鬼滅の波紋疾走 JOJO'S BIZARRE ADVENTURE PartEX Demon Slayer 作:ドM
不思議な
砂と海水で作った波紋探知機を土に還し、そのまま勢いでやってしまった握手越しに、彼の生命エネルギーが伝わってくる。陽光のような、優しい暖かさだ。ジョジョは、少年を握手からそっと解放した。
(すごいな、この少年は。いや、このサムライは。なんて純粋で力強いエネルギーだ! 彼に無限の可能性を感じるッ!)
サムライとは、英国でいうところの騎士や歩兵に近いらしい。王を守り、国を守り、民を守る。化け物の脅威から人々を守るその姿。年端もいかぬ少年は、紛れもないサムライであった。尚、日本では廃刀令によって侍が姿を消したことをジョジョは知らない。
(……だけどこれは、ぼくのように大切な誰かを失ったような、悲しみと苦しみを伴ったものだ。君は一体ここまで、どんな道を歩んできたんだろう?)
言葉が分からずとも、彼の歩んだ道のりがある程度理解できた。この力は、多くの苦悩と修練、そして多くの人の支えによって成り立っている。
(しかし困ったな。恐らく君にはぼくの言葉が通じないし、君の言葉も
「あ、あの……。貴方は」
「……?」
サムライが何やら日本語で話しかけるが、やはり言葉が通じない。お互い、言語の壁に戸惑うばかりだ。
「うーん……。和巳さん、この方の言葉って……。和巳さん?」
少年が守っていた青年に声を掛ける。青年は、抱えていた着物姿の女性をそっと壁際に置いた後、さっきの怪物が着ていた服の残骸に駆け寄り、嗚咽を漏らしていた。
「うっ……。ううっ……。里子さん……」
「和巳さん……」
恐らく、"カズミサン"というのが、あの青年の名前なのだろう。青年の近くにある服の中から、日本人女性がよく身に着けている髪飾り、
(そうか、彼の大切な人もさっきの怪物に……。くっ……!)
髪飾りの数だけ犠牲者が出ていたことは明白であった。それも女性ばかり。到底許される行為ではない。この国にも、人を襲う化け物がいる。青年と青年の思い人を襲った悲劇は、ジョジョの心を大きく突き動かす。
(石仮面は破壊し、吸血鬼となったディオも死んだ。だと言うのに、怪物に襲われ、苦しむ人々がこの国にもいた。それならば、ぼくもこの勇ましきサムライの如く戦おう。ウインドナイツ・ロットの人々のような、あの青年のような、そして、父さんやツェペリさんやディオのような惨劇を、二度と起こさない為にもッ!!)
ジョジョは、拳を強く握り締め、戦う決意をする。
サムライが、青年の傍に近づく。何かを話しかけている。青年は、サムライの言葉に涙を流しながら胸倉を掴んで怒りを露わにしている。止めるべきだろうか。
サムライは青年の腕にそっと手を添え、ただ優しく微笑むばかりだ。
暫くしていると、青年が彼の手を見て何かを察した表情になる。
「すまない! 酷いことを言った! どうか許してくれ! すまなかった……っ」
頭を下げた。謝罪の言葉だろうか。二人のやり取りが意味する言葉は分からなかったが、互いを思いやる気持ちがひしひしと伝わってくる。
(彼はすごいな。あんなにも若いのに、他者を思いやり、苦しくても前へと進む
幼いころは結構なやんちゃ者だった自分にとって、彼の姿は眩しく感じるほどだ。ジョジョは、若き日本のサムライに、確かな希望を見出した。
グゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……
「え!?」
「な、なんだい!?」
サムライと青年、謎の音に驚く! 音の出どころはジョジョである。
(うぅ……。これはぼくの腹が鳴った音……! そうか、ぼくはかなり意識を失っていたんだな。長い間絶食状態だったんだ……)
警戒態勢を解かず、怪物と戦ったのが仇となった。自分自身の状態がどうであるかについて疎かになっていたのだ。襲い掛かる空腹と眩暈に、ジョジョはたまらず膝をついた。
