あと今回、エンチャントに対する独自解釈ありますあります(二次設定)
案内された場所は、床が日本で馴染み深い畳張りの三畳一間という狭い部屋だった。家具は棚が二つ、中央にはちゃぶ台が一つというシンプルさ。奥にはまだ通路が続いているため、流石に部屋はここだけというわけではないようだ。
その部屋で、二つの湯呑とクッキーが幾つか入った器の乗った卓袱台を挟む形で神流と野獣は向かい合って座っていた。余談だが、本当は煎餅がよかったものの、流石にここミスミドにはイーシェンの物品はあまり出回っていないということでこうなったのだそう。茶の方も緑茶に比較的近いが緑茶ではない、とのことらしい。
「ふ~ん、なるほど」
野獣からの話を聞いて、納得したとばかりに頷く神流。
「王様からの紹介、それからこの立派な竜の牙……何となく察してたけど、アンタがあの竜殺しだったとはね。肌がク〇みたいに黒いハゲの男とは聞いていたけど」
「ちょっと待てよ!!(激怒) 肌の件もそうだけど頭のことまで伝わってんのかよ! 頭に来ますよ!! そもそもハゲてねぇし!!」
何故ゆえにこうも肌のことで弄られねばならないのか。しかも少し気にしている頭部のことまで伝わってるとなると、流石に野獣もあんまりな評判に涙が出そうになった。もといちょっと出た。
というか誰だそんな噂流したのは。あの場にいた兵士の誰かか。野獣は犯人を見つけ次第髪の毛を毟ることを固く心に誓った。
「ま、そんなことはどうだっていいとして」
「どうでもよくないんですがそれは(苛立ち)」
静かにキレる野獣を神流はスルーした。
「ここまで立派な竜の牙……フフッ、もう一回言うけど、なかなかやるじゃない。最近は肩透かしな仕事ばっかりだったから、久々に歯応えのある仕事ができそうよ」
「……そんなにすごいんスかぁ?」
竜の牙の価値はすごいというのは何となくわかるが、この牙をそこまで大絶賛するとは思っていなかった野獣は眉を上げる。神流は牙を手に持ち、先端部分を指で突く。
「竜の牙っていうのは、質は元より、形、大きさ、そして鋭さから評価されるのよ。この牙はそれらをクリアしてる。私程にもなると、見ただけで質だってわかるわけよ」
「はぇ~……」
言ってることはわかるようなわからないような、すっとぼけた顔で頷く野獣。が、神流が「けどねぇ……」と上機嫌から一転、やや不服な面持ちとなる。
「ここまで立派な牙なら、もう一つ、素材になる物が欲しいわね……何かこう、魔力なりなんなりが込められたアイテムがあればいいんだけど」
「ん? 竜の牙で十分立派な武器になるんじゃねぇの?」
「そうねぇ。確かに素材としては完璧よ。武器だって最高クラスの物ができるわ」
言って、神流は牙を卓袱台に置いて一息つく。
「でもそれじゃダメなわけよ。私がこの国の王に認められている理由、アンタにわかる?」
「いや全然(即答)。単純に腕がいいとかそんな理由なだけじゃねぇの?」
考える素振りすらしない野獣に些か呆れながらも、神流は器に入っているクッキーを一枚手に取った。
「……私の鍛冶に使われる技術は、そこら辺の鍛冶屋とは色々違うのよ。魔力とかそういう類の力を、幾つかの素材を混ぜた物と“同化”させるの。そうすることで、その武器は普通の武器とは一線を画す程の力を得るってわけ」
「ん? 無属性魔法のエンチャントって奴と同じじゃないんスかぁ?」
「あれは武器に魔法を“付与”するの。私のは“同化”。そうねぇ、例えばクッキーに砂糖をコーティングさせるのが付与だとしたら、クッキー生地に砂糖を混ぜ込むのが同化って感じかしら。付与は魔法そのままの力が武器に付く形だけど、同化することによって武器と一体化した力は、相性にもよるけど素材に含まれた物質が作用することで数倍にも強力になる……まぁこんな感じね。わかった?」
