異世界空手部・やわらかスマホの裏技   作:コッコリリン

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3月投稿から随分と経ってしまいました。その間にニコニコがサーバー攻撃かなんかでサイトが一時閉鎖に追い込まれ、そして最近になって復帰してみんなが狂喜乱舞するという中、私は病(スマブラとかエスコンとかニンテンドーswitchオンラインでカスタムロボV2対戦したりとか)によって更新が止まってしまいました。センセンシャル!

とりあえず、ニコ動復活万歳! よーし、淫夢動画観るゾ~!


57.迫真空手部、死闘を繰り広げる

 

 

『死ねぇい!!』

 

「ヌッ!(回避)」

 

 完助が最初に狙ったのは野獣。殺意を持って振り下ろされた段平の刃を、野獣はヒラリと避けて邪剣“夜”の黒い刃を足の甲冑の隙間、帷子を狙って切りつけた。速度と鋭さを持った一撃。鉄すら容易く切り裂くであろうその一撃は、帷子をも貫通して肉を裂いた……はずだったが、

 

「オォン!?」

 

 切りつけたはずの足が動いたかと思うと、野獣の身体を衝撃が襲う。たまらず吹き飛ばされた野獣は衝撃を殺すために砂利の上を転がって受け身を取った。

 

「先輩!?」

 

「大丈夫だって安心しろよ~!(微ダメージ)」

 

 すかさず立ち上がった野獣は、刀を振るって再び構える。木村も負けじと呪文を詠唱、魔法陣を展開する。

 

「光よ穿て、輝く聖槍、シャイニングジャベリン!!」

 

 魔法陣から飛び出す光属性の槍が、完助の胴体に突き刺さる。光属性故か、突き刺さった箇所から禍々しい煙を吹き出しながらたじろぐ完助。

 

 が、

 

『フハハハハハ! 無駄ですよ!!』

 

 穴は瞬時に塞がれ、完助の高笑いが響く。

 

「光属性の魔法が通用しない……!?」

 

 狼狽える木村。その横を、野獣が風となって駆けていった。そして跳躍、完助の眼前まで飛び上がる。

 

「オルルァ!!」

 

 今度は急所を狙い、完助の首元を狙う。この一撃もまた目にも留まらぬ速さを伴って、完助の首元を一閃。だが、段平の刃によって受け流されてしまう。

 

「おっぶぇ!?(緊急回避)」

 

 背筋に走る悪寒と共に、野獣は完助を蹴りつけると後ろへ飛ぶ。瞬間、野獣がいた空間を完助の空いた左手が伸び、空を掴んだ。後少し遅れていれば、野獣は巨大な掌に握りつぶされていたのは確実だった。

 

「やべぇよやべぇよ(戦慄) 手応えはあんのに全然ダメージ通らねえ……!」

 

「これが宝玉の力なのか……!?」

 

 切ってもだめ、魔法も効果がない。完助の不死の力によって鉄壁ともいえる防御を前に、手をこまねくしかない野獣と木村。そんな二人をせせら笑い、完助は言う。

 

『ククク、ではあなた方にさらなる地獄を見せて差し上げましょう!』

 

 完助が手を掲げると、完助の背後の屋敷から、野獣たちが入ってきた入り口から、大量の鬼面兵がぞろぞろと現れる。

 

「まだこれだけの数が……!」

 

 慄く木村。だが、まだ終わらない。

 

『まだ終わりませんよ? 闇よ来たれ、我が求むは骸骨の戦士、スケルトンウォーリアー!』

 

 呪文の詠唱。そして庭の中央に現れたるは、闇の魔法陣。そこから曲刀と丸いラウンドシールドを持った骸骨が、墓から蘇るように数十体、這い出てきた。群れを成してカタカタと音を鳴らすその様は、恐怖を煽る。

 

「この野郎、召喚魔法まで使うとか、頭にきますよ!!(憤怒)」

 

「しかも死体を召喚か……鬼面兵しかり、とことんアンデッドに特化した奴ですね」

 

