鬼滅の波紋疾走 JOJO'S BIZARRE ADVENTURE PartEX Demon Slayer   作:ドM

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最近、ギリギリまで仕上げるのがマイブームになりつつ……。
23:50頃の投稿、ちょっと字が崩れてるので直しました!


フライング大正の奇妙なコソコソ噂話

波紋使い達と炭治郎達の会話は、バイリンガルな財団スタッフがひっそり通訳しています。お疲れ様です。


『そう言えばジョジョさん』
『なんだい? タンジロー』
『お子さんの名前って決めてたんですか?』
『うん。男の子ならジョージ、女の子ならエリザベスさ』



ジョースターの血統

(エリザベス・ジョースター!? ということは、あの人……!)

(ジョジョさんの娘ってこと!? あの超美人な人!)

 

 驚かない筈がなかった。エリザベス・ジョースター。ジョジョに面と向かっている女性はそう名乗ったのだ。ジョジョと何らかの関係があることは明らかだ。炭治郎達は、二人の遣り取りを見守る。

 

「色々と言いたいことはあるけれど……。そうね、貴方にお願いがあります」

「なんだい?」

 

 エリザベスは一度長髪をかき上げる仕草を見せた後、ジョジョに右手をスッと差し出した。差し出された右手はエリザベスの顔辺りでジョジョに対して小指側面を見せる形になっている。握手というよりはファイティングポーズのように見えた。

 

「私の手を握り締めて下さい」

「手をかい? こうでいいのかな」

「ええ」

 

 ジョジョがエリザベスの手を握り返した。二人は中空で腕相撲をしているような状態だ。エリザベスの手は細く、ジョジョの手は大きく太い。力の差は歴然のように見える。

 

「今から、貴方に対して目一杯波紋を流し込みます」

「……そういうことか。分かった!」

 

 ジョジョは得心した様子で頷いた。彼女は自分の力を試したがっている。それに、こうした方が色々と手っ取り早いのだ。今は亡き波紋戦士の一人である、ダイアーと邂逅した時のように。

 

 両者が握り合う手が仄かに輝きを増した。

 

「波紋の光だわ」

 

 二人の変化に一番に気付いたのはカナヲだった。

 

「本当だ。波紋の匂いも濃くなってきたぞ」

「ビリビリするぜ! 戦いの気配だ!」

「お、音もバシバシ激しくなってきた……」

 

 炭治郎達は、ジョジョとエリザベスが何らかの方法で戦うのだと理解した。何が起こっても不思議ではない波紋使い同士の立ち合いだ。緊張感が高まる。

 

「腕相撲みてぇだな!」

「……波紋で腕相撲?」

 

 伊之助の言葉に炭治郎は首を傾げながら考えを口にした。

 

「ありゃぁのぅ、波紋の力比べだな」

 

 いつの間にか、炭治郎達の隣にトンペティがいた。

 

「ギャーッ!? びっくりしたぁ!!」

「いつからいたんだ!」

 

 四人はいきなり現れた老人に驚く。炭治郎の嗅覚、善逸の聴覚、伊之助の触覚、カナヲの視覚をもってしても気づくのに遅れたのだ。この老人、ただ者ではない。

 

「トンペティさん! 俺は、竈門炭治郎です! ジョジョさんにはいつもお世話になっています!」

「んむ、よろし――く……」

「お前の切り替えの速さ、尊敬するわ」

「ハゲじじい! あれはどうやって力比べす……いで!?」

 

 カナヲが拳骨を振り下ろした!

