50.迫真空手部、帰宅する
レレスの村の次の日の朝。野獣たちは案の定、二日酔いに悩まされた……が、そこはもう手慣れた八重。予めベルファストで購入し、用意しておいた酔い覚まし用の薬を飲ませて事なきを得た。木村も飲み過ぎないように注意をしてはいたが、リオンとオリガが恋仲となったことが村の住民に知れ渡り、そのまま二人を祝福する宴へと移行、木村も嬉しさのあまり羽目を外す結果となり、結局野獣と三浦と同じ末路を辿った。
「やっぱ、九重さんの、酔い覚ましの薬を……最高やな!(体力全快)」
「あのでござるな……この薬だって安くないんでござるよ? もう薬屋の店主とは顔なじみになったばかりか、店主に二日酔いの薬を購入した際になんと言われたかご存知でござるか? 『あ、ふーん(察し)』でござるよ? 同情の眼差しを向けられた拙者の気持ちを考えて欲しいでござる!」
「うう、耳が痛いや……すいません八重さん……」
「大丈夫だって安心しろよ~! 次はちゃんとするからさ~!」
「そうだよ」
「それ何回も聞いたでござる! そもそもでござるなぁ! 拙者がお三方と初めて会った時から全く成長してないではござらぬか! 野獣殿と三浦殿は当然のこととして、木村殿もなんだかんだで意思が弱すぎるから自重するという言葉を知って欲しいでござる! わかっておられるか三人とも!?」
「すまんな、本当にすまん(YKZ天狗)」
「ポッチャマ……(反省)」
「ヒギィ……(ダメージ)」
「八重さん、すっかりお母さまみたいになってますね……」
「大の男が年下の女性から説教くらうというこの図もなかなかの光景だけどね。面白いからいいけど」
「ポチャ」
空手部3バカを正座させてガミガミ説教をかます八重。それを見守るユミナとリーン。ポッチャマはユミナの腕の中で、ポーラはリーンの腕の中で同意するかのように頷いた。
まぁ、なんやかんやで宴もたけなわ、太陽が顔を出し、村もいつもの生活へと戻っていく。野獣たちもまた、目的は果たせたためミスミドへ戻ることとなった。出発するのには少し早いが、本来であればワインを手に入れたら軽く観光して戻る予定になっていたのが、予想外にも一泊することとなったのだから、遅い方である。
ただ、オリガとアルマ、リーンは村にまだしばらく残ることに。空間の亀裂、そこから発生した水晶の魔物……これらの異常事態が発生し、また同じ事態が起こらないとも限らない以上、オリガは調査隊の案内で、アルマはオリガの付き添い、そして妖精族で魔法に長けたリーンは調査に参加することとなった。リオンも同じように残りたい気持ちではあったが、国王の護衛隊長として、長い期間離れるわけにもいかない。
「オリガさん、申し訳ありません……自分も調査の手伝いができればよかったのですが……」
「しょうがありませんよ、リオン殿。リオン殿には国王の護衛という大事な仕事があるのですから、ここはリーン殿と私に任せてください」
空手部一行を見送るために村人総出で見守る中、ようやく恋仲となったというのに、また離れることになって心底辛そうなリオンの手を包むように握るオリガは微笑みながら言った。
「私はまぁ、今回のような事件は初めてで興味深いところだし、調査だって私がいた方が捗るでしょうからね」
「あれ以上何か起こるとは思えませんけども……三人とも、気を付けてくださいね?」
「もっとゆっくりしたかったけどな~俺もな~(未練)」
「ポチャァ……(無念)」
「また来ればいいのですよ。次は冬夜さんたちもお誘いして、賑やかにいきましょう。ね?」
「……その時はまたポーションを買っておかねばならないでござるな……」
次も確実に二日酔いするとわかっている八重は、脳内に浮かんだ薬屋の店主に『また君か、壊れるなぁ……(同情)』と労われていた。
