鬼滅の波紋疾走 JOJO'S BIZARRE ADVENTURE PartEX Demon Slayer   作:ドM

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中編になっちゃったけど明日も更新するので許してクレメンス……。


那田蜘蛛山の悲劇 中編

 十二鬼月、下弦の鬼の討伐に成功した。だが、まだ生き残りの鬼が二体いる。

 

「こっちには来てないみたいだ。匂いがしない」

「音もしない。はいジョジョさん、手桶」

「ありがとう」

 

 善逸が手桶を持ってきてくれた。ジョジョは、波紋の力を手桶の水に注ぎこんだ。伊之助がジョジョの横で獲物の居場所が分かるのを今か今かと待ち構えている。

 

「反応が薄い、さっきよりかなり遠くにいる。方向を絞らなきゃ……」

 

 水面の波紋は軽微なものだった。少しでも揺らしたら普通の波紋で見えなくなる程だ。

 

「え、これ何してんだ?」

「村田さんは初めてでしたね。ジョジョさんはああすると、鬼の位置が察知できるんです」

「これも呼吸の力か……。便利過ぎない?」

「おかげで助かってます!」

「まぁそれは分かった。ところで、そこの鬼は……」

「ムー?」

 

 村田は炭治郎の横にいる禰豆子を指差して一番の疑問を口にする。禰豆子は炭治郎の裾を掴んで辺りをキョロキョロしていたが、村田に指を差されて首を傾げている。

 

「その子は大丈夫です! 禰豆子は一度も人を襲ったことがないんです。俺達は、禰豆子が人間に戻る方法を探しています。もうちょっとなんです!」

「こんな超絶可愛いくて純粋無垢な女の子斬るとかありえないでしょ! 頼みますよ村田さん!」

「……」

 

 炭治郎と善逸が早口で説得する。村田は困った。腕を組み、眉間にしわを寄せ目を閉じて唸っている。鬼に与する行為は鬼殺隊に於いて、到底許されないからだ。

 

「……鬼を庇うのは明確な隊律違反なんだけど」

「そこをなんとか」

「えー……」

「おい、んなことより、なんか森がざわついてないか」

「え?」

 

 伊之助が言葉を発した直後、地が微かに揺れた。常人ならば、意識しなければ気づかない程度の軽微な揺れだ。

 

「じ、地震だぁ────ッ!!」

「そんなに揺れてねぇだろうが! へっぽこ!」

「こ、これは……!?」

「植物が!?」

 

 突然、大地から草が芽吹いた! 

 

 芽を出し、茎を伸ばし、瞬く間に色彩豊かな花を咲かせた。赤、青、黄色、紫、大小様々な花が大地を埋め尽くし、木々や草が瑞々しさを増す。暗かった筈の森が微かに明るくなっている。草花が淡く輝き、夜の森を、鮮やかな極彩色が彩ったのだ。

 

 蜘蛛の巣に覆われた陰鬱な森が、幻想的な楽園に生まれ変わった。

 

「お、おい、あそこ、アサガオ咲いてるんだけど……」

 

 善逸が花を指差して驚いている。季節は春を過ぎて間もない頃である筈なのに、季節外れの植物も多く見られた。炭治郎は波紋の影響とみるや、禰豆子に影響がないか確認をする。

 

「禰豆子は……! 良かった、大丈夫そうだな。こんなに力強い草花の匂い、生まれて初めてだ」

「俺もだぜ」

 

 山育ちである炭治郎と伊之助にとっても未知の光景だった。三人とも、波紋が生命に影響を及ぼすことは覚えていたが、その規模の大きさに驚きを隠せなかった。鬼による淀んだ匂いも完全に消え去っている。生い茂る植物の密度、豊富な水分、湿度による相乗効果が絶大だったのだ。

 

 那田蜘蛛山に、波紋の加護がもたらされた。

 

「俺、夢でも見てんのかな……ははは」

「そうだ。それより、鬼の位置は……」

「見つけた!」

 

 波紋探知機による調査に集中していたジョジョが、鬼の居場所を特定した。

 

「お! どっちだぁ!?」

「向こうだ。反応は二つ、だけど……」

 

 ようやく捉えた鬼の気配だったが、水面の揺れはまた少しずつ小さくなっている。今もなお、鬼の位置が遠ざかっている証拠だ。

 

「おい、これ逃げてねーか?」

「多分そうだろうね……。不味いな」

 

 あまり良い状況とは言えなかった。逃がしてしまった場合、付近の住民に被害が及ぶ可能性がある。ここは、なんとしても捕えたいところだ。

 

「おっしゃあ! そうと決まればさっさとトドメを……」

 

