鬼滅の波紋疾走 JOJO'S BIZARRE ADVENTURE PartEX Demon Slayer   作:ドM

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3日くらい毎日更新します\('ω')ノ
日常回!


発見伝

 ジョジョと鬼殺隊一行は、目的地である協力者の屋敷に到着した。既に日は沈んでおり、辺りは暗い。

 

 全員の前に木製の両開き門がある。成人男性四人程なら優に通れそうなほどの大きさで、中心部分には"藤"の字を藤の花と葉で囲った紋が刻まれている。鬼殺隊の協力者である一族の証だ。

 

 片側の門が静かに開いた。

 

「はい……」

 

 屋敷の主は老婆だった。白髪を日本髪で結い、上質なあずき色の着物姿と古風な様相をしており、佇まいから品の良さが伺える。

 

「鬼狩り様でございますね。どうぞ……」

 

 老婆は、滞在中の衣食住を全て融通してくれた。名を"ひさ"と言うそうだ。

 

 次の指令が下るまで、暫くお世話になることとなった。炭治郎達は、隊士になってから久々にくつろげそうだ。

 

「お召し物でございます」

「ご丁寧にどうも」

「お風呂を沸かしております。どうぞごゆるりと……」

 

 畳張りの客間で着替え用の浴衣を用意された後、四人は風呂に入った。四人そろって初の裸の付き合いである。

 

「すごく大きなバスルームだな……。みんなで入れそうだね」

「俺もこんなに大きな湯舟初めて見ました」

「野郎四人か……」

「めんどくせぇ」

 

 善逸と伊之助は何故か乗り気でなさそうだ。善逸は悲壮感漂う表情を浮かべていた。

 

 檜の湯舟は、全員で入っても問題ないほど広い。ひさ一人でどのような手段を用いれば、この大きさの風呂を沸かせるのか想像だにできなかった。

 

「川でいいだろ! 川で! 俺は入んねぇぞ!」

「おい伊之助。最後に川で水浴びしたのはいつだ?」

「……知るかぁ!」

「きたねぇから入れ!」

「伊之助、風呂はいいぞ!」

 

 炭治郎と善逸が素顔の伊之助を湯舟に入れようと説得を試みるも、必死の抵抗を続けている。ジョジョが一足先にかけ湯を済ませてから湯船に入った。

 

「イノスケ、これを見てごらん」

「あん?」

 

 ジョジョが湯舟に浸かったまま、人差し指でお湯に触れると、指を中心に楕円形の波紋が五つ発生する。自然界では決して起こり得ない、奇妙な波紋だった。五つの波紋で水面が規則的に揺れ、独特の模様を作り出す。

 

(ん? 今の波紋……。なんだか……)

 

「すごい! これが波紋と呼ばれる所以か!」

「は!? あれも呼吸の型なの!? 呼吸であんなことできんの!?」

「うおお! なんだそれ! すげぇ!」

 

 ジョジョが自らの波紋に違和感を感じていると、目を輝かせた伊之助が湯舟目掛け突進して飛び込んだ。辺り一面にお湯が飛び散って三人が盛大に巻き添えを喰らった。

 

「ギャーッ! 飛び込むな! バカ!!」

「伊之助! かけ湯しないと汚いだろ! 全く……」

「こら、怪我しちゃうよ」

 

 何はともあれ、ジョジョの誘導により伊之助を湯舟に入れることには成功した。

 

「ああ、五臓六腑に染み渡るなぁ」

「炭治郎が爺くさい」

「……いいなこれ」

「癒されるねぇ」

 

 四人並んで湯船に浸かってのんびりする。湯の暖かさが体に染み渡ってくるようで気持ちがいい。伊之助は風呂の良さに早速目覚めたようだ。疲れを癒しながら、四人は取り留めのない話をした。

 

「ジョジョさんの痣かっこいいですよね」

「これかい?」

 

 炭治郎が訊ねると、ジョジョが首筋を指で示す。そこには星形の痣が付いていた。

 

「星形の痣ってなんだよ。痣までかっこいいとかどんな星の下で生まれてんだコンチクショー。強いわかっこいいわ紳士だわ頭いいわ大学いってるわお貴族様だわ美人な嫁いるわ……。ゴボボボ」

 

