転生したドン・キホーテが真の騎士になるそうです 作:シデ・ハメーテ・ベネンヘーリ
「■■■■!あなたは私にとって自慢の騎士です、だから…
…絶対に離れては駄目ですよ」
顔に黒いもやがかかっている。
誰だ?あなたは……誰だ。俺が知っている人間なのか?
すると突然反転。あり得ないはずなのに、見覚えのある風景が――。数百年前のフランスの町並みが懐かしさと共に心へなだれ込んできた
「■■■■、お前は俺の自慢の息子だ。だから絶対に死ぬなよ」
あなたも、誰だ。
俺の何なんだ。俺は一体、誰なんだ?
牧歌的な風景と共にそうやって■■■■と顔にモヤのかかった人間たちが俺を呼んでくる。見知らないはずなのに、見覚えのないはずなのに、なぜこれほどまで懐かしい。
「私のライバル、■■■■■■よ!ともに聖女を守る騎士として死ぬときは常に同じでないとな?」
「■■■■■■隊長!俺たちはアンタについてくぜ。ただの農民の次男坊だって志次第で騎士になれる、アンタは俺たちにそう示してくれたじゃねぇか」
今度は、城の中庭のような場所で鎧姿の男たちが俺を呼ぶ。相変わらず顔は見えない……だが、どこか心が燃え上がるような感覚に襲われる。 見覚えのないはずなのに、こんなこと、見覚えないはずなんだ。
「……■■■■、私は、私は―――」
また情景が変わる。
燃える教会……血の匂い、ありとあらゆるものが燃える匂い、そして濃厚な死の匂いが充満している。
だというのに―――そことは似つかわしくないほどに美しい純白のサーコートと鎧を纏い、俺をモヤのかかった顔で見つめる女。 誰なんだ……あんたを、俺は知らないはずなのに。
黒いモヤから、ぽたりと水が落ちた。
あぁ、これは水じゃない。涙か。
「私は、あなたのことをッ!!」
また、風景が変わった。
今度は、真っ黒に焦げた教会跡。 煙で作られた偽物の曇天は晴れて、きれいな夕雲が黄昏の空を泳いでいる。
「わぁ!ほんとにいた!すごいなぁ、ワインを被ったみたいに血だらけで、傷からはプディングみたいな内臓がちょこっと見えちゃってる!ジルもこの子がこんな分かりやすいとこにいるなら教えてくれたら良かったのにぃ!」
声が聞こえる。
空を見上げている俺を覗き込むように見えた顔は―――嗚呼、モヤがかかっていなかった。
硝子玉が嵌められたような無機質な瞳、青白い肌、それに白髪の少年だった。 だが、それには明らかに悍ましい雰囲気が漂い、俺はいますぐにでもぶち殺したくなる感覚に襲われた。
「わぁ、すごいなぁ。そんなになってもまだ生きてるんだ!でもでも、君もうすぐ死んじゃうよね?」
どういうことだ?
お前は……何を言ってる?
「あ、そっか。今僕を見てるのは――アハハ!じゃあ成功したんだ!いやぁ、ボクって本当に天才だなぁ」
無邪気な笑い声を放ちながら、ソイツは俺の頬を細指でねっとりとなぞってくる。 ぞくぞくと、寒気が走る。
「ねぇ、じゃあ起きちゃう前にボクの名前を覚えておいてよ。君をもう一回聖女に会えるようにしてあげる、恩人の名前だよ?よーく、聞くんだよ?」
やめろ。お前の名前なんざ聞きたくない。
さっさと目覚めてやる。 だからその口を今すぐ閉じろ。
「ボクの名前は―――フランソワ。多分未来だとフランチェスカかもしれないけど……アハッ。なんならプレラーティって覚えてもいいよ。英雄クン」
そして、ぐじゅり、と肉をえぐるような音が響いた瞬間。
俺の意識は一瞬にして暗幕に閉ざされた。