「はぇ~……すっごいわかりやすい……」
基本、理解しにくい頭をしている野獣でも、神流の説明は割とスっと頭に入ってきたことで、野獣は感嘆したように呟いた。
「と、説明すると簡単なように聞こえるかもだけど、この技術は世界中を回って修行してきた私にしか扱うことはできないからこそ、王も私を贔屓にしてくれるってわけ。他の鍛冶職人だと理論はわかってもそれを技術に使うことは難しいってこと」
言って、神流はクッキーを齧った。
「そんなわけだから、私にとっちゃ牙だけ使ったところで本当の意味で強い武器なんてできない。こんな立派な牙なんだから、どうしても他の素材が欲しいわけ。竜の牙なんて、素材の中では上等中の上等な物。魔力とかの力を底上げするのにも打ってつけなのよ……けど生憎、今そんな素材は店にはないし、困ったわねぇ」
はぁ、とため息をつく神流。そこまで言うならば、野獣としても彼女の作る武器とやらがどれ程の物か、非常に気になってしまう。何かいい素材となる物はないかと、野獣も模索した。
「そうですねぇ……今俺が持ってる物となると……」
野獣は大剣を脇に置いて、懐をゴソゴソと漁る。その時、神流の視線が野獣の大剣へと向けられた。
「あら?」
野獣の姿をぼんやりと見つめていた神流が、野獣の手元にある大剣へと目を向ける。すると、何かに気づいたかのように目を見開いた。
「アンタ、その剣……」
「ん? これがどうしたよ?」
神流に指さされた己の得物を持ち上げて見せる野獣。対し、神流はじっと大剣を見つめていた。
すると、野獣は彼女の一瞬手元がブレたように見えた。
「ファッ!?」
次の瞬間、神流の手には野獣の大剣が握られており、野獣は手の中にあった筈の大剣が忽然と姿を消したことに思わず奇声を発してしまった。
(えぇ……俺、結構動体視力いい方なんだけど、全然見えなかったぞ……何もんなんだよ、この女……)
まさに目にも留まらぬ早業。神流によって大剣を取り上げられた野獣は唖然とする中、神流は野獣の大剣の刃から柄頭までをつぶさに観察し続ける。
「……アンタ、これどこで手に入れたの?」
やがて、ジロリと野獣を睨め付ける。その目は責めているといった類の物ではなく、どちらかと言えば強い興味からくる目だった。
「どこって、だいぶ前の冒険者ギルドの依頼ん時に退治したデュラハンが落としたのを拾ったんだけど? 何? なんか問題でもあんの?」
「……はぁ」
野獣の呆気らかんとした返答に、神流は呆れたように高い声のため息を出した。
「アンタねぇ。これ持っててただで済むと思ってるわけ? デュラハンなんて生者に対する怨念や執念の塊って言っても過言じゃない魔物が持ってた武器なんて、生者であるアンタにとって一級呪物みたいなもんよ? アンタ、身体に異常とかないの?」
「特にはなってないです(健康体)」
平然と言い放った野獣。現にこの武器を手に持ってからというもの、特に不幸になったり体調を崩したりといったことは起きていない……まぁ、召喚魔法で現れた生物(琥珀含む)に齧られたりスライムに服溶かされたりといった不幸には合ったりしているが、前者に至っては野獣が本来持っている厄介な体質なため、この大剣は関係ないだろう。
「……アンタ、それマジで言ってる? 常人だとすでに体調どころか闇の瘴気に中てられて発狂、或るいは憑り殺されていてもおかしくないのよ?」
「(全然身体に問題)ないです。これまでずっとこいつ持ってたけど、何の影響もなかったぜ?」
「……デュラハンの闇の瘴気を受け付けない体質なのかしら。どういう原理があるのかはわからないけれど……けど、そうねぇ……これなら……」