 召喚魔法が嫌いなことに加え、さらに増援を増やされたことに憤る野獣と忌々し気に呟く木村。そんな彼らを取り囲んだ鬼面兵と骸骨兵によって構成された完助の軍が襲い掛かる。

 

「光よ来たれ、輝く連弾、ライトアロー」

 

 が、リーンの声と共に数体の骸骨兵と鬼面兵の顔面に光り輝く矢が飛来し、突き刺さる。その瞬間、骸骨兵の身体がバラバラになって崩れ落ち、鬼面兵も面が砕けて術が消え、倒れ伏した。

 

「雑魚処理は任せなさい。あなたたちにだけいいとこ取りさせる訳にはいかないしね」

 

 パチリと、ウィンクをするリーン。リーンを筆頭に、武田四天王も息を吹き返したかのように鬼面兵と骸骨兵へと果敢に向かって切り込んでいった。

 

「さっきは情けねえ姿を晒しちまったが、坊主の言うとおりだ! 御屋形様を安らかに逝かせてやらねぇで何が家臣だクソッタレ!!」

 

「ええ、我々もできる限りのことをしましょう!!」

 

「坊主! そしてお前らも! 周りの連中は儂らに任せぇい!!」

 

 山県が切り伏せ、内藤が駆け抜け、馬場が刺し貫く。鬼面兵はともかく、骸骨兵は倒されても復活するが、それはリーンの光魔法によって対処される。さらには椿も、懐から苦無を抜いて一度に三本、三浦の背後を取ろうとした鬼面兵の顔面に投げつけて砕いた。

 

「三浦さんに……御屋形様の意志を尊重してくださった三浦さんには、手出しさせません!!」

 

 言って、苦無を三本、両手の指の間で挟む。合計六本の苦無を構えた椿の目に、迷いはなかった。

 

「FOO! しっかり頼むぜ~!」

 

「お願いします、リーンさん! 皆さん!」

 

「はいはい。じゃ、とりあえず……光よ来たれ、輝きの追放、バニッシュ」

 

 リーンの詠唱と共に眩い光が広場を照らす。その瞬間、骸骨兵は光の粒子となって消滅していった。

 

 が、魔法陣は消えていない。再び骸骨兵が現れ、リーンたちの前に立ち塞がる。

 

『なるほど、光の浄化魔法ですか……流石ですが、それでも無意味です!』

 

「ようはテメェをとっちめれば終わりだって、はっきりわかんだね!!」

 

 笑う完助、迫る野獣。邪剣“夜”を振るって再び完助の首を狙うが、完助は段平の刃で軽々と防いだ。

 

「水よ来たれ、清冽なる刀刃、アクアカッター!!」

 

 その隙をつく形で、木村がダガーナイフを薙ぐ。その軌跡をなぞる形で、湾曲した水の刃が完助の首を襲う。水とは思えない鋭さを伴った一撃は、完助が咄嗟に守るように持ち上げた左腕を上腕から切り飛ばした。身体から離れた腕は地面に落ちると、塵となって宙へ消えていった。

 

「やった!」

 

 効果があった。思わずガッツポーズをする木村。が、

 

「木村危ねぇ!!」

 

 着地し、叫ぶ野獣。だが、

 

『死ねぇ!!』

 

 切り飛ばされた腕が一瞬で再生。その腕を木村へ向けて振るった。

 

「シ……がっ!!」

 

 鈍器で殴りつけるかのようなおもい一撃が木村を襲う。衝撃を殺せず、木村は屋敷の襖を破壊する形で大きく吹き飛ばされたのだった。

 

「木村ぁ!!」

 

『フハハハハハ! まずは一人ぃ!!』

 

 木村の戦線離脱を確認するやいなや、声がより興奮によって熱を帯び始めた完助は段平を大きく振り上げ、

 

『今の私は! 強靭! 無敵! 最強ぉ!!』

 

「ヌッ!」

 

 分厚い刃を三回連続、野獣目掛けて叩きつけていく。地面を陥没させるほどに恐ろしい殺気を纏った一撃を連続バク宙で軽やかに回避していく野獣。

 

 が、

 

『粉砕!』

 

 さらに高く掲げられた段平に闇の力が集約されていき、

 

『玉砕!』

 

 闇の力が凝縮、さながら燃え盛る黒い炎となる。それを、

 

 

 

『大・喝・采っっっ!!』

 

 

 

 野獣目掛けて、渾身の力を込めて振り下ろす!