「……あの、野獣さんの姿が見えないんですけど?」
ふと、アルマは空手部のメンバーが一人足りないことに気付く。それに応えたのはユミナだった。
「野獣さんでしたら、冬夜さんたちにお土産を買ってくると言って行きました。確かここの村の名産品があるとのことらしく」
「お~! 確かにここのお土産美味かったゾ~! ワインに合う味だったなぁ」
「お土産を買ってすぐに自分で食べてどうするでござるか」
ビシっと能天気な三浦にツッコミの手を入れる八重。そうしていると、村の方から「おーい!」と声がかかった。見れば両手いっぱいに荷物を抱えた野獣が走り寄ってくる姿。
「お待たせ。お土産選んでたんだけど待った?」
「あ、野獣先輩おかえりなさい」
「どういうのを買ってこられたんですか?」
なかなかな大きさのお土産を見て興味を抱いたユミナに聞かれ、野獣はどこか得意気な顔で買ってきた品を見せる。
「へへ、まずはこれ! 冬夜にはここのブドウを使ったクッキーな。それからリンゼにはこのブドウの銀細工!」
「ああ、このクッキーでござるか。確かに美味でござったなぁ」
「銀細工も可愛らしくていいですね!」
長方形の箱と立派なブドウを模した銀細工に、野獣のチョイスのよさに納得する八重とユミナ。そして、
「で、エルゼにはこれ……この辺りに住んでたっていう伝説の戦士をイメージして作られた木彫りのゴリラ!」
「待てコラステハゲ」
ジャン! と箱から出されたのは、猛々しく両腕を突き上げて雄たけびを上げるゴリラの亜人の木彫り像に思わずドスの効いた声でツッコむ木村。昨日の馬車の中で言ってた物が売ってたことにも驚きだが、マジで買ってきたのかと誰もが呆れた。これを渡した瞬間、ブースト全開のエルゼによる折檻が野獣に炸裂する光景が目に浮かぶ。
「うそうそ! 流石に俺も命が惜しいって、はっきりわかんだね! エルゼにはこっち渡して、こっちは家に飾るつもりだからさぁ!」
流石に冗談だったようで、野獣は笑いながら箱に像を戻して、もう一つの同じ大きさの箱から鮮やかな紫色の熊のぬいぐるみを取り出した。細かい部分は違うが、大きさ的にはポーラに近かった。
「お~、可愛らしい熊さんだゾ~これ!」
「ポチャ……!?(またライバル出現!?)」
「あら、可愛らしいわね。私も後で一つ買おうかしら?」
三浦とリーンの趣味に合っていたようで、それを見たポッチャマとポーラは足元で愕然としていた。
「ここのブドウの皮で染色したぬいぐるみだってよ! すげぇよなぁ、仄かにブドウのいい香りがすんだぜ! あいつ可愛いの好きっぽいし、ぴったりだろ!」
「そういうのでいいんですよそういうので……自分から地雷原に突っ込まないでくださいよホント」
これならエルゼも喜ぶだろうと、木村は安堵した。自業自得とはいえ、こんなことで自分の先輩がボコボコにされる光景は流石に見たくはない。
「……では、そろそろベルジュへ向かいましょう」
ともあれ、あまり長居することはできないと、リオンが一行に声をかける。そして名残惜しそうに、リオンは馬車に乗り手綱を握り、野獣たちもまた馬車へと乗り込んでいった。
「では、オリガさん。また近いうちに……」
「ええ、いつか……」
「……すっかり二人だけの世界ね」
リオンとオリガは互いを見つめ合い、再会を約束する。周りから生暖かい目で見られていることに気付かないことに、リーンは呆れた。
「アルマちゃんも元気でな~!」
「ポチャ~!(お達者で!)」
「また会おうね、アルマちゃん」
「はい! 皆さんお元気で!」
「お前リーンさぁ。あんまオリガさんたちに我儘言って困らすんじゃねぇぞ?」
「はいはい。我儘は次にあなたに会った時にとっとくわ」
「(そんなのいら)ないです。ポーラもじゃあな~」