 善逸が湯から顔の上半分を覗かせて、ジョジョを見上げるように睨んでいる。道中の会話でエリナの話が出た時も大暴れしたが、ジョジョが優しく取り押さえたので事なきを得た。

 

「……」

 

 伊之助は善逸の目に見覚えがあった。急流に打ち上げられ干からびて死んだ魚の目だ。こいつはもうじき死ぬのだろうか。

 

「お前、死ぬのか?」

「死なねーよッ!? 何亡き者にしようとしてんの!?」

「オキゾクサマってなんだ?」

「無視かッ!?」

「えーと、国の偉い人さ。ジョジョさんのご先祖様も、とってもすごい人だったんだって」

「はーん、じゃあクニのエライヒト全員ぶっ飛ばせば最強ってことだな!」

「やめろぉ!? 色々大変なことになるからな!?」

「言うほどのことじゃないよ。今はただの考古学者さ」

「この人のせいで学者がなんなのか分からなくなった……」

「じゃあガクシャを」

「やめろっつってんだろ!?」

「ジョジョさんの痣ってどうやってついたんですか?」

 

 炭治郎が話を戻す。

 

「生まれつきかな。ぼくの家は代々この痣ができるんだ」

「紋次郎も痣あんな。変なヤツ」

「変とか言うな! 後炭治郎だ! ……父さんも生まれつき痣があったなぁ」

「そう言えば、タンジローの痣も元々付いていたのかい?」

「いえ、俺のは弟が火鉢を倒した時に庇って付いたんです」

「そうか……。君は昔から勇敢なんだね」

「長男ですから!」

「炭治郎、なんか最初に会った時より痣が濃くなってないか? 気のせいかな」

「なってる気がする……」

「痛むなら言うんだよ。それにしても痣か。運命のようなものを感じるな……」

「お前も痣付けようぜぇ! 俺なんか毎日痣だらけだったぞ!」

「痛いのやだァ──ッ! 一人でつけてろ!!」

 

 こうして四人は、騒がしく風呂を楽しんだ。

 

「あちい……。根競べだぁ! 今ははえぇ奴よりおせぇ奴がつよい!」

「分かった!」

「え、やんの?」

 

 伊之助の唐突な提案で三人は我慢比べすることになった。

 

「……」

 

(さっきイノスケの気を引くために見せた波紋……)

 

 三人が根競べをする横で、ジョジョは発動した波紋に生じた違和感を考察していた。先ほどと同じように、指先へお湯の一部をくっつけて観察する。

 

(指先に集中したら波紋の力が増したような……。気のせいじゃない! 少量の波紋エネルギーで威力が増している!)

 

 ジョジョが人差し指を湯に差し込むと、湯の一部が四方10㎝程のキューブ状の塊と化し、ゼリーの如くプルプル震えながら指先にくっついた。

 

(ぼくは、今まで拳や足から波紋を通すことが多かったから気づかなかったんだ。放出する面が小さいほど、波紋の出力が向上する……! そうか、イノスケと戦ったときやエリナを守ったときの波紋が効果充分だったのはコレだったんだ! よし、少し練習してみよう!)

 

 波紋を調節すると、お湯の塊が震えて、丸、三角、四角、星形と次々に姿を変えた。左手の人差し指も出すと、お湯の塊は繋がって綺麗なアーチになった。ちょっとした手遊びのようである。

 

 実は波紋使いとしてはとんでもない達人技なのだが、そこに気付く者はいない。

 

「すごい……」

「呼吸ってか妖術だよやっぱ」

「……」

 

 我慢比べは、いつの間にか波紋の鑑賞会になっていた。

 

 

 

 ・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

「の、のぼせた……」

「み、水……」

「あっちぃ……」

「危ないところだったね……」

 

 長風呂しすぎてのぼせてしまったが、無事に体は綺麗になった。さっぱりした四人は用意された浴衣を着用した。

 

「おお、ついにジョジョさんの身の丈に合った服が……」

「これが本来の着心地……。ゆったりしてて気持ちがいいや」

 

 炭治郎は感動した。なんとジョジョにもぴったりだ。

 

「こんなでかいのよく用意できたな……。力士用かな」

「脱ぎてぇ」

 

 伊之助は服を纏うことに違和感を覚えているのか、歯を食いしばって眉間にしわを寄せている。この間に、隊士服やジョジョの正装を洗濯して補修するそうだ。

 

「食事でございます」

 

