転生したドン・キホーテが真の騎士になるそうです 作:シデ・ハメーテ・ベネンヘーリ
数週間前、冬木
「アインツベルンによる初の聖杯戦争……マキリ、遠坂はあくまで投資者。となると、アイリ、このデスゲームでは僕達に都合の良いカバーストーリーが用意されているのかい?」
「いいえ、工作などしようものなら誰も参加しないから。あくまでも私達は参加者にすぎないわ。切嗣」
リゾートホテルの一室。
無気力な……しかし冷たい殺意の宿った30代ほどの男と、それに寄り添う白髪に儚げな姿の女。互いに切嗣、アイリと呼び合う仲であることから、おそらく恋仲なのだろう。
「そうか……」
「ねぇ、切嗣。これが終わったらイリヤを――」
「あぁ、わかってるさ。その為に来たんだ、そのために……この戦いにわざわざ参加したんだ。だから、言わないでくれ。もう、痛いくらいにわかってる」
悲痛な表情を見せる切嗣。
それに対してアイリは儚げに微笑み。
「……それより、僕達が召喚するための道具は揃っているのかい?」
「っ!そ、そうよね。うん、大丈夫。ちゃんと準備してるわ」
そこでアイリがベッドの下から重々しいスーツケースのようなものを取り出す。ガチャリと南京錠のように見える特殊な魔術式の組み込まれた錠を解錠すれば、そこには蒼と金色の装飾が入り混じった神秘的な鞘が鎮座していた。
「やけに物々しいな……これは一体?どんな英雄さんが呼ばれると言うんだい」
「実はこれはね……」
2004/11/01、深夜11時、アニムスフィア別荘
「……マリスビリー、ボクはいつ動けばいいんだろう?君が指示すれば、すぐにでも戦うことができるというのに」
「平和が不服かね、キャスター」
「そういうわけじゃないさ。ボクに意志はない、だから君の好きにすればいい。だけれど、君は博愛主義者ではないリアリストだろう?わざわざ出揃うことを待つ理由はあるのかい」
「ハハハ、いやなに。私も最初はそうしようと思ったのだが―――」
マリスビリーは執務室の窓の外に広がる摩天楼を見る。
輝かしいネオンの光、それがやけにけばけばしくも華々しい。
「私が気づくということは、君も気付いているんだろう。わざわざ聞くとは、私を試したのかな?」
「……さぁ、どうだろうか。ボクはただの写身のようなもの、意志はない者に試すだなんて高尚なことができるとは思えないだろう?」
「フッ、意思がない……か。私もそのように生きたかったものだよ」
「そうか、なら僕は君のように生きたかったよ。人並みに、意思を持って」
「だからこその聖杯戦争だろう。ギブアンドテイク、互いにビジネスパートナーだ……願いを叶えるための、な」
マリスビリーはくるくると万年筆を指先で回す。
星の彫刻の施された万年筆、その彫刻に流し込まれた銀が月光に照らされて輝く。
「マリスビリー、ならば君は意志のない願いをするつもりなのかい」
一拍、二拍。
静かに時間を置いて……マリスビリーは万年筆を握り折った。
「まさか。そうするには既に年を取りすぎている」