現実は苦い。闇に堕ちる時が来た

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反省はしても後悔をしない者達へ


闇に沈む

ヒーロー。

世間では尊敬をされ敬うべき存在とされ富も名声も欲しいがままにする存在。

だがいつからだろう。

 

ヒーローが人間ではない化物にしか見えなくなったのは

 

現実に救いようのない業火の様に憎悪を抱いたのは

 

裏路地を無造作に進んでいく。そんな自分の鼻を腐臭が襲う。不法投棄されたゴミが辺り一面に撒き散らされ小蝿が集っている。常識を備えた人間であれば顔を曇らすか進行方向を変える程に撒かれたゴミを無感情に踏みつけながら進む。

 

ギロリ

 

そんな音が似合うほどに鋭い視線が自分を無遠慮に貫き舐め回すかのように全身を見定めてくる。その視線は1つではなく複数。なんなら自分の周囲にいる人間全てから送られてくると言っても過言ではない。

容赦ない視線を送ってくる人間を一瞥すれば一瞬でその人間がどのような人物なのか理解する。

 

ヴィラン。

 

裏社会を跋扈し犯罪に手を染め堅気ではない存在。

そんな存在が自分のことを無遠慮に、敵意を孕ました視線を送ってくる。それだけで普通の存在であれば顔面蒼白にし何とかこの場から逃げようとするだろう。だが自分にとってそんな視線どうでもいい。

視線を送ってくるだけで何もしてこないヴィラン達を無視し進めば会う約束をしていた人間が姿を現す。

 

「よぉ、待ってたぜ」

 

髪の毛を短く刈り込み坊主にした冷たい瞳をした男が一切の感情が感じられない声で自分に話し掛ける。

 

すまない。と言えば男は立派な口髭が生えた唇の端を上げ鼻を鳴らす。ギリギリ笑っていると他者が理解できるリアクションをするとオーバーに肩を上げる。

 

「気にするな。あんたの仕事をすれば遅刻なんて気にしねぇよ」

 

一分遅刻してきた部下を半殺しにしたと前回会ったときにポロリと言った人間が冗談交じりに言ってくる。次からは気を付けた方が身のためだろうとボンヤリと頭の片隅で考えていればチャポは顎をクイと上げる動作をし今回の会う事となった件を聞いてくる。

 

パンツのポケットに手を入れ一枚の写真を取り出し依頼をしてきたチャポに見えるように出す。

写真には髪の毛を後ろで縛った中東系の顔をした彫りの深い男が誰かと紙袋と札束を交換しあっている場面が写っている。

それを見たチャポは片眉を吊り上げる。長い関係から推察するに腸を煮え繰り返しているのだろう。顔面にほぼ感情を示さないチャポの少しの変化でどのような感情を内面に宿らしているのか理解できる自分がいた。

 

「そうか。商品に手を出していたのはこいつだったか」

 

無感情な声でそう言えばよ用件は済んだと言わんばかりに男はその場から消えようとするが、何か忘れてたかのように一旦立ち止まるとこちらに顔だけ向ける。

 

「『あの方』はお元気か?」

 

平坦な口調、だがよく聞けば興奮が少し混じっているのが分かる。

その言葉を聞き表情を全く動かさず極めて何もないかのように答える。

 

「お元気だ。あの方は人間の枠で語れるような方ではないのでね」

 

その言葉を聞いたチャポは裏路地で会ってから、いや最初に出会ってから初めての笑みを浮かべた。その笑みは人を何人も『行方不明』にしてきた悪漢らしい笑顔だ。

 

「そうか。それは良い。一つよろしく伝えておいてくれ。ゴラドカルテルのチャポが貴方のご健康を願っていると」

 

そう言い残しチャポは裏切り者に凄惨な拷問を、裏切り者の家族をこの世から消すため裏路地から消え去る。

 

 

日本のどこか。

 

「ほほー。あの人殺しがそのようなことを言っておったのか」

 

薄暗い視界に入る場所所々に管が通りカプセルの中に『何か』が収容された場所で白衣を着たずんぐりとした老人がこちらに背を向けモニターを見ながら独り言のように喋る。

 