 着替えが済むと、ひさが食事を用意してくれた。

 

「わぁ、フライがあるじゃないか!」

 

 漆塗りの和膳に、山盛りの米とみそ汁、煮物、天ぷらが載っている。出来立てなのかホカホカと湯気を立てていた。ジョジョ、炭治郎、善逸、伊之助の順番で時計回りに囲って一緒に食べる。

 

「頂きます!」

 

 ジョジョは、初めて見る天ぷらに興味津々だ。カボチャ、サツマイモ、春菊、レンコン、海老が衣を付けてカラッと揚げられており、香ばしい匂いが食欲をそそる。

 

「これは、日本式のフライかな? とても美味しそうだ!」

「フライ……。天ぷらのこと? 天つゆをつけて、大根おろしと一緒に食べると旨いですよ」

「これかい? ゼンイツ」

「それそれ」

 

 善逸が天ぷらの横に添えられた天つゆと大根おろしの用途を教えてくれた。教えに従い、ジョジョはまず、芋の天ぷらから食べた。

 

「美味しい!」

 

 ジョジョは、初めての天ぷらに興奮気味だ。祖国の物より、同盟国のポルトガル式に近い印象のあるフライは、ジョジョを唸らせた。

 

 日本のスイートポテト、サツマイモの甘さは祖国で使われるものよりも数段上で、これだけでも充分な御馳走だった。衣のパリパリとした食感と、中まで火が通った芋のホクホクとした食感が最高だ。

 

「これも甘いなぁ」

 

 カボチャの天ぷらも負けず劣らず甘い。主菜だと言うのにまるでデザートのようだった。天つゆと大根おろしのおかげで食後がさっぱりとしている。これは非常に完成度の高い料理だ。

 

 幸せそうに二つの天ぷらを食べ終えると、春菊の天ぷらを箸でつまみ、興味深そうに眺めた。炭治郎の教えの甲斐もあり、箸使いに問題はない。

 

「葉がメインディッシュになるなんて、不思議だなぁ」

「主菜ってことですね。それは春菊です。おひたしにしても美味しいんですよ。寒い時期、ウチでもよく採ってたっけ……」

 

 炭治郎が山での生活を懐かしむ。

 

(た、炭治郎……。お前英語分かるのか……)

 

 善逸に電流走る。

 

「そうだ、タンジローは山育ちだもんね。山の幸ってことか」

「俺も山育ちだぁ!」

「はいはい。しかしあの婆さんできる……。ジョジョさんはこういうの食べたことない?」

「ラディッシュやビーツの葉っぱならサラダで食べたことあるけど、主菜になっているのは初めて見たよ。……これも美味しい!」

 

 サクサクとした食感に適度な塩気、箸が進む。食べれば食べる程食欲が増す、魔性の天ぷらだった。更にレンコン、ししとうの天ぷらも平らげ、いよいよ中心に座する主役。海老に手を付けた。

 

「……!」

 

 海老は、最早言葉にできない程の美味だった。

 

 衣、海老の食感もさることながら、海老の下ごしらえが完璧で、魚介類特有の臭みが全くない。魚介類の旨さだけを抽出したような味わい。完璧だ。これは完璧なフライだ。ジョジョは、東洋の神秘を、食で体感した。

 

「ンガ、ング」

 

 一方、伊之助は、手掴みでガツガツと食べていた。勢いよく頬張っているせいか、口の周りには食べカスが付いている。天ぷらまで手掴みで食べてしまうものだから手がベタベタだ。

 

「伊之助は箸の練習しような」

「あーあ、折角風呂入ったのに……。汚いぞー」

「いらねー! なんでそんなもん使うんだよ!」

「まぁまぁ、イノスケも一緒に練習しようよ」

「……」

「ほら、ぼくもまだまだだからさ」

「…………おかずよこせばな」

「いいとも」

「お前、ほんとにジョジョさんの言うことはよく聞くのな」

 

 ジョジョの煮物半分と引き換えに承諾した。伊之助、文化の夜明けである。

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 食事を終え、就寝する。四つ並んだ布団に入ろうとしていると、寝室の隅に置いていた木箱がカタカタと音を立てた。禰豆子が目覚めたようだ。

 

「ぎゃー! 出てくる!」

 

