異世界空手部・やわらかスマホの裏技   作:コッコリリン

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空手部なのに冒険者とかこれもうわかんねぇな(二足の草鞋)


第二章
9.迫真空手部、冒険者になる


 王都へ来て次の日の朝が来た。朝日によって湖『パレット湖』が煌めき、王都の上空では白い鳥が群れを作って空を舞う爽やかな朝だ。前日の夜は正式に八重が迫真空手部のメンバーに入ったことを祝うために騒ぎまくって飲みまくって食べまくった。そして高めの宿屋に泊まり、この世界に来てようやくまともな寝床で眠ることができた……筈なのだが。

 

「アー逝キソ逝キソアッアッアッ」

 

「ポッチャマ……」

 

「うぅ……頭がガンガンする……」

 

 それを堪能する前に二日酔いをどうにかしたい三人なのであった。

 

「あれほど止めたというのに……自業自得でござる」

 

「ポッチャ(呆れ)」

 

 呆れつつも冷たい水を張った桶に浸けていた濡れタオルを絞り、ベッドに沈んでいる三浦の額に乗せる八重。三浦の枕元ではポッチャマが八重の心情を表すかのように「やれやれだぜ……」という仕草をしていた。

 

 まぁ、さすがに白金貨一枚分でお釣りが来る程度だったが、言い換えたら白金貨一枚を使うレベルで飲みまくったのだ。八重は酒こそ飲まずに料理のみ(それでも常人の倍は食った)だったが、三人がどれほどの酒を浴びるように飲んだのか、思い出すだけで頭が痛くなる。特に野獣などマジで浴びていた上、テンション上がって「ダイナモ感覚! ダイナモ感覚! YO! YO! YO! YO!」などと意味不明な歌詞の歌を叫び出したせいで危うく店を出禁にされるところだった。

 

「すまんゾ八重ちゃん……八重ちゃんはいいカッチャマになれるゾ……」

 

「拙者は三人の母上になった覚えはないのでござるが……」

 

「本当すいません……ご迷惑おかけします」

 

「逝キマスヨー……逝キマスヨー逝ク逝ク……」

 

 謝る三浦と木村、そしてグロッキー状態から復帰できないでいる野獣。もはや会話できる状態ではない。

 

 せっかく大切な話があるというのに……八重はため息を吐き、おもむろに椅子から立ち上がった。

 

「致し方ない。二日酔いに効く薬を買ってくるでござるから、しばしお待ちくだされ」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

「ポッチャマ……」

 

「ヌッ」

 

「まったく……ポッチャマ殿、留守を頼むでござる」

 

「ポッチャー(了承)」

 

 公爵からもらったメダルを使えば貴族御用達の高級店に行ける。そこならば即効性の薬があるかもしれない……その分、割高だろうけれど。せっかくの大金だというのに、このままだとそのうち使い果たしてしまうだろうなと八重は不安になりながらも、羽を振りながら見送るポッチャマを背にしながら部屋から出て行った。

 

 爽やかな朝日が降り注ぐ王都。だというのに、とある宿の一室から亡者が命を求めるが如くおどろどろしい呻き声が聞こえてきたと、宿の前を通った人々は口にしていたという。

 

 

 

 

 

 

 

「効きスギィ! めちゃくちゃ効きますよ~薬~!(元気ハツラツ)」

 

「スゲー効果だゾ~!」

 

「すごいですねこれ。あれだけしんどかったのにもうスッキリしました」

 

「そりゃあ一つ金貨一枚もした超高級品でござるからな……効果が無かったら困るでござる」

 

 ベッドから起き上がってテーブルに着く三人に対し、向かい側に座っている八重は高い買い物だったと少しむくれながら三人に説明した。おかげで貴重な白金貨を使う羽目になってしまった。出来れば使いたくなかった八重としては不満でしかなく、プンスカという擬音が出そうな程だった。恩着せがましく聞こえるだろうが、文句の一つも言いたくなる。

 

「う……本当すいません」

 

「本当でござるよもう! もう後先考えずに飲むのはやめていただきたいでござる!」

 

「大丈夫だって安心しろよ~、ヘーキヘーキ、ヘーキだから。次回からは気を付けて飲みますよ~飲む飲む」

 

「野獣殿の言葉が一番信用ならんでござる」

 

「そうだよ」

 

「というか三人ともでござる!」

 

「ポッチャマ」

 

「すいませんでした……」

 