 

「ンアーーーーーーーッ!!」

 

「フハハハハハハハハッ!!」

 

 刃の炎が大爆発を起こし、避けきれなかった野獣は爆炎によって宙を舞う。庭の一角どころか、その先の建物までをも木っ端微塵に破壊するほどの凄まじい攻撃。完助の高揚した笑い声が、屋敷中に響き渡った。

 

 

 

 

 

「野獣!?」

 

 その光景を、三浦は見ていた。見てしまった。大事な仲間が爆炎によって吹き飛ばされた光景を目の当たりにした三浦は、意識を真玄から一瞬逸らす。

 

 それが大きな隙となり、真玄の接近を許してしまう。

 

「っ! しまっ……!」

 

 敵前で攻撃するチャンスを与えてしまった己の迂闊さを呪う三浦。刀を薙ぐ真玄に対し、咄嗟に自分の身体を後ろへと倒す。

 

「うぐぅっ!」

 

 致命傷は、避けた。だが真玄の鋭い一閃は避け切れなかった三浦の胴体に赤い線を描き、血が迸る。焼けるような激痛により、思わず呻く三浦。それが二度目の隙を生む。

 

「ガハッ!」

 

 直後、容赦なく三浦の腹部を襲う衝撃。甲冑を纏った真玄の重い直蹴りによって、三浦もまた木村と同じように吹き飛び、砂利の上を転がる。

 

 腕をつき、立ち上がろうとする三浦。瞬間、鋭い痛みが腹部を走る。

 

「ぐ……あばらを、やってしまったか……!」

 

 骨に罅が入った可能性がある。それでも何とか腕を支えに、膝を着いた三浦。が、その三浦に篝火の明かりを遮る形で影が覆う。

 

「っ……!」

 

 三浦が見上げれば、そこに立つのは大柄の真玄の姿。禍々しく光る眼を三浦に向けて見下ろす真玄は、ユラリと、刀を横へと振るう。このまま首を刈り取る算段なのだろうというのは、三浦にもわかった。

 

(どうする……受けるか? いや、ダメだ。身体に力が入らない。どの道この姿勢では手甲で受けようにも衝撃を殺せず、首にまで刃が届く可能性が高い。なら避けるか? いや、それも無理だ。素早く動こうにも痛みで身体が言うことを聞かないし、恐らく相手の方が動くのが速い……!)

 

 思考を巡らせる三浦。しかしどの方法をもってしても、結論は同じ。

 

 死。三浦の命を刈り取るその一文字。どう足掻いても逃れようのない真玄の刀が―――三浦を死に至らしめる死神の鎌が、ゆっくりともたげる。

 

 その時、三浦の脳裏を走る光景。それは、人が死の間際に見せると言われている走馬灯なのか……瞳の映る迫りくる刃を前に、三浦はその光景を思い返していた。

 

 

―――――

―――

――

 

 

 

『よーし、今日はここまで!』

 

『チカレタ』

 

 あれは、野獣と木村が迫真空手部に入部するより前の、夏のとある日。いつも通り、迫真空手の稽古の後に師範代に願い出て、迫真空手の実践稽古をした三浦。うだるような暑い日ということもあり、普段よりも一層、稽古が過酷に思えた。滴る汗が道着を濡らし、肌に纏わりついた不快感を今も覚えている。

 

 あの頃は、部員はまだ多い方だった。だがその稽古は大学の部の中でも飛びぬけてきついということで有名だった迫真空手部は、年々部員数が減っていた。三浦はそれでも、迫真空手を学びたいという強い思いで、必死に稽古に食らいついていた。その分、三浦の技術は師範のお墨付きをもらい、どの部員よりも高い実力を持っていた。

 