 伊之助が鼻息荒く勇んで追撃に出ようとするが、直前になってジョジョが手で制した

 

「待ってイノスケ」

「またかよ!? んがー! 俺まだなんもできてねーぞ!」

 

 伊之助が両手をぶんぶん振って不満を露わにしている。張り切って入山したものの、未だ戦いらしい戦いをしていないからだ。このままジョジョの一人勝ちにしておくのは悔しいのである。

 

「ごめんね。鬼達の反応が急に消えたんだ」

「あん?」

 

 伊之助が手桶の中を覗き込んだ。ジョジョは手桶の水に波紋の力を流し続けているが、水面が平坦になっている。鬼の気配が完全に途絶えたのだ。

 

「射程外に逃げたのでしょうか?」

 

 炭治郎が予想を口にする。

 

「いや、まだギリギリ届く範囲だった」

「急に消えたってことですか……」

「そういうことになる……」

「血鬼術かなんかか」

 

 ジョジョと炭治郎と伊之助は、鬼が消息を絶った理由について考える。波紋法は、鬼の気配までは把握できても、消えてしまった理由については分からないのである。

 

「……三人とも、ちょっといいか?」

「どうした? 善逸」

「消えたのってあっちの方だよな? 鎹鴉(かすがいがらす)の鳴き声がする。俺達のとは違うヤツだ」

「!」

 

 善逸がそう言うと、全員静まり返った。随分遠くの筈だが、鎹鴉は基本的に声が大きいので、善逸の耳にはギリギリ届いたようだ。善逸が手のひらを耳の近くに寄せて、耳を澄ませる。

 

「……え?」

 

 音を聞き取ったらしき様子の善逸が、素っ頓狂な声を挙げると、みるみるうちに表情が明るくなった。

 

「なんて言ってたんだ?」

「鬼を二体、撃破。だってさ!」

「そうか! よかった!」

「ほかの人が倒したんだね」

「んだとぉ!? あぁぁぁぁあ! 先越された!! くっそぉー!!」

 

 炭治郎とジョジョは取り逃がしたわけではないことが分かってほっとしたが、伊之助は地団駄を踏んで悔しがっている。どうやら、生き残りの隊員が鬼を倒したらしい。

 

「無事だった人もいたのか……。良かった」

「ということは……」

「鬼は全部倒したね」

 

(生き残った隊員……? もしかしてあいつか?)

 

「がー!」

「なに!?」

 

 村田が鬼を倒した隊員の正体を考えていると、伊之助が雄叫びをあげながら木に突進した。色々な木に何度も頭を打ち付け、木がバサバサと音を立てて揺れ、多くの葉が舞い落ちる。その姿は猪そのものだった。

 

「なんなのコイツ!? おっかないんだけど!?」

「すいません村田さん、伊之助はまともに戦えなかったのが悔しいみたいで……」

「戦闘狂にも程があるでしょ……」

「平和が一番だろうに。バカなやつだなぁ」

「チックショー!!」

「イノスケ、落ち着かないと怪我してしまうよ」

「うぐぐぐぐ……」

 

 伊之助にとっては残念な結果に終わったが、こうして那田蜘蛛山を縄張りにしていた鬼は全滅したのであった。だが、まだやるべきことはある。

 

「そうと分かれば、生き残った人達を助けないと!」

「よし、ぼくは彼らを治療しているよ」

「俺も手伝う。応急処置の心得ならあるからね」

「分かりました! 救助した人は二人の下に連れてきます!」

 

 ジョジョは早速、蜘蛛に操られて襲い掛かってきた四人の隊員を治療し始めた。村田は、そんなことまでできるのかと目を丸くしている。

 

「んじゃ、俺達は無事な隊員を探すかぁ。炭治郎、匂い大丈夫か?」

「ごめん、花の匂いが強いから遠くは無理だ。善逸、任せていいか?」

「おう、禰豆子ちゃんと一緒なら更にやる気出る」

「……ちゃんとやるんだぞ」

「ウッヒョオオォオ──! 力が湧いてきたぁぁあ!」

「……」

 

 炭治郎、ちょっと心配だったが、嗅覚がそんなに当てにならないので渋々承諾。

 

「伊之助も頼む」

「…………ぉぅ」

「こいつ、完全にやる気なくなってる……」

 

 

 

 ・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

「いた!」

 

 善逸の聴覚と、伊之助の獣の呼吸 漆ノ型・空間識覚を頼りに隊員を探していると、男性の隊員二人と女性の隊員一人が纏めて見つかった。男性隊員二人は意識がない上見た目から重傷と分かったが、まだ息があった。

 