「ポチャ」

 

 朝から二日酔いのせいでもう昼近く。八重の説教で一日が始まった三人にとって散々なスタートとなってしまうのであった。というか一番散々なのは三人の看病をした挙句痛い出費をする羽目になった八重だと思う。

 

「本当にもう……これから大事な話があるというに、三人がそんな調子では先が思いやられるでござる……」

 

「大事な話?」

 

 ため息まじりに愚痴る八重に、木村が聞く。八重も気持ちを切り替え、説明を始めた。

 

「三人とも、正直今のままでいいとは思っていないでござろう?」

 

「ヌッ……まぁ、確かにそうだよなぁ。金はあっても使っていくからいずれ無くなるだろうし」

 

「そうだよ。確かに4000万は大金だけど、いつかは尽きるゾ」

 

「家を買う予定ですし、このままじゃやっぱりまずいですよね……」

 

 後のことを考えないレベルで酒を飲んでいた三人だったが、やはり今後のことは心配なのだろう。八重の話を真剣に受け止め、不安を口にする三人。

 

 当たり前のことだが、先立つ物はやはり金。そして金を手に入れるのならば当然、働かなければいけない。

 

「それで……三人とも、働き口はどこか希望があるでござるか?」

 

「そうですねぇ……やっぱり僕は、王道を征く……力仕事ですか」

 

「俺もそっち方面を考えているゾ。頭使う仕事は苦手だゾ~」

 

「ポッチャ」

 

「以前の演武も一瞬考えましたけど、あれだけで食っていけるほど世の中甘くないですよね……僕も先輩たちと同じ考えです」

 

 元々力はある三人。神様補正もあって腕力も十分。この世界に降り立った直後は文字もわからなかったことで途方に暮れるしかなかったが、八重のおかげでその辺りの問題も解消された。今ならば配達なりなんなりこなす自信は十分にある。すぐさま即戦力として頼りにされるだろう。

 

 と、そんな三人に向けて「なるほどでござる」と頷いていた八重だったが、突然フフンと不敵に笑った。

 

「時に……拙者に一つ、提案があるんでござるが」

 

「提案ですか?」

 

 木村が聞き返すと、八重はテーブルからやや身を乗り出した。

 

「三人とも、冒険者ギルドに登録してみるのはどうでござろう?」

 

「ファッ!? 冒険者ギルド!?」

 

 ここに来てファンタジー小説にも出て来る言葉を聞いて、野獣が声を上げ、木村が不安な面持ちで聞いた。

 

「冒険者ギルドっていうと……僕のイメージでは、雑用から魔物退治まで、依頼された仕事をこなしていって報酬をもらうっていうのがあるんですが……」

 

「左様でござる。ギルドに行けば力仕事もあるし、何よりいずれまた旅に出た際、他のギルドにて依頼を受ければそれで路銀を稼ぐのにも役立つでござる。おまけに今持っている大金を預けることもできるでござるし、これを機に全員で冒険者としてギルドに登録しに行こうと思っていたでござるが、如何いたそう? 三人とも実力は確かだし、うってつけかと思うでござる」

 

 もっと早くに思いつくべきだったが、正直そんな余裕がないほどに切羽詰まっていた旅だった。ようやく落ち着いた今だからこそ、ギルドに登録するのも悪くはないと八重は思い至った。

 

「いいねぇ! まさに王道を征くって感じだな!」

 

「いいゾ~それ。登録してぇな~俺もな~」

 

「う~ん……確かにそれにこんな大金をいつまでも手元に置いておくのもどうかと思うし……けど魔物討伐かぁ……大丈夫かなぁ」

 

「大丈夫だって安心しろよ~。何せ俺らはリザードマンを相手取って倒したんだぜ? 余裕余裕!」

 

「そうだよ」

 

「ポチャ」

 

 木村は些か不安な面持ちだったが、八重の提案には賛成のようだった。全員が乗り気であることがわかった八重は、椅子から立ち上がる。

 

「決まりでござるな。ではこれよりギルドへ行って登録して依頼を受けに行くでござる」

 

「え、今からですか?」

 

「善は急げでござるよ」

 

「お、そうだな」

 

「ポッチャァ!」

 

「ホラ行くど~」

 

 ノリノリな三人と一匹に連れられ、まだ少し不安そうな木村も後を追う。木村としては、正直まだ魔法の力を満足に使いこなせていないのが懸念事項だったが、今はそうも言っていられないのもまた事実。今はとにかく、仲間の足を引っ張らないようにしようと木村は改めて決意した。

