鬼滅の波紋疾走 JOJO'S BIZARRE ADVENTURE PartEX Demon Slayer   作:ドM

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ギリギリ書けた


旅は道連れ、世は情け

 炭治郎は、屋敷の主である響凱を討ち果たした。鼓を使い、屋敷内を自在に操作、高速の斬撃を繰り出す恐るべき血鬼術の使い手だった。肋骨が三本程折れた。痛みを堪え、口の端から流れる血液を腕で拭っていると、善逸が駆けつけてきた。

 

「た、炭治郎! 無事で良かった! 大変なんだ! ジョジョさんと猪頭が戦ってる!」

「なんだって!?」

 

 重傷を負ったものの、そんなことは二の次だと言わんばかりに廊下を駆ける。

 

 まず、(きよし)とてる子を救出しに向かった。二人の嗅覚と聴覚で、居場所は簡単に判明した。清とてる子がいるであろう部屋の襖を開けると、二人を鬼と勘違いして手元の道具を手当たり次第投げてきた。突然、響凱からくすねた鼓が消滅したことに怯えていたようだ。

 

「んがっ!?」

「善逸!」

 

 二人の投げた茶瓶が善逸に直撃し、大きなたんこぶとなった。二人が炭治郎を認識すると、慌てて善逸に謝ってから一緒に脱出することとなった。

 

 てる子は炭治郎が、清は善逸がおんぶして、屋敷の外を目指して疾駆した。常人ではありえない速度だ。

 

「てる子、こっちこそごめんな! 緊急事態なんだ!」

「いいの! すっごく速いね!」

「善逸さん、頭大丈夫?」

「大丈夫だけどその言い方だと違う意味に聞こえるぞっ!?」

 

 清とてる子は肝が据わっているもので、高速で駆け抜ける様をむしろ楽しんでいるようだ。清の証言、炭治郎の嗅覚、善逸の聴覚から鬼は全員倒したとの見解で一致した。だから安心しているのだろう。

 

(痛い。すごく痛いぞ……)

 

 炭治郎は重傷にも関わらず人一人おぶりながら全力疾走しているので、ものすごく痛い。痛くて泣きそうだ。だが自分は"長男"なので我慢する。何より、あの猪頭の隊士が許せない。

 

(てる子を足蹴にするだけでは飽き足らず! ジョジョさんに刃を向けるなんて! 絶対に止めなければ!)

 

 炭治郎は、あの猪頭に一発喰らわしてやらねばならん程度には怒り心頭だ。禰豆子を刺そうとしたのも非常に許し難いが、そこは事情を知らないだろうからギリギリ不問である。非常に許し難い。やはり許さん。

 

 出口が近づくに連れ、戦いの音と匂いが鮮明になる。だが、それは想像していたものとは異なっていた。

 

「……変だな、血の匂いがしない」

「あいつ、剣を使ってないぞ。ジョジョさんと素手で戦ってる」

 

 戦いから生じる音と匂いに疑問を感じながら、二人は出口を抜けた。

 

「ジョジョさんっ!」

「……あれ?」

 

 善逸が話していた通り、平地でジョジョと猪頭が戦っていた。どういう訳かお互い素手だ。猪頭が携えていた二つの日輪刀は、地面に突き刺さっている。

 

「オラオラァ! 喰らいやがれじょせふ!」

 

 猪頭がジョジョの名前を間違えながら縦横無尽に飛び回り、全身を駆使してジョジョを攻め立てる。殴打も蹴りも、ジョジョは難なく受け流していた。伊之助は体を捻らせて、後頭部目掛けて蹴りを繰り出すも、ジョジョは振り返ることなく腕で受け流した。

 

「いいぞイノスケ! また動きが格段に良くなっている。君はまだまだ強くなるよ!」

「……う、うるっせぇ! 俺よりつええからって偉そうにしやがって!」

「それは年上だからだよ。ぼくが君の年齢(とし)だったら、多分勝てない! イノスケ、君は戦いの天才だッ!」

「ォゥ……。変なこと言って俺をホワホワさせるんじゃねー!!」

 

