転生したドン・キホーテが真の騎士になるそうです 作:シデ・ハメーテ・ベネンヘーリ
Fate/Grand Zero
「……ここは?」
ある寂れたマンションの一室。
そこで彼は目覚めた。
短く切り揃えられた黒髪、僅かに褐色の肌。
そして―――自らの口から発せられる聞いたことのない
「私は、確かにフランスで戦死したはずで……」
ズキン。
一瞬の頭痛が男の意識を遮る。……記憶が、混濁してあまり思い出せない。
「ここは、どこなのだ?」
ふと、手元にあった板……記憶のない記憶が、携帯電話と知らせるそれを彼は開く。
2004/11/01。
男の記憶している時から……約500年後。
だが、男は不思議と落ち着いていた。
否、男の中の知らない記憶が男を落ち着かせていたのだ。
「俺は、一体―――どうしたというんだ。俺は誰なんだ」
無理やり落ち着かせられる感覚。
だが、男はただひとつ―――無理矢理に押し付けられた自らの名前を呟く。
「木波野。キハノ。……それが今、俺の唯一覚えている、俺の名」
男……キハノは静かに自分の手を見つめる。
無垢な手のはずなのに―――キハノには薄汚れ……焦げた血に染まっているように見えた。
「……フユキ、それがこの街の名前、か」
キハノは歩む。
天を衝くかのような見た目の高層ビル街、そんな場所にこころなしか辟易しながらも。そして、あるビルの看板に書かれていた《冬木商事》という字を見てそう呟く。
人の波。
キハノの記憶していた頃……あの頃のフランスの街とは大違いの人の数だ。といっても、彼の脳にある記憶は所々が穴抜けていて正しい記憶とは言えない。だが、その記憶は確かと言えた。
「……食事でもするか」
そんな、やけにあべこべなことを呟きながら財布の中身を見る。一万円札が20枚にあとは小銭がいくつか……一ヶ月生きるには十分だろう。
外国から出店されたファストフード店。
そこでハンバーガーを食べたキハノは街を歩いていた。
あてもなく歩いているせいで空は夕焼けに染まり、人の波もまばらになっている。
キハノはただ、足を進める。
遠くへ、遠くへ、と。
ふと気づけば、港湾に着いていた。
貨物船が行き交い、大きなクレーンの立ち並ぶ場所だ。
「海の色は、変わらんのだな。いつの時代も」
すっかり変わった夜の風景を見て、キハノはそう言葉を吐く。だが、刹那に音が響く。
閑静な場所とは大違いの派手な爆発。
キハノは咄嗟にそれを避ける。
「クソッ、一体何なんだ!?」
唐突の死の誘いに悪態を吐くキハノ。
そう……彼は知らず識らずの間に《戦場》へとまよい込んでいたのだ、
「……私の攻撃を避けただと?」
遠く。
港湾どころか、そこから更に離れた建築物より狙撃のための矢を放った男は驚愕していた。
「アーチャー、まさか狙撃に失敗したのか?」
「―――マスター、先日見せてくれたマスター名簿……あれに漏れはあったか?」
「……アーチャー、何が言いたい。お前は遠坂の諜報力を指摘しているのか?」
「いや、そういうわけではないのだがね」
「どちらにせよ、今日は霊体化して私を守るために隠れ潜んでおけ。次は失敗するなよ、私はただでさえ本命が召喚できず無名のサーヴァントを召喚して気分が悪いのだからな」
赤い服に白い髪の異質な男……アーチャーはマスターである貴族然とした顎髭の男にそう言われ……立ち去られる。
「………まさか、一般人か?だが、あの魔力はどうみても―――」