転生したドン・キホーテが真の騎士になるそうです   作:シデ・ハメーテ・ベネンヘーリ

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遅れて申し訳ありません。色々立て込んでおりました……本家のドン・キホーテ実装は把握済みで、早々単発で当てることができました。

ご縁があったのか、はたまた別のものか。どちらにしてもこちらのドン・キホーテとサンチョはあくまでFGOのアロンソと心根は同じでも別人格のキャラとして楽しんでいただけたらと思います。


初対面の友人

「マスター、起きた?目は……うん、大丈夫だね。この調子だと脳に異常はなさそう」

 

 月光。

青々とした光が森の中に差し込み、鎧姿でありながらもビスクドールのような見た目をした少女を照らしていた。さながら教会に飾られた宗教画のように。

 

「―――君が、呼び出されたのか」

 キハノが奥から絞り出した嗄れた声、それを聞いた少女……ランスロットは木を背に膝へ仰向けになったキハノの頭を載せたまま微笑みを浮かべる。

 

「そう……だけれど、ボクもなぜ呼び出されたのかは上手く分かっていないんだ。本来この世界は―――存在しない遠い世界のはずだから存在自体がないはず」

 

 ランスロットは血まみれになったキハノの頭を優しげになでながら、静かにそう言葉を紡ぎあげていく。

 

 

「でも、夢幻とか、泡沫とか……世界に存在するほんの一欠片の嘘。そこからボクは召喚されたんだと思ってるんだ、あまり……今のマスターにはわからないことかも知れないけど」

 

「あぁ、わからない。自分自身もうまくわからないんだ、俺は―――これが嘘の夢なのかもしれない。俺はすでに死んでいて、これは走馬灯なのかもしれない、そう思ってしまう。俺は自分が誰だかわからない」

 キハノはそう返した。

木の葉から雫が滴り落ちた。月が煌めく。

 

 

 

「なら、例えこれが偽りで嘘の夢だとしても……ボクはマスターを守り抜きたいな」

 

「助けてもらった恩はある、信用はできる。だけど、それは君に得があるのか?」

 

 キハノはランスロットの提案にそう返す。

夢が脳内を反芻していた。黄昏が、血が、十字架が、キハノの意識を濁らせていく。

 

 だからキハノは怖かった。

故に聞いたのだ。ランスロットが自らを助けようとする真意を保証したいがために。

 

 

「得……難しいな。マスターとサーヴァントだから、というのもなんだか違うし―――ボクはマスターと対等な関係でありたいからね」

 

 ランスロットはゆっくりとキハノをその見開いたチェシャ猫のような眼で優しく見据える。

 

 今のランスロットであれば簡単に殺せるほどに脆い体だ。

体は至るところが先程の襲撃や逃走時の過負荷でボロボロ、ただの人間でしかない。

 

 

 だが、ランスロットには理解できていた。

たった一つだけ。

 

(目が死んでいない。マスターの目には騎士がある。主を守るために戦う騎士の心……弱いモノは確かに嫌い、だけれどこの人は違う)

 

 ランスロットの脳裏に自らが仕えていた君主の姿がおぼろげながら浮かび上がる。あぁ、そうだ。自らは騎士なのだ、そして―――目の前のキハノもまた見失っているだけで確固たる騎士なのだと見抜いたのだ。

 

 

「なら、なぜ「マスターとは友人だから」……え?」

 

 

「マスターがボクに助けを求めて、ボクはそれに応じた。偽りの夢だろうと、それに変わりない。応じて、助けて、その時点でボクはマスターの友人」

 

「なんなんだ、その理論は……」

 

「あはは、ボクもそう思うよ。でも、友人を助けるのに理由なんていらないでしょう?―――だから守らせて、マスター」

 

 

 キハノは何かを返そうとする。

そんなすぐに友人などなれるはずもない。友人なんてものは長い期間積み上げてからようやくなれるものなのだと。

 

 だが、存在しないはずの。

"存在したはずの記憶"がキハノに呼びかけた。

 

 

『今日から―――は―――の騎士である』

 

『共に同じ主君に仕える、その時点で友人であろう』

 

 

 

「………」

 

「マスター?」

 

 

「……ありがとう」

 

 キハノは目を逸らさず、生真面目にそう言った。

ランスロットはそれを聞き、凜と笑う。

 

 

「どういたしまして、マスター」

 

 蒼い月光が雲で途切れた。

月の狂気を覆い隠すように。

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