「も、もしかして、今のはこの人のお腹の音かい……?」
「だとしたら大変だ! あんなに大きなお腹の音。きっとこの人の胃はカラッポですよ!!」
この緊急事態に対し、炭治郎と和巳は一致団結する。
「俺はこの人を運びます! 和巳さんは引き続き女性の方を頼みます!」
「わ、わかった。家まで運ぼう。重湯を用意するよ」
「ありがとうございます!!」
重湯は多量の水分を加えてよく煮た薄いおかゆの上澄み液だ。極度の飢餓状態に陥った人間は、急に固形物を食べると死に至ることがあるので、彼に与えるのにうってつけの食べ物なのである。
「もしもし、立てますか? 掴まって下さい!」
炭治郎は膝を突く恩人に手を差し伸べる。
「Thank you.Thank you.」
彼は何かを呟くと、こちらに身を預けてきた。
(お、重い。肩を貸すだけでこの重さ、この人の体重、多分二十六貫はある)
だが、鍛えた炭治郎の腕なら近くの家まで肩を貸すぐらい問題ない。
炭治郎は、謎多き恩人を和巳の家まで運んで行った。
・ ・ ・ ・ ・
空はすっかり青空になっている。夜が明け、朝になった。
ジョジョは、家まで運ばれ、靴を脱がされた。日本では建物の中では履物を脱ぐらしいと聞いたが本当だったようだ。緑色の草で編んだ床のある部屋まで運ばれた。
「さあ、これを……」
ジョジョの下に、底の厚い箱型のトレーに載せられた、独特なツヤと紋様の入った鍋が差し出された。中には白いスープがたっぷりと入っている。
(これは、トレーがそのままテーブル代わりになるのか。床にはそのまま座っていいみたいだ。面白いな。そしてこれは、日本の流動食なんだろう、きっと……。助かった!)
器を掴み、差し出されたスープを飲む。
(ほのかに温かく、塩気がある。素朴で優しい味……。必要な栄養が、ぼくの体に染み込んでいくみたいだ……)
ゆっくりと、一息に飲み干した。体の調子が幾分か戻ってきた。
「わ、もう飲み干したのかい? それじゃあ、臓腑が食い物に慣れてきただろうからこっちもどうぞ、西洋の方」
「西洋?」
青年の言葉に、サムライが首を傾げた。
「うん、この海のずっと向こう側、清国、ああ今は中華民国だったっけ。あそこよりもずーっとずーっと向こう側さ。多分そうだよ。東京で見たことがある。さ、これも食べると良い。都会で流行りの
サムライが白いスープの器を片付け、さっきと同じ大きな箱型のトレーを運んできた。トレーの上には見慣れない料理が大小様々な皿に盛りつけられている。
(わぁ、きっとこれが日本の家庭料理ってヤツなんだろう。さっきのは前菜だったんだな)
ジョジョは、目の前の未知の食べ物にワクワクする。雪のように真っ白なライスに、丸焼きにされた魚。微かに甘い香りのする、均等に薄く引いて焼きながら巻かれた卵。植物の根を煮たようなサラダ。小皿には、薄く切った白いラディッシュのようなものが添えられている。御馳走だ。
(……木で作ったスプーンはあるけど、ナイフとフォークが無い。魚はどうやって食べるんだろう? スプーンの下に置いてある二本の棒がそうなのかな?)
ジョジョ、初めての箸にカルチャーギャップ!
「良かった、口に合ったみたいだね」
「俺も美味しいです! 和巳さん!」
「それは良かった」
和巳は炭治郎の言葉に微笑む。
炭治郎は、差し出された食事に対して最初は遠慮した。だが、このご飯が本当は和巳が食べる分で、彼は暫く食欲がでないと聞く。
曰く、どうせなら命の恩人に食べてほしいということで、炭治郎は御馳走になることにした。救出した女性は、寝室ですやすやと眠っている。
炭治郎は、ご飯を食べながら、運び込んだ人物を見つめる。西洋の鬼狩りさんは、匙を使って美味しそうにご飯を食べている。
──そう、西洋人の鬼狩りである。
和巳の話を聞いて、目の前の人物が何者なのか見当がついた。
(この人はきっと、海の向こうからやってきた"西洋の鬼狩りさん"なんだな! うーん、世界ってすごい!)
