温度を忘れた冬の夜に、
月光に照らされ空を舞う一人の少女がいた。

冬の夜に抗うように、
食卓を囲む仲間を待つ一人の少女がいた。

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雪の降らない、乾いた夜だ。
風で肌切れないか怖いけど、もうすぐ着くから我慢だ、我慢。

それにしても、今日の空は澄んでるなあ。
いつも雪続きでろくに夜空も見れなかったから、
月が大きく美しく見える!

さあもうひと踏ん張り、
少し風が強くて飛ぶのが難しいけど頑張るぞぅ!!



お鍋

帰巣本能、とでもいうのだろうか。

気づけば足の赴く家があった。

 

長い階段を上がって、古びた鳥居をくぐったのち、前に広がるは博麗神社。

割れた2枚の石畳に、風化しているこの鳥居。

全体的に古ぼけた印象はあるが丁寧に管理されており、ここが聖域だという事を認識させる、それでいてどこか安心できる妙な存在感というか、雰囲気を放っている。

 

そこに、容赦なく入り込む、一人の華奢な少女がいた。

唯一この場で違和感のない箒に、

白黒カラーのドレスのような魔女服、

魔女の服に似合う典型的な魔女帽、

そして月光を浴びきらめき、淑やかに美しく光る金の髪。

 

「霧雨魔理沙とは私のことだ!!」

 

本殿の障子がスラリと開かれた。

この風貌じゃ軋んで開けにくそうなのになあ。

 

「なに唐突に自己紹介してんのよ、もう鍋出来てるわよ?あんたが来るまでずっと待ってたんだから、お腹と背中がくっつきそう。早く上がりな。」

 

「へへ、今日って凍えるように寒い日にゃありがたいねぇ!ほら!鍋にはこいつが一番なんだぜ!!」

きつい思いして持ってきて正解だった。

3升は少し持ってき過ぎな気もしたけど、まあ晩飯代ってことでいっか!

 

「あ、魔理沙。

いつも来るのはいいけど、たまにはお賽銭。入れて来なさいよね。

ご飯代って思ってさ。」

私は時々、霊夢がさとりと同じ(心を読む程度の)能力を持っているような気がしてならない。

 

「あ、それと。」

「なんだぜ?」

 

「あんた私がこの扉開けた時失礼なこと考えなかった?」

持ってないよ...な?

ふいに怖くなってきた、多分気のせいなんだろうけど気のせいだと思いたい。

 

「ま、いいや。

早く上がってほら、部屋に冷気が入ってきちゃうでしょ」

 

「あ!ああ!!邪魔するぜ!」

靴を脱いだ私の、寒さにやられてかじかんだ手をとって霊夢はひっぱり中のコタツへと案内した。

 

「うっわ!あんたの手こんなに冷たくなっちゃって!

しかもこんな重たいもの持ってきて大変だったでしょ...」

 

「別に霊夢とあったかいもん食えるって思ったらこんなのへっちゃらなんだぜ!」

「そう...なら良いんだけど。ほら、あんたの分。」

温度を失った手に染みわたる一杯の暖かなご飯が盛られた茶碗は、私の手に感覚を思い出させてくれた。

 

「あんがと!んじゃ初めは何からいこっかな~!」

 

「こーら、あんまり箸で選びにいかないの、迷い箸って言うでしょ。」

 

「細かい事はいいだろ!やっぱり最初は大根だよな~」

上から覗き込んだ時に鍋の白湯気が顔全体を包み込んだ。

 

「あっちちち!」

「ほーら言わんこっちゃない...」

だけどその後の熱の余韻と顔に凝結した水分がほのかに気持ちよかった。

だがその水滴をふき取ろうとすると自分の顔がまだまだ冷たい事に、自分が驚いてしまった。

体が冷え切っていることを改めて確認して、

だからこそぐつぐつと煮え立った土鍋の中の野菜たちに心躍り腹が鳴る。

 

「今日は作り過ぎちゃった気もするから遠慮なく食べていいわよ。

ま、それにあんたがいれば残ることもないでしょうしね。」

ふっと霊夢は笑みを浮かべた

 

「な!霊夢だっておなじくらい食べるだろ!?」

 

「へぇ~。どんな道に逃げても、体は正直なのねえ。」

視線の向かってくる先には左手にこんもりと盛られた、

いや自分でもった野菜たちであった。

「ぐぬぬ~...」

 

「だからいいのよ、遠慮なんてしなくて。」

ぬう...なんっか負けた気がする...。

だけどそんな心情気にしてなんていなかった。

眼前に映るは山盛りの野菜、輝くご飯は白い宝石。

この膨れ上がった食欲をだれが止められるだろうか。いや誰しもが止められることなどできないだろう。

 

「...はあ。そのよだれ、垂れる前にかき込んじゃいな。」

「そうだな!!じゃあ気を取り直して」

 

『いただきます!』

 

 

冬はまだまだ続く。

この寒波に終わりなんてあるのだろうか、春なんて本当に来るのだろうか。

そう思える程、冬の代表のような今日の日和。

その中で抗うように暖かな同じ食卓を囲む彼女ら。

満喫する彼女ら。

きっと今年の冬も厳しくなるけれど、

きっと乗り越えていけるだろう。今日のように笑いながら。




温かい小説を夏に書いたはいい物の、明らかに季節外れな気がしたので懐で大事に温めていたら存在をすっかり忘れて一年が経過していました。

見直しはしましたが、なにぶん趣味なものでしておかしな所が多々あるかもしれません。そういうのも含めて感想の一個でも頂けた日には受験に受かった時のように心を弾ませ喜ぶと思います。

ここを読んでいただいてるという事は作品を読んでくださったとお見受けします。ご一読くださり心から感謝します。ありがとうございました。

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