パタパタと手を振るポーラに向けた野獣の挨拶を最後に、馬車は動き出す。オリガたちと一緒に見送りに来ていた村人たちが口々に「本当にありがとうございました!」「またお越しくださいませ!」「おじちゃんバイバーイ!」「また来てねー!」等々、去り行く彼らを惜しむ声に押されて、野獣たちは村を後にした……子供たちの別れの言葉に野獣はアンニュイ顔になっていたが。
「う~ん……」
「どうかされました木村さん?」
村から離れてしばし、木村は馬車の中で腕を組んで考え込む。それを見て、ユミナが木村の顔を覗き込んだ。二人と御者のリオン以外の全員は、昨晩遅くまで騒いでいたことと、馬車の揺れの心地よさに耐えきれずに、各々夢の中へと誘われていた。
「あ、いえ……ユミナさんは覚えてますか? あの水晶の魔物が僕とユミナさんを尻尾で突き刺そうとした瞬間のこと」
「ええ……あれほど死を間近に感じたのは、以前お父様を狙った襲撃以来です」
あと少しで、木村とユミナの命が狩られるところだった……それを思い出すと、ユミナは身震いする。
「正直、僕も死ぬかと思いました……けどあの時、森の中から何かが飛んできて、魔物の注意が逸れたことで僕たちは助かったんですよね」
「そういえば……」
木村に言われ、ユミナもその時のことを思い返す。確かにあの時、森の中から何かが飛来して、それが蛇の頭に命中、結果として木村とユミナは助かった。あまりに必死すぎて、そのことをすっかりユミナは忘れていた。
「……僕の見間違いでなければ、あれ多分ナイフか何かでした」
「ナイフ?」
「はい。多分、ですが……結局、夜で暗くなった上にあの滅茶苦茶になった森の中でそれを探すのは無理でしたけど」
一瞬すぎて確証はないが、飛んできた物は黒光りするナイフのようだったと木村の目には映った……ということは、考えられることは一つ。
「じゃあ、あの時私たちを助けてくれた人があの場にいたってことですか?」
「はい……村人の誰かかと思ったんですが……」
空手部以外の人間の誰かが、木村たちの窮地を救った。村人の中にそれができる者がいたのかと思ったが、あの素朴な雰囲気漂う村の住人に、そんな芸当ができる者がいるのだろうか? そんな違和感を抱きつつ、木村は首を傾げた。
「……気にはなるけど、私たちに危害を加えようとしないのであれば、それでいいのかもしれませんね」
「う~ん……けど目的がわからないからなぁ……」
何故木村たちを助けてくれたのか、誰が、どんな目的で……答えの出ない疑問に悩まされる木村を乗せた馬車は、ゆったりと王都へと進んでいく。やがて木村とユミナも、襲い来る睡魔に耐えることはできず、お互いもたれかかるような形で眠りに入るのだった。
さて、その後のことを語ろう。
王都ベルジュへ戻ってきた野獣たちは、任務へ戻ったリオンと別れ、王宮へ帰る前に王都を軽く観光へ。そこで通りかかった店から嗅ぎなれたスパイシーな香りがしたため、食欲を刺激されて入店。ミスミド名物の料理『カラエ』から漂う香りであること知った一行はカラエを注文。そのカラエの正体は、日本で言うところのカレーそのものだった……ライスこそなかったが。
これには木村が大興奮。実はカレーが大好物の木村にとって、まさに青天の霹靂。喜び勇んで食べて、その美味さに悶絶し、嬉しさのあまりにもう一皿注文した程だった。尚、後に続いた野獣たちは漏れなくその辛さに悶絶していた。
その後は神流が一人で先に帰ったことをリーンから聞いていた野獣は、一言神流に黙って帰ったことに苦言を申そうと店を訪れたが、店は休業中で神流も留守だった……結局、その日に神流と会うことはなかった。