『三浦。今日のことはしっかり復習しておけよ。それと暑いから水分はしっかり摂るように。わかったかぁ』

 

『わかったゾ~。今日はもう、スゲ~きつかったゾ~』

 

 いつも通りのやり取り。空手部の中でも一番のんびりした性格をしていながら、その実、どの部員よりも熱心に迫真空手に取り込む三浦と、そんな彼に厳しく接しながらも親身に接していた師範。

 

『あ、そうだ(唐突)。先生、ちょっと聞きたいことがあるゾ』

 

『ん? なんだ三浦』

 

 が、この時は違った。三浦はその日の稽古中、気になったことを質問した。

 

『今日は実践稽古ってことだったんだけど、ちゃんとルールに則っての稽古だったよなぁ?』

 

『当たり前じゃねぇか』

 

『じゃあ、もしルールを守らない、或いはルールとかそんなの関係なしにこっちが命にかかわるレベルの危害を加えられそうになったどうすればいいんだゾ?』

 

『……ほぉ?』

 

 三浦はこの時、不思議に思っていた。迫真空手は伝統空手であり、且つ実践空手の側面も持つ。心・技・体を鍛え、強靭な身体と精神を培うと同時、実践で使用される技術も学ぶ。だが、空手に限らずスポーツにはルールがある。相手と対面し、四肢を駆使して打撃を叩き込むような競技には、相手の命を脅かすような攻撃をすれば失格になるという、相手のことを尊重するようなもの。

 

 そんなスポーツに関係なく、もし自分が危ない目にあったら、どうすればいいのだろうか? 相手を害してもいいのだろうか? 三浦はそれが気になった。

 

『いい質問だな。確かに、空手ってのは使い手次第では凶器になる。実際、空手の技を実際に使っちまったら、犯罪扱いになることも珍しくない』

 

『あ、そっかぁ……』

 

『……だがな三浦。俺はこう考えている。確かに迫真空手を使った暴力はいけねぇ。私利私欲に使うのなんてもってのほかだ……ただ、それ以外。自分の身が危険に迫った時、そして何かを守りたい、誰かを守りたいと思ってるんなら……俺の教えたことを守ってくれるんなら、使ったって構やしない』

 

『ん? いいのかゾ?』

 

『ああ。お前が迫真空手を相手を屈服させたい、支配したいとかそういうのに使ったんじゃないってんなら、俺は例え警察相手でもお前を守ってやるよ』

 

『お~! 先生めっちゃかっこいいゾ~これ!』

 

『ったく……かっこつけたつもりだってのに、お前は……』

 

 呆れる師範。だがその顔に険はなく、穏やかな笑みを浮かべていた。

 

『だからこそ、お前らには身を守るための技とか、試合とかでは使わないようなそういった際の技術も教えてる。中には試合で使えないような技を覚えたところでって考えてる奴もいるだろうが、迫真空手ってのはそういうためじゃねぇからな』

 

『一つ、己も含めて守れる者を守れるようになるべし、だったかゾ?』

 

『そうだ……迫真空手は手足だけじゃない、使える物は全部使う。それは攻守共に関係ねぇ、全身使えるなら全部使え。頭だろうが腹だろうが、それこそ』

 

 

 

『歯、とかでもな』

 

 

――

―――

―――――

 

 

 

 真玄の、殺意を伴った刃が三浦の首元目掛けて振るわれた。その瞬間、

 

「―――グァッ!!」

 

 ガキィンッ! ―――甲高い音が、響いた。

 

「なっ……!?」

 

 誰の声か、わからない。驚愕、戸惑い、畏怖、それら感情が入り混じった視線が向けられる。

 

 他ならない、今しがた首を刈られかけていた三浦へ。それは何故か?