 鬼であることだけ知っていた善逸が、ジョジョの後ろに隠れた。ちょっと怖かったが、ジョジョのとても大きな背中のおかげでへっちゃらだ。

 

「グゴー……」

 

 一方疲れ切っていた伊之助は、猪の皮を被りなおして既にいびきをかいている。器用なことに、猪頭の鼻部分から鼻ちょうちんが出ている。布団に入った瞬間から爆睡していたようだ。

 

「禰豆子」

「おはよう、ネズコ」

「……ちっちゃ!?」

 

 想像以上に小さい鬼の登場に善逸は突っ込んだ。小さい体のまま禰豆子がジョジョに近づく。寝覚めの抱っこが恒例になっていた為だ。

 

「善逸、この子が妹の禰豆子だ。今日も小さいままだね」

「小さいまま……?ともかく、鬼の正体は炭治郎の妹だったんだな……」

「うん。善逸もジョジョさんと一緒に禰豆子を守ってくれたんだってな。ありがとう」

「よ、よせやい」

 

 照れる善逸の横で、禰豆子がジョジョの元に近づこうとするが、途中で立ち止まって炭治郎の背に隠れた。すると、人間だった頃の年齢である12歳程の体格に戻った。

 

「え゛!? ……か、かわ」

 

 善逸が大きくなった禰豆子の姿を見ると、何かを言いかけて固まった。顔は紅潮しており、随分と嬉しそうだ。明らかに一目惚れの様相だが、炭治郎は気付かなかった。

 

「あれ、珍しいな。いつもなら小さいままジョジョさんに突進してるのに」

「どうしたんだい? ネズコ……。あ、もしかして」

 

 ジョジョが何かに気付いたのか指先を確認する。風呂場で気づいた一点集中波紋の練習をずっとしていたせいで、波紋の残滓が残っていたのかもしれないと判断した。だが、波紋エネルギーは残留していなかった。

 

「ムー……」

「戻るのかい? 禰豆子」

「……」

 

 炭治郎にくっついていた禰豆子は、また小さくなって箱の中に戻っていった。心なしか、少し悲しそうだった。

 

「うーん、久しぶりに呼吸を練習したせいか? ネズコはぼくの中の波紋の気配を感じているのかもしれないね。可哀想なことしたかな……」

「暫くしたらまた出てきますよ。きっと」

 

 ジョジョは炭治郎と行動を共にするようになってすぐ、通常の呼吸で活動するように気を付けた。常時"波紋の呼吸"を行って活動するのは容易いが、鬼の体である禰豆子に悪影響を及ぼす可能性があったので止めていた。どうやら、正解だったようだ。

 

「最近は()()()でやらないように気を付けてたんだけどな……」

「……()()()? ジョジョさん、ちょっと聞きたいんですけど」

「なんだい?」

「ジョジョさんって、その"波紋の呼吸"のまま生活してたんですか?」

「うん。吸血鬼と戦っていたときは道中でも常に"波紋の呼吸"だったよ。修行のためにね」

「なるほど……」

 

 ジョジョがそう答えると、炭治郎は何やら考え込んだ。表情は真剣そのものだ。

 

(タンジロー……? そうか、彼はもしや)

 

 炭治郎の考えはすぐに分かった。ジョジョは提案する。

 

「よし、タンジロー」

「……はい?」

「明日一緒に修行してみようか」

「え、本当ですか!?」

「本当さ。ぼくも良い方法を思いついたからさ、今日はもう寝よう」

「分かりました!」

 

 ジョジョも布団に入り、一度目を閉じるとあっという間に眠りについた。寝付けが良いらしい。続いて炭治郎も勢いよく布団に潜り込んで、張り切って目を閉じた。

 

「う、うーん。ね、眠れない」

 

 完全に、遠足前日の子供と同じ状態である。

 

「お、俺も眠れそうにないやお義兄さん……」

「……おにいさん?」

 

 何故か善逸も眠るのに難儀した。

 

 




大正の奇妙なコソコソ噂話

 天ぷらは昔から江戸で有名なファーストフードだったぞ! 全国的に有名になったのは1923年(大正12年)の関東大震災以後らしいけど、かまぼこ隊の三人は全員東京府出身なので知ってる訳だ!


 原作だと、ここで骨折を完治するまで療養していましたが、ジョジョのおかげで大きなインターバルが出来ました。次回、短い修行回&那田蜘蛛山編前編!(多分)


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