訝し気に野獣を見つめていた神流は、野獣が嘘を言っていないし無理もしていないとわかると、手元の大剣に視線を落としながら顎に手を添えて考え込む。ブツブツと何か言っているが、内容がよくわからない野獣は手持無沙汰にクッキーを齧る。ついでに神流が正気に戻るまでの間、野獣は少し離れた位置で成り行きを見ていた少女と話すことにした。
「あ、すんません。アイスティーある?」
「ないです」
「はぁ~……つっかえ!」
「は?(半ギレ)」
和やかに談笑(?)していると、「うん」と一つ頷いた神流が顔を上げた。
「アンタ……一つ提案があるんだけど、聞く気ある?」
「ん? 何スかぁ?」
一体何を言われるのだろうかと、野獣はやや身構えつつ聞き返す。
「この大剣、私に譲ってくれないかしら?」
「ファッ!? 俺の野獣丸二号を!?」
愛剣を譲って欲しいという神流に思わず驚きの声を上げ、そして拒否しようとした……が、それより先に神流が手で制した。
「おっと、勿論ただで、とは言わないわ。とりあえず聞きなさい」
「ん……おかのした……(不服)」
「……この大剣に込められているデュラハンの怨念からくる呪いの力。アンタにとっては害はないようだけど、このままだと持ち主を蝕むだけの呪われた武器でしかないわけ」
トントンと、剣の柄を指で叩きながら神流は続ける。
「ただね、この呪いの力は使いようによってはそんじゃそこらの魔法が付与された武器なんて足元にも及ばないような力に転用できるわ。私はこの剣を素材にして、強力な武器を作る……その代わり、アンタにはその武器をあげるわ」
「え……いいんスかぁ?」
寝耳に水。野獣は目を丸くする。何せ、己が得するばかりで、神流には何も利益がないのだ。
「いいのよ。私はね、いい武器を作りたいからこの大剣が欲しいのよ。私は新しい武器が作れる、アンタは強い武器が手に入る……取引としては、お互い悪くない案だと思うけど、どう?」
「…………」
腰に手を当て、野獣は考える。神流の話では、お互い損はないし、大変魅力的な提案である。ただ、ここまで苦楽を共にしてきた相棒を手放す、ということは、野獣にとって思うところがないわけではないが……。
「……俺の野獣丸二号を、新しい姿に生まれ変わらせてやってください、オナシャス!!」
「決まり、ね」
苦渋の末、取引成立。懇願する野獣とニッと笑う神流は、強く握手するのであった。
「……あ、けどそうすると、俺武器なしになっちまうなぁ……素手でも戦えるけど、どうしよっかなぁ」
「あら、それならうちの武器持ってく? 金貨3枚、これでもサービスしとくわよ」
「ファッ!? 金取んのかよ!?」
「アンタねぇ、これ作ったの誰だと思ってるの。武器制作とは別料金に決まってるじゃない」
「クゥ~ン……(嘆き)」
やっぱこいつ商魂逞しいかもしれない……野獣は神流の評価を改めることにした。
一方たど頃、もといその頃。ミスミド王国近郊の森の開けた場所に、冬夜のゲートを使って木村たちは訪れていた。
カチャ、パーン!
「うわっ」
森に轟く炸裂音。木村は思わず顔を顰め、リンゼとユミナは驚き耳を抑えた。ユミナの腕に抱きかかえられている琥珀も、前足で耳を塞いで顔を顰める。
続けて二回、三回と炸裂音が響く。森の中にいた鳥は驚き逃げ、上空から羽ばたきの音が聞こえてくる。
「うーん、命中精度がイマイチだな……あ、そっか。ライフリングがないのか」
その音の発生源である、もとい発生源を手にしている冬夜は、右手に持っている“それ”に左手を翳した。
「モデリング」
冬夜が魔法を唱えると、翳した手の先に魔法陣が展開。魔法陣が消えると、冬夜は再び“それ”を前方へ向けた。
カチャ、パーン!
