなく答える。

 

「お姉ちゃんなら、三浦さんと八重さんと一緒にミスミドの兵士さんたちに混じってあの闘技場で合同訓練に参加しているみたいです」

 

「三浦さんと八重さんもですか?」

 

「うん。何か訓練風景を三人で見に行くってさ」

 

「……そこ、まさか王様も参戦しないよな……」

 

 王様とは当然、ミスミド国王のことである。あのバトルジャンキーならやりかねないと木村は不安に思いながらも、この国の重臣の人たちも大変だなと心の内で労った。

 

「……そういえば、野獣先輩はどこ行ったんだろ」

 

 今の話の中に野獣の名前だけなかった。昨晩の王様たちとの飲み比べのせいで、まだ部屋で二日酔いに苦しんでいるのだろうか?

 

『ああ、奴なら私たちよりも先に城下町へ出かけたぞ』

 

 と、木村が憶測しているところを琥珀が野獣の行方を伝えた。まさかの人物(?)が知っているという事実に、木村たちは驚く。

 

「え、なんで琥珀が知ってるの?」

 

『いえ、朝の散歩がてら奴と会いまして。その時に外出する旨を私に伝えてから城を出ていきました』

 

 冬夜の質問に琥珀はなんて事のないように答えた。そしてその横で、リンゼがクスクスと笑う。

 

「琥珀ちゃん、野獣さんと仲良くなりましたね。以前の態度とは大違い、です」

 

「あ、そうですね。ちょっと前に琥珀さんと面と向かって話せるようになったって、先輩喜んでましたし」

 

『んなっ!? ち、違う! 以前助けられた手前、強く言えないだけだ! 勘違いするんじゃない! 奴にもそう伝えておけ!!』

 

 リンゼと木村に言われて琥珀がガーッと牙を剥くも、完全マスコットな見た目の琥珀がそれをやっても迫力なんてゼロに等しいし、言っていることは完全な照れ隠しなために微笑ましさの方が際立っていた。ユミナと冬夜もそんな琥珀を見て笑っていた。

 

「……けど、先輩そんな朝っぱらからどこ行ったんだろうなぁ……」

 

 自分たちよりも先に城下町へ繰り出した野獣の意図がわからず、木村は呟く。流石に騒ぎは起こさないだろうとは思いたいが……あの野獣のことだから、なんかまた一悶着起こすかもしれないなぁ、と木村は一株の不安を抱いた。

 

 

 

 

 

 

 

 一方田所、じゃなくてその頃、王都ベルジュの朝の市場にて。

 

「FOO! 朝からすっげぇ人が多くて賑やかだなぁ。ここもベルファストに負けず劣らず活気があるって、はっきりわかんだね」

 

 野獣は周りを歩く人々を見て歩きながら、街の活気に充てられてテンションを上げる。ベルファストにも獣人は大勢いたが、ここはそことは比べものにならない程の、もとい右も左も亜人ばかり。獣人だったり、背中に翼を生やした翼人や頭に角を生やした鬼のような外見の者もいる。実に多種多様な人々でベルジュは溢れていた。途中の露店に売られていた新鮮なフルーツのうちの一つ、リンゴを手に取り、代金を店主に渡す。店主の「毎度!」という威勢のいい声を背後に、野獣は果実を齧りながら道を歩く。

 

「ん! 瑞々しい果肉から迸る爽やかな甘味と酸味! これはいいリンゴですねぇ!(食レポ)」

 

 ベルファストとはまた違う土壌が生み出す自然の恵みに顔を綻ばせつつ、野獣は獣王から教えてもらった道を進む。そしてその脳裏に、獣王の言葉が想起された。

 

『ワシが懇意にしている鍛冶屋があるのだがな。そなたが手に入れた竜の牙、そいつを使った武器を作りたいならば、そこへ行くといい。店主は偏屈というか変わり者だが、何、ワシからの紹介だと言えば話くらいは聞いてくれるだろう。もっとも、気に入られるかはそなた次第だがな! ハッハッハ!』

 

 昨晩のパーティで酔い交じりに言われたが、それを聞いた以上、野獣の好奇心は抑えられない。今の武器も十分に強いが、さらに強くしてくれるというのならばそれに越したことはないし、竜の素材を使った武器というのもまたロマンがある。

 