そうして、王都を巡って公爵含めた知人にお土産を購入して周る。一通り観光を楽しんだ後は、王宮へと帰還。そこで国王が、明日ベルファストへ戻る旨を聞いた。同盟は無事結ぶことができたため、これ以上滞在する理由もない。冬夜たちも護衛任務を果たしたということで一足早く帰ったし、野獣たちもミスミドをあらたか楽しんだ。それにまたゲートを使って来れるため、異論はなかった。
ただ、また馬車に乗って元来た道を戻るのは遠い道のりな上に危険が伴う。そこで、木村がゲートを使って王をアレフィスへ送る案が出た。その情報をミスミドでも獣王含めた一部の重鎮のみに教えるにとどめ、ひとまずベルジュを出るまでは馬車で移動。あらかた進んだところで木村がゲートを使って転移する……という、秘密保持のために回りくどい方法で帰還することとなった。
こうして、国王護衛依頼を達成した上にミスミドを堪能した空手部は、翌日にはいつもの日常へと戻ることとなるのであった。
~次の日~
「ただいまー」
「ぬわぁぁぁぁぁぁぁん疲れたもぉぉぉぉぉぉぉぉぉん」
「チカレタ……」
「ポッチャァァァァ」
「ようやく帰ってきたでござるなぁ……」
「ええ……なんだか家を見るのが懐かしく思えます……」
国王が王宮へと戻ったのを確認した後、野獣たちは木村のゲートで自宅前へ転移。家の扉を開き、全員が一階のリビングで脱力するかのように椅子やソファに座り込んだのだった。
「はぁ、それにしても、王様の護衛依頼というだけでもかなり大変だったっていうのに、それ以外でも戦う羽目になるなんて……もうクタクタですよ」
「まさかワインを飲みにいくというだけであの魔物と再び相まみえるなど、誰も予想できんでござるよ……」
「当たり前だよなぁ? 俺もうあんなのと戦いたくないゾ……」
「……木村さんたちは以前にもあんな魔物と戦ったことがあるんですね……流石です」
「まぁ全然形違ったけどな~。同じ手が通用しないのはホントきつかったっスねぇ(復習)」
「ポチャァ」
各々、ミスミドでの旅で起きた出来事を振り返る。恐るべき姿に変貌した竜や国王襲撃事件だけでなく、水晶の魔物と二度目の遭遇……あまりに濃い、激動の日々だった。
「もうしばらく、大冒険は遠慮したいですねぇ……」
「異論なしでござる……とりあえず、拙者はお風呂で汚れを落としたい気分でござる」
「あ、私も。お風呂に入ってさっぱりしたいですね。夕ご飯を作りにセシルさんが来る前に、入ってきましょうか」
八重とユミナがソファから立ち上がる。と、野獣が「あ」と思い出したかのように呟いた。
「そうだそうだ、風呂で思い出した! 新しいアロマ石鹸が今日発売されるんだよなぁ」
「え、またアロマ買いに行くんですか?」
「すでにたくさん揃ってるではござらんか?」
野獣の突発的な行動に、木村と八重が疑問を口にした。
「いやそうなんだけどさぁ、やっぱ新しい香りって気になるし、試したくなるだろ? 気になる物はすぐに試すに限るって、それ一番言われてるから(嗜み)」
「……多分、琥珀ちゃんが関係してるのではないかなって思います」
「あぁ……(納得)」
「まだ気にされてるんでござるか……」
ユミナの指摘に納得する木村と八重。あの竜を討伐してから関係はある程度は改善したと見ているが、それでもやはり臭い物は臭いと言われてしまった手前、どうしても気になっているのが丸わかりだった。
「あ、ついでに公爵んとこのお土産も持ってくわ。これなら一石二鳥だって、はっきりわかんだね」
「え、それなら僕がまたゲートで繋いで持っていきますよ?」
「いいっていいって! 木村も疲れたろ。無理しなくてもいいから、今はちゃんと休んで、どうぞ(労り)」
「お~、確かにそうだなぁ。木村、ここは野獣の言葉に甘えとけ~?」
「ポチャァ……(スヤァ)」
膝の上で疲れからか寝息を立て始めたポッチャマを撫でつつ、三浦は言った。
「う~ん……じゃあ、すいません先輩。お言葉に甘えます。公爵様たちによろしく伝えておいてください」