 

「"波紋の呼吸"の老師になんてことを言うの」

「……うぐぐ」

 

 伊之助は頭頂部を両手で押さえてうずくまっている。相当痛かったらしい。

 

「伊之助がすいません……」

「ええよ」

 

 その横で炭治郎はトンペティに平謝りだ。綺麗な連携である

 

 最近蝶屋敷では、炭治郎に先立ってカナヲやアオイが伊之助を注意する。二人共、年上だからか、若干お姉ちゃんらしく振舞う傾向にあるのだ。特にカナヲは、胡蝶家で末っ子扱いだったこともあり、ちょっと張り切っている。

 

 痛がる伊之助に代わって、善逸が聞いた。

 

「トンペティさん、あれはどんな力比べですか?」

「あれはのう、互いに波紋を流し合うんじゃ。力が拮抗してる者同士でやると良い鍛錬になる」

「あぁ、波紋で押し相撲するようなもんか」

「なるほど」

 

 やることは単純だった。腕を経由して互いの波紋をぶつけ合う。手合わせを兼ねた訓練だ。

 

「見ものじゃぞ。エリザベスも波紋法の歴史に名を遺す天才よ」

「……」

 

 エリザベスの強さを感じ取っていた炭治郎達は、トンペティの言葉に納得する。それに、波紋使い同士が波紋をぶつけ合うとどうなるのか、実に興味深い。何より、あのエリザベスの相手はジョジョである。

 

「儂もここで見守るぞ」

「あ、スピードワゴンさん」

 

 エリザベスとジョジョの傍にいたスピードワゴンが炭治郎達の傍に移動し、木製ステッキを地に軽く突いた。

 

「おっさん、近くで見ねぇのかよ」

「なーんか、嫌な予感がするのでな」

「予感ねぇ……」

 

 スピードワゴンが言うぐらいなのだから、距離は空けておいた方が良いのだろう。

 

「あなたの実力を見せてください」

「ああ!」

 

コオオオオオオオオオオオ

 

 ジョジョ、エリザベス、両者共に波紋を練り始めた!

 

(始まった! 波紋の匂いがより強くなっていく!)

 

 波紋の力が一層強まり、両者の手の輝きが更に増す。

 

 二人を中心に、風が吹き出した。砂埃が舞い、善逸はすかさず目を庇う。煉獄とジョジョの戦いから学習したのだ!

 

「な、なんで風が……」

「これは、波紋の余波ですかな? トンペティさん」

「そうじゃ。両者、波紋の蓄積量、練り具合共に凄まじいわい。波紋をぶつけ合って、風が吹くとは相当なものよ。ストレイツォ達にも良い刺激になるじゃろうて」

 

 ストレイツォ、メッシーナ、ロギンズ、マリオは風をものともせず二人の波紋の力を真剣に見届けている。

 

(お嬢の波紋に対抗できる人が、この世に存在したとはな……)

 

 若き波紋使い、メッシーナを始めとしたジョジョと初対面の者達は、ジョジョが実力者であることは確信していた。しかし、エリザベスのずば抜けた実力もよく知っている故に、その衝撃は大きい。

 

 ジョジョ自身も、エリザベスの力量に感服している。

 

(こんなに鋭くて力強い波紋、生まれて初めてだッ! 卓越したセンスと長年の鍛錬がなければ決してたどり着けない領域ッ! 並大抵の吸血鬼や屍生人では、波紋を流されたことにさえ気付けないだろう!)

 

 その波紋の奔流は、今まで出会ったどの波紋使いよりも強かった。ジョジョは負けじと波紋の呼吸を練り、押し返す。

 

(想像していた以上! これがジョナサン・ジョースターの力!!)

 

 エリザベスもそうだった。彼女は圧倒的才能と努力に裏打ちされた確かな実力者。

来日した波紋使いの中で一番強いと、自他共に認めている。

 

(私にもまだまだ驕りがあった、ということね……。精進しなくては)

 

「ハァッ!」

「オオオオオオ!」

 

カッ!

 

「眩しッ!」

「うっ! カナヲ! 大丈夫か!?」

「目を閉じたから平気!」

 

 両者の波紋が拮抗し、その腕の輝きは直視出来ない程の眩しさとなった!

 

 ジョジョは光の奔流の中、彼女の波紋を感じ取っていた。

 

「……」

 

(そうか……)

 

 ジョジョはエリザベスが何者なのか、ハッキリと理解した。

 

(なんて数奇な運命だろう。君も波紋使いになっていたなんて)

 

「……」

 

 エリザベスも、ジョジョの波紋を感じ取った。

 

(あなたは確かに、ジョナサン・ジョースター……)

 

 彼が彼であることを確かとしたその目には、微かに涙を浮かべている。

 

(本当に、こうして会えるなんて、夢のようだわ……!)