「けど、ジャムさん曰く店主がどうも変わり者らしいんだよなぁ。典型的な頑固じいさんだったりして」

 

 聞いた話では、この国のトップである獣王のリクエストすら、自分が気に入らなければ受け付けないのだそう。まさかの獣王からの依頼を断るとは、余程の性格に違いない。その分、腕は相当らしく、例え断られたとしても、かの鍛冶屋に通うことをやめようとしないのだと獣王が豪快に笑いながら話してくれた。

 

 まぁ、そのせいで家臣たちは日々胃痛と戦ったりしていて『仕事してください、オナシャス(胃潰瘍)』みたいなことをぼやいているらしいが。因みに昨日の決闘後の本人たちの談である。

 

 ともあれ、それほどに腕が立つ上に獣王が贔屓にしている鍛冶職人に俄然興味が湧いた野獣は、大剣を背にし、竜の牙を懐に店を目指していた。出かける前に飲んだ薬のお陰で、二日酔いの苦しみも今はない。

 

「えぇっと、確か大通りを進んでっと……」

 

 スマホの地図アプリを頼りにしつつ、野獣は人にぶつからないよう歩く。もう少しで市場を抜ける……そんな時だった。

 

「よぉ、そこの兄ちゃん! 寄ってってくれよ!」

 

「ファッ!?」

 

 突然の呼びかけに驚き、思わずスマホを取り落としかけた野獣は、声の方へと振り向いた。声の主は、他の店と比べて建物の影に位置する場所を陣取っている、彩り豊かな石が陳列されている露天商の主だった。背中から翼が生えているのを見るに、鳥の獣人なのがわかる。

 

「どうだい、この石! これが何なのか、兄ちゃんわかるかい!?」

 

「えぇっと……何スか?(冷やかし)」

 

 思わず足を止めてしまった手前、素通りするのも何だか気が引けた野獣は、とりあえず買うか買わないかは別として露天商の呼び込みに応えてあげるためにそう返した。

 

「こいつはね、かの有名な鉱石、ミスリルさ! それも高純度のレア物だぜ?」

 

「はぇ~、ミスリルっスか」

 

 ミスリル。RPGでよく聞く名称のアイテムだと野獣は記憶している。大体ミスリルという名の付く武具は高性能だったが……。

 

「ミスリルって、滅茶苦茶高いんじゃないスかぁ?」

 

 差し出されたミスリルを野獣は手に取ってみる。見た目は表面がツルリとした五センチ程の白い石。360°見ても、これが本物のミスリルかどうかは専門家ではない野獣には判断のしようがないが。

 

「ところがどっこい! 本来ならばこれほどの純度のミスリルだと白金貨一枚するところを、俺のところだと金貨五枚で譲ってやるぜ!」

 

「あ、ふーん(察し)」

 

 それを聞いて確信した。

 

 これ詐欺じゃね? と。

 

 格安になったとは言えども、金貨は金貨。日本円で50万円もふんだくろうとするなど、ぼったくりもいいところだ。これが仮に本物だとしても、絶対に買わない。

 

 そもそも、本当に高純度のミスリルならばこんなところで売らずにしかるべきところで売った方がいい筈。そうしないということは、後ろめたいことがある……そう思わせるからこそ、目の前の店主からは胡散臭さしか感じられなかった。

 

「ささ、どうだい兄ちゃん? 今ここで買わないと一生損するぜ? ホラホラホラ!」

 

(いや、買う訳ねぇだろ……)

 

 必死に買わせようとする店主をジト目で見ながら、断ってこの場を去ろうと野獣は考えた。

 

 

 

「ふ~ん、これがミスリルねぇ」

 

 

 

「あ」

 

 不意に石が手元から消えたかと思うと、横から知らない声がした。そちらへ顔を向けると、野獣は目を見張った。

 

 声の主は女性だった。年は野獣と同い年か、或るいは年上か。艶のある黒髪を靡かせているその女性は、野獣が先ほどまで手に持っていた石を日に翳すようにしてじっくりと見ている。

 

「ん~……はぁ」

 

 あらゆる角度から石を見ていた女性は、呆れたようにため息をつくと、石を店主の前に投げ捨てた。

 

「これ偽物じゃない」

 

「はぁ!?」

 

 女性は呆れを含んだ声色で店主にそう告げると、店主は先ほどまでの媚びを売る声から一転、ドスを効かせた声へと変わり、女性を睨みつけた。

 