「かしこまり! じゃあ行ってきますよ~行く行く!」
意気揚々とお土産を持って野獣は家を出ていった。その後ろ姿には先ほどまで見せていた疲労はもう見えない。旅の疲れなど最初から無かったかのような振舞いを見て、ユミナはクスリと笑った。
「野獣さんって、ホント元気な方ですね。見てるこっちもなんだか元気になりそうです」
「だろぉ? それが野獣のいいとこなんだよなぁ」
「……限度がありますけどね。たまに……というか、ほぼ毎回」
「ま、まぁ……それも彼の長所だと思う……で、ござるよ?(曖昧)」
そんな風に、野獣のことを評する木村たちなのであった。
「FOO! いい香り~! これが新作フレーバーの石鹸かぁ! あ~、たまらねぇぜ」
王都アレフィスの商業施設がひしめく区画にて、野獣は紙袋に入っている目当ての新作の石鹸から漂う爽やかな香りに恍惚とした表情を浮かべた。どこか柑橘系を思わせるその香りに、野獣は体臭など一撃で吹き飛ぶと確信した。
「これなら琥珀の野郎も文句言わねえだろ。いい加減、あいつのことをギャフンと言わせてやらねぇとなぁ」
脳裏に浮かぶ、愛くるしい顔を露骨に嫌悪で歪める神獣の顔。この香りならば、あの口の悪い琥珀も『すいません許してください何でもしますから!』と土下座すること請け合いだ……そんなことを考えている野獣だが、近い未来、そんな琥珀からムーンサルト後ろ脚キックを食らうことになるなどとは予想していなかった。
「さってと、後は公爵んとこにお土産を届けるだけだなぁ。スゥの奴も喜んでくれっかなぁ?」
スゥシィが好きそうなお菓子やアクセサリーを買った野獣は、彼女が喜ぶ顔を想像しつつ進む。すでに歩きなれた道、迷うことはない。多くの人々が行き交う表通りを、野獣は鼻歌交じりに歩いていた。
「……ん?」
ふと、何かがドサリと落ちるような音を野獣の耳が捉える。音の出どころは、建物と建物の間、薄暗い裏路地。喧噪に紛れてよく聞き取れなかったが、野獣は妙に気になった。
「なんだぁ? でっけぇネズミでもいんのか?」
そう当たりをつける野獣。それなら別に見に行く必要はないが……と、行くか行かないか逡巡していた野獣だったが、
「いや……いやぁぁぁ!」
裏路地から聞こえてきた悲鳴に、野獣の足は動いた。路地の奥まった場所にあった、ゴミがまとめられた場所。そこにいたのは、人相の悪い二人の男と、キャスケット帽を目深に被った薄汚れた服を纏った子供。
その子供に、男の一人が鋭い短剣の切っ先を鼻先に突きつけていた。顔はよく見えずとも、野獣にはわかる。子供は明らかに怯えていた。
「おいゴルルァ! 何してんだぁ!!」
「あぁ?」
咄嗟に叫ぶ野獣に、短剣を持っていた男が今にも子供の顔を切りつけようとしていた手を止めて振り返る。もう一人の男も野獣へ睨みを利かせつつ振り向いた。
「なんだテメェ? 関係ねぇ奴は引っ込んでろ!」
「邪魔すんなら殺すぞ?」
ドスを利かせて野獣に詰め寄る二人の男。だが野獣は怯えもなく、毅然と言い放つ。
「ふざけんな!(迫真) 子供に刃物を突き付けるとか、関係あるなしとかそれ以前の問題だろうが! 頭にきますよ!!」
「はぁ? 何言ってんだこいつ?」
脅しが効かないばかりか、怒り心頭な野獣に、男たちは僅かに怯む。だが、ここでそれを顔に出せば舐められることを知っている二人は、標的を子供から野獣へと切り替えた。
「めんどくせぇ! こいつからやっちまえ!」
「オラァ!」
先手必勝。二人同時に野獣へと襲い掛かる。これで相手が一般人ならば、男たちの暴力を前に成すすべなくやられてしまうだろう。
だが、男たちは一般人とは違う人物を相手にしてしまった。それは彼らの人生において、最大の不幸とも言えた。