 

 暫くすると、波紋の光は徐々に収まっていった。

 

「ふー、収まったか……。あ……!」

 

 善逸が素っ頓狂な声を上げた。景色が一変していたのだ。

 

「ゲハハ! また花が咲いたぜ!」

 

 ジョジョとエリザベスの足元半径3メートル以内が、綺麗なお花畑になってしまった。色とりどりの花が咲き乱れ、庭のど真ん中が立派な花壇に生まれ変わったのだ。

 

「これって、那田蜘蛛山の……?」

「うん、波紋の力で植物が活性化するそうだよ」

「それでああなったんだ……」

 

 カナヲは改めて波紋の力を目の当たりにして驚く。那田蜘蛛山で"隠"を護衛するために入山していた為知っていたが、目の前で実際に起こるとなると、その様は正に圧巻であった。

 

「晴れ続きで乾いていた地面でああなるか……。雨上がりだったら、蝶屋敷がジャングルになるところだったわい」

 

 スピードワゴンはそう推理する。地面が乾いていたため、あの程度の花壇で済んだのだ。

 

「あれ? スピードワゴンさん。杖が……」

「ぬ? おお、これはまた……。はははは、もっと離れるべきだったな」

 

 スピードワゴンの持つ木製ステッキは、取っ手の先端に綺麗な一輪の花が咲き、棒の部分からは枝と葉がいくつか生え、杖先から根が生えていた。小さな木のように様変わりしている。

 

「スピードワゴンさんの杖、完全に木に変わってる。森に生える木と同じ匂いがするぞ」

「嘘だろ……」

「のう、スピードワゴンや、ちと杖を見せてくれんか」

「どうぞ」

 

 スピードワゴンが快諾し、トンペティに杖を渡すと、彼は木のように変貌した杖をしげしげと眺め出した。ツルツルとした肌触りだった加工品の杖は、木皮を纏ってゴツゴツとしている。

 

「むう、流石に驚いたわい。加工品の木材が余波だけでこうなるとはな……」

 

 ストレイツォがトンペティに近寄り、トンペティの持つ木杖を観察した。

 

「なんということだ……。杖が完全に息を吹き返している。地を伝った波紋が影響を及ぼしたのだろうが……。我が弟子とジョナサン・ジョースターの波紋が合わさると、こうまで相乗効果を発揮するのか……」

 

 直接触れたならともかく、乾いた地面を伝って杖にここまでの影響を及ぼすとなると、先ほど流れていた波紋の量は相当なものだ。最早、未知の現象だった。

 

「エリザベス……。そうか、エリナから名付けられたんだね?」

 

 ジョジョは、彼女の名は妻から授かったものと確信する。

 

「その通りです」

「大きくなったなぁ。こうして君の成長を見ることができて、本当に嬉しいよ」

「光栄の至りよ。船であなたから貰った25年の恩、この日本で返させて貰いましょう」

「ありがとう」

 

(船で貰った恩……?)

 

 ジョジョとエリザベスの会話を聞いていた炭治郎に、ある疑問が生じた。

 

「あの、エリザベスさん」

 

 気になった炭治郎は、エリザベスの元へ行き、話しかけた。物怖じしない男である。

 

(お前のその度胸が羨ましいぜ、炭治郎)

 

「あら、あなたは……」

「竈門炭治郎です。いつもジョジョさんにはお世話になっています!」

「そう、あなたがタンジローね」

 

 エリザベスは、炭治郎を興味深そうに見ている。

 

(確か、あの人と親しい東洋の剣士の一人。聞いてはいたけど若いわ。年はメッシーナ達に近いかしら。東洋の武人もよく鍛えられていること。彼らもうかうかしてられないわね……)

 

「何か御用?」

「はい! エリザベスさんは、ジョジョさんのお子さんなんですか?」

「ええ、そうよ。義理だけど」

「義理……」

「そう。あなた、彼と親しいのよね? だったら聞いていると思うけれど、私は赤ん坊の頃、彼に助けられたの」

「エリザベスさんが!?」

 

(てことは、あの人はジョジョさんが船で助けた赤ん坊!?)