「いきなり何言ってやがる! こいつは正真正銘の」

 

「その辺の石でしょ。白く色づけして磨き上げてそれっぽく見せてるだけの。私はごまかされないわよ。しかも売り方も強引でド下手。そんなんじゃ素人すら引っかかりゃしないわよ」

 

 店主の反論を遮り、淡々と述べていく女性。つけ入る隙すら与えないとばかりに畳みかける。

 

「て、テメ、何を根拠に……! 言いがかりを……! 営業妨害だぞ……!」

 

 言われ、店主は顔を真っ赤に染めつつ言葉を紡ごうとするも、それはしどろもどろで反論にすらなっていない。顔からは大量に汗を流し、目も右往左往している。まさに図星をつかれた、と言わんばかりの態度で、傍から見ていた野獣は失笑すら出なかった。

 

「というか、アンタねぇ……こんなことして、ただで済むと思ってるわけ?」

 

「は?」

 

「こんな従来のど真ん中でこんなインチキ商売してるなんてお上に知れたら、どうなるかなんてわかりきってるじゃないの。どうせ許可なんて取ってないんでしょ? だからこんな目立たない場所で店なんて開いてんじゃないの?」

 

「そ、それは……」

 

「そっちが営業妨害だってんなら、憲兵なりなんなり呼びなさいよ。ま、呼んだら呼んだでアンタの商売が明るみになって、その石も調べられるんでしょうけど。それ、全部偽物でしょ? よく見なくてもわかるわよ」

 

 それ以上、店主からは何の反論も無かった。そこで店主がとった行動は一つ。

 

「こ、このアマ、調子乗りやがってッ!」

 

 逆上して殴りかかるという暴挙である。

 

 ただ、その拳は女性に届くことはなく。

 

「ヌッ(防御)」

 

 女性と店主の間に割って入った野獣が、その拳を掌で軽く受け止めた。店主は拳を引こうとするも、野獣の強い力の前に拳は微動だにせず。

 

「暴力反対って、それ一番言われてるから。これ以上暴れるってんなら、覚悟して、どうぞ(強者の貫禄)」

 

「ひ……」

 

 力が強い上に、とんでもない眼力を前に、店主は軽く失禁。野獣が手を離すと、売り物である筈の石を一まとめにしてそそくさとどこかへと行ってしまった。

 

「まったく……とんだ災難だったわ」

 

「あ、そっスね」

 

 女性のうんざりした声に、野獣は曖昧な返事を返すしかできなかった。

 

 というのも、今だ衝撃から戻ってこれないでいるせいだった。ただ女性が横から出てきて、詐欺商売をしている店主に事実を叩きつけて退散させた、という光景を前にしただけでここまで動揺はしない。

 

 ならば何故か? その理由は、

 

 

 

(この人……なんで巫女服着てんの?)

 

 

 

 脇に布地の無い独特な紅白の服を身に纏った、今この場所では明らかに浮きまくっている出で立ちをしているからであった。

 

「ん? 私の顔に何か付いてる?」

 

「いや全然(即答)」

 

 頭に付けた大きな赤いリボンを揺らしながら首を傾げる女性に、正気に戻った野獣は咄嗟に返した。

 

 そしてよく見ると、彼女は頭に獣の耳を生やしていなければ、背中に翼も生えていない。つまるところ、ここ獣人の国では珍しい人間ということになる。しかも日本人のような顔立ちに黒髪、おまけに巫女服。この国の人間ではないのは明らかだった。

 

「……ん?」

 

 と、女性を観察していると、不思議な感情が野獣の中で芽生える。嫌な気持ちではないが、どこか暖かく安心するという、何だか変な気持ちだった。初対面である筈の彼女に対して抱くような気持ちではない。

 

 それよりなにより、

 

「……なぁ」

 

「何?」

 

「アンタ、俺とどっかで会ったことある?」

 

 彼女に既視感を覚えたのは何故だろうか。

 

「…………はぁ?」

 

 やや間の開いた返事を返す女性。怪訝な顔を隠そうともせず、野獣を半目で睨みつけた。

 

「何? 新手のナンパかしら? 生憎だけどそういうのはお断りよ」

 

「(そんなんじゃ)ないです」

 

 野獣は先ほどまで抱いていた彼女に対する既視感を気のせいということにした。

 