「ホラホラホラホラホラホラホラホラッ!」
「「あべべべべべべべっ!?」」
飛びかかった二人に待ち受けていたのは、野獣の両手拳から放たれる怒涛の連続パンチ。通称『ホラホラッシュ』とも呼ばれるそれを全身あますことなく受けまくる二人。そして、
「オルルァ!!」
「「ぐえぶぅ……っっ!」」
最後にオマケとしての正拳突きをモロに食らい、吹き飛んだ。迫真空手を存分に味わった二人は、ゴミ塗れの地面へと倒れ込んで動かなくなる。最後、残心を決めつつ「しゅ~……」と息を吐く野獣。
二人ともボコボコになって目を回し、うめき声を上げるしかできない……百戦錬磨の戦士である野獣の圧勝であった。
「……あ! 大丈夫か大丈夫か!? さっきナイフ突きつけられてたよな? 怪我とかないか!?」
「え、あ……」
一瞬で大の男二人を沈黙させた野獣を茫然と見ていた子供は、駆け寄ってきて安否を問う野獣に、言葉にならない返事をするしかなかった。
「う……うん……ちょっと殴られたけど、兄ちゃんが止めてくれたから……あ、ありがと」
やがて、何とか言葉を紡ぐ子供。それを聞いて、野獣は心底ホッとして安堵した。
「おぉ、そうか……あ~よかった」
自分のことように子供を気遣う野獣。確かに、元々汚れていた服はボロボロで帽子の下からは涙でぐしゃぐしゃになった顔が見えたが、幸いとして大きな怪我はないようだった。ただ、流石にこのままにはできないと野獣は思い、一旦手当をするために手を取ろうとした。
その時、グゥ、という音が聞こえる。音の源は子供から。当の子供は、気恥ずかしそうにお腹を抑えていた。
「……腹、減ってんの?」
「……」
無言。だがコクリと小さく頷く子供。それを見た野獣は「よし!」と言うと、
「この辺にぃ、美味い串焼きの屋台、来てるらしいっスよ。じゃけん一緒に行きましょうね~」
「え……いいの?」
「あぁ、あと一応怪我も治療してやんねぇとな。ホラ、来いホイ!」
子供に手を差し出す野獣。子供は拒絶することなく、野獣の手を取って立ち上がった。
その時、勢いよく立ったためか、被っていた帽子が落ちる。顕になったのは丸みを帯びた子供らしい顔つき、そして落ちた帽子に伴って流れるような亜麻色の長い髪。
「ファッ!? え、お前女の子なん?」
「……? そうだよ?」
え、わからなかった? と言わんばかりに、翠の瞳に野獣を映しながら首を傾げる。服装的にてっきり男の子だと思っていた野獣は面食らうが、まぁいいかと切り替えた。
「まま、ええわ。ところでお前、名前何ていうんだ? 俺は田所だけど、みんなからは野獣って呼ばれてるから野獣って呼んで、どうぞ」
「レネだよ。よろしく、野獣兄ちゃん!」
その汚れた風貌からは程遠い無邪気な笑顔を子供、レネは野獣へと向けた。
正直、MTDK兄貴たち任務そっちのけ先帰っちゃったの「あ、やべ、ミスった」と思ったのは内緒☆(ウィンク)
今後の活動についてではなくお気楽アンケート開催。アニメ異世界スマホのEDでスマホ太郎がヒロインたちに手を差し出すシーン、差し替えるとしたら誰がいい?
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スマホ太郎(アニメ主人公)
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望月冬夜(原作主人公)
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野獣先輩
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三浦
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木村