再び轟く炸裂音。同時、冬夜の正面の離れた位置に聳え立つ木の幹に大きな穴が開いた。
「よし、成功!」
喜色満面となった冬夜は“それ”……黒光りするリボルバー式の拳銃をくるりと手の中で回転させた。
「で、リロード」
冬夜の『リロード』の言葉と共に、銃から6発の空薬莢が排出されると、冬夜の近くにある切り株の上に置かれていた弾丸6発が消える。そしてもう一度銃のトリガーを引けば、再びつんざく音と共に銃弾が発射された。
「うん、いい感じ。これで完成かな」
「……やべぇ」
満足気に頷く冬夜の後ろでユミナたちと並んで見守っていた木村はボソリと呟いた。
冬夜が持っている銃は、冬夜が最初から所持していた物ではない。冬夜が自身のスマホと無属性魔法を駆使して一から作成した、完全ハンドメイドの代物だ。
しかもただの銃ではなく、銃身含めて各パーツはモデリングで変形させた竜の角を素材としているのだから、驚きを通り越して呆れてしまう。
「あの、木村さんはあの武器をご存じなのですか?」
隣に立つユミナが木村に問いかける。その顔は拳銃の威力を前にして、驚愕に彩られている。
「は、はい。銃って言って、弓矢の延長線上にある武器なんです。威力としては、弓よりも強力ですね……」
「矢ではなく、あんな小さな金属を片手で撃ち出す武器、ですね。それなのにあの威力、ですか……すごい、です」
『し、しかしまた、随分と大きな音ですな……』
木村の説明を受けたリンゼもまた、ユミナと同じく動揺していた。琥珀は慣れない火薬の音にいまだ戸惑っている様子。ただ、木村は別の方向で驚愕していた。
「さて、次は……」
今度は何をするつもりなのかと成り行きを見守っていた木村たちの前で、冬夜は銃のシリンダーから銃弾を全て抜き取り、そのうちの一発を手に取った。
「エンチャント:エクスプロージョン」
その弾丸に、炎の爆発魔法を付与し、そして、
「プログラム開始/発動条件:銃口から発射された弾頭が着弾した時/発動内容:弾丸を中心に「エクスプロージョン」を発動/プログラム終了……っと」
プログラムの魔法陣を展開。命令を付与した弾丸を再び銃のシリンダーに装填。照準を先ほど的にした木に合わせ、引き金を引いた。
瞬間、炸裂音を遥かに超える轟音と共に木が木っ端みじんに砕け散った。
「よし」
「お前才能おかしいよ……(戦慄)」
どんな切っ掛けで弾丸にエンチャントして炸裂弾なんて発想が思いつくのか。腰を抜かしたリンゼとユミナの隣で、木村はもう乾いた笑いしか出ない。
(最初、鉄や真鍮を使って何を作るのかと思ってたけど……)
木村は銃作成に至るまでの経緯を思い返す。あの後、神流の鍛冶屋から離れた場所にある鍛冶屋へ赴いた木村たち。神流からはぼったくり同然に金属を売られそうになってから別の鍛冶屋でも似たような値段だったらどうしようかという懸念はあったが、それは杞憂であり、遥かに安い値段で売ってくれた。さらにその後、冬夜は別の店で木材やゴム板、さらには火薬入りの瓶を三つ購入。この時点で木村たちは、どんな武器を作るのか想像できずにいた。
そして現在、木村は冬夜のとんでもなさを再認識する。スマホで検索しただけで拳銃のパーツを、モデリングという己の裁量一つで形大きさが左右される魔法を使って作り上げただけでなく、昨晩知ったばかりのプログラムの魔法を使ってリロードを自動化させてしまった上に炸裂弾なんてものを作り出してしまった。
冬夜はやばい。プラスの意味でもマイナスの意味でも、木村は冬夜の才能の凄さに戦慄する。この文明レベルが中世の世界で、簡単に現代兵器を作り上げてしまった彼が敵に回ったとしたら、果たして立ち向かえるのだろうかと。
「さて、お次は……」
木村は思考を現実へ戻す。冬夜は真剣な面持ちで、切り株の上にある幾つかに切り分けた竜の角へと手を翳した。
「モデリング」
銃作成に何度使ったかわからない無属性魔法を発動。竜の角は光ったかと思うとその形を変えていく。
竜の角は消え、代わりに現れたのは黒光りする無骨な見た目の分厚い刃。木村の知るサバイバルナイフと似たような形をしている刃渡り30センチのその刃を、冬夜は作ったばかりの銃の下部、トリガーガードの前面に伸びるようにして装着した。
そうすることで、拳銃とナイフが融合し、銃剣となる。
「これに……プログラム開始」
さらに冬夜はその刃に手を翳し、魔法陣を展開させた。
「発動条件:所有者の「ブレードモード」「ガンモード」の発言/発動内容:「モデリング」による刀身部分の短剣から長剣、長剣から短剣への高速変形/プログラム終了」
魔法陣が消えると、冬夜は銃口を上へ、短剣を翳すように手に持った。そして、