炭治郎、"西洋の鬼狩り"と和巳の話を通して世界の広さを知る。ちなみに、男は西洋人だが、波紋の呼吸自体はチベットが起源なので、意外と近所だ!
箸を使って食事を続けていると、不意に、西洋の鬼狩りさんからの視線を感じた。
「……どうしましたか?」
西洋の鬼狩りさんは、箸を握って、炭治郎が使っている箸と交互に見比べている。
「ああ、この人箸の使い方を知らないんじゃないかな? 西洋人って、箸は使わないらしいから。代わりに金物の匙と刃物と小さな三叉槍で食べるそうだよ」
「匙と刃物と槍!? 西洋の人は食事をするとき武芸百般に通じなければいけないんでしょうか? だからこんなに強いんだ!」
「違うと思う」
恐らく箸の使い方を覚えようとしているのだろう。握り方で試行錯誤している。教えたいけど、言葉が通じないのでどうにもならない。
「……そうだ!」
突如、炭治郎はひらめく。
「和巳さん、筆ってありますか? できれば細くて乾いてるヤツ」
「え? あるけど……。取ってこようか?」
「助かります! お願いします!」
和巳が、席を外し、程なくして戻ってくる。右手には乾いた細筆が握られていた。炭治郎はそれを受け取ると、西洋の鬼狩りさんの前に持ってきた。
「……Pen?」
「ペン?」
「お、その言葉の意味なら分かるよ。西洋の筆はペンと呼ぶそうだよ」
「おお……!」
和巳の言葉に、炭治郎は光明が差した気がした。すかさず筆を指差す。
「ペン!」
炭治郎の奇行に、和巳はちょっとびっくりする。しかし、西洋の鬼狩りさんが、嬉しそうに頷いている。
「pen!」
「ペン!」
初めて、目の前の人物と言葉で通じ合った。すごく嬉しい。これは輝かしい第一歩だ。炭治郎は、次に箸を指差した。
「ペン!」
「!?」
「!?」
炭治郎は、威勢よくとんでもないことを言い出した。和巳と西洋の鬼狩りさんは戸惑う。彼は何を言ってるんだろう。
すると、炭治郎は筆の持ち方を変えた。紙に書くときの正しい持ち方で、何かを書く真似を見せる。その後、片方の箸一本だけを持ってきて、筆の下に差し込んだ。すると、今度は筆と棒で箸の動きを見せた。再度、棒を抜き取ると、また筆で字を書く動きを見せる。この動きを二度繰り返した。
「!」
西洋の鬼狩りさんは何かに気づいた表情をする。この時、和巳も炭治郎の行動が意味するところを理解した。
「あ、そういうことか。考えたね」
「弟と妹が小さかった頃、箸の使い方を教えてたんです。筆の使い方と一緒だよって」
「なるほどなぁ」
彼は箸を使うコツを教えていたのだ。
炭治郎の動きを見て、西洋の鬼狩りさんは箸の動かし方を再度試行錯誤する。さっきよりも明らかに動きが良くなっている。
そしてついに、箸を使って卵焼きを食べることに成功した!
「やった!」
「おー、初めてなのに巧くなったもんだ」
西洋の鬼狩りさんが箸を見てしきりに頷いている。炭治郎はその姿を嬉しそうに見つめている。暫くすると、朗らかな笑みで、炭治郎の方に向き直った。
「Thank you!」
さんきゅう。西洋の鬼狩りさんが、炭治郎の手を借りてるとき何度となく口にした言葉だ。ここで、炭治郎は言葉の意味を心で理解した。
(そうか! "さんきゅう"は"ありがとう"だ!)
一番知りたかった言葉だ。
すると炭治郎は、和巳と自分を交互に指差す。
「さんきゅう」
そして深々と頭を下げた。
「さ、さんきゅう」
釣られて和巳も同じ言葉を述べ、頭を下げた。
二人の様子に対し、西洋の鬼狩りさんは、温和な笑みを浮かべている。
「……my pleasure」
炭治郎も和巳も、今の言葉の意味がすぐに分かった。
"どういたしまして"だ。
大正の奇妙なコソコソ噂話
大正時代には、一般家庭にも西洋文化が根付いてきたそうだよ。カレーライス、コロッケ、トンカツが日本三大洋食と言われているんだって。