 

 

 

 三浦が、真玄の刃を、口で……正確には“歯”で、防いでいたからだ。

 

 

 

 上顎と下顎の筋力のみで刃を挟み込み、振るわれた刃の動きを止めてみせた三浦。それを可能としたのは、刃がどの位置へ飛んできて、尚且つどのタイミングで食い止めれるのか見切れる反射神経。鍛え抜かれた顎の筋力。そして何より、それを為そうと考えた恐るべき度胸……全てを兼ね、三浦は成し遂げた。そして防いでみせたのだ。

 

「ギギギギギギッ……!」

 

 真玄もまた、そんな三浦の行動を予測できなかったのだろう。声を上げずとも目からは戸惑っているのが見て取れる。対し三浦は、真玄の刀を口に咥えたまま顎にさらに力を込めていき、そして、

 

「―――ッ!!」

 

 バキリと、かみ砕いてみせた。

 

 飛び散る金属片。空しく落ちる刀の切っ先。半ばで折れた、もとい砕かれた刀を手にたじろぐように後ろへ下がる真玄。

 

「す、すごい……!」

 

 椿からそんな声が漏れる。刀をかみ砕くなど、誰が想像するのか。四天王さえも、呆気に取られる光景。リーンもまた「……ほんと滅茶苦茶ね」と呆れ交じりに呟かれる。

 

「プッ……さぁ、仕切り直しだ」

 

 口の中に残っていた刀の破片を吐き捨てる三浦。その破片は、かみ砕いた際に口内が切れたせいで血に塗れていたが、三浦はことなど気にすることなく、口の端から流れる血を拭う。

 

 口の中がズタズタだから何だ、あばらが折れようが何だ。ここで膝を着くこと、それ即ち敗北と同じこと。武人の端くれとして、目の前の将に対し、そのような敗北は決してしてはならない。その気概を持ってして、三浦は構えた。

 

 対する真玄もまた、流石死しても武将というべきか、すぐに臨戦態勢に入る。折れた刀は投げ捨て、代わりに落ちていた他の鬼面兵が握っていた槍を拾い上げた。鋭い矛先は真っすぐ、三浦へと向いている。

 

 再び二人の間に走る緊張。先に動いたのは真玄。踏み込むと同時、長い槍による突きが三浦を襲う。常人ならば避けれないであろう素早く、鋭い突き。それが一突きとは言わず、連続で突き出されるそれは、まるで啄木鳥の嘴。一撃でももらえば命に関わるそれを、三浦は絶妙な足さばきで危なげなく避け続ける。

 

「食らうがいい……迫真空手部奥義……!」

 

 避ける、避ける、避ける。避けながらにして、身体は徐々に真玄へと近づいていく。身体に、頬に矛先が掠ろうが、折れた骨が痛もうが怯まない。怯むこと、それすなわち死であることをわかっている三浦は、真玄の槍がより一層速く突き出されても尚、接近を止めることはない。

 

 そして、

 

 

 

便乗拳(びんじょうけん)!!」

 

 

 

 突き出された槍を、身体を捻り回転させながら受け流し、

 

 

 

「『双打(そうだ)(よう)』!!」

 

 

 

 受け流した槍の一撃を己の回転に乗せ、その勢いを利用しつつ突き出された両の掌が、真玄の鬼面に炸裂。大砲もかくやと言わんばかりのその一撃は、周りの砂利をも弾き飛ばす衝撃を放つ。

 

 便乗拳『双打・陽』―――相手の正面からの攻撃、所謂正拳突き等の限定的な攻撃をいなし、その力を利用して相手に反撃の一撃を叩き込むカウンター技。その一撃は、相手の攻撃が強ければ強い程に威力が増す。

 

 いかに真玄の鬼面が特別であろうとも、そんな一撃を食らってはただではすまないのは明白だった。双打・陽によって、真玄の鬼面は砕け散り、手にしていた槍が地面に落ちる。やがて、真玄の身体はゆっくりと膝を着いていき……その場で項垂れ、動かなくなったのだった。

 

「……俺の……勝ちだ」

 

 三浦が小さく、己の勝利を宣言。それと同時に、野獣たちもまた決着の時を迎えようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『ククク、どうやらここまでのようですねぇ』

 

 大きく抉れた地面。そのすぐ傍に倒れ伏す野獣。もはやピクリとも動かない野獣を見て、完助は己の勝利を確信。愉快さを隠すことも無く、笑った。

 

