異世界空手部・やわらかスマホの裏技   作:コッコリリン

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皆様、あけましておめでとうございます。今年もよろしおす!! というわけで、新年なので初投稿です(マジ)


53.迫真空手部、そしてオエド

 

 

「FOO! ここがイーシェンかぁ! 新しい国に来るとテンション上がって笑っちゃうんすよね(観光)」

 

「空気が美味いゾ~これ!」

 

「ポッチャァ!」

 

「ちょっと先輩たち、初めての土地なんですから先走ったら迷子になりますよ!」

 

「木村さん、まるでお父様のようですね」

 

 木村のゲートを通ってイーシェンに降り立ち、テンションMAXではしゃぎまわる野獣と三浦とポッチャマ。木村はそれを窘め、ユミナは微笑ましそうに眺めていた。

 

「……あの三人って先輩後輩の関係性逆じゃないかしら?」

 

「ま、まぁ、お三方にとってあれがいつもの光景でござるから」

 

 一方、リーンはポーラを胸に抱きながら呆れ、八重はもはや見慣れた光景であるがために苦笑いをしていた。

 

 尚、この場に冬夜たちはいない。ギルドの依頼をこなすため、野獣たちに見送られる形で別れた。その代わり、というわけではないが、

 

「う~ん……風が気持ちいいですね~」

 

「そうね」

 

 最後にゲートを通ってきたのは、手に大きなバスケットを持ったメイドのラピスとセシルの二人だった。

 

 二人がこの場にいるのは、セシルの『私たちも同行しても構わないでしょうか~?』という提案の下。王の命令とはいえど、雇用主である空手部のことを気にかけての提案だった。それに、国王の護衛という任務で行ったミスミドと違い、今回は私用。付いてくるのにも問題はなかった。

 

 尚、今日はセシルの当番なのだが、セシルが一度家を離れてラピスも呼んでくると言って出ていき、一分もかからずにラピスを連れて戻ってきたため野獣が「早スギィ! メイドの鑑がこの野郎!」と叫んだ。

 

「それにしても、今回はついてきてくれてありがとうございます、ラピスさん、セシルさん。お世話になります」

 

「いいんですよ~。寧ろ皆さんの足を引っ張らないように頑張りますね~」

 

 木村の礼に、セシルがほんわかとした笑顔で返す。対し、ラピスは笑顔こそなかったものの、落ち着いた様子で木村に恭しく頭を下げた。

 

「んでよ。お前が行きたい遺跡ってのはなんて遺跡なんだよ?」

 

 ここで野獣がリーンに質問する。リーンは思い出したように「ああ」と言ってから答えた。

 

「そういえば言ってなかったわね。私が行きたい遺跡の名前は『ニルヤの遺跡』っていうの。場所までは知らないわ」

 

「ニルヤの遺跡……八重さん、ご存知ですか?」

 

 ユミナが八重に聞くも、八重はしばし悩む素振りを見せた。

 

「うーん、聞いたことあるようなないような……けど、父上ならもしかしたら知っているやもしれぬでござる」

 

「どの道、オエドには行くことになるわけですね」

 

「じゃあ行きますよ~、行きますよ~行く行く」

 

「八重ちゃん、すまんけど案内頼むゾ~これ!」

 

「ええ、お任せくだされ。ここは拙者にとっても庭のようなものでござる」

 

 八重を先導に、空手部一行は森を歩く。しばらく歩くと、森が途切れて小高い丘に出る。そこから見える景色に、八重を除く一行は脱帽した。

 

「これが拙者の故郷、オエドでござる」

 

 誇らしげに、それでいて懐かしそうに、己の生まれ育った故郷を紹介する八重。

 

 オエドは、城砦都市だった。広い町を囲う堀と白い壁が、侵入者を阻む。さらにその壁の上には櫓があり、そこから歩兵が見張りに立つ。壁の外側には水田があり、そこにも家が建っているが、壁の内側の方が家々が密集しているように見えた。

 

「はぇ~、すっごい……(感嘆)」

 

「でっけぇゾ~これ! 時代劇のテーマパークにきた来たみたいだぜ。テンション上がるなぁ!(HRS)」

 

「ポチャ!」

 

 手を額の上に翳しながらため息をつく野獣の横で、羽をパタパタさせるポッチャマを頭に乗せた三浦がまるで昼飯を求めてさすらうサラリーマンみたいに楽しそうに言う。

 

「すごいですね……本当に江戸の町みたいだ」

 

「ん? オエドの町はオエドの町でござるよ?」

 

