鬼滅の波紋疾走 JOJO'S BIZARRE ADVENTURE PartEX Demon Slayer   作:ドM

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今日が最後の連続更新になります。多分


そこにシビれる!あこがれるゥ!

 ジョジョは止血を済ませると、青年の背に羽織を敷いた。羽織を脱いだため、背中に開いた服の穴が見えている状態だ。

 

「俺……。死……ぬのか……。やっと、出られた……のに……」

「大丈夫。今、治療をしています。気をしっかり持って!」

 

 血まみれの青年は、安心したのかその言葉を最後に意識を失った。心臓は止まってない。まだ命は繋ぎ止められている。

 

(止血はできた。傷口近くの血液から水分を抜いて分厚いカサブタができた。流血はこれで防げる。引き続き酸素の循環を補助しつつ、次は彼の骨髄に波紋を流して血液の生産を加速させる。極めて繊細な部位なので、慎重かつ迅速に……)

 

 青年の胸と背から異なる波長の波紋が注ぎ込まれる。造血が進み、体内の血液が量を増していく。後はこの繰り返しだが、万が一脊髄を損傷させると後遺症が一生残ることになる。片時も気が抜けない。

 

 そうして、青年の治療を続けていると、少しずつ顔色が良くなっていった。

 

(血色が改善されてきた……! 頑張れ! もうすぐ助かるぞ!)

 

 死の瀬戸際で戦う青年に心の中でエールを送る。

 

 こうしてジョジョは、時間も忘れて治療に集中した。

 

「……これでよし」

 

 青年の血色は健康そのものになり、寝息を立てている。カサブタの中の傷口もほぼ塞っている。もう暫く待って、カサブタが剥がれないよう気を付ければいい。ジョジョは一息吐いた。長らく集中していたからか、顔が汗ばんでいた。

 

(どれぐらい時間が経っただろう……。ん、子供たちがいない!?)

 

 炭治郎は、禰豆子の入った木箱を子供たちの傍に置いた筈だ。残っていたのは木箱だけで、あの兄妹の姿が見当たらなかった。兄妹を探すために辺りを見渡していると、屋敷の二階から汚い高音の悲鳴が聴こえてきた。

 

「ギャ────―!?」

「ゼンイツ!?」

 

 青年が飛び出して来たときと同じように、善逸が投げ出されてきた。探していた少年を庇うように抱きかかえながら落下している。ジョジョは、地が抉れる程の勢いで走り出し、二人の真下に滑り込むようにして受け止めた。比較的近くに落下してきたので、ズームキャッチを使う必要もなかった。

 

「二人とも怪我はないかい?」

「おかげさまで……」

「俺も大丈夫です」

 

 ひとまず二人の無事を喜ぶ。

 

「あ、ジョジョさん、治療していた人は、もう大丈夫なんですか? し、死んでない?」

「うん、一命は取り留めたけど、もう少しそっとしてあげてね」

「よよ良かったぁ……。羽織、掛けときますね」

 

 善逸が、白い三角模様の入った黄色い羽織を脱いで青年にかけた。

 

「やっぱり、君も優しいね。ゼンイツ」

「そ、そんな直球に褒めないでくださいよ」 

 

 善逸は照れる。何故か褒められ慣れてないようだ。

 

 しかし、まだ安心はできない。恐らく妹の方も屋敷の中に入ってしまっているだろう。少年の妹の安否を心配していると、兄の方が謝ってきた。

 

「ごめんなさい……。箱から音が出てて怖くなって……」

「えっと、正一君を許しては貰えませんか? 代わりに鬼を倒してくれたおかげで助かったし」

「え、か、彼がかい?」

「いや……。あれは、善逸さんが……」

「俺そんなことできねーし!」

「……?」

 

 謎の問答をする二人だが、二人とも無傷で帰ってきたのは何より喜ばしいことだ。

 

「ともかく、無事で良かった。だけど、妹の方は……」

 

 青年の治療にかかりっきりになって、兄妹の名前を聞かず仕舞いだった。

 

「てる子ちゃんは炭治郎と一緒でした。正一君、兄ちゃんの名前なんだっけ」

(きよし)です」

 