 二人は会話を交わしながら、拳を交える。それは、殺し合いでも喧嘩でもなかった。

 

「え、なんで組手稽古してんの?」

「……分からない」

 

 二人の様子を茫然と眺める。止めようと思っていたのだが、音と匂いからどちらもすごく楽しそうなのが伝わってきた。

 

「兄ちゃん! てる子!」

「正一!」

 

 組手の横で三人が感動の再会を果たした。三人は涙を流して抱き合っている。清は鬼のせいで軽傷を負ったが、正一とてる子は無傷で守り抜くことができた。禰豆子の入った箱も無傷で木陰に置いてある。

 

 最初に屋敷から投げ出された人は、ジョジョの治療の甲斐あって顔色良く寝息を立てている。炭治郎達は、鬼殺隊としての任務を見事全うしてみせたのだ。

 

「もっと素早く! 辛いかもしれないが、途切れることなく攻撃を繰り返すんだ! 君のそのしなやかさ、勇猛さ、勘の鋭さは最高の武器になる!」

「も、元からそうするつもりだったぜ!」

 

 一方、猪頭の隊士、伊之助は息が上がっているものの果敢に攻撃を繰り返す。巧く焚きつけられているようだ。ジョジョの言う通り、屋敷で会った時よりも攻撃が鋭いように感じた。炭治郎と同じく、戦いを通してどんどん成長している。

 

「イノスケ、タンジローとゼンイツは同期らしいね? 三人は同世代だしお互いを補い合える。仲良くしてごらん! 彼らもとても強い! 君ももっと強くなれるし、何よりその方が楽しいよ! ぼくも彼らと一緒にいると、すごく楽しいんだ!」

権八郎(ごんぱちろう)紋逸(もんいつ)ゥ? あいつらか! あいつらと組めばお前に勝てるんだな!」

「ああ! 勝てるともッ!」

 

 何故か伊之助と組む前提で話が進んでいる。伊之助は戦いながら二人を子分にしてやる等とのたまっているが、善逸はちょっと嫌そうだ。

 

「仲良く、か」

 

 炭治郎は、子分になる気はないが不思議と嫌ではなかった。

 

 ジョジョと伊之助の戦いから、伊之助の匂いが伝わってくる。彼は暴れん坊だが、悪意を感じない。単に戦い以外のことを知らないだけなのだ。覚える気概はある。それなら、自分と善逸も教えていけばいい。今、ジョジョがやっているように。

 

 それで仲良くできるなら、とても喜ばしい。炭治郎の心は広いのである。

 

「善逸、後のことは俺たちでやろう」

「はぁ……。そうだな」

 

 伊之助はジョジョとの戦いに夢中だ。一方のジョジョは涼しい顔で伊之助の攻撃を受け止めている、あれなら全く問題なさそうだ。炭治郎は、ジョジョの手当てを受けて眠っている青年の頭に、畳んだ羽織を挟んであげた。

 

 炭治郎の羽織の枕。ジョジョの羽織の敷布団。善逸の羽織の掛け布団による、簡易布団となった。

 

「じゃあ、屋敷で死んだ人達を埋葬しようか」

「はいよ」

「あの、俺たちに何か手伝えることはありますか?」

「お、助かるよ清! それじゃあ、遺体を運び出すから埋葬を手伝ってくれるかな」

「はい!」

 

 屋敷の中で既に犠牲になっていた人達を運び出すため、二人は屋敷の中へ入っていった。

 

「……俺もジョジョさんに稽古付けて貰いたいなぁ」

「肋骨折れてるのに!?」

 

 炭治郎は、ちょっと羨ましかった。

 

 

 ・ ・ ・ ・ ・

 

 

 清は、稀血(まれち)と呼ばれる稀有な血液を有しており、鬼にとって常人の50倍~100倍の栄養となってしまうらしい。それ故に鬼に狙われたそうだ。炭治郎は、松衛門から既に話を聞いている。

 