「あ、ああ、すいませんこちらの話です」

 

 江戸時代の町並みを想像していた木村は、その想像通りであったことに驚いて思わず呟いた。それを聞いた八重が首を傾げ、日本のことを迂闊に喋るべきではないと木村は慌てて誤魔化す。

 

 ひとまず丘を下り、堀に架けられた木製の橋を渡った一行は、町の中へと入る。瓦屋根や障子など、町は丘から見るよりも一層、時代劇を彷彿とさせる町並みであり、人々は着物姿だったり浪人のような姿だったりと、ますます江戸時代にタイムスリップしたかのようだ。唯一違う点といえば、男性の髪型はちょんまげではなく、後ろで一本に纏めたポニーテールのようになっていることくらいだ。

 

「いいねぇ! 何だか俺ら時代劇の登場人物になった気分になりますね!」

 

「いいゾ~これ! 俺も水戸こうもんとか大好きだから何だか楽しくなってきたゾ~!」

 

「……けど、暖簾とかに書かれている文字はやっぱり日本語ではないんですね。ベルファストの公用語とも違うようです」

 

 細々した点が違う辺り、やはり空手部が元居た世界の江戸とは違う町であることを実感するが、それでもほとんどの部分から日本の文化を感じられ、木村は郷愁の念にかられた。

 

「わぁ、木村さん! あれはなんですか!?」

 

「ん?」

 

 くいくいと木村の服を引きながら、ユミナが指を指す。その先には、二人の男性が前後で挟む形で人が乗った駕籠を担いで走っていた。ベルファストでは見られない、木村たちもテレビでしか見たことのない光景だ。

 

「ああ、あれは駕籠屋ですね。お金を払うことで運んでもらうんです。ベルファストで言うところの辻馬車みたいなものです」

 

「へ~……けどどうして馬車を使わないのでしょう? 人が運ぶよりも楽だし速いのに」

 

 ユミナが疑問を口にする。それに対し、木村も「えぇっと」と答えあぐねていると、

 

「多分、ここはベルファストよりも道が整備されていないんだと思うゾ~これ。起伏が激しい土地だと馬だと上がったり下がったりで走りにくかったりするから、人が駕籠を使って運んでもらった方が効率いいんだゾ」

 

「……三浦殿、よくご存知でござるな。確かにイーシェンはそのような土地が多い上、馬は貴重であるため馬車は見かけないのでござるが……」

 

 まさかの三浦の博識な言葉に、答えようとしていた八重が舌を巻いた。

 

「……そういや三浦先輩、日本史専攻だったよな」

 

「まさか異世界でその知識が活きるとは思いもしませんでしたね……」

 

 野獣と木村は、三浦が大学で日本史の講義を嬉々として受けているのを思い出す。確か、迫真空手の修行の過程で、迫真空手の歴史そのものを学んでいくうちに日本史にまで興味を抱いていって今に至ったのだとか。

 

「……駕籠もそうだけど、あの人は木の板のような靴を履いているわね? あれは何かしら」

 

「下駄ですねぇ!(即答)」

 

「あら? あそこの塔に鐘のような物がぶら下がってますね? あれはいったい……?」

 

「あれは火の見櫓ですね。そして鐘は半鐘と言うんです。火事が起きた時、あそこまで人が上っていって半鐘を叩いて町の人たちに知らせるんですよ」

 

「いい音が聞こえますね~。涼やかで、心が洗われるよう……」

 

「初めて聞く音色ですね……何なのでしょうか?」

 

「風鈴だゾ。風が吹いたら音が鳴る仕組みで、暑い日に耳で聞いて涼しくなるための道具だゾ。夏の風物詩の一つなんだゾ~」

 

「……三浦殿だけでなく、野獣殿と木村殿もやたら詳しいでござるな。お三方、本当にイーシェンの出ではないでござる?」

 

「え? あ、いや、前々からイーシェンは興味あったんで、下調べしていたんですよ!」

 

 リーン、ユミナ、セシルとラピスがイーシェンの珍しい光景や道具に興味を示し、それを野獣たちが説明していく。そんな三人を見ていた八重の疑問に、時代劇などでその名を知っているとは流石に言えなかった木村が慌てて誤魔化した。

 

「と、ところでイーシェンには王様とかいるんですか?」

 

 誤魔化しついでに、八重にイーシェンのことを聞く木村。いくら日本の江戸と酷似しているとはいえど、ここは異世界。江戸とオエドの違いを、木村は把握しておきたかった。

 