 一番上が清、次男が正一で、末っ子がてる子と言うようだ。善逸は正一を連れ帰り、残るは清とてる子だ。

 

「ゼンイツ、鬼の気配は分かるかい?」

「えっと……。外にはいません。多分中に一体だけ」

「分かった」

 

 青年の治療が一段落したので、自分も屋敷の中へ入ろうとする。

 

 その矢先、善逸が耳を澄ませる。何かの音に気付いたようだ。顰めている表情から察するに、あまり良いものではないらしい。

 

「この乱暴な足音……。あいつだ!!」

「あいつ?」

「中に猪の毛皮被った無茶苦茶な奴がいたんです! なんか嫌な予感が……」

 

バキャ! 

 

 突如、屋敷入口の引き戸が吹っ飛んだ! 

 

「猪突猛進! 猪突猛進!!」

 

 猪頭の毛皮を被った男が頭突きで戸をぶち破ってきた。上半身裸で、下だけ隊士服を着用している。腰には鹿の毛皮を巻いており、足に熊の毛皮を巻いて草鞋(わらじ)を履いている。野性的という言葉が最も的確な出で立ちだ。

 

 両手には刃こぼれしすぎてノコギリのようになった日輪刀を持っている。二刀流だ。

 

 突然飛び出して来た男に、正一は善逸の後ろへ隠れた。

 

「ゼンイツ、彼も隊士かい?」

「そ、そうです! 最終選別の時一緒で、真っ先に入山して真っ先に下山したせっかち野郎!」

「彼も合格者ってことか……」

 

「アハハハハハハ!! 鬼の気配がするぜ!!」

 

 猪頭の隊士は獰猛に笑う。

 

(鬼の気配が分かるのか!? だとすると不味い!)

 

 理屈は分からないが、あの猪頭の隊士は鬼の気配が分かるようだ。このままでは、木箱の中で眠る禰豆子が狙われてしまう。

 

「見つけたぞオオオ!!」

「やめろ────―!!」

 

 木箱目掛けて突進する隊士を前に、ジョジョを抜いて善逸が一番に飛び出し木箱を庇った。ジョジョが予想していた通り凄まじい瞬発力だ。後に続いて、ジョジョが猪頭の隊士に立ちはだかる。

 

(ゼンイツ、君は……)

 

「その中には鬼がいるぞ、わからねえのか?」

「そんなことは最初からわかってる!!」 

 

 善逸はその耳の良さで、箱の中に鬼が入っていることに気づいていた。だが彼は、その箱に入っている鬼が、炭治郎にとって命よりも大切なものであると知って庇っている。

 

 善逸は、箱の中に鬼がいる"事実"よりも、"炭治郎"を信じた。

 

 ジョジョは、善逸の中に潜む『勇気』の正体を確かに見た。

 

(ゼンイツ、やはり君も素晴らしいサムライだ。さて、彼をどう止めるべきか……)

 

 ジョジョは、猪頭の隊士に向き直って問いかけた。

 

「一つ聞かせてくれないか! 君は何故鬼を狩る。人を守るためか?」

「守るゥ? 知るかっ! 俺は力比べを制するのみよ!! 今も! これからもぉ!」

 

 隊士は鼻息を荒くし、二本の日輪刀を打ち鳴らした。辺りに火花が飛び散る。

 

(彼が求めるのは闘争。なんて好戦的な戦士だ。……仕方ない)

 

 ジョジョは、猪頭の隊士に提案することにした。争いは好まないのだが、禰豆子を守るためだ。

 

「そうか。君は戦いが好きなんだな。それなら、ぼくの相手をしてくれないか?」

「お前のォ?」

 

 猪頭の隊士が自分に注目したのを確認し、禰豆子と治療した青年から距離を取るように移動する。そうすると、猪頭の隊士も一定の距離を取りながら付いてきた。

 

「え、ジョジョさん!?」

「いいんだ、隊士同士の喧嘩が御法度なのはタンジローから聞いている」

「そ、そうですけど」

 