「はい。しっかりとゴラドカルテルから金は全額送金されています。ドクター」

 

ゴラドカルテル。メキシコで誕生した犯罪組織。元は自警団であったが犯罪組織化。今では麻薬売買、殺人、売春斡旋。SNSで敵対組織の構成員を処刑する動画を有料で挙げ加虐趣味のある人間達が金を支払うという殺人をコンテンツとして発信するネジの外れた集団だ。

 

「そうか。ならばよいのじゃ。奴らは『利益』さえ存在すれば信頼できる。引き続き頼むぞ」

 

モニターから目を離さずドクターと呼ばれた男は淡々と言葉を紡いでいく。言葉の端々からは一切興味がなく、事務的な口調だ。

 

「はい。任せてください」

 

ドクターの興味はゴラドカルテルには一ミリも向かってなく、いま全興味が注がれているのは『例の兵器達』にだろう。そのことには気付いているが口には出さず用は済んだとその場を後にしようとするとドクターからついでとばかりの口調で言われる。

 

「そうそう。先生がお前のことを呼んでおったぞ。用件は聞いておらぬが」

 

その言葉を聞き自分の感情が昂るのが手に取るように分かった。

 

 

「やあ、元気かい?急に呼び出してすまなかったね」

 

薄暗い機械まみれの部屋の最奥。足元、天井とありとおらゆる場所から伸びた夥しい数の管が繋がれ椅子に座るかつて『悪の象徴』と恐怖を支配していた男が申し訳なさなど欠片も感じてない言葉で謝罪をしてくる。常人が言ったならばふん、と鼻を一回鳴らし真面目に受け取らないその言葉が自然と心の隙間に入り込む。

まるで人類の始祖を堕落させた楽園の蛇の甘言のように目の前にいる『人間』の言葉が心に無遠慮に染み渡る。

 

いいえ、お気になさらないでください『先生』。

 

そう言うと先生と呼ばれた男は気にするさ。最初期から僕に仕えてくれるかわいい、かわいい部下なのだからね。と声を1トーン上げ喜色が伺える声で食い下がってくると続けて男は言葉を続ける。

 

「長年僕に仕えている君だから話そう。いずれ僕は負ける。あの忌々しい『正義の象徴』に」

 

衝撃など欠片もない。その通りなのだろう。旗印である『先生』が弱くなったのは事実だ。だが、我らの天敵であり先生の弱体化の一番の要因である『正義の象徴』も同様に全盛期と比べれば弱体化している。

 

そうですかとだけ発すれば薄暗い部屋を沈黙が包む。その沈黙には悲惨さは含まれていない。

 

「相変わらず君は枯れきっているね。だからこそ信頼できる。君には『僕の後継者』のサポートしてほしいんだ。まだ幼く導かなければならない存在のね」

 

 

脳裏に後継者とされているまだ何も知らない、子供じみた『悪意』しか持ち合わせてない生意気な銀髪痩身のガキの顔が浮かぶ。

 

なぜ、あの子供に?先生ならば弱体化した『あいつ』に勝てるのでは?

 

「いや、僕は負ける。それも近い将来絶対にだ。その時にあの子は、弔は一人になってしまう。仲間が必要なのさ。彼の悪意を見守ってくれる存在が。それは黒霧だけでは役不足なのさ」

 

そう言うと先生は左手の人差し指で自分を指差し言葉を続ける。

 

「そのために君には様々なことを教えたはずだよ。ありとあらゆることを。君はこれから弔のために動き」

 

先生の言葉が反響し脳に直接語りかけてくるような錯覚を覚える。幾重にも『個性』を使用しているなと理解するがそんなことはどうでもいい。心が昂るのだ。次に発せられる言葉を聞きたく耳が、脳が、肉体の全てが先生の言葉を渇望している。

 

「弔のために死んでくれ。骰麻

 

口が歪に、そして邪悪に半月に似た笑みを作っているのが自分でも分かる。

 

やっとだ。私はやっと歩くことを止めることが出来るのか。

 

「良い笑顔だ。やっとだね。やっと僕と君の願いが成就される。さあ、行こう。闇の底から這い上がりこの社会を壊しつくそう」

 

 

 

 




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