(すんげぇ強くなったんだな……)

(なんだか他人事のような気がしない……)

 

 遠くから話を聞く善逸、伊之助、カナヲも炭治郎同様に仰天する。カナヲは、幼少の頃に助けられ、波紋戦士となって帰ってきたエリザベスにどこかシンパシーを感じているようだ。

 

「全く、ひどいじゃないかスピードワゴン。こんなに大事なことを、内緒にしちゃうなんて」

「すまん、ジョースターさん。彼女の口から、いや、波紋から伝えた方が良いかと思ってな」

 

 スピードワゴンはカラカラと笑う。その表情はまだ何か隠し玉があるぞと言わんばかりだ。

 

「それじゃあ、ジョジョさんのお子さんは……」

「ジョージね? 今、本国で忙しそうにしてる。彼、軍人なの。元気にしてるわよ」

 

 ジョナサン・ジョースターの実子、ジョージ・ジョースター二世は立派な英国軍人となっていた。こちらに関してはスピードワゴンからバッチリ聞いている。今、彼は諸事情から大忙しなのである。

 

「ジョージも立派に成長してるんだろうね。早く会いたいな……」

「そうね、私も早く婚約者に会いたいわ」

「……」

 

 ジョジョと炭治郎達は、暫し固まった。

 

「……え?」

「ジョージと、君が?」

「ええ、そうですわ。()()()()()

「ジョージさんとエリザベスさんが!? すごいや!!」

 

 炭治郎は驚きながらも喜びを露わにしている。めでたい話だ。

 

「スピードワゴンッ! ぼくは聞いていないぞッ!?」

 

 スピードワゴンは破顔して大笑いしている。渾身の悪戯が決まった小僧のようである。

 

「いや申し訳ない! 悪気はないんだジョースターさん。これまた彼女が説明する機会に恵まれそうだったんでな。それならばと、儂は口を閉ざしておったのだ」

 

(スピードワゴンさん、口を閉ざすことができるのね……)

 

 カナヲは、サラッと失礼なことを考える。

 

「もう……。驚いたよ。エリザベス! 君のような素敵な女性(レディ)と婚約だなんて息子は幸せだろう! ぼくは彼の傍にいてやれなかった。どうか、ジョージのこと、よろしく頼むよ」

「はい。私も、彼を愛し続けます」

「うん!」

 

 ジョジョは笑顔だ。盆と正月が一緒に来たようなサプライズだったが、喜ばしいことには変わりない。

 

「えーと、じょるののセガレと船で助けた赤ん坊が(つがい)になったってことか? ハハハ! すげぇ! すげぇぜ!」

 

 伊之助は何故かテンションが上がっている。色恋沙汰にはてんで興味無さそうな筈なのにだ。

 

「アァ――――――――――!!」

 

 突然善逸が絶叫しながらびたんと音を立ててぶっ倒れた! 体をバタバタと縦横無尽にくねらせている!

 

「あ、いつもの発作」

 

 カナヲがスッと離れた。

 

「なんなんだよォ―――!! あれか! ジョースターの血統ってのはモテモテの血統なんですか―――ッ!? キィ―――――ッ!!」

 

 我妻善逸は惚気話を聞くとくるいもだえるのだ、憎しみでな!

 

「……あれは翻訳せんで良いぞ」

 

 スピードワゴンは通訳班の肩に触れ、仕事をそっと阻止した。

 

「お義父さん……。あれは一体……」

「うん、ゼンイツはたまにああなるんだ」

「……」

 

 エリザベスは"やや"冷たい目で善逸を見ている!

 

「なあ、カナリア!」

「カナヲね。何?」

「あの女とせがれにガキができたら、じょりんはじじいになるんだよな!」

「……そうね」

 

 伊之助は、空を見上げた。

 

「とんでもねぇのが生まれそうだぜ!」

「……」

 

 誰も否定できなかった。

 

 




大正の奇妙なコソコソ噂話

はい

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