「まぁ、いいわ。それよりも……」

 

 言って、女性は掌を野獣に差し出す。

 

「ほら」

 

「……は?(疑問)」

 

 突然の意味のわからない行動に、野獣は疑問符を浮かべた。それを見て女性は眉を吊り上げる。

 

「お助け料。詐欺商人から助けてあげたんだから、ごはんくらい奢りなさい。私はお腹がすいたの」

 

「ファッ!?」

 

 何だそれは。とんだ横暴である。流石の野獣もこれには反論せざるを得なかった。

 

「ふざけんな! お助け料とかどこのぶ〇ぶ〇左衛門だよ!? 頭にきますよ!」

 

「何言ってんのよぉ。あのままだとアンタ、あの商人にカモられてたんだから当然の権利じゃない」

 

「引っかからねえよあんなの! 普通に気づいてたわ! 言いがかりも甚だしいんだよこの野郎醤油瓶!」

 

「どうだか」

 

 ここまでのやり取りを通し、先ほどまで抱いていた暖かみや安心感など吹き飛んだ。とんでもない女性であると再認識した野獣は、プリプリと怒りを露わにする。

 

「もういいです。アンタに付き合ってたら時間がもったいないって、はっきりわかんだね」

 

「あら、どっか行くの?」

 

 背を向けた野獣に、女性が問いかける。別に答える必要はないのだが、何となく答えなければ付いてきそうだと思った野獣は、嫌そうな顔を隠そうともせずに答えた。

 

「この辺にぃ、知り合いの行きつけの鍛冶屋、あるらしいんスよ。だからアンタに構ってられないんだわ」

 

 このままだと確実に昼飯をたかられてしまいかねない。一刻も早く目的の鍛冶屋へ行って、この女性とはオサラバしなければ……そんなことを思っている野獣に対し、

 

「……へぇ?」

 

 何故か女性はほくそ笑んでいた。

 

「……何スか?」

 

 それが不気味に映った野獣は、引き気味に尋ねる。女性は笑みを崩すことなく、野獣に返す。

 

「いや? ただまぁ、私もその鍛冶屋に用があるのよねぇ」

 

「は?」

 

 女性の言葉に、思わず目が点になる野獣。あからさまに不自然な目的地の一致。つまり、

 

「目的地は一緒ってことだし……どうせだから一緒に行きましょうか」

 

(この女、付いてくる気じゃん!?)

 

 そういうことである。

 

「い、いやいやいや、もしかしたら別の鍛冶屋かもしれないし」

 

「残念ね。この辺りで鍛冶屋といったら一か所しかないわ。あるとしてもここからだとかなり距離があるし」

 

「クゥ~ン……(消沈)」

 

 逃げようとしたら逃げ道を塞がれてしまった。昨晩出会った妖精族の長のリーンよりも性質の悪い性格をしていると、野獣は痛感する。

 

「ホラ、さっさと来なさい。私はお腹がすいたの」

 

「しかも飯奢る前提じゃん……」

 

 図々しいにも程がある。さっさと前を歩き出した女性に、野獣は観念して肩を落としつつ付いていくことにした。

 

「……って、そうそう。アンタ名前は? 一応聞いとかないとね」

 

 と、立ち止まって振り返った女性が野獣の名を問う。名乗りたくはなかったが、仕方なく野獣は名乗ることにした。

 

「田所っス。みんなからは野獣って呼ばれてるから、野獣って呼んで、どうぞ」

 

「……ふ~ん、田所、ね……」

 

 どこか含みのある言い方をする女性。怪訝に眉を上げる野獣だったが、女性はクスクス笑いつつ、己の名を告げた。

 

 

 

「私の名前は、神流(かんな)です」

 

 

 




期間を開け過ぎたからか、以前とは違う作風になってるっぽくて気が狂いそう……!(ジレンマ)

クッキー☆からKNN姉貴登場。今後のことも考えて、タグにクッキー☆追加してやるからなぁ~……!

今後の活動についてではなくお気楽アンケート開催。アニメ異世界スマホのEDでスマホ太郎がヒロインたちに手を差し出すシーン、差し替えるとしたら誰がいい?

  • スマホ太郎(アニメ主人公)
  • 望月冬夜(原作主人公)
  • 野獣先輩
  • 三浦
  • 木村
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