『ギリギリで直撃は免れたようですが……それでも無事ではすまなかったみたいで。まぁ、死ぬ時間が少し伸びた程度、些細なことです』

 

 ズシンと、重い音をたてながら野獣へ歩み寄る完助。手に持つ段平が妖しく光る。

 

『さぁ、そろそろ幕引きとしましょうか。なに、可能な限り傷つけませんよ。あなたの身体はとても魅力的だ。すぐに我が軍の一戦力になるでしょうからね……』

 

 一歩一歩、野獣へと迫る。さながら断頭台へ迫る処刑執行人を思わせる光景。あと数歩進めば、野獣はその段平によってトドメを刺されてしまうことだろう。

 

 完助の身体を、高揚感が包む。不死の宝玉の邪悪な力がそうさせているのか、鬼面の内側で口の端が吊り上がっていくのを止められない完助。やがて段平の刃が届く距離にまで辿り着こうとした時には、口の吊り上がりは限界で少し痛い程だった。人はそれを狂気と呼ぶ。が、今この場でそれを指摘する者は、誰一人としていない。

 

 そして、段平を大きく振り上げ、野獣目掛けて振り下ろす

 

 

 

「シャイニングジャベリンッッ!!」

 

 

 

 寸前、屋敷から光の槍が飛来、段平を持つ手に突き刺さった。

 

『な……なにぃ!?』

 

 予想外だとばかりに叫ぶ完助。槍によって手の先が消滅、段平は取り落とされ、地面に豪快な音をたてて落下した。

 

「よし……!」

 

 その原因を作った存在を、完助は身体ごと振り返って視認する。正体は、先ほど屋敷へ向けて吹き飛ばした筈の木村。全身傷だらけで頭からも血を流し、明らかに軽傷とは呼べない状態。それでも尚、五体満足でしっかりと立ち、障子が崩れた部屋から真っすぐ完助を見据えて立っていた。

 

(ギリギリで、防御が間に合った……おかげで油断を誘えた!)

 

 事の真相はこうだ。完助の一撃は、確かに人間一人を死に至らしめる力があった。直撃していれば、木村の全身の骨は粉々になり、屋敷に突っ込んだ時点で死は免れなかっただろう。

 

 そうならなかったのは、一重に木村がユミナと共に作成したダガーナイフ。竜の素材で作られた盾にもなるそれは、かつて水晶の魔物による攻撃を防いだことがあった。そしてその防御力によって、一度ならず二度までも木村の命を守ってくれた。

 

 拳が当たるギリギリで盾を展開。流石に衝撃を完全に殺すことはできずとも、こうして立っていられるだけでも御の字である。

 

 そして、急いで前線に戻るために何とか立てる程度まで回復。こちらを死んだものと見なした完助に一矢報いた、というわけである。

 

『おのれ死に損ないめ! よくも邪魔を……!』

 

 思惑外れ、怒りに染まった声を上げる完助。手を再生し、段平を拾うことも忘れて木村へと身体の向きを変えた。

 

 それを見逃さない男が、一人。

 

 

 

「ヌ! フッフッ! ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!」

 

 

 

 跳躍する勢いで起き上がり、咆哮。目が飛び出さんばかりの眼力をもっての咆哮は凄まじく、空気が震える程だった。

 

『なに、貴様まだ……!?』

 

 完助が、まだ起き上がれる体力を残していた野獣に気を取られる。その瞬間を、木村は見逃さない。

 

「野獣先輩! 顔です! 奴の顔面に一発くれてやってください!!」

 

「かしこまりっ!!」

 

 叫ぶ木村。応える野獣。野獣はボロボロになった身体をむち打ち、足に力を入れて跳躍。今度は首ではなく、直接顔面に向けて一太刀を叩き込むべく振り上げる。完助は腕を掲げようとするが、今度は間に合わず。

 

「ヌッ!!」

 

『ぎあああっ!』

 

 袈裟懸けの一閃。完助の顔を守っていた鬼面が斜めに割れて落ちる。露わになった完助の顔面にも赤い筋が走り、血が噴き出す。が、

 