 

 

 

 

 

 

 王城の近くに位置する建物に、目的のギルドがあった。これもまた立派な屋敷と思わせる程の建築物であり、そこでは多くの冒険者が依頼を受けるために出入りしている。飲食店も併設されており、そこで食事や待ち合わせをしていたりと賑わいを見せていた。

 

「以上で説明は終わります。わからないことがあればまた係の者にお尋ねくださいね?」

 

「承知したでござる」

 

「んまぁ、そう……よくわかんなかったです(思考放棄)」

 

「あ~もう一回言ってくれ(理解不能)」

 

「ポチャ?(何言ってだお前)」

 

「すいません、この二人は放っておいてください」

 

「ではこちらの書類に必要事項を記入してください」

 

 そこのカウンターで一行は、受付嬢からギルドの説明を受けていた。難易度によってランク分けされており、そのランクに見合った依頼しか受けられないことや、依頼が失敗してしまうと違約金が発生すること、さらに依頼に複数回失敗してそれが悪質だと判断されればギルド登録抹消、他の町のギルドでも再登録は不可能となるペナルティが発生する等、様々な説明を受けた。

 

 まぁ、約二名程チンプンカンプンといった顔で聞いていたため、木村と八重が後から簡単に説明し直すというハプニングもあったが、それはどうでもいいだろう。

 

 とりあえず、一行は旅の間に八重からある程度の読み書きは教わったため、難しい言葉は八重に翻訳してもらいつつ記入していく。そして書類を手渡すと、受付嬢から黒いカードとピンを受け取る。そのピンで指を刺し、血液をカードに染み込ませるで登録が完了するとのことだ。

 

「ファッ!? 針を指に刺すとかちょっと怖すぎんよ~?」

 

「我慢してくださいよ、子供じゃないんですから」

 

「注射の方が怖いゾ……」

 

「ポッチャァ」

 

 ビビる野獣と三浦だったが、とりあえずチクッと指にピンを刺し、その指でカードに触れると、カードに白い文字が浮かんできた。

 

「これで登録は完了です。偽造防止のために持ち主以外が触れるとカードが灰色に変わります。また、紛失した際は受付に申し出てください。料金はかかりますが、再発行いたしますので」

 

「ありがとうございます」

 

 いくつかの手順を踏み、ようやくギルド登録が完了した。これでようやくギルドの一員になることができたので、ひとまず先に大金をギルドに預けてから、依頼を受けるために依頼書が貼られているボードの前に向かった。が、

 

「多スギィ!」

 

 さすがは王都のギルドといったところ、左右に広い大きなボードには何百枚と依頼書が貼られており、多くの冒険者が依頼を吟味している。幸い、野獣たちはボードの前に立つことができたため、依頼書が見えないという事態に陥らなくて済んだが、それでも依頼書の多さには圧倒されていた。

 

「いろいろあって悩むゾ……どれがいいかな~」

 

「けど僕たちが受けられるのは初心者向けの依頼だけだし、そう考えたら選択肢はそう多くはないですよね」

 

「あ、そっかぁ」

 

「まぁ地道に依頼をこなしていけばランクも上がって受けられる依頼も増えるでござるから、頑張るでござる」

 

 ランクは色分けされており、黒は初心者であることを示している。ランクが上がればカードの色も変わっていくという仕組みだった。

 

 とりあえず、簡単な文字は読めるが、わからない単語などは八重が補佐しつつ、依頼を吟味していく一行。

 

「雑草抜き、荷物運び、迷い犬探し……完全な雑用だなぁ……あ、魔獣討伐もありますね。初心者向け依頼だからやっぱり弱いんでしょうか」

 

「それでも人に害なす存在でござるから、油断していたら足元をすくわれるでござるよ」

 

「やっぱり手堅い依頼からいった方がいいよな~俺らもな~」

 

 簡単な仕事から危険な仕事まで様々。初心者向けでも色々あり、悩む一行。と、野獣が気になる依頼書を見つけた。

 

「こんなんありますあります」

 

「お、どれだゾ?」

 

 野獣が見つけた依頼書、そこには『グリーンスライム討伐依頼』とあった。

 

「スライムですか。確かに雑魚モンスターみたいな印象はありますね」

 