 麓の男性隊員、治療中の四人、今見つけた三人。村田。逃げた鬼を倒した隊員。これで十人だ。

 

「大丈夫ですか!?」

「うふふふ、ここは、天国。そう、私は死んだの……」

 

 花畑と化した森に横たわる総髪(ポニーテール)の女性隊員は、両手を胸の上で組んで穏やかな表情を浮かべている。口にする言葉は随分と悲しいものだ。

 

 急に操り糸が切れたこと、精神的疲労、景色が激変したことが相まって、かなり参ってる様子だった。

 

「いやいや! 生きてますから! さ、掴まって!」

 

 そう言うと、炭治郎が女性隊員をおんぶした。

 

「俺は竈門炭治郎です! 貴方の名前は?」

「尾崎……。え!? お、鬼!?」

「あ! その子は大丈夫です! 善逸と伊之助はこの二人を頼む!」

「…………おー」

「…………おー」

「なんで善逸まで伊之助みたいになってるんだ!?」

 

 善逸、女性がいたのに担当が野郎だったのでやる気が下落。

 

「よし、気を付けて運ぼう」

「……炭治郎、また変な音拾った」

 

 やる気は下落していただが、また何かの音を掴んだらしい。

 

「何の音だ?」

「な、なんか大量の虫が這うような音……ギャ────―ッ!?」

「キャァァァァァアア!?」

 

 音の正体はすぐそこまで来ていた。善逸と尾崎はけたたましい悲鳴を上げた。

 

「く、蜘蛛!?」

 

 それは、異形の蜘蛛だった。体は蜘蛛、頭部は髪が抜け落ちた人間の顔が取り付けられた不気味な姿だ。そんな蜘蛛が、花畑と化した地面を埋め尽くす勢いでこちらに迫っている。

 

「よっしゃぁ! 敵だなぁ!?」

「待て! 伊之助!」

「三回目だぞごらあぁぁああ!?」

 

 三度止められた伊之助。それでも止まったのは伊之助の成長の証であった。偉い。

 

「善逸も落ち着いて、敵意はないみたいだ……」

「あ、うん……。すっごいビックリしたけど分かるよ……」

 

 炭治郎と善逸は、蜘蛛の匂いと音から危害を加える意思がないことにすぐ気づいた。匂い、音、表情から、こちらに助けを求めていることが伝わってきた。

 

「蜘蛛……。血鬼術で変えられた人かもしれない」

「そんな、鬼はみんな死んだのに元に戻らないのか……」

 

 蜘蛛人間たちが涙を流してこちらをじっと見つめている。その通りらしい。不気味な姿が、途端に気の毒に思えてきた。

 

「とにかく、この人達にも付いてきてもらおう」

「そ、そうだな……」

 

 無害とは分かるものの、絵面の衝撃度に善逸は怯む。

 

「……」

「何してんだ伊之助! ジョジョさんと村田さんのところに戻るぞ!」

「隊員忘れんなよ!?」

 

 伊之助は、花畑の上で丸まってふて寝していた。100年程未来ならば、ゆるキャラと言われているだろう。

 

 

 ・ ・ ・ ・ ・

 

 

「それじゃあ、鬼を倒してくれた隊員はそのまま帰ったのかな?」

「ああ、あいつならそうする。隊が全滅したとでも思ってんだろう」

「そうか……。あ、ムラタさん。タンジロー達が帰ってきたみたいだよ。……あれは?」

「お、ほんと……ギャアァァァァァ!?」

 

 ジョジョの言葉に炭治郎達がいる方向を見てみれば、隊員だけでなく蜘蛛の化け物を引き連れた炭治郎達が帰ってきた。村田が抜刀するも、炭治郎とジョジョがすかさず止めた。

 

 伊之助は、運んできた人をそっとジョジョの近くに置いてやると、少し離れた場所で花畑を布団替わりにまたふて寝した。その背中からは、蜘蛛人間に負けず劣らず哀愁が漂っている。

 

「タンジロー。後ろの()()は……」

「はい、血鬼術で姿を変えられたそうです……。なんとかできませんか?」

「……やめておいた方がいいと思う。体が変質しすぎている」

 

 蜘蛛に変えられてしまった人たちは、血鬼術の悪影響を強く受けている。下手に波紋を流してしまうと、命を落とす可能性があった。

 

「そうですか……」

「とりあえず、隊員たちの怪我の治療から進めよう」

「はい……」

 

 幸い、隊員達の怪我は止血さえ済めば大事には至らないものだった。一人だけ、折れた骨が内臓に刺さりそうになっていた人がいたが、ジョジョが骨をくっつけたので事なきを得た。

 

