転生したドン・キホーテが真の騎士になるそうです 作:シデ・ハメーテ・ベネンヘーリ
ロワール作戦。
ジャンヌ・ダルクの信仰者の一人とも言うアランソン公が旗を振るその作戦は、激しく成功を遂げた。
もはや、イングランドの絶対的優位はない。
そんな時にあることが起きる。
ロワール作戦に次ぐランス進攻後のシャルル王太子の即位式である。
シャルル七世国王陛下となった王太子殿下は、もはやイングランドの掲げていたフランス王権をその手に掴んだのである。
特にランスはフランス王家では代々即位を行う由緒正しき場所。イングランド王の請求権失墜は確実だった。
さらに言えばここまで進軍されてはフランスの心臓であったパリまで目と鼻の先である。
だが……ここであることが起きた。
パリ侵攻派と講話派の対立である。
史実ではジャンヌ・ダルク処刑の遠因ともなったそれは、此度の世界線でも問題なく起きていた。
史実ではシャルル七世とジャンヌ・ダルクとに溝を作ることになるそれ。だが、今回は少し空気が違っていた。
「ドン・キホーテ卿、君はどう思う?」
流れ髪の国王、シャルルは連日起きる祝賀会の中でドン・キホーテ卿に話しかけていた。内容はパリ侵攻に関する事柄であることは間違いなかった。
「陛下、私はジャンヌの騎士。ジャンヌに従うまでです」
ドン・キホーテ卿は自身の黒髪を揺らし、シャルルへと物怖じすることなくそのように返事を行う。
「たとえ私が……そのせいで友人でなくなるとしても?」
少し鋭めの視線でドン・キホーテ卿を見つめるシャルル。
ドン・キホーテ卿は鈍感なのか違うのか、少し場にそぐわない「ふーむ」という声を呟きながら、シャルルへと返事をする。
「そうですな。私は陛下と友人でいられなくなるのは嫌です」
「え?」
こいつはどうせ容赦なく友人捨てそうだな……と思っていたシャルルは、少し呆けたような顔でそう返事する。
「よし!今からでもジャンヌに提言をしてきましょう。陛下との不和を作るのはよくありませんからな!」
そう言ってジャンヌのもとへ向かおうとするドン・キホーテ卿。だが、それを待ってくれというふうに肩を掴むシャルル。
だが、その顔は手の甲で口を抑えながらくつくつと笑っていた。
怒りの笑みや嘲笑ではないだろう……むしろ爽やかな笑みだった。
「くく、ドン・キホーテ卿。君はほんとにわからないよ」
「わからない?とは」
「いや、いい。君はそのままでいてくれ!そうだな……私も譲らないとだな」
なにか吹っ切れたのか、決心した様子でその場を去るシャルル。
ドン・キホーテ卿ははてなマークを頭に浮かべながら、ずるるとまずそうにワインを飲むのだった。
「酒……慣れないといけないな!いや、でもやっぱりまずい。剣術は苦じゃないんだけどなぁ……」