 有名RPGシリーズでは最初に戦うのがスライムというのがほとんどなため、木村も簡単そうという感想を抱いた。

 

「いいゾ~これ。報酬も銅貨20枚で悪くないよなぁ」

 

「ポッチャ」

 

 三浦とポッチャマも異論はないらしく、ほぼこの依頼に決まったようなものだった。

 

「うし、じゃこれにしよっか」

 

「ダメでござる!!」

 

「ファッ!?」

 

 が、ここで八重から声があがる。あまりに力強いため、三人は思わず仰け反った。

 

「な、何だよ八重。この依頼の何がダメなんだよ?」

 

 ほぼ決まりかけていたというのに、ここに来て八重から却下されたために不服を申し立てる野獣。しかし八重は譲らない様子で、それでいて顔を真っ赤にしてポニーテールを揺らしながら頭を振った。

 

「嫌でござる! スライム討伐だけは御免被るでござる!」

 

「あの、八重さん理由を説明してくれないと僕たちも納得いかないというか……」

 

「そうだよ」

 

「ポッチャ」

 

 何故そこまでして拒否するのかわからないため、理由を問う木村と三浦。スライムに対しトラウマを持っているのだろうか? そう考えていると、少し冷静になった八重が、尚赤面しつつ説明する。

 

「グ、グリーンスライムは……その、何故か衣服を溶かしてくるでござる。つまり乙女の敵でござるよ」

 

「ファッ!? 服を溶かすぅ!?」

 

「えぇ……」

 

「ポチャ」

 

「え、何それは……」

 

 が、蓋を開けてみれば、何と言うか一昔前のR18ゲームに出てきそうな特性を持っているためだという。確かに女性の天敵とも言えるような都合のよすぎる能力だが……。

 

「却下だ却下! 俺だって服溶かすような奴なんかと戦いたくないぞ!」

 

「いや何で野獣先輩が八重さん以上に抵抗するんですか……まぁ、でも、八重さんが嫌ならしょうがないですね」

 

「他の依頼探すゾ」

 

「ポッチャ」

 

「か、かたじけないでござる」

 

 ホッとする八重。チームであるためにある程度の妥協は必要とは言えど、生理的に無理なものは無理。というわけで、スライム討伐は諦めることにした。

 

 まぁ、ここは地道にコツコツと、というわけで、配達等の仕事にしようかと思っていた矢先、木村の目に一枚の依頼書が留まった。

 

「あ……これとかどうですか?」

 

 指さした依頼書には、『一角狼討伐依頼』と書かれてあった。旅人を襲う一角狼という獣の討伐で、報酬は銅貨16枚。一人報酬銅貨4枚……悪くないと皆が思った。

 

 

 

 

 

 

 

「アァッ! ハァッ! ハァッ! ハァッ!」

 

 王都から歩いて30分という近さの森。そこは偶然にもスゥシィの護衛として通った森の中であり、そこの道を野獣は喘ぎ声にも似た声で走る。その後ろには灰色の体毛の大人程の身体の大きさを誇る、額に黒い一本角を生やした獰猛な一角狼六匹が野獣に追いすがっていた。

 

「野獣先輩、もうちょっとです! 頑張ってください!」

 

「頑張れ野獣!」

 

「野獣殿、もう一息でござるよー!」

 

「ポッチャァ!」

 

「キツスギィ! やはりヤバイ!(予測済み)」

 

 野獣が走るその先、三浦たちが木の影に隠れながら野獣を応援する。苦悶の表情を浮かべる野獣だったが、やがて三浦たちが潜む木と木の間を通り過ぎて行く。当然、その後を追う一角狼も野獣が通った個所を通り過ぎようとした。

 

「今です!」

 

 と、ここで木村が合図を送る。左右の木に隠れていた三浦と八重が持っていたロープの両端を同時に引っ張る。すると、地面と同色だったロープはピンと伸びる。勢いよく走っている時に引っかかると誰もがすっ転ぶだろう。

 

 当然、それは人でなくても同様である。

 

「ギャイン!?」

 

 先頭を走っていた一角狼がローブに足を引っかけて転倒する。そうすると雪崩のようにして後続の一角狼たちも折り重なるように倒れ込んだ。

 

「火よ来たれ、赤き玉、ファイアショット!」

 

 そこをすかさず、木村の魔法が炸裂。小さな火球が木村の翳した手から飛び出し、一まとめになった一角狼を焼き尽くしていく。一角狼は悲鳴を上げる間もなく、その身を焼き尽くされていった。