「ブレードモード」
シュン、という音と共に、短剣が伸びた。
「えぇ……?」
木村が思わず茫然とした声を上げる。銃下部の剣が刃渡り30センチの分厚い刃から80センチ程の長剣サイズの刃へと、質量保存の法則を無視するかのように変わったのだから、驚かない方がおかしいのだ。まぁ、魔法の世界でそれを気にすることもおかしいのかもしれないのだが。
剣の振り心地を確かめてから、冬夜は今度は前方へと剣を向けた。
「ガンモード」
冬夜の言葉と共に、刃が再び短剣サイズへと戻った。
「すごいですね……剣にも銃にもなるんですか?」
「うん、後衛のリンゼと前衛のエルゼと違って、僕は両方こなせた方がいいからね」
ユミナの質問に冬夜は答える。それを聞いて、木村は確かに理に適ってると納得した。
「それで、この武器はなんていう名称に?」
「う~ん、そうだなぁ……」
リンゼに聞かれ、熟考する冬夜。木村は内心で『望月丸』か『ドラゴンガンブレード』などを予想する。
「……ブリュンヒルド、とかにしとこうかな」
「何だろう、この敗北感……」
「どうかされましたか木村さん?」
「あ、いえ、何でもないです」
冬夜の方がまだネーミングセンスがあったことに、木村は自分が考えた名称がダサいことに気付いた。暗い声を出すとユミナに心配されたが、何とか誤魔化す。
「……あ、あの、冬夜さん?」
「ん? どうしたのリンゼ?」
銃剣改めブリュンヒルドを眺めていた冬夜に、リンゼがおずおずと声をかけた。そして少し照れながらも冬夜に伝える。
「あ、あの、私にもその銃を作って欲しいのですが……」
「え……」
「ちょ、リンゼさん!?」
突然の頼みに冬夜は戸惑い、木村は慌てる。銃は確かに強力だが、使い方を誤れば自分がケガをする程に危ない武器だ。銃の存在すら知らなかった彼女が持つには、あまりにも危険だと、木村は止めようとした。
そんな木村に、リンゼは自分の考えを話す。
「その、もし魔法が使いたくとも使えない状況に陥った時、他の攻撃手段があればと前々から考えていたんです……私はお姉ちゃんと冬夜さんみたいに前衛には向かないですし、ユミナさんのように弓矢も使えません、から……けど、銃ならば私にも扱えるかもしれないし、いざという時には魔法を冬夜さんにエンチャントしてもらえれば、と思ったので……」
彼女の話を聞き、なるほど、好奇心から来るお願いではないのだと木村は判断した。
「うーん……とは言っても……」
が、それでも彼女が銃を持つということに難色を示す。ただ、この世界は日本と違うし、世紀末的な治安の悪さ、とは言えないにしても危険も多い。
「う~ん……まぁ、確かに危ないけど、僕が一から銃を教えたら大丈夫かな? それにリンゼの言うことにも一理あるし」
「……そうですね。冬夜くん、その辺りしっかりお願いしますね」
「あ、ありがとうございます!」
冬夜がそう言うならばと、木村は冬夜に任せることにした。礼を言うリンゼの横で、冬夜は早速スマホで銃を検索する。やがて銃の画像を幾つかリンゼに見せ、銃のデザインを選んでもらった。
ふと、冬夜が銃を教えるということになったが、そう言えば冬夜も未成年なのに、お前なんで銃使えるんだと木村は遅れながらも気づいた。
~11分4秒後~
「はい、リンゼ。また使い方に関しては教えてあげるからね」
「はい! ありがとうございます、冬夜さん!」
完成した銃を、冬夜はリンゼに渡した。リンゼが選んだ銃は
「あれ? 冬夜さん、角が少し余ってますよ? 他に何か作るんですか?」
と、ユミナが切り株の上に竜の角の一部があることに気付く。他に何か思いついたから残しているのだろうかと木村は思っていたのだが。
「あ……本当だ。う~ん、これどうしよう」
単純に余ってしまっただけらしく、冬夜は頭を掻いて悩む。せっかくの貴重な素材。余ったからと言って捨てるのも勿体ないだろうし、他に何か作った方が有意義なのだろうが、冬夜は思いつかない様子だった。
「……そうだ。木村さん、これあげるよ」
「は?」
と、何を思ったか、冬夜は余った角を木村へと差し出した。思わず素っ頓狂な声を上げる木村。
「いや、別に何も考え無しに渡すつもりじゃないよ。木村さん、武器らしい武器持ってないよね? これを使って何か武器を作るといいよ。モデリングの練習にもなるし」
「い、いや、そんな……悪いですよ。貴重な竜の角なのに、僕なんかに」
「いいんだって。木村さんたちにはお世話になってるし、これはそのお礼だと思ってくれれば」
「……う~ん」
冬夜の善意は嬉しいが、竜の角は貴重品だと聞いている。木村はそんな物をあっさり受け取るのを躊躇していたが、