「ああ、確かにいるにはいるでござるが、実際にはそれぞれの地方を領主が治めているのでござるよ」

 

「あ、そっかぁ」

 

「へぇ、因みにここの領主はなんてーの?」

 

 野獣の質問に、八重がどことなく誇らしげに答えた。

 

「徳川家泰(いえやす)様でござる!」

 

「えぇ……(驚愕)」

 

「そこは、日本と同じなんですね……けどなんだろう、名前のニュアンスが微妙に違う気がする……」

 

 日本と似ている箇所が多すぎて引き気味に驚愕する野獣と、妙な違和感に首を傾げる木村なのであった。

 

「……?」

 

「三浦様、如何されました?」

 

 その横で、怪訝な顔をしていた三浦にラピスが問うと、三浦が町、もとい道行く町人の顔を見て言う。

 

「妙だゾ。なんだか町の人たちの顔が暗いように見えるゾ」

 

「……言われてみれば。どうしたんでしょうね?」

 

 三浦の疑問に木村も同意する。まるで何かに怯えているかのような、どことなく余裕が無さそうな人たちばかりな印象を木村は抱いた。

 

「みんな便秘なんじゃねぇの?」

 

『ポチャ(アホか)』

 

 適当丸出しな野獣にポッチャマの鳴き声一つ。

 

 ともあれ、そんなどこか暗いオエドの町を八重の案内で歩き続けること数十分。ベルファストやミスミドにはない光景を眺めつつ、竹林の道を抜けた先、開けた場所に建つ屋敷が現れた。

 

「到着したでござる。ここが拙者の生家にござりまする」

 

「お~、立派なお家だゾ~これ!」

 

「ポチャァ(すっげぇでかい)」

 

「えぇっと、『九重真鳴流剣術道場 九曜館』……剣道場も兼ねているんですね」

 

「いいねぇ! こういう光景好きだったんだよ(大胆な告白)」

 

 三浦とポッチャマが感嘆の声を上げ、木村が屋敷の玄関先に掲げられている看板を読み上げる。野獣は竹林と和の屋敷という趣あるこの光景が気に入り、テンションを上げていた。

 

 先頭に立つ八重が、屋敷の玄関の引き戸を開ける。そして声を張り上げた。

 

「誰かいるか!」

 

 八重の声が響く玄関先で待つことしばし。奥からバタバタと音がしたかと思うと、黒髪を後ろで一つに結わえた一人の女性が現れた。

 

「はいはい、ただ今……まぁ、八重様! おかえりなさいまし!」

 

「久しいな、綾音!」

 

 綾音、と呼ばれた女中らしき女性が、八重に駆け寄ると嬉々としてその手を取った。

 

「七重様! 八重様が今お戻りになられましたよ!」

 

 綾音が屋敷の奥へと声を上げる。すると、再びバタバタとどこか慌ただしい足音が鳴り、三十代後半と見られる薄紫の着物を纏った女性が姿を現した。その姿は、八重が成長した姿を想起させた。

 

「八重! よくぞ無事で……おかえりなさい!」

 

「母上、ただ今帰りました……」

 

 八重の母親、七重は感極まり、我が娘を抱きしめる。その目には薄っすらと涙が浮かんでいた。

 

 母娘の再会の抱擁がしばし続いたが、七重が八重の後ろにいる面子に気付いた。

 

「八重、この方たちは……?」

 

「拙者の仲間たちでござる。ここに来るまで、とても世話になったでござるよ」

 

「あ、どうも田所っス。野獣って呼んで、どうぞ」

 

「三浦だゾ~。俺たちも八重ちゃんにはお世話になってるゾ~これ!」

 

「木村ナオキです。こちらこそ、八重さんには助けられてます。こちらはメイドのセシルさんとラピスさんです」

 

「ユミナと申します。よろしくお願いします」

 

「リーンよ」

 

 八重に紹介された野獣たちが口々に自己紹介をしていく。セシルとラピスも木村に紹介され、頭を下げた。

 

「まぁ、八重が……娘がお世話になっているようで、ありがとうございます」

 

「いいっていいって、木村と三浦先輩も言ってたけど、八重には俺らも世話んなってるからさぁ! 頭上げてくれよな~頼むよ~」

 

「先輩、相手は八重さんのお母さんなのに失礼ですよ!」

 

「あ、あはは……野獣殿のこの態度も慣れたものでござる」

 

 床に手を着いて頭を下げる七重に対し、不遜にしてフレンドリーに返す野獣に苦言を申す木村。この光景に耐性が付いてきた八重は、もう苦笑いするしかなかった。

 