 

「う……焦げ臭いゾ……」

 

「ポッチャァ……」

 

 生き物が焼ける臭いに思わず三浦が鼻を抑える。その頭の上でポッチャマもまた嘴を抑えていた。

 

「……自分から提案しておいてなんですけど、残酷すぎたな……」

 

 疲労感を覚えながら、木村は広げていた本を閉じる。最近になって少し魔法の扱い方が慣れてきたものの、やはり連続使用は堪える。それに一匹ずつ倒していくのも効率が悪い。

 

 そこで考えたのが、一か所に固まった一角狼を一回の魔法で一網打尽にするという案だった。それを伝えたところ、野獣が自ら囮を買って出て、何かあった時用にいろいろ買い込んでいた道具の一つであるロープを使って転倒させてから魔法を使うという作戦だった。

 

 囮は野獣、ロープを引っ張るのは三浦と八重、そして作戦の要である木村が殲滅……結果は成功。チームワークの勝利だ。

 

「申し訳ないでござる、木村殿。一人負担の大きな役割を任せることになってしまい……」

 

「すまんゾ木村。次は俺が前に出てやるからな」

 

「いえ、いいんですよ。発案は僕だったし……それに僕だって今後のことを考えて魔法を使いこなしたかったので」

 

 魔物とはいえど命は命。それを奪うのに抵抗が無いとは言えない。そんな役割を木村に押し付けてしまう形になってしまったことを詫びる八重と三浦に、木村は疲れつつも何とか笑って返した。

 

「あのさぁ……木村だけじゃなくって俺には何か労いの言葉とかないわけ? 頭に来ますよ!」

 

 と、そんな時に囮になっていた野獣がジト目で皆の下へと戻ってきた。

 

「わ、すまないでござる野獣殿! ご苦労様でござった!」

 

「お疲れ様だゾ~野獣! 見事な囮っぷりだったな~」

 

「ポッチャ」

 

「ありがとうございました野獣先輩。先輩のおかげでうまくいきましたよ」

 

「あ、そう? そう言ってくれるんなら頑張った甲斐があるってもんだよな~」

 

 不機嫌から一転して上機嫌になる野獣。相変わらず乗せられやすいなこの人……と木村は思ったが、口に出さないでおいた。

 

「とりあえずこれで依頼は完了だよな? 確か六匹ちょうどだったっけ」

 

「そうでござるな。一角狼の角を切って依頼達成の証として持って行くでござる」

 

 そう言って、八重は小刀を使って器用に一角狼の死体から角を切り落としていく。死体は炭化していたが、角は多少焦げているだけで形を保っている。十分討伐の証になるだろう。

 

「じゃあ俺ら、角を取った狼を埋めて帰るから(仏の心)」

 

「そうですね……獣とはいえども野晒しはあんまりですし」

 

「お、そうだな」

 

「ポチャ」

 

 八重以外の三人は穴を掘っていく。そして数十分後、一角狼の角六本を袋に入れて八重が立ち上がり、狼たちの死体を穴に埋めた三人も手の汚れを払った。最後、狼を埋めた穴に向けて四人と一匹は両手を合わせ、せめて安らかにと願いを込めて黙祷した。

 

「これでよし。じゃあ早速戻るでござる」

 

「ぬわぁぁぁぁぁん疲れたもぉぉぉぉぉぉん」

 

「チカレタ……」

 

「まだ報告があるんですから早いですよ二人とも」

 

 初任務達成という達成感の中、一行は元来た道を歩く。と、ふと草むらがガサガサと音を鳴らしているのに気付いた八重が足を止めた。

 

「む……三人とも、止まるでござる。まだ生き残りがいるやもしれませぬ」

 

「えぇ!? まだいるんですか!?」

 

 八重が制止し、一行は身構える。そして各々臨戦態勢を取った。

 

 やがて草むらが大きく揺れる。そしてとうとう音の主が姿を現した。

 

 だが、その姿を見て一行は驚き固まる。何故ならば出てきたのは一角狼でも、ましてや他の獣でもない。

 

「あれ? お主ら……」

 

「ス、スゥ殿!?」

 

「ファッ!?」

 

 大きな帽子を被り、美しいブロンドの髪に葉っぱを付けたままきょとんとしている、スゥシィだったからだ。

 

 

 

 

 

 

「な、何でスゥちゃんがここに?」

 