「これで、よし」

「骨までくっつけられるのか……。最早なんでもできるんじゃない?」

「そんなことないですよ。波紋の呼吸にも欠点はありますから」

「ほんとかよ」

 

 無事、救助した隊員達への応急処置が終わった。後は、安静にしていれば良い。

 

「それにしても、蜘蛛に変えられてしまった人達はどうすれば……」

「うん……」

「ああ、それなら、蝶屋敷の人達になんとかしてもらえばいいんじゃない?」

 

 表情を曇らせるジョジョと炭治郎、そして大量の蜘蛛人間達に、村田が提案する。

 

「蝶屋敷?」

「傷ついた隊員を治療したり、解毒したり、怪我で衰えた隊員の身体能力を元に戻すところさ。あそこの柱は、そういう知識に長けてるお方だから」

「本当ですか!?」

「それなら、その人に希望を託そう」

 

 炭治郎とジョジョは安心する。蜘蛛人間達が一斉に奇声をあげて、泣きながらピョンピョン跳ねている。

 

 尾崎は泡を吹いて失神した。

 

「さて、後のことは(かくし)に任せて山を降り……」

 

 

ギ ュ ン ッ ! ! 

 

 

「え?」

 

 

ド ゴ ォ ! ! 

 

 

 善逸が音に反応するよりも早く、何かが飛来した! 

 

「な、なんだ!?」

 

 衝撃音が聞こえた場所を見ると、木の幹に何かがめり込んでいる。

 

「石だ!」

「み、みんな伏せろ! まだ飛んでくる!」

「!」

 

ギ ュ ン ッ ! ! 

ギ ュ ン ッ ! ! 

ギ ュ ン ッ ! ! 

 

「奇襲かぁ!?」

 

 ふて寝していた伊之助が飛び起きた。

 

「壁を作るッ!!」

 

 ジョジョは、伊之助が散らした葉っぱや花をすかさずかき集める。

 

「生命磁気への波紋疾走(オーバードライブ)!」

 

 波紋を込めると瞬く間に花と葉が生命磁気により次々とくっついていく。そうして壁を次々と作り出していった。色とりどりの花も混ざったカラフルな壁を助けた人達の四方に設置し、簡易的なバリケードを設けた。

 

 出来上がった壁に次々と石が当たっては砕けていく。壁の中にはジョジョ、炭治郎、禰豆子、善逸、村田、怪我人と蜘蛛に変えられた人達が収容された。だが、伊之助だけ取り残された! 

 

「イノスケ! ぼくの手を掴んでこの中へ!」

「分かってる!」

 

 ジョジョがズームキャッチで伊之助の手を掴んだ。

 

 

ガ ッ ! ! 

 

 

「ぐぅ!?」

「伊之助!?」

 

 飛んできた石の一つが伊之助の頭に当たってしまった。炭治郎は叫んだ。ジョジョは大急ぎでバリケードの中へ引きずり込む。

 

「イノスケ!? 大丈夫か!」

「頭のやつ外すぞ!」

「血が!」

 

 猪頭を外すと、側頭部から血が流れていた。頭蓋骨は無事のようだ。

 

「良かった……。掠めた程度だ」

「へっ、このぐらいなんてことな……っうお」

 

 伊之助が上半身だけ起き上がらせて、元気さを見せつけようとするもふらついて倒れた。

 

「軽い脳震とうだ。暫くじっとしてるんだよ」

「おう……」

 

 この間にも、大量の石が壁に当たっては破砕する音が幾度も響く。甲高い風切り音から相当な速度で飛来していることが分かる。直撃すれば即死だろう。石が飛んでは砕ける音とともに、バキバキと木々がへし折られる音が響く。

 

「色んな方角や距離から木を薙ぎ倒す音がする! 多分こっちへ石が飛びやすくなるようにしてるんだ! 敵は四人いる!」

「不味い、さっきジョジョさんがやった"おぉばぁどらいぶ"だと蜘蛛に変えられた人達を巻き込んでしまう!」

「まさか……。この時を狙ってぼくをッ!」

「く、鬼舞辻無惨! お前の仕業か!?」

 

 ジョジョと炭治郎達は、奇襲に遭った! 

 

 




大正の奇妙なコソコソ噂話1

サイコロステーキ先輩改め、先輩はそこそこの鬼を倒して下山しました。やったね!

そこそこの鬼二体の正体は、累が死んで元に戻った姉蜘蛛と兄蜘蛛だぞ!


大正の奇妙なコソコソ噂話2

柱、水蟲ペアの増援ですが、原作より早く到着&スピード解決してるのでまだまだかかります。

悲しいね累ージ。

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