「目が覚めたら骨でした。いや、なんでやねん!」
叫んだ俺にツッコミを入れる人間など居らず、俺は自分で自分にツッコミを入れる。
此処で時間を少々巻き戻そう。
俺は寝不足のような倦怠感を感じながら瞳を開く。何故か、空には満月が浮かんでおり、それで自分が屋外に居るのだと認識する。
「っ痛てて……酒飲み過ぎて外で寝ちまったのか?」
少々痛む頭を振りながら額に掌を押し付ける。いかんな、まだボーッとする。そこで俺は違和感を感じた。額に押し当てた手が妙に細かった。いや、細かったと言うか白くて普通は目にしない部分が露出していた。そして押し付けた筈の額から「カシャン」と何か固い物同士が当たった乾いた音が鳴ったのだ。
「ん?んんっ?」
寝惚けていた頭が更に混乱する一方で冷静になろうと思考が働く。いや、ちょっと待て……なんだ、これは?
自分の手をよく見るとそれは骨。握ったり、開いたりして、それが自分の手である事は間違いないと確信する。恐る恐る視線を下に向ける。そこにあったのは骨。あばら骨と下半身丸出しの骨。何処まで言っても骨だ。
「は、は、はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
急激に追い付いてきた思考に俺は近くにあった川まで走った。そして川に自分の姿を写す。満月の光で照らされた姿は川に反射し、今の俺の姿を偽りなく写してくれた。
『骨』『骸骨』『骸』
様々な呼び名の形容があれど、真実は一つ。
「俺……骨になってる……」
ガタガタと震え始める体。寒さで震えているのではなく、恐怖から来る震えだ。
「な、何が……一体、何が起きたんだ!?」
俺は自分自身に何が起きたのか理解できなかった。昨晩、何があったんだ!?いや、ちょっと待て……
「俺は……誰なんだ?なんで、何も思い出せない!?」
思考の海に沈みそうになった俺を別の思考が引き上げた。何も思い出せない。自分の事も。家族の事も。友人の事も。今までの生きてきた『俺』という人生そのものが。それらを必死に思い出そうとしても頭に霞が掛かったかの様に何も思い出せなかった。
「なんなんだ……これは………俺の身に何が起きたって言うんだ……」
俺はその場に膝を着く。バシャンと水が俺の身に振り掛かるがそれは今は重要な事じゃない。
「記憶もなく……肉体も骨のみ……なんなんだコレは!ふざけるな!なんで、俺がこんな目に合ってるんだ!」
目の前の川に写り込んだ自分の姿である骨を殴り付ける。当然、殴れる筈もなく水の触感の直後に川底を殴ってしまい、痛みが走った。
「痛て…て……あーあ、何してんだか俺は……」
殴った拳の痛みと川の水の冷たさから頭が急激に冷える。その場に座り込み、ぼんやりと空を見上げた。
「夢にしては体の感覚があるし、痛みもある。夢じゃなさそうだな。正直、悪夢にしか思えんが」
やれやれと冷たい川から上がる事にした。夜中に川に入るとか普通に危ないっての。ん、冷たい?
「なんで……冷たいって分かるんだ?いや、骨だろ!?」
そう、そこで俺は気付いた。先程から己の身は骨なのに川の水の冷たさや、川底を殴った時の拳の痛みを感じている。思わず、俺は川に顔を近付けて口を川に浸ける。
ゴクリと水を飲む事が出来た。喉が潤う感覚に更に疑問が湧いてくる。何故、痛みを感じる?何故、肌が無いのに水の冷たさを感じる?何故、骨だけなのに水が飲めた?と言うか声帯が無いのに何故、喋れた?
「訳が分からない……取り敢えず目が覚めた場所に戻ろう」
何か、生前の俺の手懸かりがあるかも。そんな淡い希望を持ちながら俺は目が覚めた先程の地点に戻った。
「これは……着物?ボロボロだが、ありがたい」
走り抜けたとは言っても川から極端に離れていた訳ではなかったので元の地点には直ぐに戻れた。そして其処にあったのは半ば地面に埋められていた感があるボロボロの着物。着流しで着てみると大きすぎるという事がなかったので生前の俺の所持品だったのかも知れない。更に……だ。
「刀か……こっちも酷いな。凄い刃こぼれしてるじゃないか」
まるで俺の墓の代わりにでもと突き刺さっていた刀。鞘もなく、刀身そのまま刺さっていた刀は刃こぼれが酷くマトモに使えるかが怪しい状態だった。これも俺の所持品だったのだろうか?
刀を引き抜き、他に俺の所持品らしき物がないかと辺りを見回すが他には無さそうだ。
「しかし……俺は何者だったんだ?と、言うか……」
俺は改めて自分の姿を再確認する。骸骨の体に紺色のボロボロになった着物を着流しで着ていて、刃こぼれの酷い刀を持つ。再認識すると魑魅魍魎の類いだ。
「これからどうするかな……こんなんじゃ人里にはぜったいに降りれないし」
人里に降りたら寺の坊主や祈祷師とかに成仏させられかねん。いや、成仏出来るかは別にしてだ。騒ぎは勘弁だ。
「取り敢えず……この体がなんなのか調べないとだな」
頭をポリポリと掻くと固い感触と「カリカリ」と音が鳴って虚しさが増した。
◆◇side???◆◇
私は『胡蝶カナエ』鬼を滅する組織『鬼殺隊』に所属する隊士にして花柱と言う鬼殺隊の幹部でもある。私は任務で訪れた村で上弦の鬼と戦い……敗れた。その鬼は鉄扇を使い、私の刀を折り……私の体を食べようと近付いてきた。私はもう、此処までなのか……そう諦め掛けた、その時だった。
「テメェ……何を食う気だ?あんな美人さんを食うとか正気か?」
「へぇ……これは面白い。鬼殺隊でも、鬼でもない者が立ちはだかるなんて。骸が動くなんて知らなかったよ」
鬼と私の間に立ち、私を庇うように鬼と向かい合い、背を見せる者。後ろ姿しか見えないけど、その姿は……着物を着て刀を持った骸骨だった。
これが私と彼が始めて会った時の事。
後に彼が『鬼狩の骨』と呼ばれる伝説の幕開けだった。
今回は『鬼滅の刃』の短編でした。
以前から鬼滅の刃の小説は書きたかったのですが足踏みしてました。今回はオリ主にしましたが、クロスオーバー作品も考えたりしています。
『うしおととら』『fateシリーズ』等々。鬼滅の刃の世界観に合いそうな作品って他にも結構ありそうです。