「そうだゾ。こないだ襲われたばっかりだっていうのに、護衛なしで一人じゃ危ないゾ」

 

「ポチャ」

 

 突然のスゥシィとの再会に驚き戸惑っている一行を前に、スゥシィは以前と変わらない腰に手を当てながら尊大に言う。

 

「大丈夫じゃ、わらわがここにいることを知るのはごく一部のメイドしか知らぬ!」

 

「そういう問題なんスかねぇ……? ってか何でまた森にいんだよ、護衛もつけずに」

 

 野獣の疑問に、スゥシィはよくぞ聞いてくれたとばかりにますます胸を張った。

 

「うむ! わらわがここに来た理由は一つ! 母上にプレゼントを贈りたいと思って来たのじゃ!」

 

「え、プレゼント……でござるか?」

 

 言葉の意味はわかるが、それがどうしてここにいるのかと、八重が疑問を口にした。

 

「この近くにわらわだけが知る花の群生地があるのじゃ。そこの花を母上にプレゼントして驚かしてやりたいのじゃ!」

 

「何でここの花なんだよ。街の花屋でよくないか?」

 

「そうだよ」

 

 野獣と三浦の疑問に対し、ブンブンとスゥシィは頭を振った。

 

「それじゃダメじゃ! わらわが自分で摘んだ花を母上にプレゼントしたいのじゃ!」

 

「何でそこまで……」

 

 飽く迄も自分が苦労して手に入れた花を贈りたいと固執しているスゥシィに木村が聞くと、スゥシィは少し顔を赤らめた。

 

「その、母上の目が見えなくなってから、わらわはずっと心配かけさせてきたからの……それで母上に喜んでもらいたくって、わらわが摘んだ花を贈りたいとずっと思っておったのじゃ……それでいつかは、母上にもわらわの秘密の場所を見て欲しいと思って……」

 

 ずっと目が見えなかった母親に、自分が大好きな場所にあった美しい物を見て欲しい……そんなスゥシィの思いから来る行動に、野獣たちの目頭が熱くなった。

 

「ヌッ……スゥの親孝行に涙が出、出ますよ……(親目線)」

 

「偉いゾ~スゥちゃん。カッチャマきっと喜んでくれるゾ~!」

 

「ポチャァ……!」

 

「本当か!? そう言ってくれると嬉しいのじゃ!」

 

 スゥシィの一途さに心打たれた一行。そして一つ、八重が提案する。

 

「ならば、拙者たちもスゥ殿のお供をさせていただけませぬか? 依頼達成の報告は明日にすればよいし、さすがに森の中を一人では危のうござる。拙者たちが護衛するでござるよ」

 

「いいですね! 僕も賛成です!」

 

「え……よいのか? わらわ、お礼をするのに手持ちが……」

 

 それを聞き、スゥシィが驚くも返せる物がないと遠慮しようとする。そんな彼女に、野獣と三浦が笑って返した。

 

「何言ってんだよ~スゥ! 俺たちもう友達だろ? 友達なんだから貸し借りとかそんなん無しだぜ!」

 

「そうだよ。俺たちは友達のカッチャマが喜んでくれるためのお手伝いをするだけだゾ。だからお礼とかそんなんいらないゾ~!」

 

「ポチャ!」

 

「お主ら……!」

 

 スゥを友人と呼んで憚らない彼らに、スゥシィは感謝の念でいっぱいになる。やがて「うむ!」と大きく頷いた。

 

「礼を言うぞ、お主たち! それじゃあわらわの秘密の場所まで案内するのじゃ!」

 

「オッスお願いしまーっス!」

 

「よろしく頼むゾ~」

 

「ポチャ!」

 

「じゃあ、よろしくお願いしますね」

 

「お頼み申し上げるでござる!」

 

 

 

 

 森の中を騒ぐ彼ら。森の暗闇から彼らを見つめる者がいることには誰も気付かない……。

 




八重ちゃん、無事迫真空手部のおかんになるの巻。

オリジナル展開とか考えちゃって、発想まで生意気じゃねぇかよ……(今更)

今後の活動についてではなくお気楽アンケート開催。アニメ異世界スマホのEDでスマホ太郎がヒロインたちに手を差し出すシーン、差し替えるとしたら誰がいい?

  • スマホ太郎(アニメ主人公)
  • 望月冬夜(原作主人公)
  • 野獣先輩
  • 三浦
  • 木村
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