 一般人に攻撃するのも御法度なのだが、善逸が咎められるよりは遥かにマシだ。それに、あの好戦的な隊士の攻撃が、抵抗のできない善逸に及ぶ可能性もある。

 

「彼は、戦いと勝利に飢える生粋の闘士だ。気が済むまでぼくが相手をするよ。だからゼンイツ、すまないが屋敷に入ってタンジロー達の様子を見に行ってくれないか?」

 

 善逸は、またこの世の終わりみたいな顔をした。

 

「うう……。分かりました……」

「ありがとう。ゼンイツ」

「……正一君」

「俺はもう入らないと心に決めたんで、善逸さんだけでお願いします」

「そんな──―ッ!? 正一君もきてくれよ──―ッ!?」

「いやです」

 

 何故か正一に同行してほしいとゴネだしたが、彼は断固として拒否しているので大丈夫だろう。

 

「チキショ──ッ! 死んだら化けて出てやるからな──ッ!!」

 

 善逸は、恨み節を吐きながら屋敷に再突入した。善逸も、炭治郎と兄妹のことが心配なので渋々了承した様子だ。

 

 ジョジョも屋敷に入りたい気持ちは山々だが、この隊士を放っておいたら禰豆子が危ない。万が一、治療した青年が巻き込まれる可能性もゼロではない。

 

「待たせてごめんね。ぼくはジョナサン・ジョースター。気軽にジョジョって呼んでほしい。君の名前は?」

「じょなじょなじょじょーぉ? 俺は嘴平伊之助(はしびらいのすけ)ェ! 勝負だじょじょじょぉ!!」

 

(もう名前めちゃくちゃじゃん……)

 

 正一が心の中で突っ込んだ。

 

 

 

 

 

 太った鬼を切り捨てた後、屋敷の外にまた鬼の気配を感じたので、叩き切ってやろうと外に飛び出したら、奇妙なことになった。

 

 何故か鬼殺隊隊士と、見たことない恰好の大男が箱の中の鬼を倒そうとしても邪魔してくる。何やら大男の方が代わりに勝負してやると言ってきたので伊之助は乗った。

 

 こうして伊之助は、謎の男じょじょじょと向き合っている。じょじょじょは、軽く拳を握って戦闘態勢を取っている。

 

「……」

 

(やっべぇな)

 

 伊之助は、その獣じみた本能で相手の強さを感じ取っていた。

 

 嘴平伊之助は、山の中で雌の猪に育てられた生粋の野生児だ。幼き頃、親切な爺に言葉を教わったが、基本的には食うか食われるかの弱肉強食の世界で幾度となく力比べを繰り返した。

 

 ある時は、己の身の丈を遥かに超える強大な熊を打ち倒し、またある時は、凹凸激しい岩道を軽快に跳ね回る素早い鹿を捕らえた。

 

 刀を持った隊士を叩きのめして鬼のことを知ってからは、牛みたいな鬼を倒した。熊みたいな鬼も倒した。さっきは太った鬼を倒した。

 

 だが、目の前の男はそのどれにも該当しない。人なのに、熊より力強く、鹿よりも素早い。日輪刀を持たないのも納得だ。

 

(こいつは、全身が武器だ。それに、変な呼吸してやがる)

 

 面白い。ビビる気持ちをねじ伏せ、かつて見ぬ強敵に血が騒ぐ。

 

「猪突猛進! やってやらぁ!」

 

 伊之助が駆けだした。低姿勢による突撃は、まるで猪の突進だ。

 

カァァァァァァァァァァァァ

 

 伊之助は、突進しながら両腕を大きく広げ、"全集中の呼吸"を発動する! 

 

「!」

 

(けだもの)の呼吸!」

 

 獣の呼吸、嘴平伊之助が我流で会得し、命名した全集中の呼吸! 伊之助自身の身体能力と獣の呼吸による相乗効果は、鬼の一撃に匹敵するッ! 