「受け取ってはどうですか、木村さん? 木村さんは確かに強いですけど、武器はあって困る物ではありませんし、冬夜さんご本人がいいとおっしゃっているのなら、断る理由はありませんよ」
『主の厚意だからな。私からも受け取ってもらいたい』
「…………わかりました。ありがとうございます」
「うん。いい武器ができるといいね」
ユミナと琥珀に横からそう言われ、木村は冬夜の厚意に甘えることに決めた。受け取った木村は、早速モデリングを使って何かを作ってみることにする。
どんな武器を作ろうかと、木村は思考する。長剣、は使い慣れていないから論外だし、一番使い勝手がいい物となると……。
「えっとじゃあ……モデリング」
手を翳すと、冬夜と同様の魔法陣が展開される。すると角は光を放ち、形を変えていく。
イメージするのは、先日の襲撃の際にユミナを人質に取っていた男に対して放った一撃に用いた、咄嗟に唱えたモデリングによって握りしめた砂利を固めて形成したナイフ。砂利という脆い素材で作ったために一回こっきりの使い捨てだったが、自分でも驚く程に手に馴染んだ。あれを常時使うことができればと、木村は考えていたのだが。
「…………う~ん」
完成したのは、シンプルな作りの直剣タイプの短剣。柄と刃が一体化している真っ黒な物……なのではあるが、どうにも見た目が地味すぎる。
「……僕も素材を集めて作った方がいいかもしれないなぁ」
「そうですか? 私は好きですよ、こういう武器」
横から覗き見ていたユミナからは割と好評ではあったが、木村は苦笑しながらも首を振った。
「いや、やっぱり作るとなるともうちょっとかっこいいのが……まぁ、練習かなぁ」
「木村さんならきっと素晴らしい武器ができますよ」
「いや、そんなこと……けどありがとうございます」
「フフ。私も練習、お手伝いします。頑張りましょうね?」
言って、木村とユミナは笑い合う。なんて事の無いことなのだが、それが木村には不思議と心地よかった。
「……なんか木村さん、密着してても抵抗しなくなったよね」
『本人は何も気づいていないようですが……これはもう、秒読みという奴ですな』
「……いいなぁ」
傍から見れば肩を寄せ合ってイチャイチャしているようにしか見えない二人を見て、冬夜は苦笑し、琥珀は尻尾を揺らしながらしれっと呟いた。リンゼはというと、二人を見てどこか憧憬にも似た感情を抱くのであった。
尚、この後木村は冬夜にどこで拳銃の撃ち方を習ったのかと問うてみたら、意味ありげに微笑まれて終わって「あ、やっぱこいついい奴だけどやべぇ奴だ」と思ったとか何とか。
確か原作ではブリュンヒルドって銃と剣がモデリングで制作された時点から一体化されてたけど、アニメだと別々で作ってなかったっけかって思ってたんでこうなりました。まぁ間違ってたらイセスマ博士ニキから指摘入るし、大丈夫でしょ(読者任せにする作者のクズ) けど記憶違いだったらすいません、許してください何でもしますから!(何でもするとは言ってない)
MTDK兄貴って、よくあんなこまっかいパーツをスマホ検索しただけで制作できたよなぁって常々思います。ちょっとでもサイズミスってたりズレてたりしてたら銃暴発して指ポーンなってたでしょって思うんですが、そこはもうMTDK兄貴、そんなヘマはしないと信じてました。同時にお前頭おかしいよ……とも思いました。昨今は3Dプリンターでも作れたりするらしいですが、犯罪だし危ないしでいいことなんてなんもないので、みんなは銃を自作するのは、やめようね!(戒め)
もうちょっと展開盛り上げたいんだけどな~俺もな~。まま、そう焦んないで(自己を制する) 次回からオリジナル展開いくぞぉぉぉぉぉ!!
あ、これもオリジナル展開じゃんアゼルバイジャン……。
今後の活動についてではなくお気楽アンケート開催。アニメ異世界スマホのEDでスマホ太郎がヒロインたちに手を差し出すシーン、差し替えるとしたら誰がいい?
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スマホ太郎(アニメ主人公)
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望月冬夜(原作主人公)
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野獣先輩
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三浦
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木村