 善逸にその話をしつつ、簡易的な石塚を設けて犠牲者の埋葬を終えた。炭治郎、善逸、ジョジョ、三人の兄妹は手を合わせて犠牲者を悼んだ。

 

「本当にありがとうございました。家までは自分たちで帰れます」

 

 清、正一、てる子の兄妹は、鎹鴉(かすがいがらす)の松衛門から、藤の花の匂い袋を貰って、帰っていった。匂い袋は鬼除けになる。これで早々に襲われることはないだろう。

 

 ジョジョと炭治郎と善逸は三人に手を振る。

 

 善逸は、正一から離れたくなさそうだったが、ジョジョがいるので我慢したという。なぜ正一から離れるのに我慢せねばならないのかは謎であった。

 

 別れを済ませると、ジョジョは炭治郎の治療に取り掛かった。

 

「ジョジョさんは、なんともないんですか?」

「ぼくは大丈夫だよ。君達より、楽させて貰ったようなものだからね」

「そ、そうですか?」

「鬼より体力あるんじゃないのこの人……」

 

 傍らでは伊之助が大の字で倒れている。限界まで体を酷使したのか、息を荒げていた。猪頭の皮が外れ、素顔が露わになっている。首までかかる青みがかかった黒髪に、緑色の眼。端正な顔立ちは、美少女と見紛うものだ。筋肉質な体に美少女の顔と、なんとも不思議な容姿である。

 

「……よし、タンジロー。肋骨はくっついたよ」

「いつもありがとうございます、ジョジョさん」

「お安い御用さ。ただ、結構な頻度で折ってるから、休んだ方が良い」

 

 炭治郎の治療を終えると、松衛門が次の目的地を叫んだ。近くにある協力者の屋敷で休息を取れとのことらしい。伊之助を除き、三人は戦うに支障がない程度の疲労だったが、部外者のジョジョをこれ以上働かせるのは余りよろしくないとか。

 

「宿か。それじゃあゼンイツ、イノスケはぼくが運ぶよ。君は治療した人を運んでくれないか?」

「分かりました」

「タンジローは怪我が治ったばかりだから、木箱もぼくが運ぼうか?」

「大丈夫です! これだけは自分が!」

「ふふ、そうか」

 

 そういう分担になった。

 

「だぁー! それ被らせろよぉ!」

 

 ジョジョの背に揺られ、素顔の伊之助が抗議する。手足は生まれたての小鹿の如くプルプルしている。山育ちでも、ここまで体を酷使したことはなかった。

 

「我慢するんだよ。イノスケの体は酸素を求めている。マスクはぼくが持っているから」

「さ……なんだそれ?」

「強くなるのに必要なものさ。いっぱい息を吸って、いっぱい息を吐くんだ」

 

 伊之助は、ジョジョに背負われながら目一杯深呼吸を繰り返す。どうもジョジョの言うことは素直に聞くようだ。

 

(ええ……。猛獣を手懐けてる……)

 

 善逸は信じられないものを見る目で二人を見た。

 

 道中で全員自己紹介を済ませ、炭治郎と善逸は伊之助の身の上を理解した。生まれて間もない頃、山に捨てられ、親兄弟がいないそうだ。鬼殺隊隊員から最終選別や鬼の存在を聞き出して入隊したという。初対面の印象に違わず、破天荒な男であった。

 

「力比べだけが、俺の唯一の楽しみだ! ゲホッゲホッ」

 

 深呼吸しながら豪語したせいで伊之助はむせた。

 

「かまぼこデコ太郎! 紋壱! 俺はお前らにも勝って、じょうたろうにも勝つ!」

「全く違う!」

「誰だよ!」

「まず、名前を覚えられるようにしないとね……」

 

 ジョジョ、炭治郎、善逸、伊之助、禰豆子。今後も、よく行動を共にするようになる五人組が一堂に会した瞬間であった。

 

 




大正の奇妙なコソコソ噂話

伊之助は鼓屋敷でてる子を踏みつけたのがバレて、ジョナサンに説教されたぞ。
雑談中に炭治郎がバラしたらしい(悪気ゼロ)

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