 

「壱ノ牙! 穿ち抜きィ!」

 

 二刀同時の突き技で足元を狙う。背の高い生物は足元に弱い。野生の戦いで理解していた伊之助は、速い突きで足元を穿つ。じょじょじょは伊之助から見て左横に軽く跳ねて避けた。

 

「もらったぜ!!」

 

 避けた着地際を狙い、足目掛けて突いた両刀を横薙ぎに浴びせかける。

 

「なんだぁ?」

 

 伊之助は驚いた。あろうことかじょじょじょは、二刀の斬撃が脛に迫る直前、左足を上げてつま先を両刀の間に突っ込んだッ! 

 

(馬鹿が! そのまま足を真っ二つにしてやる!)

 

ピッタァ

 

「!?」

 

 伊之助は驚いた。二本の日輪刀に挟まれるような形になった左足から、日輪刀が吸い付いて離れなくなったのだ。掴まれていないのに、掴まれた。未知の経験だ。

 

(足に剣がくっついた!?)

 

 じょじょじょから手刀が振り下ろされる! 

 

「くそ! はなれろ!」

 

 力を込めて引っ張る。日輪刀はギリギリと音を立てたが、何とか引き剥がせた。寸でのところで手刀を避け、勢いそのままに宙を舞う。

 

(足は駄目だ! 何故かくっついてしまう上に切れねぇ! なら上だ!)

 

()ノ牙! 切細(きりこま)裂きィ!!」

 

 じょじょじょ目掛けて素早い連撃を浴びせる。本来、広範囲を攻撃する用途で使う技だ。

 

(この手にも()()()ある!)

 

 この男は、刀ぐらいなら躊躇なく鷲掴みする凄味がある。更に、掴まれたら何かが起きる。伊之助は細かく考えていなかったが、本能でそう感じ取ったため、相手の外側から囲うように高速の連続攻撃を浴びせた。

 

 斬撃が飛ぶこと六回。四回は難なく避け、五回目で触れようとしてきた。ありえない対応速度だ。六回目、右手で日輪刀を振り下ろす。相手の指先を掠めようとしたとき、異変が起きた。

 

パッシィィィィ

 

「こいつぁ!?」

「まるで獰猛な肉食獣……。鋭い技だ」

 

 日輪刀の鎬地部分がじょじょじょの人差し指と中指に触れた瞬間、足と同じく刀がくっついて離れなくなった。一見、触れているだけなのに、吸い付いたかのように離れない。未知の経験だ。

 

 伊之助は、くっつく日輪刀に気を取られて、じょじょじょが違和感を覚えた表情をしていることに気付かなかった。

 

(指もかよ! 掴んでないのに掴む!? なんだよそれ! どういうこったぁ!)

 

「くそっ! 離れろぉ!!」

 

 二本指にくっついた日輪刀を力任せに振り抜いて辛うじて引き剥がす。全身全霊の力でやっとのことだった。外れた瞬間、上半身が地に着いた勢いそのままに、両手で跳ねて後方に逃げた。

 

(指だけであれなら、掴まれたら取り返せねぇ)

 

 じょじょじょはさっきと変わらず、緩く拳を握った戦闘態勢。戦いは振出しに戻っただけだった。伊之助は、相手の出方を窺うが、待ちの姿勢でどっしりと構えている。何が起ころうとも揺るぎない、不動の姿勢だ。

 

 微塵も隙が感じられない。どんな手を打ったところで、結果は変わらないだろう。

 

(こいつは、まるで)

 

 

 ──山だ。

 

 

 じょじょじょは山そのものだ。獣でも人でも鬼でもない。何をどうやったって揺るぎない山だ。土を殴ろうとも、岩を蹴ろうとも、何の意味もなさない。豪雨に降られ、崩れようとも、山は山のままだ。

 

 目の前の男は、まるで切り崩せる気がしない。

 

「分かったぜ……。お前は山脈の主だな! 山が人に化けてやがるぜ!」

「ぬ、主? 山? ううん、ぼくはそんな大層なものじゃないよ」

「じゃあなんだぁ!?」

「ぼくは」

 

 ジョジョが答えた。

 

「しがない考古学者さ」

 

(嘘だぁ……)

 

 正一はまた心の中で突っ込んだ。

 

 




大正の奇妙なコソコソ噂話

ジョナサン・ジョースターの職業は考古学者だぞ! 一応

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