「く、くくく、くはははは!!」

 

 余裕を取り戻したかのように、完助が笑う。すると、完助の顔の傷がみるみる消えていった。

 

「残念でしたねぇ! どうせ鬼面兵と同じように考えていたのでしょうが、生憎と私はたとえ鬼面を砕かれたとしても平気なのですよ! ハハハハハ!!」

 

 嘲り、笑う。やっても無駄だ。いい加減諦めろ。言外にそう宣言する。そして野獣たちの顔が絶望に染まる顔を見る。

 

「(生憎と無駄じゃ)ないです」

 

 が、ニヤっとした野獣の顔が目に入り、完助は戸惑う。どういう意味だと問おうとした。

 

 ハラリと、残された右目の端で何かが落ちる。何だ? と確認しようと、落ちた何かを見やる。

 

 それは、眼帯。己が常日頃付けている、左目を覆う眼帯だった。紐が先ほどの一撃で切れたのだろう。

 

 そして今、その眼帯が守っているのは、無くなった左目ではなく……。

 

「今だ! アポーツ!!」

 

 木村の声と共に、完助は左目があった場所に違和感を覚えた。そこにあるはずの、左目の代わり。それがないことに、完助は気付く。

 

「な……なぁ!?」

 

 再び木村に振り返る。そこには、野獣のようにニヤリと笑う木村。

 

 そして、右手には赤く、禍々しく光る宝玉。それを軽く上に投げ、キャッチして完助に見せつける。

 

「き、貴様、いつの間に!?」

 

「お前がしきりに顔を守ろうとしていたのを見て、ピンときたんだ。いくら身体を切られても平然としていたアンタは、首を、もとい顔を守ろうとする仕草をしてきた」

 

 木村は疑問に思っていた。身体はいくら切られようが魔法を食らおうが、ノーダメージで笑ってすらいた完助が、首から上には防御するリアクションを見せていたことを。

 

 それが意味することはつまり、

 

「眼帯の内側に宝玉があるのは、鎧を纏う前の光を見てお見通しだ。つまり、この宝玉さえ無ければお前は……!」

 

 宝玉……すなわち、弱点がそこにある、という証明に他ならない!

 

「か、返せ! それを返せぇぇぇぇ!!」

 

 これまでにない、必死の形相を見せる完助は、木村へと剛腕を向ける。

 

「木村ぁぁぁっ!!」

 

「先輩!!」

 

 が、それより先に木村は宝玉を投げつける。投げた先に立つのは、野獣―――邪剣“夜”を脇へと引き、腰深く落とした構えを取っていた。

 

「行きますよぉ……行きますよぉ……!」

 

 息を吐く。肺の中をクリアにし、真っすぐ、飛んでくる宝玉を見据える。完助は慌てた様子で、伸ばした手を木村から野獣へと飛んでいく宝玉へと変えた。

 

 後少しで、完助の手が宝玉に触れる。そして掌に宝玉が包まれ

 

 

 

 

「『陰無之一太刀』―――――!!」

 

 

 

 

 る寸前、宝玉に向けて走る一閃。それは完助の手をも真っ二つに両断せしめる、野獣の鮮やかな一太刀。

 

 やがて、完助の五指がバラバラに空中分解する中―――完助にとって大事な宝玉が、真っ二つとなって砂利の上に落ちていった。

 

 




次回、完助編終焉。こういうバトルシーンは疾走感のある神社アレンジを聴きながらだと筆が乗って進むのが速いのなんの。

代わりに誤字脱字多くなって色々死ぬ。

あ、そうだ(唐突)

最近、リリカルなのはを今更ながら観たりして、初めて完全オリ主物のSS書いてみたから、ほら、読めよ読めよ、ほら(強要)

今後の活動についてではなくお気楽アンケート開催。アニメ異世界スマホのEDでスマホ太郎がヒロインたちに手を差し出すシーン、差し替えるとしたら誰がいい?

  • スマホ太郎(アニメ主人公)
  • 望月冬夜(原作主人公)
  • 野獣先輩
  • 三浦
  • 木村
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