「……ときに、父上と兄上はどちらに? 城の方にでも?」

 

 八重としては、父と兄に会いたかったがために聞いた何気ない質問。だが、七重と綾音は顔を見合わせ、表情を曇らせた。

 

「母上……?」

 

 それがどういう意味かわからず、眉をひそめる八重。やがて七重は立ち上がり、八重へ顔を向けて口を開く。

 

「父上と重太郎はここにはおりません。殿、家泰様と共に合戦場へ向かわれました」

 

「合戦ですと!?」

 

「ファッ!?」

 

「あっ」

 

「ええっ!?」

 

 七重の言葉に驚く八重。その後ろで野獣、三浦、木村も思わず声を上げ、ユミナたちも声は出さずとも驚きで目を見開く。この世界に来て初めて出てきた物騒な言葉に、日本生まれの野獣たちは愕然とした。

 

「合戦ってことは戦かよ!? やべぇよやべぇよ……(一般市民感)」

 

「い、一体どこと!?」

 

 慌てふためく野獣と、父と兄の身を案じて青くなる八重に、綾音が答える。

 

「武田です。数日前、北西のカツヌマを奇襲をかけて落とし、今はその先、カワゴエを目指して進軍しつつあるようです。旦那様と重太郎様はそれを食い止めるためにカワゴエの砦へ……」

 

「そんな……」

 

 聞いているだけでわかる、決してよいとは言えない状況。そんなところへ身内が向かったというのだ。八重としては気が気でないのが、一行にも伝わってくる。

 

「それで、戦況は? どうなっているのかわかる?」

 

 一人、取り乱すことなく落ち着いているリーンが聞く。足元のポーラもくいっと首を傾げた。

 

「……旦那様曰く、急なことなので十分な戦力を集められず……噂では、このままだとカワゴエの砦が落とされるのは時間の問題だと……」

 

「なるほど、それであの町の雰囲気だったんだな~。そんな噂が出まわってたんじゃ、誰だって不安になるのは当たり前だよなぁ?」

 

 答える綾音に、三浦の脳裏によぎった町の人々の暗い表情。その理由を察し、顎に手を添えながら頷いた。

 

「そんな……それでは、父上や兄上は……!」

 

 聞けば聞く程、八重の頭には最悪の未来がよぎる。その心を、不安が押しつぶそうとして、八重の身体が震えた……が。

 

「っ……!」

 

 俯いていた顔を上げた瞬間、その表情は消え、決意を漲らせる。そして、己の仲間である空手部へと振り返る。

 

「木村殿! 拙者をカワゴエの砦へ!」

 

 八重の目に映る、空手部一行の姿。全員、八重と同じく覚悟を決めていた。

 

「わかっています。ここにいるみんな、同じ気持ちです!」

 

「八重ちゃんの兄ちゃんとトッチャマのピンチだゾ! 俺たちが助けに行かないとな~!」

 

「駕籠屋使ってオエド巡りしようと思ってたんだけどなぁ……じゃあまずは八重の親父さんと兄ちゃん助けに行くとするか! しょうがねぇな~(主人公感)」

 

「ポッチャァァァァ!!(やぁぁぁってやるぜ!!)」

 

「まさか戦場に行くことになるなんてね……ま、気持ちはわかるから私も行かせてもらうとするわ」

 

「私も、何かできることがあるはずです!」

 

「みんな……!」

 

 誰も反対する者はいない。セシルとラピスも頷き、一行と共に行くつもりでいる。戦場という恐ろしい場所へ、八重を一人で行かせるつもりなど毛頭ない……誰も彼もがそんな気持ちだった。あとポーラもリーンの足元でシャドウボクシングをしてやる気をアピールしていた。

 

 感極まる八重。もう一度、母へと向き直る。そして、

 

「母上、綾音……拙者たちが、父上と兄上を無事に連れて帰ってくるでござる!」

 

 真剣な面持ちで、そう宣言するのだった。

 

 

 




予想以上に長くなってしまいもうした。新年早々段取り下手くそがこの野郎。今からお前に罰を与えっからなぁ?(自分で自分を戒める)

今後の活動についてではなくお気楽アンケート開催。アニメ異世界スマホのEDでスマホ太郎がヒロインたちに手を差し出すシーン、差し替えるとしたら誰がいい?

  • スマホ太郎(アニメ主人公)
  • 望月冬夜(原作主人公)
  • 野獣先輩
  • 三浦
  • 木村
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